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日本企業が中国で直面する「目詰まり」の正体(東洋経済)
http://www.asyura2.com/15/hasan98/msg/248.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 6 月 27 日 14:03:05: igsppGRN/E9PQ
 

日本企業が中国で直面する「目詰まり」の正体
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20150627-00074380-toyo-nb&ref=rank
東洋経済オンライン 2015/6/27 06:50 フィリップ・ル、重本 憲吾


日系日用品メーカーで務める架空の人物のフィクションのストーリーとともに、中国での再成長基盤の構築を模索する多くの日本企業への実践的な処方箋を提示する本連載。第3話はサプライチェーンの目詰まりについて検証したい。
 第1話はこちら:日本企業は、なぜ中国で「踊り場」にあるのか 第2話はこちら:日中国で苦戦する日本企業にありがちな過ち 

 沢木たちは旧都・長安の風情の残る西安の街に来ていた。このエリアで最も大きな代理商(卸のこと)に訪問するためである。

 午前中、張の案内で、街の中心部に張り巡らされた城壁に上り、そのスケールの大きさに圧倒された。この子細な物事を吹き飛ばすようなスケール感こそが、中国人の大局観や行動原理の源泉ではないかと考えた。

 長い階段を下りて地上に舞い戻った沢木は、ふとのどの渇きを覚え、路上の売店で缶ジュースを買って、一口飲んだ。

 あの杭州合宿での、経営コンサルタントの久保田の言葉が頭をよぎる。

 「……御社の場合は、先ほども課題として報告しましたが、直近で対応すべきテーマが2つあります……“モノの流れの目詰まり”と、“カネの不正流出”です……いくらテレビCMなどで消費者の需要を開拓しても、欠品や過剰在庫など、中間流通に課題があり、市場にモノが出ていかないのでは売り上げにつながりません。」

 そう、沢木は“モノの流れの目詰まり”を解消するためにまさにこの場にいる。代理商を訪問し、その実態をつかむのがこの西安出張の目的だ。

 もう一口ジュースを飲もうとした瞬間、

 「あ、沢木さん、直接、缶に口をつけて飲んではダメです!」

 ふいに張が制止をする。

 「一緒にストローをもらったでしょう?  中国の流通管理状況は日本とは違います。どんな場所で、どんなふうに缶が保管されているかわかったものじゃあありません。私たち中国人は缶に口をつけて飲むことはしません」

 「そ、そうか……忠告ありがとう」

 ストローでゆっくりと缶ジュースを啜りながら、沢木は暗澹(あんたん)たる思いで、小雨の煙る西安の街を見やった。

 「你好!」

 代理商のトップを務める王は、5年前からA社の商品を取り扱ってくれていた。

 「いやあ、おたくの商品のおかげでうちも潤っていますよ、今後ともよろしくお願いします」

 言葉は丁寧だが、太い中国産のタバコをスパスパとくゆらせながら言った。

■ 倉庫で衝撃的な状況を目の当たりにする沢木

 早速、王の案内で倉庫に案内してもらう。ただ、その途中に、小雨が降っているにもかかわらず、倉庫の外にいくつも積み重なった段ボールが目についた。よく見ると、わが社の商品である。段ボールが濡れて変色している。強い口調でクレームをつけると、

 「ああ、あれは倉庫に入りきらなくて……すぐに整理させますから」

 ずさんな管理状況に沢木は言葉を失った。だが、倉庫の中に入って、乱雑に積み重ねられた段ボールの山に、沢木はさらに驚いた。日本の4S(「整理」「整頓」「清掃」「清潔」の頭文字をとった物流改善の基礎)の専門家なら、驚愕して意識を失うかもしれない。これでは、出荷するときに商品を見つけ出すのも一苦労だろう。こんな状態できちんと在庫量を把握できているのだろうか? 

