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世紀のゲノム編集技術「クリスパー」、その特許紛争の気になる結果 なぜオリジナルの考案者が敗れたのか
http://www.asyura2.com/15/nature6/msg/502.html
投稿者 軽毛 日時 2017 年 2 月 23 日 11:01:19: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

医療・健康・食生命科学アメリカ
世紀のゲノム編集技術「クリスパー」、その特許紛争の気になる結果
なぜオリジナルの考案者が敗れたのか

小林 雅一
作家・ジャーナリスト
プロフィール

あらゆる動植物のDNA(遺伝情報)を自由自在に書き変える、最新鋭のゲノム編集技術「クリスパー(CRISPR Cas9)」の特許紛争が一里塚に達した。
米特許商標庁(USPTO)は先週、クリスパー技術の基本特許を、事実上、米ブロード研究所に所属するフェン・ジャン(Feng Zhang)博士らの研究チームに与える裁定を下したのだ。
ただし彼らと争ってきたジェニファー・ダウドナ(Jennifer Doudna)教授らが所属する米カリフォルニア大学バークレイ校は、連邦控訴裁で引き続き争う公算が高く、最終的な決着はまだついていない。
今回の特許紛争は、特許商標庁の「特許法廷(Patent Trial and Appeals Board: PTAB)」において、一種の裁判形式で争われたきた。
その端緒から今回の判決(裁定)に至るまでの経緯、さらに今回の判決自体も非常に複雑で分かり難いので、以下、なるべく理解し易いように整理して説明したいきたい。
2015年10月、ニューヨーカー誌のイベントで顔を合わせたダウドナ氏(左)とジャン氏(右) 〔PHOTO〕gettyimages
クリスパーの誕生
もともと、クリスパーの発明者として衆目の一致するところは、前述のダウドナ教授とフランス出身の生物学者、エマニュエル・シャルパンティエ(Emmanuelle Charpentier)博士らの共同研究チームだった。
彼らが2012年6月、米サイエンス誌に発表した学術論文“A Programmable Dual-RNA–Guided DNA Endonuclease in Adaptive Bacterial Immunity”が、クリスパーの誕生を告げる記念碑的な論文(日付は同年8月)として知られている。
ところがクリスパーの基本特許を取得したのは、大方の予想に反し、(ダウドナ氏らとは全くの別人である)ジャン博士らの研究チーム、つまり米ブロード研究所(米マサチューセッツ工科大学とハーバード大学が共同設立した研究機関)だった。それは2014年のことである(https://www.google.com/patents/US8697359)。
これに対しダウドナ陣営(カリフォルニア大学バークレイ校)は当然のごとく異議を唱え、USPTOにクリスパー特許の再審査を請求。これが受理され、2016年1月に特許法廷で再審査(裁判)が開始された。
ちなみに、この種の特許紛争は一般に「Patent Inteference(特許抵触、あるいは特許干渉)」と呼ばれる。
と言っても何のことやら分かり難いだろうが、「ある特許申請と別の特許申請がinterfere(干渉)する」とは、要するに「それら別々の特許(申請)が、実質的には内容が同じの同一特許である」という意味だ。
申請のタイミングと特許内容の同一性が問題
これにはクリスパーの技術開発と特許申請のタイミングが大きく関係してくる。
実は両方ともダウドナ陣営の方がジャン陣営もよりも先にやっている。
しかしジャン博士らは、特許申請の際に若干の割り増し料金をUSPTOに払っていたため、ダウドナ教授らよりも先に申請書類を審査され、先に特許を取得してしまった(ダウドナ陣営の特許申請はいまだにペンディング、つまり保留状態に置かれている)。
つまりダウドナ陣営の言い分は、「クリスパーの技術開発でも特許申請でも、あたし達の方が先にやったのに、なんで、あんた達(ジャン陣営)が特許取っちゃうのよ!」ということだ。
これに対するジャン陣営の反論は、「違うよ、あんたら(ダウドナ陣営)がやったのはクリスパーの基礎研究に過ぎないんだよ。俺たちは単なる基礎科学じゃなくて、たとえば医学や新薬の開発、さらには農畜産物の品種改良などに応用できる、つまり実際に使えるクリスパー技術を開発したんだ。だから俺たちが特許を取得するのは当然だろ!」ということだ。
