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世界の航空勢力図を変える「スーパーコネクター」 中東の航空4社の成長は今後も続く
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投稿者 rei 日時 2015 年 4 月 30 日 08:26:07: tW6yLih8JvEfw
 


世界の航空勢力図を変える「スーパーコネクター」

中東の航空4社の成長は今後も続く

2015年4月30日(木)  The Economist


 世界の航空会社は1930年代から、ペルシャ湾岸諸国を視野に入れていた。当時、真珠採取船の港だったドバイは、インペリアル航空(英ブリティッシュ・エアウェイズ=BAの前身企業の一つ)が、ロンドンから辺境の植民地へと向かう便の中継地として使っていた。

 BAは今日でもドバイ国際空港を利用しているが、ここを発着する便の大半の機体の尾翼に描かれているのは、エミレーツ航空のロゴだ。アラブ首長国連邦(UAE)を構成する小さな首長国の一つ、ドバイの航空会社である。この広大な空港は、2014年にロンドンのヒースロー空港を抜き、国際線の旅客数で世界第1位となった。世界の航空業界の勢力図は変化している。
欧州−アジア便は中東経由に

 エミレーツ航空と、カタールのカタール航空、そして、エティハド航空(UAEの首長国の一つアブダビを拠点とする)は、10年前にはほぼ無名の存在だった。だが、この3社――最近ではトルコのターキッシュ・エアラインズを加えた4社――は「スーパーコネクター」と呼ばれ、欧州とアジアを結ぶ航空路線におけるシェアを高めつつある。

 国際線を運行する大半の航空会社が、自国から、あるいは自国への旅客に大きく依存しているが、スーパーコネクターは異なる。乗客がこれらの航空会社のハブ空港に降り立つのは、ほとんどの場合、どこかほかの場所に向かう際の乗り換えのために過ぎない。


出所:The Economist/IATA
*1:有料の乗客1人を1km運ぶと1RPKと計算する。
*2:設立は2003年
 ペルシャ湾岸やイスタンブールにあるこれら4社のハブ空港の乗降客数は、2008年には合わせて5000万人だったが、2014年には1億1500万人に増加した。保有する機体の数も、4社合計で700機へと膨れ上がっている。さらに900機前後が発注済みだ。

 スーパーコネクターの成長は目覚ましい。エミレーツ航空は、国際線を運航する航空会社として断トツの世界第1位だ(図参照)。当然、欧米の既存の航空会社は脅威を感じている。

 これらスーパーコネクターにシェアを最初に奪われたのは、ドイツのルフトハンザ航空やフランスとオランダのエールフランスKLM など、欧州各国を代表するフラッグ・キャリアだった。これらの航空会社は、既に欧州内の近距離路線で、低コストのLCC(格安航空会社)――アイルランドのライアンエアーや英イージージェットなど――の攻勢に苦しんできた 。今や長距離路線でも同じ苦渋を味わっている。

 スイスの航空コンサルタント会社、アビエーション・アドボカシーのアンドリュー・チャールトン氏はこの状況を、「LCCは欧州の航空会社のランチを食べた。湾岸諸国の航空会社は彼らのディナーを食べようとしている」と例える。

 ルフトハンザ航空によると、欧州−アジア便においてフランクフルトのハブ空港が占めるシェアは、2005年以降、3分の1近く減ったという。現在では、ドイツを発ち、湾岸諸国にあるハブ空港を経由して世界各地に向かう人は、年間300万人を超える。

湾岸3社は不正な利益を得ている――既存航空会社が非難

 最近では、大西洋を挟んだ米国の航空会社も危機感を覚え、不満の声を高めている。米国のデルタ航空、アメリカン航空、ユナイテッド航空の3社の圧力団体は今年2月、湾岸の3社が、過去10年間で合わせて420億ドル(約5兆円)に上る補助金をそれぞれの政府から受け取っていたと非難する報告書を発表。4月21日には、その内容を裏づける大量の文書を公表した。

 エミレーツ航空は現在ではすべての財務を公表しているが、エティハド航空とカタール航空はしていない。しかし、米国の航空規制当局は、ベルギーからオーストラリアに至る世界各国の航空当局に提出された文書を精査した。中には相当古くにまで遡った詳細な会計資料も含まれる。

 この調査の結果、もし湾岸の航空各社が受けたとされる便宜、例えば償還条件のない無利子の貸し付けや土地の譲渡などが確認されれば、これらは補助金と見なされる可能性がある。

