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新種類株を発行したトヨタの「機を見るに敏」 取締役会も改革、日本型ガバナンスの最適解となるのか?
http://www.asyura2.com/15/hasan98/msg/506.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 7 月 06 日 00:33:59: igsppGRN/E9PQ
 

トヨタが提示しようとしている新しい日本型ガバナンスのあり方とは? 2015年3月期決算発表で挨拶する豊田章男社長(写真:トヨタ自動車)


新種類株を発行したトヨタの「機を見るに敏」 取締役会も改革、日本型ガバナンスの最適解となるのか?
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44199
2015.7.6 加谷 珪一 JBpress


 トヨタ自動車が発行を決めた新しいタイプの種類株が話題となっている(「種類株」とは、議決権や配当などに関して、普通株式とは異なる権利を持つ株式のことを指す)。その商品性から多くの個人投資家の関心を集める一方、株主総会では既存株主の25%が反対票を投じるなど、否定的な見解も出ている。

 実は、トヨタは今回の株主総会で、種類株の発行と合わせて、新しいガバナンス体制についても株主に問いかけている。種類株の発行と新経営体制はセットであり、これはトヨタなりに導き出した日本型ガバナンスのあり方ということになるだろう。

 トヨタが今回の株主総会でこうしたプランを提案した背景には、安倍政権が進めるコーポレートガバナンス改革への対応がある。トヨタの試みが、単なる日本型経営の延長線上で終わるのか、それともグローバル基準と日本基準の融合を実現した、新しい日本型経営のプロトタイプとなるのか市場は注目している。

■事実上の元本保証の株式を発行

 トヨタ自動車は6月16日に開催された株主総会において「AA種類株式」という名称の新しい種類株式の発行を決定した。

 AA種類株式は非公開株であり、5年間は譲渡や換金ができないという制限が付く。5年を過ぎた段階で、普通株への転換、トヨタへの買い取り請求、継続保有のいずれかを選択することができる。もし5年後にトヨタ株が値上がりしていれば、キャピタルゲインを得ることができるし、値下がりしていた場合でも、発行価格と同額でトヨタが買い取ってくれる。5年後にトヨタが経営危機となり買い取りに応じられないという可能性はゼロに近いので、実質的に元本保証された商品と考えてよいだろう(もっとも、発行価格は普通株の価格よりも3割高く設定されるので、普通株ほどのキャピタルゲインは得られない可能性が高い)。

 さらに、一定の制限はあるが配当も付く。初年度は0.5%と低く抑えられているが、翌年度以降、5年目まで0.5%ずつ段階的に増加していき、5年目以降は2.5%となる。現在、トヨタの普通株における配当利回りは2%程度なので、5年後の配当性向次第では、インカムゲインという点でも有利な商品になっている可能性がある。

 5年間は流動性がないという欠点はあるものの、安定収益を望む投資家にとっては、非常に魅力的な商品であることは間違いないだろう。高齢者などを中心にかなりの人気商品となることが予想される。

 トヨタは種類株発行の理由として、中長期的な研究開発投資サイクルに合わせた資金調達手段の確保と、これに合致した新しい株主の開拓を挙げている。だがトヨタほどの会社であれば、さらに低金利で資金を調達することが可能であり、わざわざ個人投資家向けに好条件を提示してまで資金調達する理由は乏しい。

 また同社はAA種類株発行と同時に、ほぼ同数の自己株式の取得を行うことも明らかにしている。あらたに種類株を発行して資金を調達するものの、その資金は自己株式の取得に回ることになるので、結果的に株主の入れ替えを行っているだけということになる。

 一連の状況を総合的に考え合わせると、種類株式を発行する本当の理由は、グループ企業間の持ち合い解消の受け皿である可能性が高い。

■グループ持ち合いの解消が急務?

 では、なぜこのタイミングでトヨタは持ち合い解消を急ぐ必要があるのだろうか。背景には安倍政権が進めるコーポレートガバナンス改革がある。

 安倍政権は、成長戦略の一環としてコーポレートガバナンス強化策を矢継ぎ早に打ち出している。5月に施行となった改正会社法では、上場している大企業が社外取締役を設置しない場合、なぜ社外取締役を設置しないのか理由の説明が求められるようになった。これは事実上の社外取締役設置義務と市場では認識されている。

 政府の動きを受け、東証はコーポレートガバナンス・コードを策定し、東証1部と2部に上場する企業に対して新ルールの適用を6月から開始している。新ルールでは、日本独特の慣行としてしばしば問題視されてきた株式持ち合いに関する制限が盛り込まれており、株式持ち合いは、以前にも増して許容されなくなった。

 トヨタはグループ企業間でかなりの株式を相互保有している。トヨタ自動車の株式のうち6.5%は豊田自動織機が、2%はデンソーが保有している。トヨタの時価総額を考えると、2社の保有分だけで2兆4000億円に達する。一方の豊田自動織機の筆頭株主はトヨタ自動車となっており、こちらは23%もの株式を所有している。アイシン精機やデンソーといったトヨタ・グループ各社も似たような状況だ。

 これまでグループ各社による株式の持ち合いは、賛否両論がありながらも、日本型ガバナンスの有力な手段として機能してきた。だが、今回の改革で、その継続は事実上、困難になってしまった。グループ各社に代わって安定的な株主を確保することがトヨタ経営陣にとっては急務の課題となったのである。

