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人民元切り下げ、通貨戦争の議論に火 Q&A 革命的な動きか、市場改革を装った単なる景気対策か(Financial T)
http://www.asyura2.com/15/hasan99/msg/657.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 8 月 13 日 01:35:30: igsppGRN/E9PQ
 

           中国人民銀行の予想外の動きを受け、人民元が対ドルで大幅に下げている〔AFPBB News〕


人民元切り下げ、通貨戦争の議論に火 Q&A 革命的な動きか、市場改革を装った単なる景気対策か
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44526
2015.8.13 Financial Times


(2015年8月12日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)


 過去20年間で最も大幅な人民元切り下げに踏み切った中国人民銀行(中央銀行)の予想外の動きは、通貨戦争に関する論議に火をつけた。もっとも、今回の介入を市場改革と金融自由化に向けた歓迎すべきジェスチャーと解釈する向きもある。


 人民銀行が11日、この日の人民元の基準値を前日より1.9%低い水準に設定した後、元相場は下落し、ほぼ3年ぶりの安値をつけた*1。1.9%というのは、記録に残る限り、最大の変更幅だ。


■日々の基準値とは何か?


 人民銀行は北京で毎日午前9時15分に、厳しく管理された通貨の基準値(中間値)を設定する。15分後に市場が開くと、投資家はこの中間値の上下2%の範囲内で人民元を売買することが許されている。


■なぜ今なのか?


 明らかなきっかけは景気の減速だ。今年第1四半期と第2四半期に中国経済は年率7%のペースで成長し、6年ぶりの低成長となっている。


 週末発表された統計によると、7月の輸出は前年同月比で8.3%減少し、1.5%の減少予想よりはるかに悪い数字となった。通貨が下落すれば、中国の輸出競争力を高めるのに役立つはずだ。


■すると、中国は輸出を促進しようとしているということだが、これは通貨戦争ではないのか?


 必ずしもそうではない。公にされている目的は市場改革だった。人民銀行は、これは人民元の「市場志向とベンチマークとしての地位」を強化するための1度限りの措置だと説明した。


 以前は、人民銀行は通貨を好きな水準に設定していた。これからは市場に一定の発言権を与えることになり、日々の基準値は「前日の銀行間の外国為替市場の終値を参照する」としている。


*1=中国人民銀行は12日、人民元売買の中間値となる「基準値」を前日よりさらに1.6%引き下げ、人民元相場はさらに大きく下落した


■改革への圧力があるのか?


 今年末までに、国際通貨基金(IMF)はドル、ユーロ、ポンドと円から成る世界的な準備資産の「特別引き出し権(SDR)」に人民元を採用するかどうかを決める。


 SDRへの採用は、正式な準備通貨として人民元にお墨付きを与えることを意味する。


 IMFは先週、金融改革における中国の進展を称賛したが、中国国内の株式、債券市場に対する外国人のアクセスを拡大するためさらなる措置を講じるよう中国当局に求めた。


 IMFは5年に1度しかSDRの見直しを行わない。だから、中国人民銀行は人民元利用の国際化を追求する一環として、通貨を自由化する取り組みを強化している可能性がある。


■これは改革の勝利なのか?


 そうかもしれないが、はっきりしたことは言えない。人民元は何カ月も前から資本流出のために下落圧力にさらされてきたが、人民銀行は、日々の基準値を引き上げたり外貨準備を売却したりして人民元の下落を抑えてきた。


 今回の人民元切り下げは、こうした圧力をある程度緩和するだろう。



北京にある中国人民銀行〔AFPBB News〕


 エコノミストの多くは楽観的だった。バークレイズのエコノミストたちは、新たな仕組みを「革命的な動き」と呼んだ。


 だが、人民元が中国の目標に沿わない方向に動くのを見るまでは、中国が本当に人民元の価値に対して市場に発言権を持たせるかどうかは分からない。


 中国の通貨は米ドルに対するソフトペッグ制を採用しており、ドルは今年急上昇し、中国の輸出を減少させる一因になった。


 元安は中国経済を支えることができるため、中国政府は単に元安を容認し、政治的な口実として「市場改革」の論議を利用している可能性もある。さもなければ、人民元の切り下げは物議を醸していたからだ。


■中国国外でこれは問題になるか?


 答えはイエスだ。中国はコモディティー(商品)の一大消費国であり、人民元の切り下げが経済の弱さの兆候と解釈されれば、波及効果が生じる。


 11日にはアジア太平洋地域のすべての通貨が米ドルに対して下げ、ニュージーランド、台湾、韓国、シンガポール、オーストラリアの通貨は1%以上下落した。


 ドルの強さを受け、米連邦準備理事会(FRB)は利上げに消極的になるかもしれない。利上げすれば、ドルに対する上昇圧力が一段と強まるからだ。



人民元の切り下げでオーストラリアドルが連れ安し、その波及効果でカンタス航空の株価が大幅に下落した〔AFPBB News〕


 中国では、国内の航空会社が平均で株式時価総額を9%失った。元安はドル建てで設定されている石油のコストを膨らませるためだ。


 同じ波及効果により、オーストラリアを代表する航空会社カンタスの株価も最大で4.1%の下落に見舞われた。


■リスクは何か?


 投資家は元安を図ろうとしており、もし投資家が基準値を決めることを許されたら、元相場が急速に下落する可能性がある。


 フィッチの調査部門のBMIリサーチでカントリーリスク部門のトップを務めるスチュアート・アルソップ氏は、投資家が人民元を一方的な賭けと見なし、「元に対してポジションを取り始め、より大幅な元安とより大きな経済的不確実性の公算を強める」可能性があると警告する。


■次は何か?


