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  「市場から忘れ去られた女性」のホンネ  第17回 「いきいき」宮澤孝夫社長に聞く(前編)
http://www.asyura2.com/15/hasan97/msg/228.html
投稿者 rei 日時 2015 年 6 月 01 日 10:20:47: tW6yLih8JvEfw
 

「ニッポンブランド強化作戦Season3 価値が宿る現場を歩く」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20150511/280946

「市場から忘れ去られた女性」のホンネ

第17回 「いきいき」宮澤孝夫社長に聞く(前編)

2015年6月1日(月)  田端 信太郎 、 山口 義宏


左から山口義宏氏、宮澤孝夫・いきいき社長、田端信太郎氏
ブランドマーケティング戦略専門のコンサルティング会社インサイトフォースの山口義宏代表に加え、デジタルメディア活動家として数々のメディア経営に携わっている田端信太郎氏が、企業の現場に出向いて戦略の中身を掘り下げていく当連載。6ブランド目は、シニア女性に特化した定期購読誌でありながら、定期購読者20万部を誇り、特に通販事業での躍進が目覚ましい雑誌「いきいき」を取り上げる。今回から2回は、経営破たん後のいきいきを見事に蘇らせて再生した、宮澤孝夫社長との鼎談をお送りする。
山口:雑誌「いきいき」を出版しているいきいき株式会社にお邪魔しています。いきなり失礼な話になるかもしれませんが、我々の世代からすると、いきいきって何だかよく分からない雑誌だし、会社です。聞いたことはあるけれど見たことはないし、シニアをかなり囲っているようなのでちょっと宗教っぽいのかななど、いろいろと勝手な想像をしてしまいます。

宮澤:実はそこが悩みであり、経営課題でもあります。いきいきをご存じだとおっしゃる方の中にも、「健康系かお年寄り向けの雑誌かな」と正しく理解されていない方が相当数いらっしゃいます。

山口:ということで、まずは会社についてご紹介いただいてもいいですか。

市場で「忘れ去られた人たち」に着目

宮澤:雑誌でスタートした会社です。もともと社会福祉系の雑誌がありまして、それが廃刊になるときに前のオーナーがその権利を買い取って、1996年にいきいきを創刊しました。

 当時はまだ消費の中心にいるのは若い人で、シニアに注目する人が少なかったのですが、シニアの中でも、適切な言葉ではないかもしれませんが、当時の雑誌業界では忘れ去られた人たちであるシニアの女性に着目し、その方々の喜びや悲しみ、悩みなど、実態の人間としての気持ちに寄り添うような雑誌をつくったところ、爆発的にブレイクしました。一時期は40万部近くになりました。

田端:返本、つまり売れ残りのない定期購読で40万部ということは、書店で市販誌の感覚でいうと、50万、60万部くらいの規模感ですか。

宮澤:もっと上だと思います。ただ、2006年を境にその数字は急激に落ちてしまいました。競合誌も出てきましたし、新聞広告での宣伝効果も落ちてきましたし、飽きのようなものもあったのかもしれません。

 それで、2009年に民事再生をしたという経緯があります。それでJ-STARという投資ファンドに事業が譲渡され、再生のタイミングでそのJ-STARから私に声がかかりました。


宮澤孝夫(みやざわ・たかお)氏
いきいき社長
1956年生まれ。東京大学大学院で航空工学を学び、修了後、野村総合研究所へ入所。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校経営大学院でMBA(経営学修士)取得。主に自動車業界や航空・宇宙業界をはじめとする製造業を対象にしたリサーチ、コンサルティングを約10年間担う。その後、ボストン コンサルティング グループで約4年間に渡り戦略コンサルタントとして活躍。96年テレマーケティングジャパンに入社、2003年には同社代表取締役CEO(最高経営責任者)に就任。コールセンター事業分野で実績を残す。2009年私募ファンドのJ-STARからいきいきの再生を委任され代表取締役として再建し、現在に至る。
定期購読者の99%がシニア女性

田端:今、読者のプロフィールはどんな感じですか。

宮澤:98〜99%が女性です。年齢は、5歳刻みで見ると65歳から70歳が中心です。その次が70歳から74歳で、次が60歳から64歳。65歳から70歳がピークですが、その山は対称ではなくて、70歳以上は結構多く、50歳代は少ないという分布です。

田端:割と裕福な方が多いと見ていますが。

宮澤:資産はやや多めです。ただ、この年齢の方々のフロー収入はかなり減ります。

山口:売り上げの全体像はどうなっていますか。

宮澤:前の期では、売り上げ約108億円のうち、10数億円が雑誌の売り上げで、残りの大半が「ふくふく」それから「スムリラ」の通販による売り上げです。当初は雑誌の中でシニアの健康にいいもの、あるいはおしゃれな洋服をご紹介していたのですが、反応が良かったので、現在は生活系通販カタログを「ふくふく」、ファッション系通販カタログを「スムリラ」として分冊にしています。