 今回発行する種類株には議決権は付与されているが、事実上の元本保証であるこの種類株を買う投資家が、トヨタの経営方針について異議を唱える可能性は限りなく低い。有利な条件を提示して、種類株を発行する理由はここにある。

 今回のガバナンス改革は、逼迫した年金財政への対応があると言われており、あまり目立たない形で一気に進められた。経済界は本来、こうした改革には反対の立場だったが、法人減税をめぐる政府との交渉にばかり目を奪われ、気が付くとガバナンス改革は既成事実になっていたという状況に近い。他社が慌てて対応策を考える中、この動きを敏感に察知し、種類株の提案を今回の総会に間に合わせたトヨタのしたたかさを感じさせる。

■トヨタなりのガバナンス論に対する「解」

 株式会社には株主平等原則という基本ルールがあり、特定の株主だけに有利な条件を提示することは好ましくない。短期的には許容されたとしても、長期的に見た場合、株主平等原則が貫かれない可能性がある企業は、投資対象としての魅力が薄れてしまう可能性がある。究極的には資金調達能力の低下につながりかねないという問題をはらんでおり、今回、株主総会で反対票を投じた株主も、こうした点を懸念したと考えられる。

 もっともトヨタ側も、単に対症療法的にこうした方策を提示しているわけではない。トヨタは日本のみならず世界を代表するグローバル企業であり、あらゆる投資家に対して高い説明責任が求められることはよく承知している。一方で同社は、日本型経営の頂点を極めた会社でもあり、日本企業なりのガバナンスを追求したいとも考えているはずだ。

 実は、トヨタは今回の株主総会に合わせて取締役会の改革も行っている。種類株の発行と取締役会の改革はセットであり、一連のプランはトヨタとしての、ガバナンスのあり方に対する1つの「解」なのだと思われる。

 これまで日本企業の取締役会の多くは、経営と執行の分離が曖昧であった。過去、何度もガバナンス改革が提唱され、2002年には執行役員が制度化されたが、実態はほとんど変わっていない。中には代表取締役会長執行役員などという、執行側なのか、経営側なのか、株主を代表しているのか、よく分からない肩書きも存在している。

 その点からすれば、トヨタの新体制はガバナンスを強く意識したものとなっている。社内から取締役に就任するメンバーは1名を除いて全員が代表権を持ち、より全社的な視点で取締役会に参加するという方針が明確になった。代表権を持った人物に取締役を限定することで、各取締役がより対等な立場で、客観的に経営判断を下すことを狙った仕組みと言える。

 米国などで見られるような、CEO以外は全員社外役員というドラスティックな改革ではないが、標準的な日本企業のガバナンスを基準にすれば、経営の独立性は高まったといえるだろう。

 社内昇格者中心の構成を維持しながら、十分なガバナンスを確保しようという新しい役員人事と、種類株を受け皿とする持ち合いの解消は、今後の日本企業における1つのプロトタイプとなる可能性がある。これを単なる折衷案と見るのか、諸外国を納得させられる高度な日本流ガバナンスと見るのかについては意見が分かれるかもしれない。

■なぜ、わざわざ株式会社を上場させるのか?

 日本企業のガバナンスがなかなか確立しなかった理由の1つに、株式会社の制度そのものに対する日本人の親和性の問題がある。

 もともと株式会社は、所有と経営を分離し、会社の所有者である株主は自由にその所有権(株券)を売買することができるというところに本質的意味がある。広く投資家を募ることで、資金調達を容易にし、会社の信用を高めようという方策である。つまり株式会社を選択し、株式市場に上場するということは、世界中の投資家に向かって「自由に我が社を買収してください」と宣言しているに等しいことになる。

 株主資本主義の権化と思われている米国だが、実は株式会社以外の形態を採用し、外部からの資本参加を拒絶している会社は無数にある。また株式会社の形態を採用する巨大企業でも、米カーギルや独ボッシュ・グループのように株式を外部に公開しない方針を貫いているところも少なくない。もし外部からの干渉を望まないのであれば、会社を非上場にしたり、株式会社以外の形態を採用すればよいだけである。実際、戦前の日本では財閥企業の多くが合名会社、合資会社であった。

 日本の大手企業はファンドによる企業の買収に対して相当な拒絶感を持っているが、なぜか企業の形態は、誰でも資本参加できる株式会社ばかりであり、ほとんどが株式を上場している。一方で、自由な資本参加に強い拒絶感を持ちながら、一方ではこれを推奨する形態をこぞって採用しているわけだ。

 おそらくその理由は、広く資本を募らなければ、巨額の資金調達ができず、経営上不利であることをよく分かっているからだと考えられる。非上場やプライベートな会社形態でビジネスをするのは、並大抵のことではないからだ。

 そうだとするならば、株式会社の形態を採用し、株式を上場していながら、外部からの干渉を嫌うというのは、根本的に成立しない行為ということになる。したがって、上場する株式会社が、社外役員中心のいわゆるグローバル型ガバナンス体制に行き着くのは当然の結果ということになる。

 トヨタが提示した新しい経営のフレームワークは、果たしてどちらの立ち位置なのか。この是非を最終的に決めるのは株主であり、それは株価という形で顕在化してくることになる。同社のガバナンス体制に合理性があることを証明するためには、持続的な時価総額の拡大を実現していくしかない。


 

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