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薄曇りの世界景気:米、意外な「ぬかるみ」:中国、強まる減速感:欧州、消費軸に持ち直し:日本、加速感なき回復
http://www.asyura2.com/15/hasan96/msg/670.html
投稿者 あっしら 日時 2015 年 5 月 20 日 04:46:27: Mo7ApAlflbQ6s
 


※日経新聞連載

薄曇りの世界景気


(1)米、意外な「ぬかるみ」 頼みの住宅には明るさ


 シェールオイルのブームに沸いた米南部テキサス州の景気が暗転している。

 「資金繰りが悪化した」。4月30日、原油開発のERGリソーシズがダラス破産裁判所に米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請した。同州では今年、少なくとも5つの大手シェール企業が経営に行き詰まった。

 一時1バレル40ドル台まで下落した原油価格は、足元で60ドル前後まで戻している。しかし、シェール企業の多くは原油価格が100ドルを超えていたときに事業計画を立てた。予定していた収益が見込めない状況は変わらず、銀行は救済のつなぎ融資に応じようとしない。

 テキサス州の雇用者数は3月に前月比2万5400人減った。減少は54カ月ぶり。米国内総生産(GDP)の9%を占める同州が「景気後退局面に入る恐れがある」(JPモルガンのマイケル・フェローリ氏)。


消費よりも貯蓄

 原油安はガソリンの値下がりで消費を増やす効果もあるが、まだはっきりとは出ていない。米マスターカードのアジェイ・バンガ最高経営責任者(CEO)は「消費者はガソリン価格の下落で節約した分の一部しかモノやサービスの購入に充てていない」とみる。貯蓄を優先しているためだ。

 本格回復への期待が高まっていた米景気が足踏みしている。原油安に起因するエネルギー企業の不振、悪天候もあって失速した個人消費、そしてドル高による輸出減で米経済は1〜3月期に急減速した。

 ソフトパッチ(ぬかるみ)と呼ばれる一時的な鈍化で終わるのか。そこから抜け出す兆しはある。

 「3月になって買い手の動きが活発になった」。西部アリゾナ州の住宅仲介業者は春の商戦の滑り出しは上々だと話す。全米不動産協会(NAR)によると、需要の9割を占める中古住宅の販売件数は3月、年率換算で519万戸と、前年同月比10%増えた。

 住宅投資は米景気のつなぎ役として「2番打者」に擬せられる。GDPの5%程度にすぎないが、家具など個人消費や設備投資への波及効果が大きいためだ。

 カリフォルニア州・ナパバレー。「スタッグスリープ」や「オーパスワン」といった高級ワイナリーが相次いで試飲室を拡張した。車で2時間のシリコンバレーから「ハイテク長者」が押しかける。同州の雇用者増加数は3月に3万9800人と全米首位。テキサスと対照的な好景気に酔う。


利上げ時期焦点

 明暗が交錯する米景気。最大の注目点は米連邦準備理事会(FRB)がいつゼロ金利を解除するかだ。

 長引く低金利は自動車販売を押し上げ、低所得者向けのローンが膨らむ。ナスダック総合株価指数は4月、15年ぶりに最高値を更新した。FRBのイエレン議長は先週、いまの株価について「かなり割高だ」と異例の警鐘を鳴らした。

 金融市場が有力視していた6月利上げはほぼ消えたが「9月利上げの是非が焦点になる」(ゴールドマン・サックスのヤン・ハチウス氏)。先頭打者兼監督として強力な金融緩和で米景気のてこ入れに腐心してきたFRB。その微妙な采配が試される局面を迎える。

 薄雲がかかってきた世界景気。日米欧と中国、新興国それぞれの現状を点検する。

(景気動向研究班)

[日経新聞5月12日朝刊P.1]
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(2) 中国、強まる減速感 要の消費、なお力不足

 中国内陸部の重慶市。「3月から販売をやめた。いつ再開できるか分からない」。地元大手の不動産開発会社が資金繰りに行き詰まり、600戸近くある高層マンションの建築が止まった。関係者によると、雲隠れした経営者は、水面下で市当局と会社の売却を含めた善後策を練っている。

覆う住宅不況

 住宅市況の不振が中国を覆う。不動産最大手の万科企業の郁亮総裁は「どんな政策も、今の状況を変えられない」と言い切る。今年1〜3月の新規住宅着工面積は前年同期比で2割減り、昨年通年の14%減からさらに落ち込んだ。