 問題は、中国政府が本当により自由な人民元の売買を許すかどうか、だ。昨年、人民元が継続的に上昇し、20年ぶりとなる通年ベースでの元の下落をもたらした時、人民銀行は一方的な投機の阻止に動いた。


 もし投資家が人民元を押し下げ始めたら、中国政府は再び行動に出る必要を感じるかもしれない。


 行動を取らなければ、輸出を巡って競争する近隣諸国が苦情を言う可能性がある。


 米国は厳しい立場に立たされるかもしれない。米国は何年も前から改革を求めてきたが、もし中国が日々の基準値が市場原理によって決定されることを認め、通貨が下落し、米国の製造業者に打撃を与えたとしたら、米国政府としては、どう対応すればいいのか判然としないからだ。



 

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コメント
 
1. 2015年8月13日 10:48:03 : jXbiWWJBCA
人民元、連日の切り下げ 習政権の政策転換鮮明に
  2015/8/13 2:01
日本経済新聞 電子版
 中国当局が2日連続で人民元の基準値を切り下げ、輸出に追い風となる元安の方向に相場を誘導する姿勢を明確にした。想定を上回る景気の減速を踏まえた通貨政策の転換は世界2位の経済大国の危機感を映す。予想外の動きは12日、アジアに続き欧米で株安が進むなど中国発のリスクとして市場を揺さぶっている。

 中国人民銀行(中央銀行)は12日、対ドルの為替レートの目安となる基準値を前日より1.6%引き下げた。2%近く下げた11日に続く措置で、人民元相場は一時、約4年ぶりの安値水準をつけた。一定の範囲内で緩やかな元高の方向へ動く管理変動制を2005年7月に採用してから、ここまで急激な元安誘導は初めてだ。
 12日はアジア株が全面安となったほか、欧州でドイツのDAX指数が約3%下落し、米国ではダウ工業株30種平均が一時300ドル近く下げた。
 今の世界の市場心理を象徴する銘柄が、12日の東京株式市場にある。JFEホールディングスだ。株価の下落率は日経平均株価(1.6%)を大きく上回る7%に達し、年初来安値を更新した。同社は「中国関連株」だ。鋼材の大消費国である中国の景気減速で鋼材市況も低迷し、7月に今期の業績予想の下方修正に追い込まれた。
■通貨安競争も
 「市場に驚きを与えてまで景気刺激に注力しなければならないほど、中国経済は悪化している」(JPモルガン証券の足立正道シニアエコノミスト)。警戒感から中国が主な買い手の原油や銅なども売られている。
 ただでさえ7月からの中国株の変調やギリシャ問題で、市場心理は世界的に萎縮していた。米調査会社トリムタブズによれば、米国株を投資対象とする投資信託からは7月、4年ぶりに大規模の資金が流出した。
 7月は中国の生産、投資、消費の伸びが鈍った。昨秋以降、人民銀は金融緩和を重ねて景気のテコ入れを試みたものの効果は乏しい。政府の今年の目標である「7%成長」がかすんできた。
 現在、河北省の避暑地では習近平国家主席ら現役指導者と長老が集まって国政の重要課題を話し合う「北戴河会議」が開かれているとみられる。このタイミングでの通貨政策の変更に、景気の安定を最重要視する習指導部の切迫感がにじむ。
 元安誘導で短期的に懸念されるのは相対的に競争力が落ちる国々だ。ベトナムは12日、通貨ドンの変動幅を広げて水準を切り下げられるようにした。中国に対抗して自国通貨を低め誘導する「通貨安競争」、さらには保護主義への誘惑が浮上する恐れもある。
 長期的な影響は未知数だ。中国当局の狙い通り輸出を刺激できれば経済は一息つけるのかもしれない。だが、不動産価格の下落や株価の乱調で家計は厳しい情勢にある。資産価格の下落が1990年代の日本のような金融システムのきしみを招く「日本化」の可能性も指摘されている。
 中国の成長率が7%から下振れした場合、影響は広がる。米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズによると、中国の成長率が2年間で2%下振れしたら、香港や台湾は2%以上、韓国やシンガポールは約1%それぞれ下振れする。
■日本にも逆風
 日本にも逆風は吹く。6月の外国からの工作機械受注は前月比も前年同月比も落ち込んだ。中国、タイ、ベトナムなどからの受注減が響いた。
 世界の目は、9月にも9年ぶりの利上げが見込まれている米連邦準備理事会(FRB)の一手に集まる。中国発の世界的な景気不安を気にして、利上げをためらうのか。変数が1つ増えた。
 マネーは、リスクの度合いが測れない状況を最も嫌う。波乱の芽を摘むのも、膨らませるのも、米中次第となってきた。
(編集委員 梶原誠、北京=大越匡洋)


2015年 08月 12日 15:06

コラム:中国株「バブル崩壊」、実体経済への影響は

Wade Shepard

[11日 ロイター] - 中国の株式市場での動きは、同国経済にどんな影響を及ぼすだろうか。「その答えは意外にも、心配されているほどではない」。不動産大手ジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)で中国北部の調査責任者を務めるスティーブン・マコード氏はこう語る。

「実際のところ、今まで自分が目にした(株価急落による)最大の直接的副産物は、株式投資家たちの苛立った会話や新聞の大きな見出し、中国国外の顧客から届く心配そうなメールぐらいだ」という。

中国株急落については世界中のメディアが騒いでいるものの、現地での生活にその影響は驚くほど見られない。上海総合指数は1日で8%下げた日もあったが、上海そのものは何も変わらなかった。店舗は営業しており、消費者は買い物を続け、公共サービスは滞りなく動き、誰ひとりとして暴動は起こさず、まるで中国にはいかなるタイプの経済危機も存在しないかのように、人々は仕事に出かけた。

資産管理会社ナビタスの中国中部担当マネジャー、トーマス・ダンロップ氏は「率直に言って、株価急落に関する記事を読んでいる間も、上海や中国中部で自分が関わっている人たちには、影響は比較的及んでいないように見える」と話す。

株式市場での動きは、同国経済の他の部分で何が起きているかを直接的に示すものではない。その逆もまた然りだ。例えば、株高の絶頂時には、小売売上高は過去5年で最低の水準に落ち込んでいた。このことは「株と消費支出がいかに切り離されているかを示している」と、上海拠点の市場調査会社チャイナ・スキニーの創業社長マーク・タナー氏は指摘する。逆に、株安にまだ歯止めがかかっていない局面で、ウェストパックMNIによる中国消費者信頼感指数は上昇していた。今年3月に中国株が上昇を始めた時には、同国の輸出は前年同月比で15%減の落ち込みとなっていた。株価が乱高下している間、国内総生産(GDP)は7%で横ばい推移し、不動産市場も比較的影響を受けずにいた。