しかしダウドナ陣営では、「何言ってんのよ、あたし達とあんた達の特許申請は、実質的には同じ内容でしょ!」と反論。
もしも、この主張が特許法廷で認められると、技術開発のタイミングでは明らかにダウドナ陣営の方がジャン陣営よりも先にクリスパーを開発していたので、2014年にジャン氏らに与えられたクリスパー特許が無効になり、今回、改めてダウドナ氏らのチーム(カリフォルニア大学バークレイ校)に(現在、審査が保留中の)クリスパーの基本特許が与えられることになる。
NEXT ▶︎ ダウドナ劣勢の理由
「何」のDNAを書き換えたのか?
従って今回の特許裁判(再審査)の最大のポイントは、ダウドナ陣営による特許申請の内容(つまり彼女たちが開発したクリスパー技術)とジャン陣営による特許申請の内容(彼らが開発したクリスパー技術)が本当に同じものなのか、ということになる。
この点になると、ダウドナ陣営は劣勢に立たされた。ここではクリスパーによるゲノム編集、つまり「DNAの書き換え」の対象となるものが問題になる。
実は前出の2012年の論文では、この点が曖昧にぼかされている。この論文には、彼女たちが開発したクリスパー技術によって「DNAを書き換えることができた」とあるが、「一体それがどんな生物のDNAなのか」は全く記されていないのだ。
たとえば動植物のような「真核生物(細胞内にある核の内側にDNAが格納されている生物)」のDNAなのか、それともバクテリア(細菌)のような「原核生物(核を持たないため、細胞質に直接、DNAが格納されている生物)」のDNAなのか、あるいは人工的に化学合成されたDNAなのか、いろいろな可能性があるが、2012年の論文では、そのいずれであるかが明記されていない。
おそらくダウドナ氏らは意図的にそれを曖昧にしたと思われる。
実は彼女たちが開発したのは、「(試験管内に抽出された)バクテリアのDNA」をクリスパーでゲノム編集する(=書き換える)技術だった。
彼女たちが、この段階で研究成果を科学論文にして発表したため、(おそらく)これを参考にジャン氏の研究チームは「人やマウスをはじめとする生きた動植物(真核生物)」のDNAをゲノム編集できるクリスパー技術を開発したのである。
「バクテリア」は便宜的な手段に過ぎなかった
ダウドナ氏らが何故、自らの論文の中で「バクテリア(細菌)のDNA」ということを明記せず、あえて単に「DNA」と記したのか、その理由は改めて言うまでもない。
バクテリアのDNAをクリスパーで書き換えたところで、それだけでは社会的には、ほぼ何の役にも立たないからだ。
むしろ様々な動植物(真核生物)のDNAを書き換えることができた時点で、それは漸く(医療や新薬開発、あるいは農畜産物の品種改良など)本当に社会に役立つ技術になる。
しかし、いきなり最初から、動植物のDNAを改変するのは無理があるので、とりあえずは(操作が容易と見られる)バクテリアから分離されたDNAをクリスパーで書き換えてみた。これに成功したので、次はいよいよ(人間を含む)動植物の細胞内にあるDNAで同じことをやろうとしたが、こちらの方ではジャン陣営に先を越されてしまった、というわけだ。
〔PHOTO〕gettyimages
そこで2016年1月に開始された特許裁判の中で、ダウドナ陣営は以下の点を強調した:
「私達のチームがクリスパーで(バクテリアの)DNAをゲノム編集できることを実験的に証明した時点で、この技術をマウスやヒトなど様々な動植物に応用できることは自明だった。それは、どれほど平凡な科学者でも(ある程度の時間をかければ)やれたはずだ」と。
つまり「ジャン氏らの研究成果には本質的な意味がない」と言っているのだ。
別の言い方をすれば「確かに私達がやったのは『バクテリアのDNAをクリスパーで書き換える』ことだが、『バクテリアの』という但し書きには大した意味がない。実際には、あらゆる動植物のDNAを書き換えるゲノム編集技術のベースがこの時点で完成していた。ジャン氏らの研究では、これをちょっと改良したに過ぎない。従ってジャン氏らの特許申請(技術)と、私達の特許申請(技術)は実質的に同じ内容だ」ということになる。
ダウドナ陣営にも「何らかの」特許は与えらえる?
しかし先週下された判決の中で、特許法廷の判事らは、こうしたダウドナ側の主張を却下した。
つまり「(ダウドナ氏らのチームが開発した)試験管内に抽出されたバクテリアのDNAをゲノム編集するクリスパー技術を、マウスやヒトなど動植物のDNAに応用することは、『どれほど平凡な科学者でもやれること』ではない。むしろ、それは極めて困難な作業で、これを成し遂げたジャン氏の研究チームには当然、クリスパーの特許が与えられてしかるべきだ」とする判決である。
