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Vol.331:米国FRBの、利上げの延長
http://www.asyura2.com/15/hasan97/msg/849.html
投稿者 rei 日時 2015 年 6 月 20 日 15:47:47: tW6yLih8JvEfw
 

 

<Vol.331:米国FRBの、利上げの延長>
   無業版:2015年6月20日

【目次】
1.東アジア
2.香港やバンコックと同じに見えるクアラルンプール
3.世界のゼロ金利マネーによる、不動産バブル
4.油椰子(あぶらやし)のジャングル
5.FOMCの、利上げの延期
6.レポ金融は、短期金利のわずかな利上げでも大きな影響を受ける
7. 0.25%の利上げでも、レポ金融を大きく縮小させる

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■1.東アジア

21世紀は、日本を含む先進国(世界のGDPの60%)の経済成長は0%〜2%台と低い。

根底の理由は、電子工業とインターネット以降の産業が、ないことです。

他方、東南アジアを含む新興国は、先進国への輸出により、平均でほぼ5%台の経済成長です。新興国の成長の理由は、先進国産業のグローバル化による、工場の建設と不動産投資です。新興国側から言えば資本と技術の、海外からの導入です。

東南アジアの、実質GDPの成長率を高い順に並べます(2014年)。

ミャンマー7.7%、カンボジア7.0%、フィリッピン6.1%、マレーシア6.0%、ベトナム6.0%、インドネシア5.0%、シンガポール2.9%((注)1人当たりGDPで日本を超える金融国)、タイ0.7%((注)政治的混乱)。

参考のために実質GDPで日本の2倍強($10兆:1200兆円:1元=20円:2014年)になった中国を挙げると、2014年の成長率は公称7%です。しかし。商品生産の増加に比例する電力消費量と物流量から見て、実際は4%台の成長でしょう。

2008年までは二桁の高成長を続けていた中国も、賃金水準の上昇と迫る高齢化を原因に、東南アジア並みに落ちてきたと見ていい。

一人っ子政策の中国は、2020年が生産年齢人口の頂点(10億300万人)で、その後、高齢化に入ります。これが示すのは、中国の経済成長は2020年までということです。2018年頃から中国経済は減速することは、確言できます。

GDP増加=1人当たりGDP×生産年齢人口×就業率、です。生産年齢人口が減ると、その後のGDPは増えなくなります。近代化は、
生産年齢人口の増加でした。生産年齢人口の減少は、経済が、日本のようなポスト・モダニズムに入ることです。

日本は、1998年の生産年齢人口(8784万人)を頂点にして減り始め、2015年では7687万人になって、17年で1097万人(12%)も減っています。1年間で、65万人も働く世代(15歳〜64歳)が減ってきたのです。

更に2040年に向かって5787万人へと、1900万人(-25%:年率-0.9%:-76万人/年)も減ることが決まっています。マレーシアは、この先50年の予測でも、生産年齢人口の減少はありません。

1994年以降の20年間、「中国のGDP成長率>東南アジアの成長率」でしたが、2018年ころから、「東南のGDP成長率>中国の成長率」に代わります。

▼マレーシア

海外に行ってまず調べるのは、住宅と賃金です。住宅と賃金と店舗の商品で、その国の生活と文化がわかるからです。

2人の生活費が7万円〜10万円/月で、日本を含む世界からの移住希望国としてナンバーワンを続けているマレーシは、2001年の住宅価格を100としたとき、2013年は190に上がっています。平均年率では、GDPの増加並みの5%の上昇です。

月収7万円で生活ができると言われたのは、過去のことです。今は、最低で15万円、若干のゆとりには、20万円は必要でしょう。今後も、毎年、5%くらい生活費が上がると見ていい。

現地の人々が住む、都市近郊の平均的な住宅(3室:広さは150平米くらいが多い)は、新築で、800万円付近でした。Wifiの利用は、携帯電話とともに、世界中で、普通のことです。

都市部の平均賃金が2500リンギット(8.3万円:1リンギット33円)ですから、年収100万円の8年分です。金利5%のローンを組むには価格です。800万円の5%固定金利のローンでは、30年返済の場合でも月額4万3000円の元利払いになります。