こうしたことを踏まえると、少なくとも短期的には、中国の株式市場は実体経済とは距離を置いて存在すると言えそうだ。「(株価の)下落幅を考えれば、ダメージは驚くほどに抑えられている」(JLLのマコード氏)。

その理由の1つは、経済全体で株式市場が果たす役割が驚くほど限られていることが挙げられる。何よりもまず、同国株式市場は同国経済の規模からすると小さいままだ。また同国企業は、米国や英国などの同業企業に比べると、資金調達面で株式市場にまったく依存していない。ブルームバーグによれば、中国の株式市場は同国のマネーサプライM2の11%相当にしかすぎない。この数字は日本では45%、米国では250%だ。

株価急落が経済全体に限定的な影響しか及ぼさなかったもう1つの大きな理由は、直接的な影響を受けた人の数が相対的には少ないからだ。確かに、5000万人とも9000万人とも言われる個人投資家の数は巨大に見えるかもしれないが、人口13億7000万人に照らし合わせれば少数だ。各種調査によると、株式に直接投資している家計の割合は、米国が55%なのに対し、中国はわずか6─8%にすぎない。

中国の典型的な投資ポートフォリオが分散していることも、株価乱高下の影響を抑えている。一般的に言えば、中国の大口株式投資家の多くは、不動産にも投資を分散させている。事実、中国では個人資産の39%が不動産で、46%が銀行預金だ。

前出のタナー氏は「多くの評論家、とりわけ西側の評論家たちは、西側で起きた同様の急落と(最近の中国株急落を)比べているが、中国での多くのことと同様、横並びで比較することはできない」と指摘する。

中国の株式市場は、素人の来るべき場所ではない。最近の株式市場の混乱で大きな損失を出した人の多くは、大言壮語に乗せられて取引を始めた経験の浅い投資家たちであり、株式投資の核をなす社会階層とは別だ。JLLのマコード氏の言葉を借りれば、「預金のすべてを失った年金生活者や農家の人たちは、中国の投資階級を代表するものではない」。

中国株式市場の急落は、その前段階の株価急騰に照らし合わせて見ない限り、実際に何が起きたのかを見誤ることになる。急落したとはいえ、まだ昨年の同じ時期に比べれば7割ほど高い水準にある。

タナー氏が言うように「株式は急上昇の後に急落が続く。それは、中国政府でさえ変えることができないことの1つだ」。

*筆者は中国の都市化を2年半にわたり調査し「Ghost Cities of China」を上梓。現在、香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストの寄稿者などを務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。


中国でマツダがライバル凌駕、ドイツ神話に陰り 2015年 07月 17日
中国が三つのバブルに直面、株価暴落よりはるかに怖い=CS 2015年 07月 21日
焦点:株急落で一段と色あせる「中国の夢」 2015年 07月 17日
http://jp.reuters.com/article/2015/08/12/column-china-stock-bust-idJPKCN0QH0K920150812?sp=true

2015年 08月 13日 08:20 JST
豪中銀、人民元基準値引き下げの影響を注視=副総裁

[パース 12日 ロイター] - オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)のロウ副総裁は12日、中国が行った人民元の基準値引き下げについて、予測困難な事態の連鎖反応が起きる可能性があるとして注視していることを明らかにした。

また、こうした中国の動きがオーストラリアに与える影響については解釈の仕方によるとし、景気減速を受けた動きであればネガティブな材料になる一方、これまでの相場上昇の巻き戻しで市場自由化に向けた動きであればポジティブな材料になる可能性があると指摘した。
http://jp.reuters.com/article/2015/08/12/au-bank-idJPKCN0QH2RS20150812

2015年 07月 14日 20:11 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
中国の金融システムは安定、穏健な金融政策維持へ=人民銀

[北京 14日 ロイター] - 中国人民銀行(中央銀)は14日、金融システムは基本的に安定していると指摘し、穏健な金融政策を維持する方針を表明した。人民銀はウェブサイト上で公表した声明で、現在の経済状況は複雑で過少評価すべきでないとの見方を示した。

金利の自由化を推し進め、通貨人民元を「妥当な水準」に保つ考えをあらためて表明したが、具体的な説明はしなかった。

また穏健な金融政策を継続し、流動性を「適切」な水準に維持する方針を強調した。

借り入れコストの引き下げや直接金融の拡大を目指す考えも示した。
http://jp.reuters.com/article/2015/07/14/china-economy-idJPKCN0PO16E20150714


2015年 08月 12日 14:32 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:人民元安は日本経済に逆風か追い風か=嶋津洋樹氏

嶋津洋樹SMBC日興証券 シニア債券エコノミスト
[東京 12日] - 人民元は、中国が2005年7月に外国為替制度の改革を発表して以降、リーマンショックの前後を例外とすれば、ほぼ一貫して対ドル相場を切り上げてきた。だからこそ、中国人民銀行(中央銀行)が11日に人民元の対ドル中心レートを前日比で約1.9%引き下げたことは驚きを持って受け入れられた。

それは中国が通貨安競争に参加することを意味し、競合する国では輸出の停滞を通じて、景気の下振れリスクが増幅するからだという。こうした見方があるからこそ、日本を含む世界の株式市場は、中国の景気テコ入れ本格化を好感した10日の欧米市場の流れに乗れず、一転して下落へ転じたのだろう。

もっとも、上記の見方は次の2つのプラス面を見逃している。まず、通貨安には基本的に対外的な競争力の回復や為替差益の拡大を通じて、景気を押し上げる効果がある。例えば、アベノミクスが始まって以降の通貨安は、多くの批判的な意見にもかかわらず、輸出企業の収益やインバウンド消費(訪日外国人による消費)などを通じて国内経済に恩恵をもたらしている。