 「ところで棚卸しはどうしているんですか?」

 「ちゃんとやってますよ。……半年に1回くらいは」

 「在庫の差異はどのくらいあるんですか?」

 「まあ、そんなに大きくはないですよ」

 “そんなに”とはどういうことだ?  このような管理状況では、カウントミスや盗難など日常茶飯事だろう。差異が小さいはずはない。

 矢継ぎ早にオーナーに質問を浴びせながら、地面に落ちている弁当のカスやたばこの吸い殻をかき分け、倉庫の奥に進む。奥のほうにはホコリをかぶった段ボールの山である。棚の奥に、すでに終売している商品の箱もあった。さらに子細に観察すると、先入れ先出し対応できるような整理の仕方をしていないようだ。

 「在庫の計算方法は?  これらの在庫もカウントされていますか?  不良在庫に見えますが」

 「さあ、それは担当者に聞かないとわかりませんね……」

 沢木は自分の耳と目を疑った。オーナーからして、在庫に対してこの程度の意識しか持っていない。在庫管理、出荷管理の担当者の仕事の質が容易に想像ついた。

 少し肌寒いせいか、沢木が咳をしたところ、オーナーは沢木を管理人室に連れていってくれた。オーナーは、石油ストーブで湯を沸かしてカップラーメンを作ろうとしている管理人に、「少し場所を借りるね」と断って沢木に椅子を勧めた。

 沢木は石油ストーブを見やって、段ボール箱が積みあがっている倉庫で火を使うなんて……と絶句してしまった。

 「張君、いまわれわれが取引している代理店は120あるんだよな。その中で、今日の代理商の経営レベルは、もちろん下位に相当するんだろうね」

 空港に向かうタクシーの中で、祈るような気持ちで張に聞いた。

 「残念ながら……私の訪問した代理商は、どこも似たり寄ったりです」

 「なんだって!?  こんな状態の代理店があと120もあるのか。これをひとつずつBPR*(ビジネスプロセス・リエンジニアリング=既存の業務の構造を抜本的に見直し、業務の流れを最適化する観点から再構築すること)していくのはたいへんだぞ……」

 沢木は思わず頭を抱え、次の瞬間、久保田の電話番号を押し始めた。(続く)

■ 過剰在庫がもたらす負の影響

  一般的に、代理商は在庫を多く持とうとしがちである。在庫は売り上げの原資であり、多く抱えることでより大きな売り上げを作れるという意識が働きがちなのだ。ただし、市場動向や倉庫のキャパシティを無視した“過剰”な在庫を卸が抱えることで、メーカーにとって大きな負の影響をもたらすことになる。

 ひとつは、過剰在庫を持つことで倉庫代や利子などの余計なコストが発生し、代理商の利益率を低下させるということだ。それは巡り巡って、代理商からのリベートの値上げ要求という形でメーカーの利益率にも跳ね返ってくることになる。

 2つ目は、市場と連動したスムーズな商品の入れ替えが難しくなるということだ。代理店はすでにたくさん在庫を持っていて、それを売り切るまでは新たな仕入れはしたくない(したくても、倉庫のキャパシティがなくてできない)。ただしメーカーは市場動向に合わせてすぐにでも切り替えていきたい。結局は、メーカーが在庫を買い取ったり、代理店が安売りしたりして大きな損失を出す結果となる。

 3つ目は、経営の根幹を成す販売と生産の計画精度が落ちてしまうということだ。「作れば売れる」というフェーズをとうに脱した中国では、近年、販売計画と生産計画の連動が大きなテーマになっている。生産の過剰と過少を防ぐために、精緻な販売計画の作成が必須なのである。そして、精緻な販売計画を作成するためには、需要予測だけではなく、“流通在庫の把握”も重要だ。いくら店頭で売れていても、もし卸が過剰に在庫を抱えていれば、卸の倉庫から店頭に出荷された量と、結果としてのメーカーからの仕入れ量(メーカーにとっての販売)は連動しない。結果、大本の販売計画が狂い、自社倉庫は過剰在庫であふれかえる結果となってしまう。

 特に近年では卸の倉庫のキャパシティも限界を迎えつつあることもあって、卸からの発注に基づいて出荷したのはいいものの、倉庫に納めきれず、倉庫が空くまでその場で数日、トラックの運転手ごと待機せざるを得ないという笑えない話も起こっている。

 以上、“流通在庫の管理と最適化”はメーカーにとって非常に重要な意味をもつことがおわかりいただけただろうか。ただし、実はこれは旧くて新しいテーマで、どのメーカーも頭を悩ませているのが実態だ。日本の卸が合従連携を繰り返して寡占化が進んできたのに対し、中国ではそのほとんどが経営体力の低い零細企業だ。

