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「先生も生徒も数値で”仕分け”」 超効率主義で朽ちる学校
http://www.asyura2.com/15/hasan99/msg/444.html
投稿者 rei 日時 2015 年 8 月 04 日 00:38:54: tW6yLih8JvEfw
 

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「河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学」
「先生も生徒も数値で”仕分け”」 超効率主義で朽ちる学校“尊敬の対象”が“底辺の存在”に変わるまで

2015年8月4日(火)河合 薫


 「生活指導を担当することになりまして。……僕、あまり得意じゃないんですよね……」

 30代前半の男性は、仕事を辞めた理由をこう答えた。彼は、ある地方都市の公立中学校の教師だった。中学のときの先生が、「人間は宇宙にあるガス(元素)と同じものでできている」と教えてくれたことがきっかけで、理科の先生になった。

 「教師にも数値目標っていうのがあるんです。親のクレームの数をいくつまで減らすとか、問題行動をとる生徒を何人まで減らすとか、遅刻する子供を減らすとか。これ以上、その数値目標のために仕事をしたくなかったんです」

 効率化、マネジメント力、リーダーシップ、明確なビジョン――。これらは先日文部科学省から発表された「学校現場における業務改善のためのガイドライン」の中に登場する言葉だ。ならば、数値目標があったっておかしくない。

 つまり、もはや学校は学校ではなく、単なる「企業」ということなのか? 

 だとしたら、都合のいいときだけ先生を“聖職”扱いしたり、「子供がかわいそう」という呪いの言葉で罵倒するのは御門違いだ。

 学校、教師の、表と裏。学校って、教師って、先生の存在価値っていったい何? ホント何なのだろう?  

 そこで今回は、「教師という仕事」についてアレコレ考えてみます。

 まずは、男性教師の話からお聞きください。

 「僕は子供たちに理科の楽しさを教えたいと思って先生になりました。といっても、採用の段階からつまづいた劣等生です。正規採用がなかった。なので20代は非正規で、やっと4年前に正規で採用され、今の学校に赴任しました。よし! これで腰を落ち着けて子供たちと向き合える、と思ったんですが、現実は違いました」

 「“雑用”って呼んでるんですけど、先生の仕事って提出書類がやたらと多いんです。何をやるにも計画書を出さなきゃだし、教育委員会とか文科省とか提出書類が山ほどあります。しかも、それらはすべて、上の先生の許可が必要。ベテランの先生に見てもらって、次に主任に見せる。オッケーが出ると、教頭、副校長にそれぞれハンコをもらい、最後にやっと校長に提出です」

 「僕は理科の楽しさを教えたいと思い、教師になった。だから、さっさと授業の準備をしたいんですが、学校では雑用の方が優先順位が高い。なので、授業の準備は後手になります。いつも夕食に弁当をもってきて、それを食べて。“さっ、やるぞ!”って感じでした」

 「周りからは、“毎晩、残業で大変だな”なんて心配されるんですけど、僕にとってその時間はとても幸せな時間でした。これは去年やってうまくいかなかったから、こうやってみようとか。こないだの授業で出た疑問も分かるようにするには、こうしようとか。お金がないから、教材もあれこれ工夫して。子供たちの顔を思い浮かべながら、準備するのは楽しい。だって、理科ってちょっと外に出れば身近な教材が山ほどあるので、子供たちは目をキラキラさせるんです」

 「でも、生活指導担当になったらその時間を削らなくてはいけなくなる。もちろん生活指導も大切な教師の仕事だってことは分かっています。でも、僕には……、そのなんていうか耐えられる自信がなかったんです」

「僕たち教師は、底辺の存在なんです」

 「耐える、というのは保護者との関係にってことですか?」(河合)

 「う〜ん、確かに生活指導になると、保護者のクレーム対応が増えるし、ないといったら嘘になります。僕たち教師って、その……なんていうか、一番底辺の存在なんですよ。その底辺の存在になることに、耐えられないと思いました。結局、逃げただけかもしれません。子供たちからも、保護者からも。恐くて、逃げ出したんです」

