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同じ成分の薬なら…別の製法でも特許侵害  最高裁判決 出願・審査、実務に影響も:論理構造として違和感を覚える判決
http://www.asyura2.com/15/hasan97/msg/557.html
投稿者 あっしら 日時 2015 年 6 月 10 日 16:13:31: Mo7ApAlflbQ6s
 


 最高裁の判決が、「物の特許が例外的に製法を含めて認められるのは「構造や特性で特定するのが不可能などの事情が存在するとき」に限定」としながら、「構造や特性が同じなら、製法が異なっても特許侵害に当たる」とするのは、自己矛盾を孕んでいると言えるだろう。

 「構造や特性」が特定できないと言いながら、「構造や特性」が同じならという前提を持ち出して、異なる製法であっても特許権の侵害に当たるというのは奇妙な論理である。

 最高裁判決は、たぶんだが、特許は、できる限り「物(構造や特性)」で申請すべきであり、製法による申請は「物(構造や特性)」の特定がどうしてもできないときに限って認めるというのが主旨で、係争の事案については、「物(構造や特性)」で行うべきだったが製法で特許が認められてしまっているので、特許権を尊重する立場から「物(構造や特性)」の同一性を理由に特許権の侵害を認めたというものではないだろうか。

 ハンガリーの医薬品メーカー「テバ」は「物(構造や特性)」を明らかにしたくなかった可能性があり、できるはずの「物(構造や特性)」による申請をしていない特許権者を過剰に保護する今回の最高裁判決には疑念を呈さざるをえない。

 物での取得を本旨とする特許制度をより明らかにするためには、今回のケースで「デバ」の主張を認めないほうが理に適っている。

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同じ成分の薬なら…別の製法でも特許侵害
最高裁判決 出願・審査、実務に影響も

 特許登録された薬と同じ成分の薬を異なる方法でつくった場合、特許侵害に当たるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は5日、「構造や特性が同じなら、製法が異なっても特許侵害に当たる」とする初判断を示した。物の特許が例外的に製法を含めて認められるのは「構造や特性で特定するのが不可能などの事情が存在するとき」に限定した。

 特許は原則として発明した物で取得するが、化学物質やバイオテクノロジーなどの分野は物の構造による特定が難しく、製法を記載した特許出願が認められている。最高裁判決を受け、今後は特許庁がこうした出願を厳しく審査することになりそうだ。出願者は「製法の記載が必要」との主張立証が求められるなど特許の実務に影響が広がる可能性がある。

 最高裁は、製法が異なれば特許侵害に当たらないとした二審・知財高裁判決を破棄し、審理を知財高裁に差し戻した。重大事件を扱う知財高裁の裁判官5人による大合議判決を最高裁が取り消したのは初めて。

 問題となったのは高脂血症の治療薬。日本で特許登録したハンガリーの医薬品メーカー「テバ」が、同じ成分の薬を製造する協和発酵キリン(東京)や輸入する東理(同)に特許権を侵害されたとして販売差し止めなどを求めた。差し戻し審では、最高裁が判示した例外的ケースに当たるかが審理される。

 判決は4人の裁判官の全員一致。山本庸幸裁判官(行政官出身)は「結論は多数意見に賛成だが、理由は特許実務の運用を根底から覆すもので賛成できない」とする意見を付けた。

 テバ側は「製法が記載されていても物の特許である以上、成分が同じなら特許侵害」と主張。国内2社側は「別の製法でより純度の高い同じ物質をつくっても特許侵害とされれば制度の趣旨に反する」と反論していた。

 テバの代理人弁護士は「我々の主張が一部認められたことは評価する」と話した。協和発酵キリンは「判決内容を精査し今後の対応を検討する」、東理は「判決を精査しておりコメントは差し控える」としている。

特許の乱立 防止に効果

 玉井克哉・東京大先端科学技術研究センター教授の話 特許庁はこれまで製法による特許を比較的緩やかに認めてきたため、成分や構造が特定できていない物の特許が多数成立していた。最高裁の判断はこうした特許の乱立を防ぐ効果がある一方で、これまで認められた特許が無効になる可能性がある。

[日経新聞6月6日朝刊P.38]

 