次に、今や世界第2位の規模を誇る中国の景気回復は、世界景気にとって追い風にこそなれ、逆風になるとは思えない。

中国の輸出品には当然、日本製の部品なども使われているはずである。また、中国景気の回復はそれが当初、輸出主導であったとしても、徐々に内需へも波及する可能性が高い。中国が国内のすべての需要を自国だけで賄えるわけではない以上、同国の景気回復は日本のみならず、アジアや欧州、米国などで輸出を増加させるはずである。

中国の海外旅行ブームは、すでに短期的な景気に左右されないほどの盛り上がりになっていると考えられるが、雇用・所得の環境改善はそうした盛り上がりを一段と後押しするだろう。

<減殺されていた金融緩和効果>

今回の切り下げには、金融政策の自由度を確保する狙いもあると思われる。というのも、中国の資本フローは2014年後半以降、流出が目立ち、同時に外貨準備も減少しているからだ。

中国は人民元を事実上、厳格に管理しているため、そうした資本の流出は中国人民銀行に自国通貨買い・外国通貨売り(この場合は主に人民元買い・ドル売り)での対応を迫る。それは国内での人民元不足を通じて、金融引き締めの効果をもたらすと考えられる。中国人民銀行は2014年後半以降、貸出金利などの引き下げに踏み切っていたが、その効果の少なくとも一部は、従来の外国為替制度の下で減殺されていた可能性が高い。

こうした筆者の考え方は、「外国為替相場の安定」「資本移動の自由」「金融政策の自律性」という3つの政策目標は同時に満たすことはできないという「不整合な三角形」あるいは「国際金融のトリレンマ」からも説明できる。

つまり、中国は従来、資本移動を大幅に制限することで、「外国為替相場の安定」と「金融政策の自律性」を確保していた。しかし、金融市場の自由化などを進めるなかで、資本移動の制限を維持することが困難となり、それが金融政策を国内経済の回復に割り当てることも難しくしていた。そのことが、株式相場の下落を受けた規制の強化とその後の金融市場の反応で、一段と明らかになったと考えられる。

中国政府の今回の人民元をめぐる決断は、一段の景気減速を回避するために「外国為替相場の安定」の一部を放棄することで、「金融政策の自律性」を優先したと言うこともできる。

<高まった中国景気回復の可能性>

実際、中国人民銀行は今回、通貨の切り下げとともにその算出方法の変更も発表し、声明文では市場を重視する方針を強調している。

中国人民銀行のスポークスマンが、新興国が直面する通貨下落の圧力や、国際的な資本フローの変動に言及したことも併せて考えると、中国政府が今回、「不整合な三角形」を意識して一連の政策変更に踏み切ったことは想像に難くない。当然、外国為替市場における今回の変更は、中国人民銀行がこれまで実施してきた金融緩和策の効果を高めることが期待されているだろう。

なお、中国人民銀行の政策金利は主要貸出金利(1年)で4.85%、預金金利(1年)でも2%と、日米欧の主要な中央銀行とは異なり、大幅なプラス圏にある。

今回の一連の措置が、足元で落ち着きつつある中国からの資金流出を大幅に加速させないことが明らかになれば、中国人民銀行は金融政策を今まで以上に国内景気の安定のために割り当てることができる。それは、すでに報じられている景気対策と組み合わせることによって、景気回復を確かなものにするだろう。中国政府が景気のテコ入れに今まで以上に真剣になったことだけでなく、次の一手も視野に入れていることを示すと思われる。

筆者は中国景気の先行きについて、中長期的には課題が多く、決して楽観しているわけではない。しかし、少なくとも短期的にはこれまでの政策が奏功することで回復へ向かう可能性が大幅に高まったと考えている。

*嶋津洋樹氏は、1998年に三和銀行へ入行後、シンクタンク、証券会社へ出向。その後、みずほ証券、BNPパリバアセットマネジメントを経て2010年より現職。エコノミスト、ストラテジスト、ポートフォリオマネージャーとして、日米欧の経済、金融市場の分析に携わる。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら)


日本と異なる「バブル崩壊」構造、中国では株式と不動産が逆連動 2015年 07月 14日
中国:百貨店が閉店ラッシュ、経営不振で「負の連鎖」も 2015年 06月 17日
中国経済成長率、実際は公式統計の半分以下か 英調査会社が試算 2015年 08月 07日

http://jp.reuters.com/article/2015/08/12/column-forexforum-hirokishimazu-idJPKCN0QH04520150812?sp=true

2015年 08月 13日 07:07

ドル下落、人民元切り下げで米金融政策に警戒感=NY市場

[ニューヨーク 12日 ロイター] - 12日のニューヨーク外為市場では、ドルが下落した。中国人民銀行(中銀)は2日連続で人民元の基準値を切り下げ、米連邦準備理事会(FRB)の9月利上げ見通しが後退する中、ドルの主要6通貨に対するドル指数.DXYは約1か月ぶり安値水準に沈んだ。

一方、人民元の買い持ちポジションの巻き戻しの対象通貨として、売り持ちになっていたユーロが買い戻され、その結果、ユーロ/ドルEUR=EBSは一時1.12ドル台に上昇した。

ユーロ/ドルEUR=EBSはドルが売られる中、1カ月超ぶり高値となる1.1215ドルに上昇後、終盤は1.17%高の1.1171ドルとなっている。

終盤のドル/円JPY=EBSは0.75%安の124.195円。ドル/スイスフランCHF=EBSは1.35%安の0.97525フランだった。

またドル/人民元CNY=CFXSはアジア時間に2011年8月以来高値の6.4510元、その後の海外市場で2011年初め以来の高値となる6.5943元まで上昇した。

ウェスタン・ユニオン・ビジネス・ソリューションズ(ワシントン)の上級市場アナリスト、ジョー・マニンボ氏は「中国当局の人民元安誘導は、世界経済の状況の理解よりもより多くの疑問点を浮き彫りにした。市場はそれをFRBの9月利上げ見通しを後退させる要因とみている」と指摘する。

米短期金融市場では9月利上げ観測が40%以下に落ちている。

コモンウェルス・フォーリン・エクスチェンジ(ワシントン)の主席市場アナリスト、オマー・エシナー氏はユーロの方向について「この傾向が続くのなら、短期的にユーロがさらに上昇する余地があるかもしれない」との見方を示した。

