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快走マツダ、その異質な経営 「事業目標・市場分析なし」は本当?市場の2%のみを対象(Business Journal)
http://www.asyura2.com/15/hasan99/msg/722.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 8 月 16 日 00:35:45: igsppGRN/E9PQ
 

快走マツダ、その異質な経営 「事業目標・市場分析なし」は本当?市場の2%のみを対象
http://biz-journal.jp/2015/08/post_11128.html
2015.08.16 文=水野誠/明治大学商学部教授 Business Journal


■元気なマツダで何が起きているか


 最近、マツダが元気だといわれています。2015年度3月期決算で、売上高、営業利益、純利益とも過去最高の水準になりました。トヨタ自動車や独フォルクスワーゲンのような巨大自動車企業ではありませんが、個性的な製品開発を進めて、着実にその地歩を固めているように見えます。


 では、本連載で過去2回にわたって解説してきた、マーケティングの基本戦略STP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)において、マツダはどのようなことを実践してきたのでしょうか。グロービス経営大学院の川上慎市郎准教授は、2014-15年のカー・オブ・ザ・イヤーを受賞した新型デミオについて、その成功要因を「STPしないこと」に求めています。川上氏は以下のように述べています。


「マツダの製品開発プロセスは、まず世界中から『マツダのクルマが大好きだ』というユーザーを選び、その価値観(インサイト)を徹底的に明らかにするところから始まります。(略)顧客セグメント推定やそれに基づいた市場規模計算、事業予測などは一切しません。狙い定めるのは、マツダが『こういう人にこそ、うちの顧客になってほしい』と思える価値観を持ったユーザーだけです。(略)同じセグメントやスペックの近い製品ではなく、似たような価値観・世界観を備えた製品だけが競合になります」(2014年10月22日付サイト「cakes」記事『マツダを救った新型デミオの「STP」しないマーケティングって?』https://cakes.mu/posts/7307より)

 つまり、マツダはSTPに基づくアプローチを取らないことでデミオを成功させたというわけです。ジャーナリストの池田直渡氏によれば、マツダに取材して事業目標を尋ねると「笑顔になれるクルマをつくること」「2%の人に満足してもらえるクルマをつくり続ける」などという返事があるそうです。そこで池田氏は「マツダは商業としての目標を持っていない。だからマーケティング的なビジネス戦略を聞いても無駄なのだ」と述べています(7月13日付「ITmediaビジネス」記事『「常識が通じない」マツダの世界戦略 (1/5)』http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1507/13/news034.htmlより)。


■トップダウン型発想 vs. ボトムアップ型発想


 マツダが最近好調なのは、マーケティングの教科書に書かれているSTPを「しない」からだということになると、これまで本連載で述べてきたことは無意味だったのでしょうか。


 そのことを考える上で、マーケティングにはトップダウン型とボトムアップ型の2つの発想がある、という筆者独自の視点について述べてみたいと思います。


 20世紀に興隆し、米経営学者フィリップ・コトラーらによって体系化されてきたマーケティングは、市場全体をセグメントに分割し、最適なターゲットを設定し、競合製品との差別化のためにポジショニングを行うことを推奨します。これがSTPですが、それを的確に行うには、市場全体を俯瞰してとらえることが望まれます。市場全体を上から眺めて管理しようとする点で、これはトップダウン型の発想といえます。ちなみに、企業トップの権限が強い、という意味でのトップダウンとは違います。


 これに対置されるのが、ボトムアップ型の発想です。もともと長い付き合いがあったり、偶然遭遇したりした中核的顧客との対話を通じて、製品やサービスを開発していくアプローチです。試行錯誤を通じて一定の成功を収めれば、周囲に顧客を拡大していきます(図1)。


 このボトムアップ型発想は、近代的なマーケティングが普及する以前には一般的であったと思われます。そして、その後も完全に消え去ることなく、マーケティングの現場に生き残り、最近ではむしろ、脚光を浴びるようになっています。詳しくは、昨年出版された拙著『マーケティングは進化する―クリエイティブなMarket+ingの発想』(同文舘出版)をご参照ください。http://www.amazon.co.jp/dp/4495646613



 前述したマツダの事例は、まさにボトムアップ型発想に立っています。「マツダのクルマが大好きだ」という、市場全体ではどちらかというと少数の中核的顧客を満足させることが最優先されています。中核的顧客は市場全体を見渡して最適解として選択されたのでなく、すでに絆が形成された、運命づけられた存在です。彼らが「笑顔になり」、それが周囲に波及して一定の売り上げと利益が得られればよいとされ、シェアがどうであるかは二の次とみなされているわけです。


 市場がまだ未確立で、潜在顧客の全体像をつかむことが難しい場合、当然ながらボトムアップ型発想に立たざるを得ません。米シリコンバレーの起業コンサルタント、スティーブン・ブランク氏は、ベンチャー企業が製品開発を行う場合、初期の顧客との対話が重要であると説いています。彼はそのプロセスを「顧客開発」と呼んでいます(『アントレプレナーの教科書』<翔泳社>http://www.amazon.co.jp/dp/4798117552より)。

 もちろん、自動車市場は成熟期にあり、マツダはベンチャー企業ではありません。しかし、マツダは自動車市場全体で起きていることを眺めて、トップダウンに戦略を立てるより、自分たちと中核的顧客との対話を通してボトムアップに戦略を構築することを優先しているように見えます。それは、未知の市場に乗り出そうとするベンチャー企業の意識に近いといえるのではないでしょうか。