平均月収8万円の53%が、ローンの支払いで消えます。将来の賃金で大きな上昇(年率7%等)を想定しないと、普通の人は、ローンは組めない。平均的な所得の人がローンで買える価格は、年収の5倍から6倍です。マレーシアでは500万円〜600万円になります。

■2.香港やバンコックと同じに見えるクアラルンプール

物価も高い首都のクアラルンプールでは、年収の中位値7万リンギット(210万円)に対し、150平米の平均的な住宅の価格は、58万リンギット(1900万円)です。(注)1リンギット=33円

ほぼ2000万円であり、日本の地方の郊外住宅並みになっています。年収との倍率は、8.3倍です。これはローンで買える金額ではない。

この住宅価格の高騰は、中国、香港、台湾、シンガポール、日本からの、投資用と移住用の不動産購入が多いためです。

従来、海外から買える住宅の下限価格は1500万円でした。現在は、外資の制限し、住宅価格の高騰を抑える目的で、100万リンギット(3300万円)に引き上げられています。

それでも、ゼロ金利の海外からの投資的な買いが多く、都市部の高級なクラスに属するコンドミアム(平均160〜180平米)は、数年で3倍に上がっています。1500万円だったものが4500万円です。

▼住宅事情

日本には少ないコンドミアムは共同敷地の住宅です。塀で囲まれ、中にはプールも装備しています。高級なところは、セキュリティが立ちます。

マレーシアでは、家具付きが標準です。クアラルンプールの便利な立地なら、150平米級の高級な住宅の家賃が10〜15万円/月です。

生活費は、暮らしぶりでピンキリですが、住み込みのメイド(賃金は3万円〜4万円)を雇う生活には月30万円は必要でしょう。

日本と同程度の生活なら、かかる生活費は1/2〜1/3と見ていい。ただし、都市や住宅のクリンリネスを含み、商品及び食品の品質は、日本が一段、いや二段上です。

東南アジアが、日本に内心で憧れをもつ理由が、商品とサービスの品質を比較すると分かります。日本人が共通にもつ品質の基準値が高いのです。

▼首都の中心部は、世界共通

1998年に建てられ、銀色に光って美しいツインタワー(ペトロナス:高さ452m:88階)の周辺の高層マンションは、1億円以上でした。中国の華僑や、日本を含む世界から進出した金融業と工場のマネジャークラス以上が住んでいます。

クアラルンプール、バンコク、シンガポールそして香港の、都市中心部は、建物や街並みが同じです。グローバル化の21世紀に、世界の首都の中心部の風景は、どこも同じになりました。

クラルンプールの国際空港は、関空や成田より立派に見えます。そして拡張された香港国際空港は、成田をはるかに超えています。

スーパー・リージョナル型のショッピングセンターのブランド店も、空港の売店風で、世界に共通です。郊外には、新しいショッピングモールが開発され、旧来の個人経営の商店街は、シャッター通りになっていることも、世界共通です。

■3.世界のゼロ金利マネーによる、不動産バブル

世界のゼロ金利マネーが、マレーシアの、海外用の投資不動産価格を作り、高騰させています。

2018年にシンガポールからの地下鉄が開通するマレーシア南端のジョホールバル(シンガポールから30分)の不動産の高騰は特に大きく、年率で10%を超えています。

都市部の100平米の高層マンションで、3000万円〜4000万円です。200〜300平米級の高級なものは、1億円です。住宅価格が東京の2倍以上で、極限にまで高いアジアの金融都市シンガポールに比べると、これでも、同じ水準の住宅が1/5〜1/10と低いからです。

マレーシアを含み、東南アジアの高額な不動産は、ゼロ金利バブルです。先進国の金利がゼロ金利を脱すると、海外からの金融投資の対象になっている高額物件のバブルがはじけます。1/2の価格に下がるでしょう。

▼所得格差の社会

21世紀に、世界中にできたのは、中国と同じく「所得格差の社会」です。工場の現場労働者の賃金は、実質GDPの成長率並みの率で上昇したとは言え、低い。マネジャークラス以上の、ホワイトカラー(懐かしい言葉)が高くなったのです。