 中国の国内総生産(GDP)の約15%を占める不動産投資が鈍り、3月のセメントの生産量は前年に比べ2割も減った。建機大手の三一重工は今年1〜3月期の最終利益が前年同期に比べ96%減り、中聯重科は赤字に転落した。国内の需要が落ち込み、製造業は生産の低迷にあえいでいる。

 1〜3月の実質GDP成長率は前年同期比7.0%だった。減速したとはいえ、世界的にはなお高い水準だ。もっとも、足元の減速ペースは、中国経済が「新常態」に入ったとして高速成長にこだわらなくなった習近平指導部の想定を超えている可能性がある。

 例えば、1〜3月の成長率を前期比でみると、伸びは1.3%となる。中国政府が前期比の数字を公表し始めた2011年以降で最も低い。年率換算では5%強となり、中国政府が潜在成長率として今年の目標に掲げる「7%前後」を大きく下回った。

 物価の総合的な動きを示すGDPデフレーターも、1〜3月は「リーマン・ショック後の09年以来、初めてマイナスに陥った」(英HSBC)。景気の先行きを強く映す上海先物取引所の銅先物価格は、11年のピーク時の約4割安に沈む。企業間の卸売物価は3年以上も前年割れが続き、デフレ懸念さえ広がる。


サービス業好調

 それでも中国経済が徳俵で粘っているのは、底堅い個人消費のおかげだ。所得増やネット通販の拡大で宅配業が年5割増のペースで成長し、北京では「市内の地名に詳しくない」という地方出身者が荷台付き電動自転車を駆る。GDPの半分を占めるサービス業が新たな雇用を生んでいる。

 その消費も決して安泰ではない。4月の新車販売台数は約199万台と、前年同月に比べ0.5%減った。マイナスに沈んだのは春節(旧正月)の影響で統計がぶれやすい1〜2月を除けば2年7カ月ぶりだ。

 企業は商用車を買い控え、個人も先行き不安から高額消費を敬遠している。投資に代わる中国経済の新たな主役と期待される消費は、なお力不足だ。

 「景気の下振れ圧力への対応を高度に重視する」。習指導部は4月30日、景気の下支えを強化する方針を決め「投資の重要な役割を発揮する」と強調した。今月10日に決めた昨年秋以降で3度目の利下げは、その第1弾だ。安定成長への決意表明だが、金融緩和が行きすぎれば、投資頼みの経済に逆戻りしかねない。

 「着実に改革を実行する強いリーダーが必要だ」(凱基証券の陳浩氏)。習指導部の軸足のぶれが中国経済の先行きを曇らせる最大のリスクになるとの懸念は、徐々にだが確実に強まっている。

(景気動向研究班)

[日経新聞5月13日朝刊P.1]
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(3)新興国、もたつく成長 米中依存のもろさ露呈

 ブラジルの最大都市サンパウロで3月と4月に大規模なデモが起きた。参加者は多い時で100万人超。貧しい身なりの人たちに混じって、高級腕時計を身につけた参加者も目立つ。ルセフ政権の汚職疑惑への抗議から始まったデモは、富裕層や中間所得層を巻き込んで物価上昇への不満をぶつける場にもなっている。

消費冷え込み

 足元で消費者物価の上昇率は年8%。青空市で売られるブドウの価格は1キロあたり20レアル(約800円)と3カ月で3割強上がった。

 主要な輸出品である鉄鉱石や大豆の価格低迷で、2014年に14年ぶりの貿易赤字となった。通貨レアルの急落がインフレを招き、個人消費を押さえ込む。4月の自動車販売台数は前年同月比24%減った。15年の同国経済は6年ぶりにマイナス成長に沈む見通しだ。

 マレーシアの首都クアラルンプール。42歳の女性は今年2月、13年間勤めた職場を失った。米系の油田開発会社が原油相場の下落を受けて人員を削減したためだ。計画していた自動車の買い替えはあきらめた。

 同国の主要産業である原油やパーム油の輸出は低迷し、通貨リンギは下落基調が続く。1〜3月の消費者心理指数は過去6年で最低の水準に落ち込んだ。

 資源価格の高騰で活況だった新興国の景気がもたついている。国際通貨基金(IMF)は新興・発展途上国の15年の実質成長率が4.3%と前年を0.3ポイント下回ると見込む。