■これからはボトムアップ型発想が席巻するのか


 以上より、これからのマーケティングはすべからくボトムアップ型発想にならなくてはならない、と主張しているように感じられるかもしれません。いうまでもなく、それは単純すぎる見方です。マツダは世界の自動車市場の2%を対象にしているので、市場全体の動向はあえて無視するという割り切りができますが、トヨタなどはそうはいかないでしょう。また、マツダにしても、時と場合によってはトップダウン型発想に立つ必要があるでしょう。


 マーケティングにおけるトップダウン型発想とボトムアップ型発想の関係は、図2のように描くことができます。トップダウン型発想のもとでは、市場全体を俯瞰してターゲティングとポジショニングが行われ、それに基づいてブランド・アイデンティティが形成されます。そうしたアイデンティティの探求がより深く、鋭く行われると、ターゲットとする顧客もまた、そこに共感する尖った人々に絞られていきます。それが中核的顧客となり、対話の対象となるとき、ボトムアップ型発想が始まります。



 マツダは、以前はトップダウン型発想に基づくマーケティングを展開していたはずです。しかし、いくつかの危機を迎えて自分たちのブランド・アイデンティティと中核的顧客を見直す作業を徹底して行うようになったと考えられます。それが、筆者が定義した意味でのボトムアップ型発想の導入につながったのでしょう。


 しかし、今後順調に顧客基盤が拡大しライバルとの競争構造が安定してくると、マツダが再び市場全体を展望するトップダウン型発想を強める可能性があるかもしれません。だからといってマツダが全面的にトップダウン型発想に戻るわけではないはずです。


 今後のマーケティングでは、状況に合わせてトップダウン型発想とボトムアップ型発想を使い分け、うまく組み合わせることが重要になってきます。なぜなら、市場に関して利用可能な情報は、常に変化するからです。もちろん多くのマーケターは、どちらかというとボトムアップ型発想へのなじみがないので、それを自分たちのスタイルのなかに組み入れることに当面腐心すると思いますが。


(文=水野誠/明治大学商学部教授)


 

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コメント
 
1. 2015年8月22日 07:13:28 : EH174dfWo
かつてカーグラフィック編集長だった小林彰太郎氏は、1968年に次の本を著しておられる。

二玄社刊「ミニ・ストーリー 小型車の革命」
ローレンス・ポメロイ著
アレック・イシゴニス序
小林彰太郎 訳

●当時のカーグラフィック発行元の二玄社から出された単行本である。かつてBMCの技術者で、自動車ジャーナリストのローレンス・ポメロイ氏の著作で、BMCミニの開発者アレック・イシゴニス氏が序文を書いておられる。

ここでローレンス・ポメロイ氏が強調しておられる部分がある。市場調査に左右されない自動車作りを行っているメーカーは、フランスのシトロエンと西ドイツのメルセデスだけだと書いておられるのだ。マツダが目指すメーカーのあり方が、かつてのシトロエンやメルセデスの方向なのである。

ほとんどの自動車メーカーがそうだが、他の工業製品のメーカーも、新製品を開発するに当たって、市場調査を行ない、売れそうなデザインや技術を採用する。これが普通のやり方となっている。日本メーカー(特にトヨタ)は、この方法で大きくなってきた。

これに対し、西欧のメーカーは全般に技術者の意向に任せる傾向が強く、その中でも顕著なのが、かつてのシトロエンとメルセデスだったと言える。1974年に倒産するまでは、シトロエンは技術者が取り仕切っていたのである。同社は、前輪駆動方式や油気圧式サスペンション、空気抵抗の少ない車体など、革新的な製品で知られたが、まさに他社の動向に左右されない、「独創的な自動車作り」を実践していたのである。アンドレ・ルフェーブル氏が設計し、フラミニオ・ベルトーニ氏がデザインされた一連の車種は、自動車の枠を超えて、歴史に残る工業製品の輝きを放っている。

メルセデスも1980年代にロイター会長が就任して、数と規模を追う経営方針に転換するまでは、フォルクスワーゲンやオペルと競合しない中型車以上の車種に絞って生産していた。

両社が採用していたユニークな納車システムがある。海外の顧客が、注文した自動車を工場で受け取り、そのまま西欧各国を旅行して、そのまま本国に帰ると言うものだ。この方法を利用していたのはアメリカの顧客が多かったそうだが、本人は途中で飛行機で帰国し、自動車は船で運ばれたそうだ。

●市場調査の結果に左右されない自動車作りは、本場の西欧でも衰退してしまったが、自動車メーカーの技術者やデザイナーが望む開発方式であることは言うまでもなく、マツダもフォードの傘下を離れたのを契機に本格化したと思うのだ。この方式は売れないリスクを抱えるデメリットはあるが、熱狂的なファンを獲得する可能性がある。買い替えのたびに、浮動票に頼る他メーカーのあり方に、一石を投じていると言える。

この方式を取り入れている自動車メーカーは、マツダのみならず、スバルも含まれるだろう。スバリストと呼ばれる熱狂的なファンを獲得していることが、今日の躍進に結びついている。下位メーカーは、大手メーカーと同じことをやっていては、いずれ負けてしまう。それに気がついて、これまでのやり方を改めたマツダやスバルに大きな拍手を送りたい。


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