以下は、アセアン(東南アジア経済連合)と日中韓の工場の、一般工の賃金です(2012年:JETRO調査)。賃金格差が小さな日本を除き、各国の、マネジャーや技術職のクラスは、現場労働の3倍から5倍です。マレーシアでも20万円/月を超えています。

              月額賃金($1=120円換算)
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中国(シンセン)         $329( 3.9万円)
タイ(バンコック)        $345( 4.1万円)
マレーシア(クアラルンプール)  $344( 4.1万円)
インドネシア(ジャカルタ)    $239( 2.9万円)
ベトナム(ハノイ)        $145( 1.7万円)
台湾(台北)           $1143(13.7万円)
韓国(ソウル)          $1734(20.8万円)
日本(横浜)           $3306(39.7万円)
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15年前の2000年は、クアラルンプールの工場労働の賃金は、巨大工業都市になった中国のシンセン(公称1300万人:一説では郊外を含むと3000万人)と比べて3.3倍でした。

【中国】
当時は、工業化の初期であり、シンセンの現場労働の賃金が1.2万円(月額:$1=120円換算)と低かったからです。軽工業から家具や耐久財に進み、重工業を経て、現在は電子工業です。20年で、他の国の50年分以上の変化をしています。

00年代の中国は二桁の経済成長をして、賃金の上昇率は平均年率でも8.8%と高かったため、13年で3倍に上がりました。現在は、上表のように、タイやマレーシアと、ほぼ同じ水準にまで上がっています。

中国にあった海外工場と提携先が、比較賃金が50%以下のベトナムやインドネシアに移転している理由が、これです。(注)賃金は、不動産を含むあらゆる物価(工場にとってはコスト)の基礎です。

■4.油椰子(あぶらやし)のジャングル

初日は、ペナン島の、元は英国の植民地であるジョージタウンにあるホテルに泊まり、翌日は、高速道のバスで約2時間30分、林の中のルムにあるリゾートホテル(スイスガーデンビーチ・リゾート)に向かいました。

道の両側は、濃い緑の油椰子の林が続き、切れることがない。油椰子からはパーム油を採るという。石鹸、化粧品、食用油、マーガリンになる。

油椰子の実を食べる野鼠が繁殖し、その野鼠を餌にするニシキヘビが住む。ヘビや鼠を餌にするのがコブラです。林の中は、事情を知らない日本人には危険です。マレーシアのかつての特産は錫(すず)の鉱石、パーム油、香辛料、果物でした。

時折、強いスコールが降り、湿度はいつも90〜95%と高い。太陽は真上から強い光を注ぎます。食物や昆虫の生育には、天然の温室とあり絶好の環境です。羽虫のような昆虫も多い。

ビチーリゾートのべランダに出ると、無数の虫の残骸があり、日本のものより5倍は大きいカナブンが、転がっています。マラッカ海峡に沈む太陽は、黒い雲を照らして、真紅の夕焼けを作っていました。さざ波の海は、銀を溶かしたように光っていたのです。

ホテルの周囲も、地面は、隙間なく強い勢いの草で覆われ、油椰子の林に続きます。使われないテニスコートは、雑草に覆われています。

油椰子の林には、バナナ、パパイヤ、マンゴスチン(これは美味しい)、ドリアン(匂いが独特:果物の王とも言う)の果樹園も点在しています。野生の猿も見かけます。生活の厳しさからか、目つきと表情がキツイ。

ジャングルの中には、油椰子の採取で生活をするのか、小さな住宅が点在しています。70%くらいの家には、おそらくは中古で買われた軽トラックや軽乗用車がありました。車は15年や20年使うという。日本車は、10年を過ぎて古くなっても故障が少なく、人気が高い。

ホンダのアコードが憧れといいます。価格は450万円と日本より3割高い。800万円の住宅と450万円のアコードは不釣合いです。150万円くらいに下がった中古車を買う人が多い。