 彼は“幸せな時間”を語っていたときとは、180度異なる渋い表情でこう答えた。

 なぜ、底辺の存在と感じさせられるのかを、具体的に話してくれることもなかった。恐らくツッコんで聞けば、話してくれた。が、“逃げた”と自分を責めている彼に、私はどうしても質問することも、聞き出すこともできなかったのである。

 いずれにせよ、現場は想像以上に疲弊している。SOSを出すことすらできない教師と、出すことを許さない社会が、教師たちを追いつめているのだ。

 「小中の教員、在校11時間超 副校長・教頭はさらに長く」――。

 こんな見出しで、現場の実態が報じられたのはつい先日のこと。文科省が昨年11月に、全国の公立小中学校451校の計9848人を対象に実施した調査で、次のようなことが分かった。

副校長と教頭の平均在校時間は小学校が12時間50分、中学校が12時間53分で、小中学校とも校長や教諭より1時間前後長い。
8割以上が負担に感じている業務のトップは「国や教育委員会からの調査やアンケートへの対応」、次いで「給食費の集金、支払い、未納者への対応」「保護者・地域からの要望、苦情への対応」だった。
 なんとも……。文科省の調査で、「国のアンケートへの対応」が最も負担となっていることが明らかになるなんて、笑うに笑えない。が、それ以上にこれらの結果を受けて提示されたガイドラインは、笑えないモノだった。

校長が、学校の実態を踏まえ、学校教育目標とそれに基づく学校経営ビジョンを設定
優れた人材の確保やマネジメント能力強化のための研修の実施
教員と事務職員の役割分担を明確にするほか、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、学校部活動における指導員など、専門スタッフ等による支援の充実
校務の情報化と効率化のための教職員のICTスキル研修の実施
教育委員会による学校サポート体制の構築
 etc.etc.、
 これらはすべて、「学校現場における業務改善のためのガイドライン」の中に書かれていたこと。「マジ!? これじゃまた、“雑用”が増えるっしょ?」と突っ込みたくなる内容が満載だったのである。

 ちなみに、この「ガイドライン」の副題は、「子供と向き合う時間の確保を目指して」。 

 ううむ……どんなに脳ミソをクルクルさせても理解できない。文科省の役人はホントにこれで、子供と向き合う時間が増えると信じているのだろうか? 大学改革しかり。ガイドラインしかり。“お勉強のできる”エリートたちの考えることは、理解しがたい。

 え? なに? アレについてはどう書いてあったかって?

 はい、ありましたよ。アレですね。アレ。はいはい、かなりあっさりでしたけど、確かにありました。

 最も負担とされた、「国のアンケートへの対応」については、

 「平成20年以降、見直しに取り組んできているが、引き続き調査の見直しに取り組んでいく」

 のだそうだ。

 ときにオトナを必要とし、ときに一人の人間として、ときに残酷なまで感情の赴くままに行動する子供たちと向き合うことは、想像以上に難しく容易ではない。そんな個性的な人格を持つ40人近くの子供たちを統制しなくてはならない、教師という職業は極めてストレスフルな大変な仕事。先生の仕事は、“戦場並み”に大変な仕事なのだ。

 その先生たちに、とてつもない雑用が課せられている。

  “子供のために”、“子供がかわいそう”と、次々と雑用が課せられ、それでもゼロにならない“事件”に腹を立てる人たちが、先生たちに厳しいまなざしを向ける。

 子供は宝、子供は社会全体で育てよう、と誰も否定できない美徳を振りかざすくせに、

 「教師は一番底辺の存在。夢も希望もない」と、教師たちを追いつめる――。そんな社会が、ホントに子供を大切にしていると、言えるのだろうか?

