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６月８日、対ドルで１３年ぶりの水準に円安が進みながら、代表的な輸出株であるトヨタ自動車が下落した。都内で昨年１１月撮影（２０１５年 ロイター／Toru Hanai）
円安でも下落したトヨタ株、金融相場ひと区切り意識する海外勢
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPKBN0OO0MS20150608
2015年 06月 8日 17:10 JST
［東京 ８日 ロイター］ - 対ドルで１３年ぶりの水準に円安が進みながら、代表的な輸出株であるトヨタ自動車(7203.T: 株価, ニュース, レポート)が下落した。５月米雇用統計が米労働環境の改善を示したことで、海外勢が米利上げを意識。金融相場のひと区切りを意識した利益確定売りが日本株にも出たためだ。
ただ、米経済の改善と、それに伴うドル高・円安は日本株にとってのポジティブ要因に変わりはない。押し目買いニーズも強く、調整は大きくならないとの見方も多い。
＜好環境にもかかわらず下落した自動車株＞
週明けの東京市場で、参加者が首をひねったのはトヨタ株の下落だった。５月米雇用統計が改善し、ドル／円JPY=EBSが１２５円後半と１３年ぶりのドル高水準に進行。日本の１─３月期国内総生産（ＧＤＰ）２次速報も市場予想を上回ったことで、主力株には買いが先行する、との読みに反する動きだったためだ。
トヨタに悪材料が出たわけではない。発行登録した種類株式については、機関投資家などから批判的な見方もあるが「個人投資家には好評」（国内証券）という。日産自動車(7201.T: 株価, ニュース, レポート)やマツダ(7261.T: 株価, ニュース, レポート)などの株価も下落しており、業種別騰落率では輸送用機器が３３業種中で下から７番目。自動車株全体の上値が重かったとみるべきだろう。
円安効果を十分に享受できぬまま、日経平均.N225は、徐々に上げ幅を縮小。前場中盤にはマイナス圏に沈没し、一時は１００円を超える下落となった。後場は、日銀のＥＴＦ（上場投資信託）買いなどへの期待で一時、プラス圏に浮上する局面もあったが、ＴＯＰＩＸ.TOPXは０．３％のマイナス。騰落銘柄数も値下がりの方が多いなど、全般的に上値が重い展開となった。
＜海外勢の売りうながした米利上げ観測＞
日本株に売りを出したのは海外勢が中心とみられている。「それほど多いわけではないが、海外勢から利益確定とみられる売りが出ている。米利上げを意識しているようだ」（大手証券トレーダー）という。
５月米雇用統計は、非農業部門雇用者数だけでなく、時間当たりの賃金も上昇。失業率は０．１％ポイント上昇したが、労働参加率が高まったためと前向きに受け止められている。市場では「９月の米利上げを意識させる内容だった」（野村証券・投資情報部エクイティ・マーケット・ストラテジストの村山誠氏）との声が増えてきた。
５日公表のロイター調査で、１６社中１４社がフェデラル・ファンド（ＦＦ）金利の９月引き上げを予想した。
三菱ＵＦＪモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏は、これまでの金融相場にひと区切りつきそうだとの見方が広がり、海外勢に利益確定売りを促したとみる。「米雇用統計が改善し、９月の米利上げが本格的に意識されてきた。金融相場の原動力だった米金融緩和の転換に備えた動きだろう」という。
５月の対内株式投資（指定報告機関ベース）は１兆４６２２億円の取得超と、足元で海外勢は大幅に日本株を買い越しており、売り余地は大きい。
＜業績相場への移行には波乱も＞
米景気改善と、それに伴うドル高・円安は日本株にとっては追い風だ。急ピッチで１３年ぶりの水準まで進んだ対ドルでの円安は、輸入物価上昇などデメリット面も強まってきているが、上場企業の業績という点ではトータルでプラスとの見方が多い。
大和証券では調査対象２００社の経常利益ベースで、１円の円安が、２０１５年度は０．６％、１６年度で０．５％押し上げると試算している。
アムンディ・ジャパン投資情報部部長の高野雅永氏は「円安による企業の業績改善効果に加え、需給面での安心感、欧米株と比べたバリュエーション面での割安感もある。１─３月期の実質ＧＤＰ２次速報も評価できる内容となり、好条件がそろっている」と話す。
海外勢の利益確定売りが広がったとしても、景気改善が示されている間は、日本株には相対的な好環境が続く。「利益確定売りを出したい海外投資家がいる一方、日本株の押し目を買いたい海外投資家も依然多い」（別の大手証券トレーダー）という。
ただ、米連邦準備理事会（ＦＲＢ）が量的緩和第１弾（ＱＥ１）を２００８年１１月に始めてから、マーケットは６年半近い金融相場をおう歌してきた。景気や業績が回復してきたとはいえ、期待先行で歴史的水準まで上昇してきた株価との間には、まだギャップがある。
景気や企業業績回復を素直に織り込む業績相場に移行するとしても、未曽有の規模に広げた金融緩和政策を利上げ方向に方向転換する際には、振れの大きい展開を経ることになりそうだ。
（伊賀大記 編集：田巻一彦）
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