日本で盗難にあった自転車も売られ、日本語の名前がついたまま置かれています。日本の郵便局の、配達用の、真っ赤な自転車も混じっていました。

■5.FOMCの、利上げの延期

マレーシアを含んで、世界に不動産、株、国債、債券のバブルを生んでいるのは、日米欧の中央銀行による、短期ゼロ金利です。

2008年のリーマン危機以降、米、欧の順で、約6年も、短期ゼロ金利です。

日本は、1998年から、17年もほぼ、ゼロ金利を続けていますから、異常なゼロ金利が当たり前のことになっています。

この間、まず国債価格にバブルが起こり、2013年以降は株価にバブルが起こっています。国債価格のバブルとは低金利の国債が、高すぎる価格で買われることです。ただしこの、バブルは、崩壊するまでは、バブル価格だったと意識されることはないのです。

FOMC(連邦公開市場委員会)は、米国の中央銀行であるFRBの金融政策(金利と量的な緩和や引き締め)の金融政策を決定する委員会です。

世界恐慌になる寸前の金融危機にまで波及した2008年9月のリーマン危機以降、FRBは、短期金利をゼロに保ちながら、国債とMBS(住宅ローンの回収権をもつ証券)を、6年間で$4兆(480兆円)買い上げ、金融機関に対して、$4兆の現金を供給しています。目的は、信用収縮、つまり金融機関のマネー量の減少を補うためでした。

この3度の量的緩和(QE1〜QE3)を、FRBは、2014年10月に停止しています。その後、国債とMBSの償還金分、国債とMBSを買い続けています。国債とMBSを売るという「出口政策」は、米国の金利を、必要以上に急騰させるため、取ることができません。

FRBが、もし買い上げてきた国債とMBSを、FRBの保有額($4兆)が純減するように売りに転じると、米国の長期金利は5%台には急騰し、米国債とMBSを含む債券価格の急落から、再びの金融危機が起こるからです。

(注)住宅ローン証券であるMBSの流通市場は、未だに回復していません。この意味は、額面に近い価格では買い手がいないということです。米国では、住宅ローンを証券化した市場が$10兆(1200兆円)と、日本の国債市場(1000兆円)より、大きい。

マレーシアにいる間、FOMCの6月17日の方針への報道やコメントを、ホテルのインターネットで、毎日、読んでいました。今回の利上げはないと見ていたのですが、6月18日(日本時間)の発表は、「年内の利上げは予定するが、6月は見送り」ということでした。

この意味は、
(1)米国の景気は、利上げに耐えられるくらいの回復はしてはいないとFOMCが認識している。
(2)利上げは、2015年の9月か、12月からに延期する。ただし、年内の利上げの確定ではない。経済指標を見ながら決める、ということです。

発表の目的は、「米国の株価の上昇によるバブルが警戒すべき水準に来ている。FRBは、近々利上げをする予定を決めているので、株のバブル的な買いは、抑制するように。」という、金融機関(投資銀行とヘッジファンド)に対する牽制です。

FRBが決定した場合、3か月ごとに0.25%ずつ短期金利を上げて行く方法が予定されています。1年では最大で1%、2年で2%です。

この程度の小さな利上げが、なぜ、世界の金融機関と市場が、固唾を飲んで見守るくらい大きなことなのか?

理由を知るには、一般の預金がない米国の投資銀行とヘッジファンドの資金調達の方法である「レポ金融」の大きさを知る必要があります。

■6.レポ金融は、わずかな利上げでも、大きな影響を受ける

▼日本の金融機関

日本の銀行は、一般(世帯と企業)から預金を集め、預金金利よりは高い金利の貸付金や国債の購入を行っています。銀行間の短期資金の貸し借りは「コール・ローン」としてありますが、その規模は114兆円(2015年5月)と小さい。

従って、日銀の短期金利で、1%程度の利上げがあっても、金融機関の資金調達に、大きな影響は受けません。ただし、日本の場合は、金融機関の持つ国債が大きいので、利上げがあったときの、既発国債(1000兆円)の流通価格の下落が大きい。

1%の利上があると、平均残存期間7年の国債の価格は、約7%が下がります。1000兆円の残高の国債の総時価が70兆円下がって、930兆円になります。国債をもつ金融機関は、合計で70兆円もの含み損を抱えます。2%の金利上昇なら、12%の下落であり、損失は120兆円です。

