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日経新聞はＴＰＰを“中国包囲網”に位置づけたいようだが、フィリピンが参加に傾いたのは、安全保障よりも経済的利益を考えたうえである。
記事は、「フィリピンにとって、ＴＰＰ加盟は経済的理由よりも安全保障の意味合いが強い。ロドルフォ次官補によると、すでにＴＰＰ加盟12カ国のうち多くの国とはＦＴＡを結んでいるほか、米国との貿易も70％は無関税だ」と説明しているが、サプライチェーンや“累積原産地規制”（ＴＰＰ加盟国以外で生産した部品などの割合が高いと関税特典が適用外）を考えると、日本企業が途上国に部品工場をつくるさいＴＰＰの加盟国かどうかは大きな判断基準になる。
付加価値が大きい部品や中間品の生産拠点を誘致したいと考えるなら、先進国企業が“累積原産地規制”に引っかかりにくいようＴＰＰに参加しておくほうが有利である。
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フィリピン、ＴＰＰに意欲 チリや米などと事前協議
【マニラ＝佐竹実】フィリピンが環太平洋経済連携協定（ＴＰＰ）の参加に意欲を示している。加盟に向けすでに各国政府と事前協議を開始した。ＴＰＰは地域連携を通じた安全保障の意味合いも大きく、インドネシアなども参加する意向を示している。南シナ海での中国の存在感が強まる中、日米が加盟する枠組みへの東南アジアの国々の参加の動きが加速しそうだ。
フィリピンの自由貿易協定（ＦＴＡ）の実務者である貿易産業省のセフェリノ・ロドルフォ次官補が日本経済新聞の取材に応じ、明らかにした。昨年からマレーシア、米国、チリなど加盟６カ国と準備的な協議を進めているという。12カ国が10月に大筋合意したことを受けて、「加盟国による原文を精査して最終的に判断する。経済成長している今こそが最良のタイミングだ」と述べた。
南シナ海の南沙（英語名スプラトリー）諸島では、中国が暗礁を埋め立てて人工島を造成した。３キロ級の滑走路など、軍事目的の利用が懸念されている。10月には、中国の軍事的台頭をけん制する目的で米国が人工島付近に駆逐艦を派遣し、緊張が高まっている。
南シナ海は世界の貿易の要衝で、日米のほか周辺国も警戒を強めている。インドネシアのジョコ大統領も10月の訪米の際にＴＰＰ加入に意欲を示した。ベトナム、マレーシアはすでに参加。日米が参加する枠組みに、南シナ海を取り囲む東南アジアの国が参加すれば、対中けん制に一定の効果があるとみられる。
フィリピンにとって、ＴＰＰ加盟は経済的理由よりも安全保障の意味合いが強い。ロドルフォ次官補によると、すでにＴＰＰ加盟12カ国のうち多くの国とはＦＴＡを結んでいるほか、米国との貿易も70％は無関税だ。むしろ、中国をにらんで日米豪などとの軍事的結びつきを強めるフィリピンとしては「ＴＰＰに加盟しないという選択肢はない」（比政府関係者）。
今月トルコで開く20カ国・地域（Ｇ20）首脳会議や、マニラでのアジア太平洋経済協力会議（ＡＰＥＣ）でも、南シナ海を巡る安全保障の問題が議論の中心になりそうだ。
もっともフィリピンにとっては、来年５月に行われる大統領選挙が外交政策に影響を与える可能性がある。アキノ政権は外交上は親米、親日路線を進めてきた。米軍の実質的な駐留に道を開く米比新軍事協定を結んだほか、日本の自衛隊の活動拡大を視野に入れた地位協定の締結に向けても協議を進めている。
ところが、貧困層などに支持されるビナイ副大統領は中国寄りとされている。ビナイ氏が大統領に当選してこれまでと反対の政策を進めれば、フィリピンの外交政策だけでなく地域のパワーバランスにも影響を与えかねないだけに、選挙戦の行方が注目されている。
［日経新聞１１月１２日朝刊Ｐ．７］
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