 先月、岩手県の中学2年男子生徒がいじめを苦に自殺したと見られる事件のときも、担任教師への批判はまるで集団リンチのようだった。確かに、「自殺を食い止めることはできたのでは?」「ここまでSOSを出しているのだから、どうにかできなかったか」との思いはある。

 だが、だからといって「これじゃ生徒殺人学校」は言い過ぎだと思う。

 以前、本コラムにも書いた通り、

 「何か問題が起きるとそれに関係のある1人の先生だけがやり玉に挙げられ」、

 「今の先生に求められているのは、間違いを起こさない無難な教師」という現実を、私たちが作っているのだ。

 かつての社会は、先生たちの応援団だった。先生は保護者も含めたみんなの先生で、誰よりも尊敬される存在だったし、校内暴力でヤンキーたちが暴れまくっていた時代には、教師とともに戦う保護者たちは、いわば同志だった。

 ところが時代と教師に向けられる視線は厳しくなり、2005年に一般市民を対象に実施した調査(著者調べ)でも、「教師は社会的に尊敬される仕事だと思う」と答えた割合は50代以上では60%だったのに対し、30〜40代では37%と半分程度。おまけに、最近はそのオトナたちのまなざしを敏感に感じ取った子供たちが、“ナメる”ようになった。

 「それって体罰だろ! 訴えてやる」

 ちょっとでも厳しくしようものなら、こう騒ぎ立てるモンスター生徒が登場したのである。

職員室が“若い先生の指導部屋”に

 さらに、非正規教師は小中学校だけで12万人弱。高校や障害児学校、都道府県などが独自で採用している非正規教師まで含めると、非正規教師は全国で20万人を超すとされている。

 退職したベテランの教師たちを非正規で再雇用するケースも増えたことで、職員室が“若い先生の指導部屋”と化した。ベテラン先生を採用するのは決して悪いことじゃないのに、残念な話だ。だが、これが現実。私たちが想像する以上に、現場では問題が山積しているのである。

「だとしたら、逃げ出したくもなるわなぁ〜」

 うん、私もそう思う。どんなに志ある教師であっても、誰だって逃げたくなる。むしろ、「壊れて取り返しがつかなくなる前に、逃げろ!」と、言いたいくらいだ。

 教師といえども、たかが仕事。なんてことを書くと、「大切な子供を預かる仕事を、たかがとはナンだ!」と、総攻撃を受けそうだが、先生だって私たちと同じ人間だ。親だっていれば、子供だっている。家に帰れば自慢の娘であり、息子であり、尊敬されるべきお父さんであり、お母さんだ。

 そういう“人”たちが、たかが仕事で人生を棒に振ってどうする。「子供をホントに大切」と思うのなら、先生たちがイキイキと働ける職場にしなきゃ。「校長のリーダーシップ」だの、「効率化」だの、「経営ビジョン」だの、「体制づくり」だの、「研修の充実」だのなんだのと、ごもっともな提言を並び立てるだけでいいわけがない。うん、いいわけがない。それで解決するとは、到底思えないほどごちゃごちゃなのだ。

「4%で働かせ放題」の日本

 日本の教師の労働時間は、世界でも突出して高いことは知られているが、その背景には「4%で働かせ放題」の制度がある。

 日本の公立学校の管理職以外の教員には、給与の4%分の教職調整額が一律に支給されている。田中角栄氏が首相だった時代に設けられた特別手当だが、これがあることで、労働基準法第37条の時間外労働における割増賃金の規定が適応されず、残業代が出ない。

 一方、労働時間の少ないEU(欧州連合)などは、1週間の労働時間の上限を48時間(時間外労働を含む)に制限している。

 つまり、日本の教員の勤務時間を政策的に減らすには、「働かせない」制度を作る必要がある。

 そこで問題となるのが、「学校の先生の仕事はなんぞや?」ということ。ただただ働く時間を減らすだけでは、先生が忙しくなるばかりで問題の解決にならない。

 「だから効率化する必要があるのでは?」

 いや、違う。子供と向き合う“仕事”に、効率化なんて言葉はもっとも縁が遠い。

 「だったらどうする?」

 先生の仕事の原点に戻ればいい。至極シンプルに、子供たちに勉強を教えることをミッションにすればいい。

 「教科書に書かれていることだけやっても、いい学校なんか行けないでしょ?」

 なるほど。確かに。それも現実なのだとは思う。

 だが、テストでいい点を取ることと、学びを自分の糧にすることはイコールではない。私事で申し訳ないが、中学校の教科書作りに関わっている者からすれば、

 「教科書をナメるなよ!」と言わせていただきたいのである。

 教科書は、「もっと子供たちが興味を抱くように、もっと子供たちが役に立つと思うように」「もっと子供たちが分かったと自信が持てるように」「もっと子供たちが学んでよかったと満足できるように」と、その教科の専門家と現場の先生たちが、汗水流して必死で作った結晶である。