消えゆく「過剰」

 資源安だけが理由ではない。新興国経済を支えてきた「3つの過剰」が消えつつあるのも大きな要因だ。

 1つは中国の過剰消費。08年の4兆元(約80兆円)の景気対策を機に、中国は新興国から資源を買いあさった。その構図が中国経済の減速で崩れている。1〜4月の中国の輸入額は前年同期比で2割近く減った。

 もう1つは米国の金融緩和を背景とする過剰なマネーの流入だ。

 オーストラリア東部の炭鉱町では、3年前に1億円だった住宅の価格が3千万円弱に急落した。米国の利上げをにらんで投資マネーが選別色を強めたためだ。IMFのラガルド専務理事は「米利上げで新興国市場が混乱する恐れがある」と警告する。
 3つ目は過剰なばらまき策だ。国内の消費や投資を押し上げようと、タイやインドネシアなどは減税や補助金に頼った。財政赤字が膨らみ、こうした政策を続ける余力はもはやない。

 資源高と3つの過剰に頼ってきた新興国経済。再浮揚のきっかけはあるのか。

 インド最大の商都ムンバイではモノレール新路線の建設が佳境を迎えた。14年5月に誕生したモディ政権は、不足する都市インフラの整備を最重要の課題に掲げる。インド経済はひところの減速を脱し、14年10〜12月期の実質成長率は7.5%と同じ時期の中国(7.3%)を上回った。

 アジア開発銀行(ADB)はアジアのインフラ資金需要が年8千億ドルと試算する。巨額のインフラ投資で足元の内需を支えつつ、将来の自律的な成長への種をまく――。そんな新たな成長モデルの確立が急がれる。

(景気動向研究班)

[日経新聞5月14日朝刊P.1]
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(4)欧州、消費軸に持ち直し 原油安・ユーロ安 頼みの綱

 ベルギーの首都ブリュッセル近郊。欧州小売り最大手のカルフールが運営する超大型店「ハイパーマーケット」に客足が戻ってきた。

 1〜3月のベルギーの既存店売上高は前年同期に比べ1.9%増えた。増加率は値下がりが激しいガソリンなどの燃料を除くと2.1%に上がる。原油安で燃料費が浮いた分、消費者が買い物を増やしているようすがうかがえる。

 欧州の大国である独仏に挟まれた小国のベルギーは周辺国の景気を映しやすく「欧州経済の体温計」(英調査会社キャピタル・エコノミクス)と呼ばれる。そのベルギーで消費の回復が鮮明になり「欧州景気は持ち直しつつある」(同)との見方が広がる。


デフレ懸念緩和

 ユーロ圏の実質成長率は1〜3月期に年率換算で前期比1.6%となった。2011年1〜3月期以来、4年ぶりの高い伸びだ。4月の消費者物価の上昇率は前年同月比でゼロ%と、5カ月ぶりにマイナス域を脱した。一時強かったデフレ懸念はやわらいでいる。

 原油安で好転した消費者心理は、自動車の販売を押し上げる。1〜3月の欧州の販売台数は前年同期比で8.6%増の350万台。仏自動車大手のプジョーシトロエングループは4月下旬、8月までの生産目標を1割引き上げ、6万台を増産する方針を決めた。デニス・マーティン上級副社長は「欧州市場の回復は自動車産業全体にとってうれしい知らせ」と話す。

 欧州中央銀行(ECB)の量的緩和策がもたらすユーロ安も、景気回復を後押しする。輸出の好調で生産が拡大し、雇用を増やしている。ドイツでは3月の完全失業率が4.7%と、1990年に東西ドイツが統一して以降で最も低い水準で推移する。


雇用に南北格差

 労働市場の逼迫は賃上げを促す。金属業界では労使が3%を上回る賃上げで合意した。賃上げの波が個人消費の拡大につながる好循環が生まれている。

 もっとも、欧州全域を見渡せば雇用の回復は一様でない。失業率はスペインなど南欧で20%超の国も多く、ユーロ圏全体では11%台に達する。独ベレンベルク銀行のエコノミスト、クリスチャン・シュルツ氏は「雇用が金融危機前の水準まで戻るにはあと14年かかる」と予想する。雇用の「南北格差」が縮まらなければ、消費の持続的な拡大はおぼつかなくなる。

