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2016年9月14日 木原洋美 [医療ジャーナリスト
女子高生まで!梅毒の感染拡大が止まらない理由
昔は代表的な性感染症として知られた梅毒だが、患者数が急増している。現在の法律に基づく調査が始まって以降、今年は既に最も患者数が多かった昨年の報告数を上回っている(国立感染症研究所「感染症発生動向調査」による)。かつては遊び人がかかる病気というイメージが強かったが、現在は「梅毒」という病気を知らない若い女性の患者が増えていることが大きな要因にもなっている。(医療ジャーナリスト 木原洋美)
皮膚科から回されてきた
あどけない女子高生患者
「梅毒の疑いあり」――
所見と共に皮膚科から回されてきた患者は女子高生だった。
全身に淡紅色をした爪ぐらいの大きさの斑点ができている。梅毒の症状の1種「バラ疹」だ。感染3ヵ月から3年までの間に出現することが多く、痛みもカユミもない。放置していても自然に消えるが、年頃の少女にとっては一大事。心配する母親に付き添われ、大慌てで受診したのだった。
「梅毒ですね」
抗体検査を実施し、診断結果を告げると、母親が「えっ」と聞き返した。もう一度病名を告げると、たちまち目から涙があふれ出す。口元がワナワナと震え、言葉が出ない。
一方娘は、状況が呑み込めないのかきょとんとしている。
(こんなあどけない女の子が梅毒とは…)
同年代の娘の父でもある感染症専門医F氏には、母親の気持ちがよく分かる。それだけに、仕事とはいえ気が重くなるのだ。治療のために、性交渉の経験やら同性愛の有無など、非常に聞きづらい事柄についても、問診しなければならない。母親にはとても聞かせられないし、少女の側も、F氏のようなオジサンには話してくれないだろう。
婦人科医の協力を仰ぐことにして、院内電話に手をかけた。
梅毒の感染拡大が止まらない
このままでは年末に4000人を突破!?
この数年、梅毒の感染拡大が止まらない。2015年の報告数は過去10年で最多の2660人。14年より1000人増だったが、今年は8月後半(8月21日)の時点で既に2674人。このままいけば年末には4000人を上回る可能性が高いと見られている。地域別では関東が1484人と最も多く、次いで近畿542人、中部の282人と続く。
特に勢いが凄まじいのが、若い女性における増加だ。当初流行の中心は男性同性愛者だったのだが、最近は異性間の性的接触による感染が増加し、女性は2011年の177例から15年には769例に増えている。5年間で4倍以上に増えてしまった計算だ。しかも15〜19歳は11人から76人に、20代は49人から382人に増えている。
若い女性に流行することで必然的に心配されるのは、先天性梅毒患者として生まれてくる赤ちゃんの増加だ。妊婦が梅毒に感染すると、流産や死産の原因となったり、先天性梅毒の赤ちゃんが生まれたりする可能性があると、専門家は危惧している。
◆年齢(5歳階級)別にみた女性の梅毒報告数の年次推移
資料:厚生労働省「感染症発生動向調査」
※平成27年の報告数については、概数である。(平成28年3月現在)
http://diamond.jp/mwimgs/2/d/-/img_2d91a948f21aa8b5dcd24eec62d481c0185675.jpg
意外と知られていない
梅毒のさまざまな症状
「梅毒って何?」
冒頭の少女がきょとんとしていたのも無理はない。
かつての日本では「花(鼻)が落ちる花柳病」と怖れられ、非常にポピュラーだった梅毒も、現代の若者たちにとっては、聞いたこともない謎の病気かもしれない。
大人世代にとっても、その昔「江戸わずらい」と呼ばれた「脚気」のように、もはや「昔々の病気」というイメージが強い。
実際日本では、1940年代のペニシリンの普及以降、発症数は劇的に減少していた。読者の中には2011年に放映された大ヒットドラマ「JIN−仁−」(TBS)(※)を視て、初めて存在を知った人も多いのではないだろうか。
梅毒は「梅毒トレポネーマ」という細菌によって引き起こされる感染症である。性行為による感染が多いことから性感染症に分類される。進行の仕方としては「3週間3ヵ月3年」というパターンが有名だ。
◆「1期梅毒」(感染から3週間程度)