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コメント
 
1. 2015年6月10日 16:53:26 : jXbiWWJBCA

>物での取得を本旨とする特許制度をより明らかにするためには、今回のケースで「デバ」の主張を認めないほうが理に適っている

逆では?


http://www.itopto.com/blog/?p=1598
薬品のプロダクト・バイ・プロセス・クレーム
2015年6月8日
報道各社は6月5日に、最高裁が医薬品の製法が違うことを理由に侵害を認めなかった二審知財高裁判決を破棄し差し戻した事件を取り上げていました。

大半の記事は、製法が違っても特許権侵害にならないのはなぜか、十分に理解できるように書いていないと思います。
記事の分量、放送時間などの制限があるかもしれませんが、私は記事だけを読んでも、どうして最高裁が差し戻したのか、何が問題であった等が理解できません。
そこで簡単に解説します。

そもそも特許には、「物」の発明と「方法」の発明との二種類があります。「方法」の発明である場合、例えば医薬品の製法発明、であれば、医薬品の製法が異なれば、特許権侵害になりません。今回の最高裁は、このような「方法」の発明についての判示ではありません。

「物」の発明である場合、通常、特許請求の範囲に“製法”は記載されず“構造”、例えば化学式、などが記載されます。しかし、「物」の発明でも、“構造”で記載しにくい場合には“製法”で記載することができます。このような「物」の発明は、プロダクト・バイ・プロセス・クレーム特許(以下、PBPクレーム特許)と呼ばれます。

今回最高裁は、PBPクレーム特許の場合、医薬品の構造が同じであれば製法が違っても侵害であると、判示したのです。
医薬品又はバイオ医薬品は、「物」の発明であっても“構造”で特許請求の範囲を記載し難いらしく、“製法”で記載することが多いそうです。

私が多く扱っている電気・機械の「物」の発明では、PBPクレームは製法が違っても物の構造が同じであれば、侵害と判断している事件がほとんでです。また特許庁もそのように審査しています。特に今回の最高裁の判示は特に目新しくありません。



2. 2015年6月10日 16:59:29 : jXbiWWJBCA
http://www.tokkyoteki.com/2015/06/20150605-v-241204.html


最高裁平成24年(受)1204号(第2小法廷平成27年6月5日判決)
2015/06/05 (Fri) 19:01:51
1 概要
 本件は, ハンガリーに本社を持つ製薬会社のテバ社が,同社の保有する特許権(特許番号:特許第3737801号,発明の名称:プラバスタチンラクトン及びエピプラ バスタチンを実質的に含まないプラバスタチンナトリウム,並びにそれを含む組成物)を協和発酵キリン社が侵害しているとして,同社製品の製造・販売の差止等を請求した特許侵害訴訟の上告審です。
 と言うより,プロダクトバイプロセスクレームで話題になった6件目の知財高裁大合議の事件の上告審,と言った方が早いでしょうかね。

 まず,一審(東京地裁29部,当時は清水さんの合議体でした。)は,このブログでも記載したとおり,原告の請求を棄却しました。
 ポイントは,「したがって,物の発明について,特許請求の範囲に当該物の製造方法が記載されている場合には,原則として,「物の発明」であるからといって,特許請求の範 囲に記載された当該物の製造方法の記載を除外すべきではなく,当該特許発明の技術的範囲は,当該製造方法によって製造された物に限られると解すべきであっ て,物の構成を記載して当該物を特定することが困難であり,当該物の製造方法によって,特許請求の範囲に記載した物を特定せざるを得ないなどの特段の事情がある場合に限り,当該製造方法とは異なる製造方法により製造されたが物としては同一であると認められる物も,当該特許発明の技術的範囲に含まれると解するのが相当である。」
とした部分です。
 ですので,協和発酵キリンのやつとは,特段の事情などなく,作り方がちがうから非侵害としたのですね。
 
 ちなみにクレームはこんな感じでした。
「次の段階:
a)プラバスタチンの濃縮有機溶液を形成し,
b)そのアンモニウム塩としてプラバスタチンを沈殿し,
c)再結晶化によって当該アンモニウム塩を精製し,
d)当該アンモニウム塩をプラバスタチンナトリウムに置き換え,そして
e)プラバスタチンナトリウム単離すること,
を含んで成る方法によって製造される,プラバスタチンラクトンの混入量が0.5重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.2重量%未満であるプラバスタチンナトリウム。」