 一方、湾岸の航空会社が享受している低賃金や低税率は、業界を発展させるための正当な手段と見なされるだろう。これらの国々では労働組合が禁止されていることもあり、各社の労働コストは低い。また、全般に税率が低く、この地域のほかの業界も同じ恩恵を被っている。

 今回公表された大量の証拠文書は、弁護士や会計士、貿易エコノミストらが何年も議論を続けられるだけの材料を提供している。湾岸3社が、自社が自立しているという主張を正当化したいのなら、何らかの説明をする必要があるということは言えそうだ。

 既存の航空会社は、ペルシャ湾岸諸国の政府が建設した巨大な空港を、スーパーコネクター各社が安い着陸料で使用していることにも、不満を表明している。

 ターキッシュ・エアラインズは半官半民だが、今でもトルコ政府の強力な支援を受けている。政府はイスタンブール郊外にヒースロー空港の2倍のキャパシティを持つ巨大な新空港の建設を発注した。そのため同社は、今後も成長を続ける余地がある。

アジア、アフリカをつなぐ地の利

 しかし、スーパーコネクター各社が不公正な利益を得ていると欧米の既存の航空会社が言い募ったところで、それだけのことだ。既存の航空各社自身も、自国の政府の保護を受けてこなかったわけではない。加えて、スーパーコネクターが急成長している理由の大部分は政治家の手の及ばないもの、つまり地の利にある。

 ペルシャ湾岸は、欧州、アジア、アフリカ、アメリカのすべての大陸から手頃な距離に位置している。最新の長距離ジェット機の航続距離内にあるのだ。また、欧州の縁に位置するイスタンブールからは、55の国の首都に近距離便で訪れることができる。ペルシャ湾岸もイスタンブールも、多くの出発地と到着地を結ぶ路線を一つにまとめる場所として理想的なのだ。長距離便と長距離便をつなぐスーパーコネクターのビジネスモデルは効率が良く、航空料金も抑えられる。

 スーパーコネクター4社は、巨額の資金を投じて最新の経済的なジェット機を揃え、運航能力を拡大している。機内サービスや路線網の拡大にも支出を惜しまない。社員は若く優秀だ。

 欧州のフラッグ・キャリア各社は路線網の拡大に慎重だが、スーパーコネクターはアジアの就航都市を大幅に増やしてきた。その結果、成長著しい欧州−アジア便においてスーパーコネクターが占めるシェアは急増した。エミレーツ航空とカタール航空が就航する欧州の都市は、2001年にはそれぞれ17都市に過ぎなかった。しかし今では両社とも32都市に増やしている。ターキッシュ・エアラインズは欧州の84の空港に乗り入れている。

 スーパーコネクター各社は欧州の発着地を増やしているだけではない。エティハド航空は、イタリアのアリタリア航空や、ドイツのエアベルリンなど、欧州の航空会社数社の株式を取得した。

 同様に、アフリカ便でも、スーパーコネクターとそのハブ空港がシェアを高めている。アフリカ便は、まだ小さいながら、急速に成長している市場だ。特に、アジアの経済大国がアフリカの天然資源に関心を抱いているだけに、アフリカ便の需要は高まっている。

 さらに、スーパーコネクターは北米にも路線網を広げている。エミレーツ航空は、米フロリダ州オーランドへの新たな定期便と、ボストン便とシアトル便の便数拡大を発表した。米国の国際線航空会社が湾岸の航空3社に対して不当な補助金を受け取っているとの非難を表明してすぐのことだったので、米国の航空会社はこれに愕然とした。

 ターキッシュ・エアラインズも最近、同社にとって南北アメリカ大陸で11番目の都市となるサンフランシスコ行きの直行便を就航させたばかりだ。同社はさらに、米ジョージア州アトランタとメキシコのメキシコシティへの直行便も計画している。

 スーパーコネクターが米国各地の空港への就航を増やすにつれて、旅行客は利用する航空会社を選ぶようになっていくはずだ。英調査会社スカイトラックス が作成した世界航空会社ランキングでは、スーパーコネクターは4社ともベスト10に入っている。米国の大手3社を見ると、最上位のデルタ航空ですら49位にとどまる。

苦境に立つ既存の航空会社

 既存の大半の航空会社は、この状況に2つの面で対応してきた。一つは異議を申し立てること。もう一つはさらなるコスト削減だ。彼らは既に、LCCの台頭に対処するためコスト削減を断行している。

 例外は、BAとスペインのイベリア航空の親会社であるインターナショナル・エアラインズ・グループ(IAG)だ 。同社はイベリア航空のコスト削減に努力してきたが、スーパーコネクターの騒動からは基本的に距離を置いてきた。同社は4月16日に欧州の業界団体から脱退した。この団体がエールフランスKLMとルフトハンザ航空に従ってスーパーコネクターに対立しているのは、団体の本来の姿勢に矛盾するという理由からだ。ちなみにIAGの株式の10%はカタール航空が保有している。