米商品先物取引委員会(CFTC)が7日に発表したIMM通貨先物の非商業(投機)部門の取組データによると、8月4日までの週のユーロ売り越しはその前の週の10万4008枚から11万3394枚に増加していた。

ドル/円    終値   124.21/24

始値   124.04/05

前営業日終値   125.11/14

ユーロ/ドル  終値   1.1160/63

始値   1.1161/62

前営業日終値   1.1041/44

*内容を追加します。


英中銀は近く利上げ開始を、米FRB待つ必要ない=金融政策委員
中国人民銀行が人民元切り下げ、経済指標の不振で
訂正:コラム:見えてきた米成長加速とドル高再開の芽=村田雅志氏
日銀17年度までの物価を小幅下方修正、黒田総裁「中国注視」
焦点:インフレ率ゼロでの利上げ、米英は説明に苦心か
http://jp.reuters.com/article/2015/08/12/ny-forex-close-idJPKCN0QH2M120150812?sp=true

人民元 連日の切り下げ 日本への悪影響警戒

2015年8月13日 朝刊


下げ幅が一時400円を超えた日経平均株価を示すモニター=12日、東京・東新橋で
写真
 中国人民銀行(中央銀行)が12日、通貨・人民元の対ドル相場の取引基準値を前日に比べ1.6%元安に設定した。輸出拡大を狙った事実上の人民元の切り下げで、2日連続になる。東京株式市場では通貨切り下げを繰り返すほど中国経済が失速していると受け止められ、売り注文が続出。日経平均株価(225種)の下げ幅は一時、400円を超えた。市場では人民元の下落がどこまで進むか見通せず、日本経済に対する悪影響に警戒感が広がっている。 (渥美龍太)
 BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「二日で人民元は約3・5%下げたが、中国は昨夏から続いた人民元高を相殺するため、今後も累計で最大10%程度の切り下げを行う可能性がある」との見方を示す。
 背景にあるのは中国経済の減速だ。七月は輸出が前年同月比で8・3%減り、新車販売も7・1%減少。十二日発表の工業生産も、伸び率が前月より縮小した。中国がこうした状況を人民元の切り下げでてこ入れした結果、日本やアジア各国の市場を動揺させた。
 日経平均の十二日の終値は前日比三二七円九八銭安の二万○三九二円七七銭、東証株価指数(TOPIX)は二一・八五ポイント安の一六六五・七五と大きく下落。シンガポールやインドネシア、マレーシアなどの株価指数も軒並み下落した。
 日本の個別銘柄をみると、中国関連の多くが下落。特に、中国からの旅行者の「爆買い」の恩恵を受ける関連企業の落ち込みが目立った。化粧品のコーセーが前日から7%余り下がったほか、資生堂や家電のビックカメラ、百貨店の三越伊勢丹ホールディングスが5%前後下落した。
 SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは「日本企業にとって切り下げの直接的な影響は軽微だが、本当の問題は中国の実体経済の状況。深刻ならば影響は大きく、どこまで悪いか見えない不安や推測が株価の動きに表れているようだ」と話している。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2015081302000120.html


焦る中国、景気減速あらわ 人民元、連日の切り下げ
北京=斎藤徳彦 米ダラス=五十嵐大介2015年8月13日05時02分

中国経済は減速している
 深刻な景気減速に背を押され、中国が連日の人民元切り下げに動いた。相次ぐ景気浮揚策でも上向かない景気に対する当局の焦りがのぞく。長年、人民元の切り上げを注文してきた米国は状況を注視する構えだが、先行き次第では年内とされる利上げの時期に影響する恐れもある。

 中国人民銀行が発表する人民元の基準値は11日からの2日間で約3・5%も元安ドル高に進んだ。基準値は毎朝発表され、一日の市場での取引はこの上下2%の範囲内で変動が許される。これまでは主要銀行からの市況に関する報告などに基づいて決めていたが、11日からは「前日の市場での終値を参考にする」とした。これで市場レートがより反映されやすくなった。

 人民銀は12日、「制度変更後は一定の調整時間が必要だが、基準値の変動は徐々に収まるだろう」として、元安が加速することは否定した。ただ、市場では12日も、基準値より元が値下がりして取引が続いた。

 こうした値動きが翌日の基準値に反映されれば、元安はさらに進む。市場には「今後1年で3〜5%の元安が進む」(中国の大手証券)とする声も上がる。

 中国はこれまで、市場の動きを直接、基準値に反映する改革を避けてきた。輸出産業に不利となる元高が一気に進む恐れがあったためだ。ところが、米国の利上げ観測が高まった昨年後半以降は、ドルが値上がりするとの期待から、市場で元安傾向が高まり、元高の懸念は後退した。

 12日に発表された中国の7月の主要統計では、鉱工業生産の伸びが6月を0・8ポイント下回る6・0%増にとどまるなど、生産や投資、消費について伸びが軒並み6月より鈍化した。深刻な景気減速は、輸出の不振も大きな要因だ。1〜7月の輸出額の累計は前年同期比0・8%減と異例の減少に転じている。

 元安が進めば輸出に有利となり、景気回復の足がかりになると期待できる。国内で利下げや財政出動を繰り返しても景気が上向かない状況への焦りが、実質的な切り下げにつながる基準値の改革に中国政府の背を押した。

 ただ、元安は中国への輸出に期待する他の新興国にとっては打撃となる。中国の「荒療治」をきっかけに、各国も自国の輸出を有利にするために通貨安に争って誘導する恐れもある。(北京=斎藤徳彦)

■米、ひとまずは注視

 米国は長年「人民元は安すぎる」と切り上げを求めてきたが、今回の中国の対応には真っ向から批判しづらい状況だ。人民元に市場の動向を反映させるための取り組みともいえるからだ。米財務省の報道官は11日、「改革へのいかなる逆行も問題になりうる」とクギを刺しつつも、「影響を判断するのは時期尚早」として、状況を注視する考えを示すにとどめた。

 国際通貨基金(IMF)は11日の声明で、人民元の基準値を決める手法の変更について「市場の力により大きな役割を与えるもので、歓迎されるべき一歩」と評価しながらも、より市場動向を反映した為替レートへの移行を求めた。