〔PHOTO〕gettyimages
一方で、同判決は「ダウドナ陣営によるクリスパーの特許申請も有効である」としている。
つまり同じクリスパーでも、「ダウドナ陣営とジャン陣営の技術(特許)は実は別物であって、それらは互いにinterefere(抵触、あるいは干渉)しない」という結論に至ったのである。
が、勝負はまだ決したわけではない。今後の展開には、幾つかの可能性が考えらえる。
まず今回の判決(裁定)を受けて、今現在、ペンディング(保留)状態のダウドナ側による特許申請の審査が再開され、まず間違いなく(何らかの)クリスパー特許が彼女たちのチーム(カリフォルニア大学バークレイ校)にも与えられる。
しかし、同じクリスパー特許でも、その内容が問題である。
NEXT ▶︎ まだ決着がついたわけではない
生物全般をカバーする特許なのか
仮にダウドナ陣営に与えられる特許が、「単なるバクテリアのDNA」を書き換える技術に関するものだとすれば、その特許にはほとんど何の意味もない。(繰り返すが)バクテリアのDNAを書き換えたところで、産業的には何の役にも立たないからだ。
もしも、この結果に終われば、ダウドナ陣営にとっては致命的な敗北であり、ジャン陣営にとっては「勝者総取り」のような恰好になる。
逆に(ダウドナ陣営が主張してきたように)単なるバクテリアではなく、より一般的な、つまり(バクテリアは便宜上の目的に過ぎず)あらゆる生物のDNAをゲノム編集するためのベースとなる技術に対して特許が与えられるとすれば、それはダウドナ陣営にとって許容範囲内であろう。
もちろんジャン陣営に与えられたクリスパー特許も有効のままだが、彼らの特許は「ダウドナ陣営の技術(特許)をベースに開発された技術(特許)」という位置づけになる。
しかし、この場合、今後、クリスパー技術を使って画期的な新製品(新薬や遺伝子組み換え作物など)を開発しようとする大手製薬会社やバイオ・メーカー、各種ベンチャー企業などにとって、金銭的な負担が倍化してしまう。なぜならダウドナ陣営(カリフォルニア大学バークレイ校)とジャン陣営(ブロード研究所)が各々持っている特許に対して、特許使用料を個別に支払わねばならないからだ。
一方、ダウドナ陣営とジャン陣営では、おそらくクロス・ライセンス契約を結ぶことによって、お互いに特許使用料を払う必要はなくなるだろう。
今後の展開は?
米国の知財専門家の間では、今後、ダウドナ陣営に与えられる特許は「単なるバクテリアのDNAをゲノム編集する技術に対する特許」との見方が若干優勢だ。しかしもちろん、まだ決着がついたわけではない。
と言うのも、かつてジャン氏らの研究チームに所属していた留学生からの内部告発(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49531)などから判断する限り、実際にはジャン博士らが開発したクリスパー技術は、ダウドナ/シャルパンティエ博士らの共同チームが2012年に発表した科学論文に基づいている公算が高いからだ。
となると、ダウドナ陣営の期待通り、(単なるバクテリアに限定されず)「あらゆる生物のDNAを書き換えるためのベース技術」という位置付けのクリスパー特許が、彼女たちのチームに与えられる可能性も十分残されている。
最後に残された3つめの可能性は、ダウドナ陣営が当初の強気を貫いて、今後、連邦控訴裁に控訴することだ。
仮に、ここで逆転勝訴すれば、ダウドナ陣営とジャン陣営のクリスパー技術は実質的に同じ技術とみなされる。結果、先にこの技術を開発し、特許申請もしたダウドナ陣営にクリスパーの基本特許が与えられ、ジャン陣営は全てを失う。
しかしダウドナ陣営が控訴する可能性は高いが、そこで逆転勝訴する可能性は低いと見られている。
人工知能と「神の技術」を融合すれば、人間の寿命は500歳まで延びる!?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51037?page=3 
 

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コメント
 
1. 2017年12月01日 00:06:41 : zmLMkJAtt6 : fV9dOlmGGDA[5]
人工知能TIはいらんけど、ゲノム編集「CRISPR/CAS9」は必要である。特に俺とか。

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