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原油価格を大きく揺さぶる中国経済 サウジアラビア減産も焼け石に水(JBpress)
http://www.asyura2.com/15/hasan99/msg/696.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 8 月 14 日 07:35:35: igsppGRN/E9PQ
 

             中国の100人民元紙幣(資料写真)。(c)AFP/Frederic J. BROWN〔AFPBB News〕


原油価格を大きく揺さぶる中国経済
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44527
2015.8.14 藤 和彦 JBpress


 8月11日のニューヨーク原油市場のWTI先物価格は、中国政府が通貨切り下げに踏み切ったことに加え、OPEC(石油輸出国機構)加盟国の増産を嫌気して、1バレル=43.08ドルと2009年3月3日(同41.65ドル)以来約6年5カ月ぶりの安値となった。WTI原油先物価格は過去6週間で26%減少している。

 8月11日の人民元の対ドルレートは約1.9%と大幅下落し、2013年4月25日以来の最安値となった。7月の輸出額が市場予想を上回る大幅な減少(前年比8.3%減)となったことに危機感を抱いた中国政府が、国内の製造業支援のために「元安」方向に誘導するという「劇薬」を投じた結果である。

 原油価格が下落したのは、人民安によりドル建てで輸入される原油が割高となることから中国の原油輸入が減少するとの懸念からである。

 中国政府は8月12日も人民元レートを約1.6%下落させた(13日も約1.1%下落させた)。しかし劇薬には副作用がある。

 8月11日付ブルームバーグによれば、中国企業が抱えるドル建て・ユーロ建ての社債・融資は5290億ドルに上り、人民元が切り下がったことでその債務コストが100億ドル膨らむ可能性がある(8月12日と13日の人民元再切り下げでコストはさらに拡大した)。

 また国際決済銀行(BIS)統計によれば、中国の対外債務はリーマン・ショック直後の2455億ドルから1兆2533億ドル規模まで急増しているが、借り入れの中心が期間1年未満の短期外貨建てであることから、常にロールオーバー(債務の繰り越し)圧力にさらされている。後述するように中国経済の減速感が高まれば、海外の投資家の反応が悪くなり、外貨の資金繰りが厳しくなるだろう。

■ 中国政府の想像以上だった人民元切り下げのインパクト

 ここに来て原油市場関係者の注目は中国経済の動向に集まってきている。

 中国政府が通貨切り下げを行った前日(8月10日)の原油価格は、中国の原油輸入量が予想外に大幅に増加し中国需要への不安が払拭されたとして大きく反発していた(1バレル=1.09ドル高)。中国の7月の原油輸入量は、前年比29%増の3071万トン(日量747万バレル)となり、過去最高となった前月の2949万トン(日量約718万バレル)を更新した。原油輸入を積極化させている要因は、「安値を利用した在庫積み増し」だとする見方が有力である。政府の今後の景気対策により原油需要が増加するとの期待からも、原油価格は上昇した。

 しかし、景気対策の第1弾である人民元切り下げ措置は、市場関係者にとって大きなマイナスのメッセージだった。

 習近平政権が2年前に誕生して以来、国有企業再編など痛みを伴う構造改革を優先させる「新常態(ニューノーマル)」路線を標榜してきた。だが、人民元切り下げという世界で通貨切り下げ戦争を誘発しかねない「禁じ手」で出てきたことで、想定以上に実体経済が悪化している印象を市場関係者が認識することになってしまった。人民元切り下げがこれほど中国経済のイメージを悪化させてしまうとは、中国政府も考えていなかっただろう。

■ 中国の本当の経済成長率は? 

 中国の今後の原油需要を大きく左右するのは、「モータリゼーションがどこまで進むか」にかかかっていると言っても過言ではない。しかし、世界最大の自動車市場となった中国の上半期の新車販売台数は4、5、6月と前年割れが続いたため若干増にとどまった。さらに7月の新車販売台数は、株安の影響もあり前年比7.1%減と、リーマン・ショック後の2008年12月(11.6%減)以来の減少幅だった。

 8月10日付日本経済新聞は「中国の『資源爆食』が終わる」と題する論説記事を掲載した。その中で「中国の爆食で資源が不足する懸念から資源の余剰で産出国の経済が冷え込み世界に悪影響が及ぶ懸念へ」とチャイナリスクの内容が大きく変わりつつあることを指摘している。

 中国政府が公表する経済成長率に真っ向から異議を唱える動きも出てきている。中国の今年上半期のエネルギー消費の総量は前年比0.7%増、同期間のGDP成長率は前年比7%増とされているが、エネルギー効率が徐々に改善しているとしても、エネルギー消費の伸び率がGDP成長率の公表数値とあまりにもかけ離れているからだ。

 8月6日、英調査会社ファゾム・コンサルテイングは、中国政府が発表する数値に代えて同社が独自に試算した数値を中国のGDP成長率として公表することを決めた。同社が公表する数値は、李克強首相が遼寧省党委書記を務めていた頃に同省の経済評価を行う際に重視していた「電力消費」「鉄道貨物量」「銀行融資」の3つのデータを基に作成されている。それによると、今年の中国の成長率は2.8%、来年はわずか1.0%にとどまるという。

■ 資金を引き揚げ始めたヘッジファンド

 21世紀に入り急成長を遂げた中国経済の原動力は、安価な労働力と海外からの大量の資金流入である。中国では現在も、海外からの投資に対する様々な規制が存在しているが、世界のヘッジファンドたちはその規制をくぐり抜け、巨額の資金を中国に持ち込んだと見られる。