感染部位(主に性器)に痛みのない小豆大のしこりができたり、リンパ節が腫れたりする。しこりは潰瘍になることもあるが、いつの間にか自然消滅してしまう。この時点では、あまり目立った症状があらわれないため、気がつくのは難しい場合が多い。
◆「2期梅毒」(感染後3ヵ月経過)
手足の平や背中など、全身に「バラ疹」と呼ばれる赤色系の斑点(発疹)があらわれる。さらに脱毛、発熱、疲労倦怠感、全身のリンパ節が腫れるなどの症状もともなう。バラ疹もしばらくすると自然に消えてしまう。
◆「3期梅毒」(感染後3年以上)
皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍(ゴム腫)が発生してくるが、さすがに医療の発達した現代の日本では、ここまで悪化させるケースは稀だ。
※原作は、村上もとかの人気漫画。ある事件がきっかけで江戸時代にタイムスリップした現代の脳外科医が、自らも幕末の動乱に巻き込まれていく。ドラマの中で主人公は、梅毒に侵された遊女を救うため、坂本竜馬らの協力を得て、特効薬のペニシリンを作りだした。
どうして感染が拡大しているのか
「身を守る術を知らない」若者の実態
感染拡大の理由としてまず挙げられるのは、「性行為の低年齢化」と「コンドームを使わずに性行為を行う人が増えている」ことだ。これは、梅毒に限らずすべての性感染症に当てはまる。自分の身を守る術を知らないまま、遊び感覚で性行為を行い、感染してしまっているのだ。
ただし、感染した人たちイコール「遊び人」と見なすのは間違いだ。
真剣な恋愛の中で性行為をした相手の元カレや元カノが、さらにその元カレや元カノから感染させられていた可能性も、普通に考えられるからだ。
今、目の前にいる相手が、いくら誠実で真面目だったとしても、過去の相手まではチェックできない以上、「性行為の際にはコンドームを使い、オーラルセックスはしない」ことぐらいしか、自己防衛の手段はないように思う。
また性感染症は、梅毒以外にもクラミジア、トリコモナス性膣炎等、全般的に増えており、しかも複数の性感染症を同時に発症させているケースが多いという。
特に、梅毒との併発が多いのは「HIV」だ。
よって治療ガイドラインにも、「梅毒を発症している患者にはHIVの検査を行うこと」とある。症状は抑えられても、一生治せない病気になってしまう危険性もあることを、一体どれだけの人が自覚しているだろうか。
「教育は必要だと思いますよ。腹痛で受診した若い女性に性感染症であることを教えたら、今まで病気のことも、身体の守り方も、誰も教えてくれなかったと泣いていましたから」(前出のF医師)
紛らわしい症状で見逃される
やっかいな「過去の病気」
もう1点、梅毒は症状が多彩な反面、決め手となる目立った症状はないため、様々な診療科で見逃されている可能性があり、それも感染拡大の要因になっていると考えられる。
F医師は言う。
「眼科や内科、皮膚科、歯科、婦人科等を受診して、まったく別の病気と診断され、発見が遅れてしまうケースは多いと思います。例えば梅毒のバラ疹には、ジベルばら色粃糠疹(じべるばらいろひこうしん)という紛らわしい皮膚病があります。抗体検査をすれば区別できますが、医療従事者が疑いを持たなければ、見逃されてしまうでしょう。冒頭の少女の場合は看護師が、痛みもカユミもないことに注目し、皮膚科医に伝えて判明しました」
実際の梅毒を診察したことがない上に、「過去の病気」という認識しかなければ、医師も「梅毒」という病名はなかなか思い浮かばないかもしれない。
「ちゃんと見つけてもらうには、感染症科がある大きな病院を受診するといいでしょう。そういうところであれば、他の科を受診した場合でも、感染症科へ回してもらえるはずです」
不幸中の幸いというべきか、梅毒は治療すれば治る。
「病変が脳の周りの髄液まで入り込んでいる状況でも、薬物治療で治ります。早く発見し、抗生物質を使い、きちんと治療すれば大丈夫ですよ」
参考に見せてもらった写真では、息をのむほどおぞましい症例の患者も、治療でキレイに治っていた。だから万が一、我が子や恋人に疑わしい症状が出たとしても、勇気を持って医療機関を受診させ、医師の指示のもと完全に治療させてあげよう。またカップルの場合は、同時に治療するのが鉄則だ。
http://diamond.jp/articles/-/101836
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