 特に、近年急速に成長した企業は、その経緯から、小規模の代理商と取引を開始し、ともに大きくなってきたケースが多い。ただし、成長に伴って売り上げ(と倉庫のスペース)は拡大するのだが、経営力が伴わず、沢木たちが見たような、代理商自身、どこにどれだけの在庫があるのか把握できないというのが実態だ。リベート目当ての短期的な仕入れを繰り返すのもその一因だと言える。 “ドンブリ勘定”がいまだに幅を利かせている世界なのだ。

 中国のような新興国においては、メーカーは出荷して終わりではなく、卸の在庫マネジメントにまで踏み込んで支援し、店頭に届くまでの流通在庫全体を可視化しないと、過剰在庫や欠品のリスクをつねに抱えた状態となってしまう。

 さらに、改革のための時間もリソースも限られていて、しかも卸と直接的な資本関係もなくガバナンスも効かせづらい状況がほとんどだ。こうした中、どのように代理商の在庫管理力をスピーディに底上げすべきなのだろうか。沢木たちの辿り着いた答えを追ってみよう。

 ---------------

 次の日、沢木と張は、本社の会議室で経営コンサルタントの久保田と向かい合っていた。

 「今でも、代理商にはエクセルの在庫データを隔週で送ってもらっています。ただ、そのデータの信ぴょう性がまったく低いことがはっきりしました。今のデータに基づいてこれまで販売計画や生産計画を立てていたかと思うと、正直うすら寒くなる」

 沢木は身をすくめて、茶葉が口に入らないように注意しながら、ホット烏龍茶を一口啜った。

 「競合の欧米系B社のように、オンラインで情報を吸い上げるシステムを導入するタイミングではないでしょうか?」

 久保田が言葉を継いだ。

 「システム?」

 「ええ、在庫管理、販売管理などの要素も備えたソフトウエアパッケージを卸に導入することで、ディストリビューターの業務改善や業務標準化も同時に推進することができます」

 「なるほど。ただ代理商が本当に使ってくれるでしょうか?  いまの隔週でのエクセルでの在庫量の入力でさえ渋っている代理商が多いのに、システムの導入となると、代理商側も、導入コストや教育コストがバカにならないでしょう?  B社は、われわれよりも早くから中国に進出していて、売り上げも5倍はありますよね。そういうところでしたら代理商に言うことを聞かせることもできるのでしょうが」

 「もっともな問いです」

 久保田が答えた。

 「私が思うのは、だからこそ代理商に対するメリットをいかに提示できるか、がポイントです。これまで御社の代理店政策は、“みんなにいい顔をする”というものでした。ホワイトスペースを埋める時代にはそれがよかったと思います。ただ、これからは、やる気のある代理商だけを選別して、共に成長していくというフェーズに入ってくると思います。いま一律に設定しているリベート基準も、メリハリをつけていくことも必要でしょう。今回のシステム導入を、そうした代理商政策自体の見直しを図っていく契機にしてはいかがでしょう」

 「なるほど、経営力を高めたいと考えている代理商に対し、システム投資やその定着支援をして、チームを作っていくわけですね」

 沢木はわが意を得たり、という風にお茶を飲み干した。

■ ニューシステムの導入

 次の日以降、沢木は主要な代理商を訪問して在庫管理の実態を把握しつつ、オーナーと今後の経営方針についてひざ詰めで話した。改善意欲がある代理商に対しては、DMS(ディストリビューター管理システム)という流通管理システムを導入し、協働で業務改善を図っていくことを提案した。

 そのうえでやる気のないディストリビューターとの契約を解除することで、代理商の数は120から65に半減した。もちろん、一時的な売り上げ減は覚悟の上である。信頼関係を築けるディストリビューターを選別して投資を集中することが、中長期的には理にかなうとの沢木の判断だった。

 また、業務レベルによらず一律に支払っていたリベートは減らしたうえで、代理商としてやるべきことをやると(システムを活用しタイムリーにデータを送信する・受注をデータ化するなど)リベートを払うという“機能リベート”を導入し、代理商側のやる気を引き出すように契約を変えた。