 民事再生の前にも、通販は非常に伸びましたし、シニアを対象にした旅行、日帰りのウォーキング、カルチャースクールのような講座も企画し、相乗効果も得られていたのですが、ある時から歯車が逆向きに回り始めて、資金がショートしてしまいました。

山口:その頃と今と、ビジネスモデルは変わりましたか。

宮澤:基本的には変わっていません。新聞をメインとした紙媒体でいきいきの定期購読を募集し、いきいきに同封した「ふくふく」と「スムリラ」に気に入ったものがあったら買っていただく。旅行や講座も今もやっております。

シニア女性にとって夫は大きなテーマではない

田端:そういったイベントへの参加者も女性の方が中心ですか。神楽坂のショールームもほとんど女友達同士で、夫婦でいらっしゃる方は少ない雰囲気でした。

宮澤:例えば20人の方が参加されたとしたら、ご夫婦で来られるのは1日、1組か2組。いらっしゃらないことも多いくらいです。

田端:雑誌いきいきにも、あまりご主人というか旦那さんの話が出てきませんよね。

宮澤:夫を愛していないわけではないのでしようが、それほど関心がない、もう、大体分かっているということではないでしようか。

田端:ああ…。そうなんじゃないかなと思っていました。


左:山口義宏(やまぐち・よしひろ)氏
ブランドマーケティング戦略コンサルタント/インサイトフォース代表取締役。1978年東京都生まれ。ソニー子会社、リンクアンドモチベーション、デジタル・マーケティング・エージェンシーなどを経て2010年にコンサルティング会社「インサイトフォース」設立。共著に『プラットフォームブランディング』がある。
右:田端信太郎(たばた・しんたろう)氏
デジタルメディア活動家/LINE上級執行役員法人ビジネス担当。1975年石川県生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業。リクルートでフリーマガジン「R25」を立ち上げる。2005年ライブドアに入社。ライブドアニュースの責任者を経て執行役員メディア事業部長となり、ライブドアのメディア事業の再生をリード。2010年、コンデナスト・デジタルのカントリーマネージャーに就任。
山口:あえて外したわけではなく、読者の求める内容ではないと。

宮澤:優先順位は低いのかもしれませんね。

山口:では、シニア女性は何に興味があるのですか。

宮澤:やはり、ご自分の健康ですね。うちはあまりサプリを売っていませんが、リンゴとレモンを少し入れて飲みやすくしたニンジンジュースですとか、国産の素材だけで作った食品ですとかが人気です。

田端:それ、買わせていただきました。思っていたより飲みやすかったです。

山口:私は割れ栗の甘納豆を買いましたが、やはりおいしかったです。

宮澤:手前味噌かもしれませんが、商品はかなりきっちり作っています。食品も、作っている工場まで出掛けて衛生管理状態も見ています。

山口:雑誌の企画ではどういうものがヒットしますか。

「シニア女性も働こう」の提案は不評

宮澤:ヒットしなかった例でもいいですか。今年の1月の特集で「シニア女性も働こう」といった提案をしました。正社員とかパートとかではなく、自分が興味を持っていることで少しお金を稼ごう、社会貢献すると共に生きがいも持とうといった訴えかけだったのですが、これはダメでした。新規契約の数が通常の半分以下で、既存の読者の方の満足度も低かったです。

田端:おそらく、いきいきの読者の方ってずっと専業主婦だった方が多いのではないですか。

宮澤:一概にそうだとは言えないですね。下の世代になると、まだ働いている方もいます。なぜその特集がダメだったのかは、ちょっと我々も解明できていません。

山口:編集部の方は読者と世代が違いますよね。

宮澤:おっしゃるとおりで、いきいきの編集部で最も年齢が上なのは50歳代前半の編集長です。その下の編集部員となると、40代、30代です。20代もいます。

山口:上の世代の方に向けて商品を企画するに当たって、どういう工夫をされていますか。


宮澤:定期購読というダイレクト・マーケティング・モデルなので、極力、お客さんのところへ電話をかけたり出かけていったり、取材をしたりするよう心がけています。ネットではなくて、リアルの世界でやっています。通販の商品作りをする時もそうです。

 全商品の3分の2くらいはオリジナルの商品なのですが、長く売りたい商品を開発する時には、お客さんにアンケートを採ったり来ていただいてグループインタビューに応じていただいたり、今どきの言葉で言えば、コ・クリエーションを行っています。ここはかなり意識しています。