 ただ、米議会からは反発の声が相次いだ。民主党の重鎮、レビン下院議員は11日の声明で「中国の今回の行動は深刻な懸念を生んでいる」と批判。9月の習近平(シーチンピン)国家主席の訪米を前に、米中の長年の火種が再燃する恐れもある。

 米連邦準備制度理事会(FRB)が「年内」としている利上げの時期にも影響を及ぼすかもしれない。

 米ドルはこの1年で主要通貨に対して約2割値上がりし、輸出や海外展開する米国企業の業績に足かせとなっている。今回の人民元切り下げの米国経済への影響は「現時点ではわずかなものにとどまる」(米金融大手ゴールドマン・サックス)との見方もあるものの、各国が「通貨安競争」に加わって米ドルがさらに値上がりすれば、米国内で景気を冷やしかねない利上げに反対の声が広がる可能性がある。(米ダラス=五十嵐大介)

■中国の景気テコ入れ策

2月 預金準備率を0.5%幅引き下げ

3月 金利を0.25%幅引き下げ

4月 預金準備率を1.0%幅引き下げ

5月 金利を0.25%幅引き下げ

6月 金利を0.25%幅引き下げ

7月 李克強首相が経済対策に2500億元(約5兆円)以上を投じるよう指示

8月 人民元を実質切り下げ

     ◇

 上野泰也・みずほ証券チーフマーケットエコノミストの話 世界2位の経済大国である中国が人民元の切り下げに動き、世界経済は視界不良に陥ったと言える。楽観すべきでないことは、世界的な株安が示している。市場には「中国経済は実際にどこまで悪いのか」という警戒感が広がっている。不安心理の強まりは、株安や債券高につながり、金融市場全体をかき乱す要因となる。米国の株価が下がれば、利上げ判断にも響く。日本企業の業績に悪影響が出れば、設備投資や雇用、賃金にも影響が出て、回復途上の景気に水をさす結果となるだろう。

     ◇

 桑原真樹・野村証券シニアエコノミストの話 今回の人民元切り下げは、景気刺激にあらゆる政策を総動員しようという中国当局の意思の表れだ。背景に中国経済の減速があることを踏まえると、大幅切り下げで対策を打ったことは、日本を含む世界経済には、プラスに働く。元の価値が下がって中国の輸出が有利になっても、日本企業の輸出製品は高付加価値品が多く、中国との競合は少ないため影響は限定的といえる。中国での日本への旅行の関心は高まっている。足元の元安水準であれば、訪日旅行客に大きな影響が出るとは考えにくい。

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http://digital.asahi.com/articles/ASH8D5KG2H8DULFA01T.html

人民元引き下げ 世界経済への影響警戒
8月13日 5時01分

人民元引き下げ 世界経済への影響警戒
中国の通貨・人民元の「基準値」が2日続けて大幅に引き下げられたことをきっかけに、世界の金融市場では、中国の景気の減速が市場の想定以上に深刻なのではないかという受け止めとともに、世界経済に影響が及びかねないという警戒感が広がっています。
中国の中央銀行、中国人民銀行が、通貨・人民元の「基準値」を2日続けて大幅に引き下げたことを受け、12日の世界各国の株式市場では、株価が不安定な動きを続けました。
人民元の基準値の引き下げは、中国の輸出のてこ入れにつながる可能性がありますが、市場では、中国の景気の減速が想定以上に深刻で、中国の成長の恩恵を受けてきた資源の輸出国など世界全体に影響が及びかねないという見方が出ています。
特にアメリカの中央銀行に当たるFRB=連邦準備制度理事会によるゼロ金利政策の解除が近づき、新興国から資金が流出して市場が不安定になるという懸念に中国の景気減速が重なれば、先行きの不透明感が一段と高まるという警戒感があります。
一方、中国側は今回の引き下げについて、前の日の市場の終値を参考に実勢のレートをより重視する、為替制度の自由化の一環だと強調していて、改革を求めてきたIMF=国際通貨基金などは一定の評価をしています。
ただ、景気が減速するなかでの引き下げは、輸出を有利にしようと意図的に自国の通貨を切り下げる通貨安競争を世界にもたらしかねないという批判もあり、今後、論議を呼びそうです。
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人民元 2日連続で「基準値」大幅引き下げ (8月12日 19時08分)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150813/k10010188211000.html


2015.8.13 05:04
【主張】人民元切り下げ 「国際化」の看板はどこに

 経済悪化に対する習近平政権の危機感の表れなのだろう。中国人民銀行が2日連続で人民元の大幅切り下げに踏み切った。通貨安を追い風とする輸出拡大で、景気を支えるためだという。

 ここまで露骨な為替誘導は異例なだけでなく、各国の通貨安競争を誘発しかねない。経済大国として問題の大きい措置だ。

 何よりも恣意(しい)性の高い通貨管理は、中国が目指す人民元の国際化にも逆行する。これで国際通貨にふさわしいといえるのか。国際社会は冷静な見極めが必要だ。

 中国は、人民元の対ドル相場に基準値を設け、相場の変動幅を一定範囲に抑える「管理変動相場制」を採用している。その基準値を切り下げた。

 これを受けて日米の株価やアジア通貨が下落するなど、世界の金融市場に動揺が広がっている。

 見逃せないのは、人民銀行が理由の一つとして、貿易黒字の確保を挙げた点である。

 通貨安政策は自国の競争力を高める半面、他国の輸出産業に打撃を与えるなどの弊害もある。だからこそ、安易な誘導は自制すべきで、対外協調も求められよう。

 だが、中国にそうした姿勢はみられない。7月の輸出が大幅に減少するなか、なりふり構わず動いたとみるべきだ。

 かねて中国は、人民元を不当に安くする為替操作で輸出攻勢をかけていると米国から批判されてきた。今回の切り下げは、まさにその現実を物語るのではないか。

 一方、中国は、最近の基準値が実際の人民元相場より高めだったことも引き下げ理由に挙げる。市場の値動きに近い基準値とすることは為替取引の自由化に資するというのだろうが、これを額面通りに受け取るわけにはいかない。