 2カ月後、沢木はデスクで売り上げ・在庫レポートに目を通していた。3つの代理商にDMSを先行導入し、在庫・前売りデータを用いて、生産・営業・マーケティング各部署の意思決定に役立つレポートを毎週出力している。レポート上には、どの商品がどの代理商にいくつあるか、受注や出荷データに基づく1週間後までの在庫予測などが“見える化”されていた。

 どの商品が過剰・欠品気味か、一目で把握できる。しかも、DMS導入を通じて、棚卸や在庫管理のマニュアルを作成し、代理商側に徹底したので、数字の正確性も高まりつつある。

 (これなら、どこに“血栓”ができつつあるか、一目瞭然だ。健康状態を保つための最低限のツールだな、これは)

 のどの渇きを覚えて自販機で缶ジュースを買おうとした沢木は、思わず天然水のボタンを押した。(続く)

■ データをどう加工するかが大事

 最後の沢木の独り言ではないが、中国で戦っていく上で、代理商の在庫管理レベルの底上げは最低限の経営インフラである。しかし、ただ単に在庫データを可視化するだけでは何もメリットは生まれない。そのデータをどのように加工し、実際の業務指示やアクションに落として成果を挙げていくか、ということを定義した上で、自社のビジネス特性を踏まえた“帳票”に落とし込むことが重要だ。

 そのためのアプローチとして、今回、沢木たちが進めようとしているように、大手欧米企業の間では、近年、中国をはじめとする新興国における貧弱かつ不確実性の高い経営インフラを、DMS導入を梃子にスピーディに構築・高度化することが主流となっている。

 ちなみにアクセンチュアでは“NewsPage”と呼ばれるDMSパッケージを提供しており、数々のグローバル企業で採用されている。たとえば、このNewsPageでは、多くの消費財メーカーへの導入実績を踏まえ、すでに定型レポートの在り方が定義されており、導入初日から生産・営業・マーケティング各部署の意思決定に役立つレポートを出力可能である。

 ただし、DMS導入を成功に導くためには、単にシステムを導入するだけではなく、代理商の絞り込みや契約スキームなど、既存の関係を見直すことがポイントとなる。具体的には、以下の3点に集約される。

(1)代理商の絞り込み
(2)アメとムチの契約スキーム
(3)チェンジマネジメントチームの導入
■ 代理商の絞り込みが重要

 (1)代理商の絞り込み

 まずは、代理商へのシステム投資も無限にできるわけではないので、DMS導入前に、下記4つの基準で今後も付き合うべき代理商を絞り込むことが必要だ。

・財務の安定性:キャッシュフロー、登記資本金など
・戦略の整合性:FMGC企業との取引の経験など
・ロジスティクス:車両数、倉庫のキャパシティなど
・Man power:営業や店頭プロモーションの人数など

 (2) アメとムチの契約スキーム

 業務改善と絡めた機能リベートを導入し、アメとムチの契約スキームに変えていくことも重要なポイントだ。そうすることで、代理商との間に馴れ合いではない緊張感を生むことができる。棚卸もせずに自らの在庫数も正確に把握できない卸へのリベート額は大幅に下がるため、自主的に改善せざるを得なくなる。

 (3)チェンジマネジメントチームの導入

 営業、財務、物流など各領域の専門家が、1週間程度、代理商に常駐して、システム導入〜定着までを徹底して支援することだ。代理商任せではなく、BPRの格好の機会ととらえ、在庫管理の意識から業務、管理体制までを変えていくことが、DMSへの投資を無駄にしないためにも重要なのだ。

■ 中国のみならず、他国にも必要なインフラ構築

 最後に、実はこのDMS、今回のケースのように中国だけで使うのはもったいない。インドネシア、タイ、ベトナムなどアジア各国も多かれ少なかれ卸のコントロールに課題を抱えていることが多い。“アジア標準システム”として国を跨いで導入することで、国単位で個別にシステムを開発したり、吸い上げたデータの活用方法に頭を悩ませたりすることなく、スピーディーにSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)のインフラを構築することができる。

 この結果、各国経営者は、各国の経営環境を踏まえた販売・生産戦略にリソースを集中することが可能になるのだ。つまり新興国でのビジネスを成功に導くためのカギとなるソリューションのひとつ、といえるだろう。

 (第4話へ続く)

 (使用イラスト:apichart / Imasia)


 

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