既発国債の残高が1000兆円(GDPの2倍)と多い日本は、0.4%の金利が2.4%程度に上がると、政府は、新規国債の必要額(年間40兆円)の増発ができなくなって、政府財政は破産に向かいます。

▼伝統的な銀行より大きくなった、米国のシャドー・バンク

伝統的な銀行は、一般から預金を預かって運用する日本型の銀行です。米国ではこれを商業銀行と言っています。

証券化金融が増えた1990年以降、米国で大きくなったのは、投資銀行、投資信託、住宅金融、年金基金、及びヘッジファンドです。

◎これらの金融機関をまとめて、「シャドー・バンク(影の銀行)」と言っています。

(注)中国の、預金金利より高い理財商品を売って不動産に融資する銀行もシャドー・バンクと言います。中国でも、このシャドー・バンクは30兆元(600兆円)に大きくなっています。中国の金融危機は、シャドー・バンクが震源になります。

シャドー・バンクの代表は、JPモルガン・チェース(資金量$2.3兆:276兆円)や、ゴールドマン・サックス(資金量0.9兆:108兆円)を代表とする投資銀行です。このシャドー・バンクの総規模は、$25兆(3000兆円)に達し、伝統的な商業銀行を超えています。破産したリーマン・ブラザースもシャドー・バンクです。

マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナム、ミャンマーそして不動産価格が極限に高いシンガポールと香港に不動産投資し、株を買っているのは、こうしたシャドー・バンクです。

預金を預かるという手段がないシャドー・バンクの、資金調達の方法が、レポ金融(Repurchase transaction)です。訳せば、「現金担保付債権貸借取引」です。具体的に言います。

▼レポ金融では、大きなレバレッジがかかる

(1)例えば米国債(債券)を1兆円買う。
(2)国債を担保に、欠け目(ヘアカット率)2%の場合、9800億円を、他の金融機関から、1週間以内の、短期資金として借りる。
(3)借りた9800億円で、また米国債を買う。
(4)その9800億円の米国債を担保に、ヘアカット率2%で、9604億円を借りる。
(5)その9604億円で、また国債を買い、レポ金融での借りを繰り返す・・・

以上のレポ金融で、最大は、〔元金1兆円÷2%=50兆円〕の、短期借入と国債の保有になります。元金1兆円(自己資本1兆円)に対して、レバレッジは50倍(50兆円)です。

米国債の利回りを2.5%とします。50兆円の保有国債の利回りは、〔50兆円×2.5%=1兆2500億円〕です。これが金利収入です。

他方で、短期の借入金利は、FRBのゼロ金利策よってほぼゼロですが、融資の事務手数料はあるので、0.1%とします。利払い額は〔50兆円×0.1%=500億円〕です。

〔受け取り金利1兆2500億円−レポ金融の支払い金利500億円=1兆2000億円〕の業務利益が上がります。元金は1兆円でしたから、その元金に対する利回りは、年間120%という、とんでもなく高い利益になります。

一般に、金利が低くなると金融機関の利益は減ると考えられていますが、それは、米国と欧州で多いレポ金融のシャドー・バンクでは、逆です。

日米欧の、短期資金のゼロ金利は、長短の資金の金利差を、レバレッジをかけた利益にするシャドー・バンクでは、笑いが止まらない巨大利益になります。損をするのは、ゼロ金利で預金する世帯です。

誰も言わない本当のことを言うと、金利ゼロとは、レポ金融のシャドー・バンクに巨大利益を与える策です。

金融危機とは金融機関の大きな損失が生じて金融が縮小することです。日米欧は、リーマン危機の後、短期金利をゼロにして、国債を買って価格を上げる量的な緩和も行って、シャドー・バンクに損失を回復する利益を与え続けているのです。

そして、FRBの利上げは、シャドー・バンクに対し「短期低金利による利益は、6年間も続けた。もう、そろそろ、いいだろう」ということです。

(注)50倍のレバレッジは、極端ですが、リーマン危機の前は、米国の投資銀行はほぼ30倍のレバレッジをかけたレポ金融を行っていたのです。自己資本比率は3.3%程度と低かった。金融危機の後の2015年現在では、10倍くらいのレバレッジに下がってはいます。自己資本比率で10%です。