 特に理科は、中学校で理科離れが起きやすいこともあり、子供たちの知的好奇心を刺激する作業と、理論を正確に理解させる作業を乖離させてはならないので、極めて難しい。あれこれ先生たちと議論を交わし、固まりがちな頭を必死でほぐし、決められた時間の中でとことん考え続ける。

 難しいことを分かりやすく教える、という極めて難しい作業を、これでもか、これでもか、と、トコトン突き詰める努力をするのだ。

 とりわけ子供たちとリアルに接している現場の先生の意見は、重要となる。

 例えば、高気圧や低気圧の理解を深めるために天気図を利用するのだが、大抵の場合、そこには前線も描かれている。すると現場の先生は、「まだ習っていない前線が書かれていると子供たちが混乱するので、前線を消した天気図を使いたい」と意見する。

 しかしながら、日本付近を通過する低気圧は温帯低気圧なので、前線を消すのはいかがなものかという議論になる。「ならば、先に前線を学ばせては?」と専門家側が意見すると、現場の先生は、「それはそれでまた子供たちを混乱させる」と反論する。

教科書は学問の土台

 学問の土台となる教科書では、そこに使われるたった一枚の天気図でさえ、子供たちのことを必死で考えたオトナたちの思いが込められているのである。

 ちなみに私は高校時代、英語が話せるというだけで文系に進んだおかげで、まともに地学も物理もやっていない。そんな私が気象のプロになれたのは、小学生向けのお天気図鑑を徹底的に勉強したからにほかならない。

 「なぜ、雨が降るのか? なぜ、風が吹くのか?」ということすら分からなかった私は、徹底的にお天気図鑑を勉強した。不思議なもので図鑑で土台をしっかり理解できると、難しい気象学の本も理解できるようになった。高校時代は全く理解できなかった物理式も分かるようになった。ありとあらゆる気象学の本を読めるようになり、気圧の谷だの上昇気流だの、専門用語を一切使わなくても、ちゃんと天気の説明ができるようになった。

 「お天気図鑑を徹底的に理解できれば、気象予報士の試験は受かる」。こう私は確信している。

 小中学校の先生に求められるのは、教科書を生かす力だ。

 子供たちの顔を思い描きながら、あーでもないこーでもないと、“幸せな時間”に労力を費やす。教科書をどう生かすかには、その教師の価値観や生き様が出る。子供にどうやって話しかけるか? 子供の疑問にどう答えるか? 

 そのやり取りの中で、子供たちは勉強以上のものを学ぶ。子供にはオトナが考える以上に、機微を感じ取る皮膚の薄さがある。恐らく想像以上に、ちゃんと受け止めてくれる。

 子供をナメたらいけないのだ。

このコラムについて
河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学

上司と部下が、職場でいい人間関係を築けるかどうか。それは、日常のコミュニケーションにかかっている。このコラムでは、上司の立場、部下の立場をふまえて、真のリーダーとは何かについて考えてみたい。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/073100008/  

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コメント
 
1. 2015年8月04日 11:57:11 : w6g6BoihmE
教員に残業代0制度は 絶対必要だ。
こんなことしてるから 財政破綻する

2. 2015年8月04日 12:31:15 : nJF6kGWndY

>日本の教員の勤務時間を政策的に減らすには、「働かせない」制度を作る必要

過重サービス労働は教員に限らず、官僚、研究者から、一般正社員や、正社員志向の強い非正規まで共通だが

多くの日本人の正社員志向の背後にある不安症的な脳の異常を修正しないと難しいだろう



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