 8月10日付ロイターによれば、中国株式市場で数百に上る海外のヘッジファンドらが厳しい規制をかいくぐって投機的な手法を駆使して投資を行い、最近、ますます存在感を高めているという。

 しかし中国経済に陰りが見え始めたため、ヘッジファンドらは資金を中国に入れる代わりに他国へ移し始めたとされている。中国への投資資金は安定投資家の比率が低く、経済が厳しくなるとこれに追い打ちをかけるような構造になっているため、金融主導で今後景気が一気に冷え込んでしまうかもしれない。

■ 中国のバブル崩壊で大打撃を受けるドイツ

 安価な労働力も失われた今、不動産や株式などの資産効果でなんとか成長路線を保っている中国経済が資産効果を失ったときにどうなるのだろうか。

 日本の場合、1970年代後半から90年までが4%成長時代で、90年のバブル崩壊以降ゼロ成長になっていった。中国の場合は4%成長の段階を通り越して「一気にゼロ成長に入る可能性がある」と囁かれ始めている。経済が日本のバブル崩壊のような経験をした時、中国の社会システムは果たして耐えられるだろうか。

 中国経済の世界に占めるシェアは、バブル崩壊の頃の日本とあまり変わらないが、輸入に占める割合は格段に大きいため、中国バブルが弾けて輸入が急減すれば、世界経済に大きなダメージが及ぶだろう。

 8月4日付独フランクフルター・アルゲマイネは「中国経済が衰退すればドイツは最も影響を受けやすい」と報じた。リーマン・ショック以降、ドイツは中国との経済関係を強化してきた。中国はドイツにとって4番目の貿易パートナー(輸出に占める中国向けは約8%)となり、ドイツはユーロ圏で唯一中国との貿易で黒字を計上している。ドイツ経済界の中国への直接投資額も「うなぎ登り」の勢いであり、金融機関も中国で積極的に業務を展開している。中国からの需要で最も恩恵に浴したのが自動車産業だ。鉄道部品、医療機器なども伸び率の高い市場をがっちり押さえていた。

 このような蜜月ぶりから「中国が主導するAIIBやシルクロード構想はドイツとの合作ではないか」との憶測さえも生まれている。

 しかし、ドイツの中国への輸出はこのところ増加していないため、ドイツ経済の景況感が悪化しつつある。

 日本では「インダストリー4.0」(工程のデジタル化により製造コストを大幅削減する試み)というドイツの産業政策が喧伝されているが、リーマン・ショック後のドイツ経済の成長はユーロ安による輸出拡大によってもたらされたものである。「第4の産業革命」と言われながら国内の設備投資は低迷したままだ。

 欧州で「1人勝ち」のドイツが中国バブル崩壊で大打撃を受ければ、ギリシャをはじめとする南欧諸国の財政危機が再び悪化することは必至だ。ドイツの「独断ぶり」がますます欧州各国との摩擦を高めることになることが懸念される。

■ サウジが減産するも原油価格の下落は止まらず

 話題をOPECに転じると、8月12日に公表した月報によれば、7月のOPECの原油生産量は前月に比べて日量ベースで約11万バレル増加して同3151万バレルとなり、約3年ぶりの高水準となった。最も産油量を増加させたのはイラクで、日量約5万バレル増の同410万バレルだった。イランも日量約3万バレル増の同286万バレルとなり、制裁開始直前の2012年6月以来の水準となった。

 一方、このところ増産基調だったサウジアラビアは、予想に反して日量約20万バレル減少して同1036万バレルとなった。減産量は2014年8月以来で最大である。OPEC内で高まる不協和音を考慮して「盟主」としての苦渋の決断をしたようだ。

 しかし加盟国の不満は収まっていない。8月10日、アルジェリアのエネルギー相は「OPECが原油価格の下落に関する緊急協議を開催することを検討している」ことを明らかにした。同国はシェールオイル増産により米国への原油輸出が急減しており、窮地に追い込まれている。

 OPEC幹部は臨時総会の開催を否定したが、財政事情が厳しく年末までに大量の国債発行を計画しているサウジアラビア政府が再び増産に転じることが予想されるなど、OPEC内での調整は今後も難航することが予想される。

■ 原油価格の急落が債券市場を直撃

 最後にシェール企業の動向を見ると、8月8日、米石油サービス会社ベーカー・ヒューズが発表した週間の掘削設備(リグ)稼働数は、3週間続けて増加した。シェール企業関連はますます「赤字操業」が常態化し、債権の焦げ付きリスクがさらに高まっている。また8月11日以降の人民元切り下げでエネルギー企業のジャンク債の価格低下に拍車がかかっている(8月13日付ブルームバーグ)。

 8月7日付ブルームバーグによれば、潜在的なリターンが10%を超える数少ない債券投資の手段としてここ数年ヘッジファンドの人気を集めてきた「CLOのエクイティ部分」の実績が、今年上半期の原油価格の急落で状況が変わり、低迷しているという。

 CLOのエクイティ部分とは、ジャンク級の貸付債権プールを裏付けとする「ローン担保証券(CLO)」の複数のトランシュ(フランス語で「区分」という意味)の中で“リスクの最も高い部分”をまとめたもの。典型的なハイリスク・ハイリターン商品である。

 CLOのエクイティ部分の市場規模は貸付残高ベースで推定400億ドルと小さいが、2008年のように信用サイクルが悪化すれば、「流動性の蒸発」が生じて次の金融危機の火種になりかねない。

 8月11日グリーンスパン元米連邦準備制度理事会(FRB)議長はブルームバーグのインタビューの中で、「債券市場でバブルが差し迫っている」と投資家に警告を発した。「100年に一度の金融危機」が再び勃発することだけは勘弁してほしいものである。


 

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