■7.0.25%の利上げでも、レポ金融を大きく縮小させる

上記の、米国債のへアカット2%のときの事例において、FRBが短期金利を0.25%上げたとき、レポ金融での信用縮小(マネー量の減少)がどうなるか、計算してみます。

短期0.25%の利上げにより、10年ものの米国債の金利が0.5%上がって3%になったとします。既発の10年債の流通価格は、以下のように下落します。

(1+2.5%×残存期間10年)÷(1+3.0%×残存期間10年)=1.25÷1.30=0.96  1兆円の既発国債の流通価格が4%下落して、9600億円に下がります。米国債の担保価値が4%下がったことになります。これは、担保のヘアカット率が2%から6%に上がったこいとと同じです。

1兆円÷ヘアカット率2%=50兆円、でした。
1兆円÷新たなヘアカット率6%=16.7兆円です。

レポ金融で、極限まで借りているシャドー・バンクは、〔50兆円−16.7兆円=33.3兆円〕分の、追加担保を差し入れねばならない。
追加担保を差し入れないとすれば、レポ金融で借りた33.3兆円(67%)を、1週間内に返済せねばならない。

この返済のためには、担保にしてきた国債、社債、株、住宅証券(MBS)を市場で、投げ売りせねばならないのです。株を含む債券は、売りが増えれば下がります。流通価格が下がれば、レポ金融のヘアカット率は上がり、更に、金融縮小は大きくなるのです。

ここで試算したのは、FRBによるわずか0.25%の、短期金利の利上げです。わずか0.25%で、レバレッジ率の高いシャドーバンキングでは、こんなに大きな金融縮小が起こってしまいます。

原因は、ゼロ金利を6年もの長さにまで長期化してきたからです。このため、レポ金融のマネー量が増えました。そして、そのマネーが、世界の不動産、株価、国債価格のバブルを生んできたのです。

FRBのイエレン議長や理事は、6年間の短期ゼロ金利のため、米国と欧州で拡大したレポ金融を知った上で「年内利上げ」を言っているのかどうか。レポ金融を知らず、あるいは知っていても無視して、「年内利上げ」を言っているのなら、起こることは、再びのリーマン危機でしょう。

リーマンの役割を引き受ける引き金は、株価が1/10のままの、世界最大規模の銀行、シティバンクでしょう。シティバンクは、10株をまとめて1株にしていますから(2011年)、表面上、株価を維持しているように見えます

しかし、元の1株で言えば、2056年の$556の、ほぼ1/10の$56という価格です。

銀行の株価が1/10とは、バランスシート(貸借対照表)の中に、時価評価されていない不良債権が隠れていると、投資家が見ているからです。金融機関で、株価10分の1は、普通、あり得ない価格です。
http://finance.yahoo.com/echarts?s=C+Interactive#{"range":"max","allowChartStacking":true}

【後記】
資産(不動産と株)のゼロ金利バブルは、FRBの利上げ決定とともに崩れます。米国のレポ金融を知れば、バブル崩壊もわかるのです。

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<769号:世界金融危機は、2015年内に再来するのか(3)>
      2015年6月3日

【目次】
1.官製相場用の、資金の想定額
2.ゆうちょ銀行の国内株買い10兆円:米国株買い10兆円(予想)
3.2万6000円相場とその後の下落
4.円安と日本の株価上昇が、同時に起こる理由
5.GDPの6倍以上になった金融資産の意味
6.わが国の2993兆円の金融資産の意味
7.米国の金融機関の金融資産と金融負債
8.日米の、金融危機に至る金利の上限
【後記】
http://archive.mag2.com/0000048497/index.html
 

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コメント
 
1. 2015年6月20日 19:30:30 : FPAhuq7wd2
「百年に一度の金融危機」の後に「偶然(?)」発生した「百年に一度の景気回復」で、金融引締めを前倒しする・・・と言い始めないとも限らない。
「百年に一度の金融危機」の後遺症でやはりまだ金融引締めを延長せざるを得ない・・・と言い始めないとも限らない。
後でツジツマが合わなくなっても「百年に一度の言い訳」で知らん顔をするのかどうかは今後のテーマだろう。

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