 協和発酵キリンの方は,この構成要件のa)の工程が無かったのですね。

 で,二審の知財高裁大合議は,例の真正PBPクレームと不真正PBPクレームに分けて,本件の場合は,不真正PBPクレームなので,一審のとおり,構成要件のa)の工程が無いから非侵害としたわけです。

 ほんで,今回の最高裁の判決(第2小法廷,千葉さんの合議体です。)です。
 まず,結論は,何と!破棄差し戻し!です。

 実は,ご存知のとおり,今回この事件で最高裁が弁論を開いたというので,話題になりました。私の予想としては,結論は同じで規範が多少違うかなあと思ったのです。

 ところが,上記のとおり,結論も違います。でも判旨を見るとわかるのですが,実質的には,私の予想とおりと言えますよ。

 ま,久々の最高裁ですので,あれこれ言うより判旨に行きましょう。

2 判旨
「3 原審は,次のとおり判断して,上告人の請求を棄却すべきものとした。
(1) 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法の記載がある場合における当該発明の技術的範囲は,当該物をその構造又は特性により直接特定することが出願時において不可能又は困難であるとの事情が存在するときでない限り,特許請求の範囲に記載された製造方法により製造される物に限定して確定されるべきである。
(2) 本件発明には上記(1)の事情が存在するとはいえないから,本件発明の技術的範囲は,当該製造方法により製造された物に限定して確定されるべきである。そして,被上告人製品の製造方法は,少なくとも本件特許請求の範囲に記載されている「a)プラバスタチンの濃縮有機溶液を形成」することを含むものではないから,被上告人製品は,本件発明の技術的範囲に属しない。

4 しかしながら,原審の示した上記3(1)の基準は是認することができず,そうすると,それを前提とした上記3(2)の判断も是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1) 願書に添付した特許請求の範囲の記載は,これに基づいて,特許発明の技術的範囲が定められ(特許法70条1項),かつ,同法29条等所定の特許の要件について審査する前提となる特許出願に係る発明の要旨が認定される(最高裁昭和62年(行ツ)第3号平成3年3月8日第二小法廷判決・民集第45巻3号123頁参照)という役割を有しているものである。そして,特許は,物の発明,方法の発明又は物を生産する方法の発明についてされるところ,特許が物の発明についてされている場合には,その特許権の効力は,当該物と構造,特性等が同一である物であれば,その製造方法にかかわらず及ぶこととなる。
 したがって,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合であっても,その特許発明の技術的範囲は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として確定されるものと解するのが相当である。
(2) ところで,特許法36条6項2号によれば,特許請求の範囲の記載は,「発明が明確であること」という要件に適合するものでなければならない。特許制度は,発明を公開した者に独占的な権利である特許権を付与することによって,特許権者についてはその発明を保護し,一方で第三者については特許に係る発明の内容を把握させることにより,その発明の利用を図ることを通じて,発明を奨励し,もって産業の発達に寄与することを目的とするものであるところ(特許法1条参照),同法36条6項2号が特許請求の範囲の記載において発明の明確性を要求しているのは,この目的を踏まえたものであると解することができる。この観点からみると,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているあらゆる場合に,その特許権の効力が当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物に及ぶものとして特許発明の技術的範囲を確定するとするならば,これにより,第三者の利益が不当に害されることが生じかねず,問題がある。すなわち,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲において,その製造方法が記載されていると,一般的には,当該製造方法が当該物のどのような構造若しくは特性を表しているのか,又は物の発明であってもその特許発明の技術的範囲を当該製造方法により製造された物に限定しているのかが不明であり,特許請求の範囲等の記載を読む者において,当該発明の内容を明確に理解することができず,権利者がどの範囲において独占権を有するのかについて予測可能性を奪うことになり,適当ではない。
 他方,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲においては,通常,当該物についてその構造又は特性を明記して直接特定することになるが,その具体的内容,性質等によっては,出願時において当該物の構造又は特性を解析することが技術的に不可能であったり,特許出願の性質上,迅速性等を必要とすることに鑑みて,特定する作業を行うことに著しく過大な経済的支出や時間を要するなど,出願人にこのような特定を要求することがおよそ実際的でない場合もあり得るところである。そうすると,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法を記載することを一切認めないとすべきではなく,上記のような事情がある場合には,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として特許発明の技術的範囲を確定しても,第三者の利益を不当に害することがないというべきである。
 以上によれば,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において,当該特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当である。