 6月以降の株価乱高下に際し、株価を維持するため過剰な市場介入を繰り返した。政権が目指す金融・資本市場の自由化は、進展どころか、むしろ後退しているのが実情である。

 習政権は市場での存在感を高めるため、国際通貨基金(IMF)がドルや円などと並ぶ国際通貨として新たに人民元も採用するよう働きかけている。これに対しIMFが、人民元改革が確実に実行されるか見極める必要があるとして採用時期の先送りを決めたのは当然の判断である。前のめりに採用できる状況にはない。


2015.8.12 21:49
「構造改革は後回し」…悪化する実体経済に習指導部、景気対策本格化へ 人民元切り下げ


中国人民元の100元紙幣(共同)
 【上海=河崎真澄】中国人民銀行(中央銀行)が12日まで2日連続で人民元の対ドル為替レート「基準値」を引き下げて「元安誘導」の姿勢を鮮明にしたのは、実体経済が想定以上のスピードで悪化しつつあるからだ。中国国家統計局が12日発表した鉱工業生産などの経済指標は、軒並み鈍化した。習近平指導部は構造改革を脇に置く苦渋の選択をして、経済成長維持へ景気対策を相次ぎ打ち出す見通しだ。

 中国製造業の生産実態などを示す7月の鉱工業生産は、前年同月比6.0%増と前月から0.8ポイント低下した。国家統計局は「輸出不振」を最大の原因としてあげている。また、国内の消費動向を示す7月の小売り売上高は10.5%増と同0.1ポイント下がった。2ケタ成長は維持したが昨年7月は12.2%増だった。今年に入り11%を割り込んだ。

 このほかにも7月は発電量が2.0%減で、工業用需要の鈍さを示した。中国では、公式な国家統計以上に現場の経済情勢が落ち込んでいる恐れがある。

 習指導部は経済成長を低めに抑えながら、痛みの伴う経済構造改革を先行させる「新常態(ニューノーマル)」路線にかじを切ってきた。しかし、改革が本格化する前に実体経済が落ち込む症状が進行。このまま景気低迷を放置すれば雇用情勢に影響し、中国共産党政権が最も恐れる社会不安に結びつく、と強い懸念を抱き始めたとみられる。

 元安による輸出増を当面のカンフル剤としつつ、今後は追加利下げなどの金融緩和策や、公共事業の積み増しなどの景気対策を打ち出すことになりそうだ。

 ただ、過去の緊急経済対策の副作用ともいえる「影の銀行(シャドーバンキング)」をめぐる不良債権への対策も同時に進めねばならず、中国経済は雪だるま式に問題を抱え込んだままで坂道を転がり始めた。

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2015.8.12 21:28
人民元、異例の2日連続切り下げ 「通貨安戦争の“バズーカ砲”」との警戒感も


2日連続の人民元切り下げに踏み切った中国人民銀行。手前は人民元紙幣=12日、北京(共同)
 【上海=河崎真澄】中国人民銀行(中央銀行)は12日、上海外国為替市場で営業日ごとに決める人民元の対ドルの為替レート「基準値」を約1・6%引き下げた。前日の約2%に続き、2日連続で事実上、元を切り下げる異例の措置となった。輸出や消費の低迷、製造業の不振による成長鈍化に、習近平指導部が強い危機感を示した形だ。肥大した中国経済の抱える不安材料が「元安ショック」となって東京を含む海外の市場に飛び火し、動揺を広げている。

 人民銀行は同日、基準値を1ドル=6・3306元とし、11日の基準値比で1・6%の元安に設定した。元安が進めば、中国製品のドル建て価格が下がって輸出競争力が増す。ただ、12日付の香港紙が「中国は通貨安戦争を引き起こしかねない“バズーカ砲”を取り出した」と指摘するなど、アジアで安値輸出の競争への警戒感が広がっている。

 人民銀行は上海市場で元安が進んだ11日終値の同6・3231元に比べ、12日の基準値をさらに元安方向に設定し、政策としての元安誘導をより鮮明に打ち出した。12日は前日終値比で約1%の元安で引けた。

 中国が2005年7月に導入した為替市場の「管理フロート(変動相場)」制では現在、人民銀行が決める基準値から1日あたり上下2%の変動しかできない仕組み。人民銀行は今回の措置で基準値そのものを引き下げることで大幅な元安を演出したが、市場では人民銀行が今後、変動幅を3%前後に広げる可能性が高いとの観測も出ている。


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2015.8.11 21:31
人民元切り下げ 中国成長鈍化に焦り 「国際化は後退」


中国人民元の100元札(共同)
 【上海=河崎真澄】中国人民銀行(中央銀行)が人民元の対ドル為替レートの算出方法を変更し、11日に事実上、約2%の切り下げに踏み切ったことは、中国が輸出減少や内需低迷による成長の鈍化に強い焦りを感じていることを示す。一方、為替市場の自由化に逆行したかのような相場管理強化で、市場では「経済構造の改革路線や人民元の国際化は大幅に後退した」との見方が広がっている。

 11日の上海外国為替市場で、人民元の対ドル相場は前日終値比1・8%安と急落して取引を終えた。下落幅は1994年の市場開設以降で過去最大だった。

 中国が元安誘導へ経済政策のカジを切り、初日からこれほどの元安を容認した背景には、国内総生産(GDP)成長を支える実体経済の指標がいずれも振るわない厳しい現実がある。

 8日発表された7月の貿易統計で輸出入を合わせた総額が前年同月比8・2%減と、5カ月連続で前年同月を下回った。賃金高騰と元高のダブルパンチで輸出競争力が低下している。11日発表された7月の新車販売台数も同7・1%減で4カ月連続のマイナスと、内需の弱さを示している。

 上海株急落で個人消費は伸び悩んでいる。人民銀行は基準値に対する1日あたりの為替変動幅を、現在の上下2%からさらに広げる措置も検討中で、元安による景気浮揚を目指す。

 また、昨年11月から4回行われた政策金利の引き下げなど金融緩和で、次なる利下げも視野に入った。公共事業など投資拡大による大型景気対策も打ち出さざるを得ないとみられる。