 エールフランスKLMとルフトハンザ航空は、長年の経営の失敗を取り返すため、傘下のLCCであるオランダのトランサビアとドイツのジャーマンウィングスの強化に努めてきた。だが、これらの努力は内部において激しい抵抗に遭っている。パイロット組合は、競争力を向上させるための数々の社内改革に反対し、昨年は何度もストライキを実施した。

 エールフランスKLMは、ルフトハンザ航空よりさらに激しい乱気流の中を進んできた。2014年には業績見通しを3度も下方修正した。過去3年で8000人を解雇したうえ、今後もさらに800人減らす計画がある。また、投資を抑え、購入契約済みの一部の旅客機の導入時期を先延ばししている。

政治への働きかけは効果なし

 台頭する対抗勢力に対して、不公正な競争が見受けられると非難する戦略は、これまでのところ成果を挙げていない。

 欧州の既存の航空会社は、「オープンスカイ協定」の見直しを求めている*1。この協定のおかげで、スーパーコネクターは欧州の空港に就航することができる。湾岸の航空会社がまだ小さな存在だった頃は、欧州の航空会社はこの協定を積極的に支持していた。

 ルフトハンザ航空とエールフランスKLMは欧州委員会に対し、現在および将来の航空協定に「公正競争条項」を強制的に加えるよう求めた。米国の大手3社もオバマ政権に、スーパーコネクターにこれ以上北米路線を増やさせないよう求めている。

 オープンスカイ協定は、破棄しなくても効力を弱めることができる。当局が手続きを意図的に遅らせればよいのだ。ノルウェーのLCC、ノルウェー・エアシャトルは北米路線の拡張を目指しているが、業界団体の圧力を受けた米国の規制当局が、認可を遅らせている。しかし現時点で既存の航空会社側は、目に見える成果を得られてはいない。

 それどころか、裏目に出た部分もあるかもしれない。デルタ航空のリチャード・アンダーソンCEO(最高経営責任者) はあるインタビューの中で「湾岸の航空会社は、9.11の同時多発テロを起こしたテロリストを生んだ地域を拠点にしていると」と根拠もなく口を滑らせ、後で謝罪する羽目に陥った。

 また、米国の航空会社が湾岸3社に浴びせた補助金疑惑の非難を不当として、米国の旅行会社を中心とする圧力団体「ビジネストラベル連合(BTC)」 は、米国政府が長年にわたって航空業界に与えてきた支援に注意の目を向け始めた。

 欧米の既存航空会社は、自分たちの懸念に政治家の関心を向けさせるために相当な努力をしてきたが、欧米の政府が航空自由化の方針を撤回してスーパーコネクターの拡大を制限する方向に動くとは考えにくい。

 スーパーコネクターの成長に伴って大きな利益を上げている欧米の航空機メーカーやエンジンのメーカーも、強力な圧力団体を有している。利用客も同じだ。利用客は、苦闘するフラッグ・キャリアにはほとんど同情を示さない。利用客の関心は、そのライバルが提示する安い航空運賃にある。

 いずれにせよ、既存の航空会社にとって事態が好転することはあり得ない。ノルウェー・エアシャトルが北米路線の拡大に成功したなら、ライアンエアーなど、多くのLCCが後に続く。中国の巨大な国営航空会社が太平洋路線のシェア拡大を目論んでいることは間違いない。米国の航空会社は国内線で高い利益を上げているため、米国内で今後LCCが拡大していく可能性は高い。

 こうして見ると、既存の航空会社に投資している人々は暗い見通しを持たざるを得ない。一方、旅行者にとっては、航空運賃の安い時代が続いていくことになるだろう。

*:スーパーコネクターが欧州の空港に就航できるのは、湾岸諸国と欧州諸国が「オープンスカイ協定」を結んでいるため 。この協定の下で、航空会社は路線や便数を自由に設定できる。

©2015 The Economist Newspaper Limited.
Apr 25th 2015 | From the print edition 2015 All rights reserved.

英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。

このコラムについて
The Economist

Economistは約400万人の読者が購読する週刊誌です。
世界中で起こる出来事に対する洞察力ある分析と論説に定評があります。
記事は、「地域」ごとのニュースのほか、「科学・技術」「本・芸術」などで構成されています。
このコラムではEconomistから厳選した記事を選び日本語でお届けします。
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