田端:行かせていただいた神楽坂のあのお店も、読者と接点を持つうえで、とても大事な場所ですね。

お客との距離を近くし、年齢差を埋める

宮澤:そうです。商品企画の人間もたまに店頭に立っています。それから、最近はネットを使って「いきクル」というSNS(交流サイト)も運営しているので、そこで声を聞いて参考にさせてもいただいています。

 いきクルは「いきいきサークル」という意味で、会員数は2万4千人弱です。完成度が上がったら一般の方にも入っていただこうと思っていますが、現在は読者の方がほとんどです。

 安心安全な場にするために、本人確認をハガキで行っています。シニア女性にはネットに対して恐怖感を持っている方も多いのでかなり気を使っています。

田端:中に変な人はいないので、安心してお友達になってください、ということですね。

宮澤:そういった場も活用してお客さんとの距離を近くして、年齢差を埋めているつもりです。

田端:編集部の方はみんな女性ですか。

宮澤:男性がいたこともありますが、今は全員女性です。

田端:確かに、この雑誌の読者感覚は、普通のビジネスマン男性には分からない。シニア女性は、性も逆だし、自分の母親くらいに世代も違うので、ちょうど対角線で斜めに遠い感じです。


山口:そのシニアですが、人口構成的にはここが大きくなるので、ビジネスチャンスだと言われ続けています。でも、意外と、シニアビジネスを継続できているところはありません。なぜ御社はできているのでしょう。

宮澤:確かに最近はシニア、シニアですよね。各社研究しているので少しずつ変わってきているかもしれませんが、シニア女性とはどういうイメージかと聞かれたら、「腰が曲がっていて、コタツに入ってテレビを見ながらミカンを食べている」ではなかったでしょうか。

山口:昭和のステレオタイプのシニア女性ですね。

宮澤:でも、実態は違うじゃないですか。いくつになっても前向きで、親の介護など大変なことがあっても、よりよく生きたいという思いがあるシニア女性が、いきいきの中心読者です。

シニア女性は弱者ではない

山口:なのに勝手にこちらが、シニア女性を弱者扱いしている。

宮澤:だからシニアビジネスというと、すぐに出てくるのは老人ホームとか介護サービスとか、料理が大変だろうからその代行とか、そういう発想は出てきますが、ポジティブな面にはあまり目を向けません。

 ただ、私たちのお客様の数は、60歳以上の女性が2400万人いるうちの40万人ほどですから1%強程度です。

山口:非常にニッチなビジネスですね。

宮澤:そのパーセンテージを上げたいと思っています。よく、シニア男性向けはやらないのですかと聞かれますが、そこはやりません。女性のマーケットシェアがまだ90何%残っていますので。

田端:そこをつい、「POPEYE」と「Olive」みたいにつがいでやりたくなるんですよね……。さきほど新聞で定期購読を募るという話がありましたが、一度定期購読された方のリピート率はどれくらいなんですか。いきいきは1996年創刊なので20年近く続いている雑誌ですが、ずっと読んでいる方ってどれくらいいるのかなと。

初回の更改をクリアするのが重要

宮澤:ほかの定期的なものとほとんど変わりません。うちは1年購読と3年購読がありますが、最も離脱率が高いのは最初の年です。読んでみてちょっと違ったとか、読むのが大変だったとかで離脱していていきます。ただ3回購読される方の割合は、8割を超えます。

田端:新聞広告を見て1年間や2年間の購読を決めてもらうのは、少しハードルが高いですよね。

山口:定期購読なので、店頭で試しに読んでみるということもできませんし。

宮澤:そのハードルをどう乗り越えるかがいつも課題です。

山口:シニアのデジタルのリテラシーが上がると、雑誌ビジネスはさらに厳しくなります。5年後、10年後のシニアを見据えたとき、今のビジネスモデルが変わる可能性はありますか。

宮澤:まさに私どもがいま取り組んでいるのは、ビジネスモデルを次のステージにしていくことです。雑誌でご縁ができたお客様に通販でものを買っていただいて会社の収益を支えるという今のモデルの入口は、新聞の購読者が減っているので、マイナス要因です。このままでは、いきいきの購読者数は減っていってしまいますから、それを防ぐためにいくつか手を打っています。

(構成:片瀬京子、次回に続く)

このコラムについて
ニッポンブランド強化作戦Season3 価値が宿る現場を歩く

3シーズン目に入ったこの連載では、ホストに「デジタルメディア活動家」ことLINE執行役員田端信太郎氏が新たに参入。ブランド戦略コンサルタントの山口義宏氏と共に、企業のブランドに変革が起こっている現場を徹底取材。現場ルポや登場する人たちのキャリアパスなども織り交ぜながら、日本を復活させる強いブランドづくりに必要な考え方、発想とはどんなものかを解きほぐしていく。  

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