 習近平政権は約2年前の誕生以来、国有企業の経営再編など痛みの伴う構造改革を優先させる「新常態(ニューノーマル)」路線を標(ひょう)榜(ぼう)してきたが、想定以上に実体経済が悪化し、成長優先路線にひとまず戻らざるを得なくなったようだ。

 また、中国が国際通貨基金(IMF)に特別引き出し権(SDR)の構成通貨に人民元の採用を求めている問題では、「IMFが中国為替市場の自由度が後退したと判断すれば、年内の人民元採用は難しい」(市場関係者)という。人民元の国際化戦略にも、急ブレーキがかかった格好だ。


2015.8.11 21:59
人民元切り下げ 日本企業 経常益400億円余減少も SMBC日興証券が試算

 SMBC日興証券は11日、中国人民銀行による人民元の事実上の切り下げについて、中国に進出する日系企業の経常利益を400億円余り押し下げるとの試算をまとめた。元建て収益を円換算した場合に目減りするため。平成25年度の収益実績で試算した。

 同証券によると、日本企業の中国向け輸出はほぼドル建てか円建てのため、元切り下げの影響はほとんどないという。

 一方で、中国に進出する日系企業(現地法人)は現地で元建てで商売しており、人民元切り下げ分を単純に円換算すると、現地法人の年間売上高は4193億円、経常利益は444億円目減りするとしている。

 業種別の利益減少額は自動車など「輸送機械」が146億円、商社など「卸売業」が92億円、「電気機械」が37億円。

 同証券株式調査部は「日本企業全体でみれば直接的な影響は利益が0・14%目減りする程度だが、中国の実体経済の悪化が深刻であれば対中輸出も落ち込みかねない」と分析している。

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https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=newssearch&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0CB8Q-AsoAzAAahUKEwiJwLWs2qTHAhXj5aYKHQnLBo8&url=http%3A%2F%2Fwww.sankei.com%2Fworld%2Fnews%2F150813%2Fwor1508130008-n1.html&ei=zNfLVYmqA-PLmwWJlpv4CA&usg=AFQjCNHM28p27PEqTLgcRzeBQ86Wdd7fhQ&bvm=bv.99804247,d.dGY


人民元、連日の切り下げ 習政権の政策転換鮮明に
2015/8/13 2:01日本経済新聞 電子版
 中国当局が2日連続で人民元の基準値を切り下げ、輸出に追い風となる元安の方向に相場を誘導する姿勢を明確にした。想定を上回る景気の減速を踏まえた通貨政策の転換は世界2位の経済大国の危機感を映す。予想外の動きは12日、アジアに続き欧米で株安が進むなど中国発のリスクとして市場を揺さぶっている。


 中国人民銀行(中央銀行)は12日、対ドルの為替レートの目安となる基準値を前日より1.6%引き下げた。2%近く下げた11日に続く措置で、人民元相場は一時、約4年ぶりの安値水準をつけた。一定の範囲内で緩やかな元高の方向へ動く管理変動制を2005年7月に採用してから、ここまで急激な元安誘導は初めてだ。

 12日はアジア株が全面安となったほか、欧州でドイツのDAX指数が約3%下落し、米国ではダウ工業株30種平均が一時300ドル近く下げた。

 今の世界の市場心理を象徴する銘柄が、12日の東京株式市場にある。JFEホールディングスだ。株価の下落率は日経平均株価(1.6%)を大きく上回る7%に達し、年初来安値を更新した。同社は「中国関連株」だ。鋼材の大消費国である中国の景気減速で鋼材市況も低迷し、7月に今期の業績予想の下方修正に追い込まれた。

■通貨安競争も

 「市場に驚きを与えてまで景気刺激に注力しなければならないほど、中国経済は悪化している」(JPモルガン証券の足立正道シニアエコノミスト)。警戒感から中国が主な買い手の原油や銅なども売られている。

 ただでさえ7月からの中国株の変調やギリシャ問題で、市場心理は世界的に萎縮していた。米調査会社トリムタブズによれば、米国株を投資対象とする投資信託からは7月、4年ぶりに大規模の資金が流出した。

 7月は中国の生産、投資、消費の伸びが鈍った。昨秋以降、人民銀は金融緩和を重ねて景気のテコ入れを試みたものの効果は乏しい。政府の今年の目標である「7%成長」がかすんできた。

 現在、河北省の避暑地では習近平国家主席ら現役指導者と長老が集まって国政の重要課題を話し合う「北戴河会議」が開かれているとみられる。このタイミングでの通貨政策の変更に、景気の安定を最重要視する習指導部の切迫感がにじむ。

 元安誘導で短期的に懸念されるのは相対的に競争力が落ちる国々だ。ベトナムは12日、通貨ドンの変動幅を広げて水準を切り下げられるようにした。中国に対抗して自国通貨を低め誘導する「通貨安競争」、さらには保護主義への誘惑が浮上する恐れもある。

 長期的な影響は未知数だ。中国当局の狙い通り輸出を刺激できれば経済は一息つけるのかもしれない。だが、不動産価格の下落や株価の乱調で家計は厳しい情勢にある。資産価格の下落が1990年代の日本のような金融システムのきしみを招く「日本化」の可能性も指摘されている。

 中国の成長率が7%から下振れした場合、影響は広がる。米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズによると、中国の成長率が2年間で2%下振れしたら、香港や台湾は2%以上、韓国やシンガポールは約1%それぞれ下振れする。

■日本にも逆風

 日本にも逆風は吹く。6月の外国からの工作機械受注は前月比も前年同月比も落ち込んだ。中国、タイ、ベトナムなどからの受注減が響いた。

 世界の目は、9月にも9年ぶりの利上げが見込まれている米連邦準備理事会(FRB)の一手に集まる。中国発の世界的な景気不安を気にして、利上げをためらうのか。変数が1つ増えた。

 マネーは、リスクの度合いが測れない状況を最も嫌う。波乱の芽を摘むのも、膨らませるのも、米中次第となってきた。

(編集委員 梶原誠、北京=大越匡洋)



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