5 以上と異なり,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において,そのような特許請求の範囲の記載を一般的に許容しつつ,その特許発明の技術的範囲は,原則として,特許請求の範囲に記載された製造方法により製造された物に限定して確定されるべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,本判決の示すところに従い,本件発明の技術的範囲を確定し,更に本件特許請求の範囲の記載が上記4(2)の事情が存在するものとして「発明が明確であること」という要件に適合し認められるものであるか否か等について審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。」

3 検討
 一応言っておきますが,本日,2件の最高裁判決が出ています。今回は,大合議のやつの上告審の紹介ですので,もう1つの方(こちらは無効の抗弁での発明の要旨が問題となったもの)と取り違いないように,くれぐれも注意してくださいね(このもう1つの判決の千葉勝美裁判官の補足意見には間違いがあります。大合議が原審ではないので。コピペするとこういうことになるんだよねえ。)。

 で,上記のとおり,実質的には私の予想とおり〜と書きました。破棄差し戻しなのに,何故か?

 いや,そりゃ判旨の一つ目のとおり,最高裁は,物同一性説をとりました。これはもう誰が何と言おうと確定です。
 知財高裁の大合議で示したように,真正PBPクレームと不真正PBPクレームに分けるなんて不要!馬鹿かお前は!結果としての物が一緒なら,技術的範囲に入るんだよ〜バーカ,ってわけです。
 ですので,今回は製造方法が違うのですが(上記のとおり,協和発酵キリンの製品は,構成要件のa)の工程がないのです。),物は一緒なので,技術的範囲に入ります。
 つまりは,かなり広いクレーム解釈でOKなのですね。実に万々歳〜,岩永センセ,どこが実質的には予想とおりなのかよ!全然予想当たってないじゃんと思われるかもしれません。

 そのタネが,判旨の2つ目です。
 記載要件の明確性の要件(つまりは無効の抗弁)を,PBPクレームのときには極めて厳格に判断するぞ!という部分です。

 要するに,知財高裁大合議では,PBPクレームを技術的範囲の判断で切ったわけです。他方,今回の最高裁によると,技術的範囲の判断では切らず,無効の抗弁の判断で切る!わけです。

 では,今回の発明で,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するか?どうなんでしょうね。

 奇しくも,山本庸幸裁判官の意見があります。
「3 ところが,この多数意見では,以上のような特許法の解釈及び特許実務の運用を根底から覆す結果となる。それが正しい方向であるとすれば特に異論はないが,私には決してそうとは思えない。すなわち多数意見(4(2))は,特許法1条の目的及び同法36条6項2号の規定から物の発明についてPBPクレームのある特許請求の範囲の記載は明確でなければならないとする。一般論としては,それは正しい。しかしながら,物の発明につき特許請求の範囲がPBPクレーム形式で記載されていないと,かえって明確でなくなる場合が多々ある。とりわけ新規性のある物の発明では,出願人がどのような方法で作った物であるかを記述すれば非常に分かりやすいのに,これを無理やりその物の構造や特性で記述しようとすると間違いなくそれは複雑な概念や用語で表現することにならざるを得ない。それでは,出願人としては無駄な時間や費用が掛かって出願する時期を失するおそれがあるだけでなく,そのような記述は審査官にとっても,また当業者にとってもかえって分かりにくいものとなり,それこそ明確性の要件に反するものになってしまうのではないだろうか。例えば生命科学の分野で新規性のある細胞に関する特許請求の範囲を,「いかなる細胞にどのような遺伝子をどうやって注入する方法により作成された細胞」としてPBPクレームで記述すれば当業者であれば極めて分かりやすい特許請求の範囲となるのに,これをその出来た細胞の構造や特性に基づいて記述しなければならないとなると,それなりの時間や費用や労力をかければ必ずしも不可能ではないのかもしれないが,そういう努力をしてやっと記述できた結果の当該細胞についての特許請求の範囲の記載は,およそ無味乾燥で誰にも分からない不得要領のものになることが多いのではないかと思われる。その結果,明確性の要件で拒絶等されてしまうことが容易に看取される。これでは,発明の保護及びその一般の利用との調和という特許法の理念からますます遠ざかる結果になると考える。
 この点,多数意見は,「出願時において当該物の構造又は特性を解析することが技術的に不可能であったり,特許出願の性質上,迅速性等を必要とすることに鑑みて,特定する作業を行うことに著しく過大な経済的支出や時間を要するなど,出願人にこのような特定を要求することがおよそ実際的でない場合もあり得るところである」として,一見極めて限定的ながらPBPクレームを認めようとしているかのごとくであるが,結局のところ「法36条6項2号にいう『発明が明確であること』という要件に適合するといえるのは,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解する」とする。しかしながらこれでは,ほとんどPBPクレームが認められる余地はないのではなかろうか。」