 企業は欧州景気の先行きをどう見ているのか。資金需要の鈍さが、企業の慎重な姿勢を示す。

 仏金融大手のソシエテ・ジェネラルによると、金融を除く投資適格企業が今年に入って発行したユーロ建て社債はすでに1200億ユーロを超え、09年以来の高水準に達した。しかし発行額の半分は米国など域外企業が占める。域内の金融機関は国債を買い増すなど融資先を探しあぐねている。

 最も気がかりなのはギリシャの債務問題だ。融資再開を巡る欧州連合(EU)とギリシャの交渉は難航している。ギリシャの財政破綻リスクは企業心理の重しとなり、ユーロ圏の購買担当者景気指数(PMI)は4月で改善が止まった。

 足元では原油安とユーロ安に修正の兆しがある。2つの追い風がやめば、欧州景気はにわかに雲行きがあやしくなる危うさをはらむ。

(景気動向研究班)

[日経新聞5月16日朝刊P.1]
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(5)日本、加速感なき回復 国内投資、潜在的に需要

 4月に入場料を6900円に引き上げた東京ディズニーリゾート。国内テーマパークでは屈指の高価格だが、「世界一安い」ディズニーランドの顔もある。

 米ディズニーワールド約1万2000円、仏ディズニーランド・パリ約9000円……。円換算すると「東京」の安さが際立つ。2014年度の海外客は約156万人と最高になった。


訪日消費2兆円

 円安を背景に中国など訪日外国人の消費は都市部の定番施設から地方に広がる。5月1日、新潟県十日町市の道の駅にある土産物店が免税店に衣替えした。「Tax Free」の看板とともに地酒やコシヒカリなど2000〜3000の地元名産品が並ぶ。免税店の申請が全国で相次ぐ。

 14年の訪日外国人の消費額は約2兆円。地域経済には干天の慈雨になる。低迷を続けてきた日本人の消費も持ち直す兆しがある。

 大丸松坂屋百貨店は4月の婦人服の客単価が前年同月比5%、紳士服は5〜7%上昇。食品スーパーのライフコーポレーションは4月の既存店売上高が前年同月に比べ13%増えた。岩崎高治社長は「消費環境が変わってきた」と話す。

 原油安を受けて物価は横ばいで推移し、賃上げの動きも広がってきた。消費増税後にマイナス続きだった実質賃金は水面上への浮上をうかがう。


生産は勢い欠く

 しかし日本経済の成長ペースは加速感が乏しい。民間調査機関は15年度の実質成長率を1%台後半とみていたが、月を追うごとにじわじわと予測値を引き下げている。主軸である企業活動の水位が高まらないことが一つの要因だ。

 日銀の調査では大企業の15年度の設備投資計画は前年度比1.2%減。大和証券によると主要200社の15年度の経常利益は14%増える見通しだが、設備投資の伸びは鈍い。自動車などの国内生産も勢いを欠く。

 12年までの円高や新興国市場の拡大を受け製造業の「地産地消」が定着してきた。円安に反転しても国内への生産回帰は限定的だ。パナソニックは白物家電の一部機種の生産を中国から国内に移管する検討をしているが、多額の投資を伴わないものが大半を占める。

 円安下でも海外企業や事業の買収は拡大が続く。日立製作所は2600億円を投じてイタリア防衛大手から鉄道事業を買収する。日本企業が海外に成長機会を求める流れは止まらない。

 潜在的な国内での投資需要はある。一つの要因は設備の更新だ。明治安田生命保険によると、製造業の設備の平均使用期間は15年を超える。JFEスチールは15年度からの3年間で設備更新に6500億円を投じる。古い設備では中国勢との競争を優位に進められないと判断した。

 もう一つの要因は人手不足という日本の課題だ。米ボーイング次期大型機「777X」の胴体を生産する三菱重工業は広島製作所(広島市)で自動化投資を計画している。「設備を大幅に入れ替え効率を追求する」(鯨井洋一副社長)。

 企業の投資の意欲を引き出すには、政府が税制や規制の改革を通じて環境を整えることが重要になる。日銀には緩和的な金融政策で企業や家計の前向きな行動を支える役割がある。成長力強化に近道はない。

(景気動向研究班)

=おわり

[日経新聞5月17朝刊P.1]


 

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