 いやあそのとおりですよね。多数意見のような厳しい条件を課されたら・・・,しかも出願時〜基準ですよ。大体みなさん軽い気持ちでPBPクレームにしてますよね。
 そうしたら,山本さんの言うとおり,今回の発明も含めて,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在することなんて立証できないでしょうね。

 なので,結論としては結局同じ=つまりは請求棄却になるのではないかと大いに思うのです。ほんで,規範は上記のとおり,知財高裁の規範とは違うのですから,規範は違うが結論は同じという私の予想〜大当たり〜になりませんかね。

 なので,そういう意味からすると,NHKの報道は若干勇み足ですね。

 さて,この判決は,何か一周回ってまた元に戻った〜ような感想の判決ですね。骨折り損のくたびれ儲けというか・・・。2番目の判旨のところを緩やかに解することができれば特許権者にも有利ともなりますが,その辺は,まさに判例の積み重ねを待たないとわからないのですね。
 でも,こんな日本での侵害訴訟の数で判例の積み重ねなんて期待できませんけどね。

 ま,兎も角,かなり待ちに待った判決だし,このブログを待っていた方もいると思いますので,速攻でちょっと書いてみました。
 なので,節々に間違いがあるかもしれませんが,その辺はご了承ください。ま,このブログを見るような人なら自分で判断がつくと思いますけどね。


 ところで,上記のもう1つの判決では,発明の要旨認定でも物同一性をとることを明らかにしました。つまり,技術的範囲の判断のクレーム解釈と発明の要旨認定のクレーム解釈は一緒!となったわけです。この点に関しては,知財高裁大合議の判旨は生かされているっていう気はしますね。
岩永総合法律事務所 http://iwanagalaw.strikingly.com/
http://iwanagalaw.blog.shinobi.jp/%E6%9C%80%E9%AB%98%E8%A3%81/%E6%9C%80%E9%AB%98%E8%A3%81%E5%B9%B3%E6%88%9024%E5%B9%B4-%E5%8F%97-1204%E5%8F%B7%EF%BC%88%E7%AC%AC%EF%BC%92%E5%B0%8F%E6%B3%95%E5%BB%B7%E5%B9%B3%E6%88%9027


3. あっしら 2015年6月11日 04:13:52 : Mo7ApAlflbQ6s : raK8N6SB3c

jXbiWWJBCAさん、フォローありがとうございます。

日経新聞の記事だけを頼りに自分の勝手な推測で終始していたので、たいへん有意義ですごく参考になりました。


[引用]

>物での取得を本旨とする特許制度をより明らかにするためには、今回のケースで「デバ」の主張を認めないほうが理に適っている

逆では?


[コメント]
転 載していただいた二つの内容を読んで、最高裁の判断は、日経新聞の記事内容とは違うと思いました。

 貴殿が「逆では?」と言われるように、最高裁は、「物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合であっても,その特許発明の技術的範囲は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として確定されるものと解するのが相当」ということを結論的な判断としていますので、製造方法の同一性よりもできた物の同一性を重視していると言えます。

 ただ、山本庸幸裁判官の意見も多数派の主旨からはズレており、最高裁の判決論旨は、揺れているというか、あいまいという感を否めません。

 たいへんありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。



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