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“ゲノム編集”というエサで釣る人、釣られる人 内側から問い直す日本のベンチャー業界の“常識”(5) 
http://www.asyura2.com/15/nature6/msg/698.html
投稿者 うまき 日時 2019 年 3 月 08 日 22:24:12: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

“ゲノム編集”というエサで釣る人、釣られる人
内側から問い直す日本のベンチャー業界の“常識”(5)
2019.3.7(木) 藤田 朋宏
「ゲノム編集」という言葉の響きに酔ってはいけない。
 大企業の安全神話が崩れ、ベンチャー企業の存在感が増していく中、ベンチャー業界を取り巻くさまざまな論説が流れている。だが、当のベンチャー企業側は、その現状と行く末をどのように捉えているのだろうか。戦略コンサルタントを経てバイオベンチャーを創業した、ちとせグループCEOの藤田朋宏氏が、ベンチャー企業の視点から日本の置かれた現状を語っていく。(JBpress)

【第4回】「そのバイオプラスチックで本当に生態系を救えるか?」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54914

耳障りのいい言葉が流通する理由
 あちこちの技術分野の未来に詳しそうな意識高そうな人が、最先端技術が生み出す近未来の社会のあり方について断定口調で語っているのを「カッコいい」と思う層が、年代に関係なく、今の日本社会では着実に増えているように感じています。

 彼らのような実効力の無い扇動業に憧れるのって、若い頃にありがちな過ちのうちのひとつ(厨二病というより、大学2年生にありがちな大二病というか)だと僕は感じます。

 上では世代に関係なくと書きましたが、今の日本はむしろ、若い人に地に足が付き過ぎちゃって達観しすぎている人が多く、逆にバブル時代に青春時代を過ごした年輩の層に、いつまでもこの扇動業に振り回される大二病をこじらせてしまっている人が多いのが、今の日本の姿なのかもしれません。

 技術分野が細分化され、どの技術がどれくらいの確実性で実現可能か、専門の人の中でさえも意見が割れ議論が続けられている現在の世の中において、さまざまな技術分野を幅広く見通して、今後100年の技術動向を正確に言い当てられる人が存在するわけはありません。天才とか努力とかいうレベルを超えている話ですから。

 しかしながら、将来に対して不安な人が多い社会だからこそ、それっぽい専門用語を散りばめながら、「あたかも何でも知ってるぜ風」に言い切れてしまう扇動業のニーズが高まっているのが今の日本の姿なのでしょう。

 と、ここまで、社会において技術を語ることで社会を扇動する役割を担っている人に対してネガティブに受け止められるような書き方をしていますが、彼らがどんなに根本的なところで、技術の理解を間違えていても、彼らが語る技術動向の大筋が、目先の金儲けを企む薄っぺらい輩のためだけでなく、その技術分野で悪戦苦闘する技術者を支えるものになるのであれば、「時代の空気の代弁者」として、それはそれで社会のためになる役割なんだろうなと、嫌味ではなく思ってます。

 わざわざ、皆から文句を言われるというご苦労な役割を職業として買って出てくれているんだから、みんなで愛でればいいんです。

 かくいう自分自身の場合も、いつのまにやら非医薬品領域のバイオ領域(日本では昔から“農芸化学”といわれていた分野とか、英語だと“industrial BIO”といわれる分野)において、技術動向に詳しい扇動業的な扱いを世間からしてもらっています。

 しかし、現実的には、本業をやりながら技術動向の情報を手に入れ続けるのは結構大変です。大変ですというより無理です。

 当人的には「いちいち、他の人の先端研究まで追っかけてないですよ・・・」と思うので、表立って技術動向について意見を言うことは、控えているのですが、油断すると「おいおい。理論的にそれは無理だろ」「いくらなんでも流石に、それは見過ごせないわー!」って言説が、あたかも事実であるかのように、日本社会の大勢を占めてしまうことが頻繁にあります。

「ゲノム編集」というカッコいい言葉
 そんな私にとって、近頃どうにも後にも目に余るのが、主にAI方面の技術を語る人々による「お前、自分のカッコいいプレゼンに“ゲノム編集”って単語を入れてみたかっただけやろ!」と感じる論説です。

 その手のプレゼン曰く、「既に遺伝子は自由に編集できて、生命を自由にデザインできる世界はすぐそこまで来ているんだ」と。そして、それに続く結論は、「かようにも世の中が変わってきているのだから、意識高い諸君は、立ちあがって起業しよう!」となるわけです。

 もし、私の目の前でこの手のかっるーいプレゼンをされたら、「お前、ゲノム編集ってのが何なのか知ってんのか?」と皆の前で聞いてしまいそうですが、そもそも僕だけでなく、“ゲノム編集とは何か”が分かっている人は、その手のプレゼンがなされる場には行きません。

 誰も正さないので、プレゼン資料にまぶしてあるだけでカッコよく見えるワードである「ゲノム編集」が、意識高い系のプレゼンで使用される頻度は増え、そしてますます魔法の技術が、すぐに人類や社会を変えるかのように理解され広がっていくのでしょう。

 今回、私が説明したいのは、人類は高等生物の遺伝子配列を自由に操る技術は、まだ全く手に入れておらず、ましてや高等生物を自由にデザインするなんて未来は、ビジネスとして議論できるような期間の間にやって来ることはないであろうという事実です。

「え、そうなの?」って思う人が多いのではないでしょうか。生物学の現時点での進歩について、多くの人が間違えて理解している最大の理由は、「ゲノム編集」(英語は“Genome Editing”)っていう名前が人々を惑わし、意識高い系の扇動業の皆さんにお小遣いを稼ぐ機会を与えてしまっているからだと、僕は考えています。

 最初に明言しておきたいのは、方法はどうであれ、好むと好まざるに関わらず「人類はいつか遺伝子配列などを操ることで、生き物を自由にデザインできる日が来る」こと自体は、多くの生物学者が否定できない事実です。

 私は、そもそも遺伝子配列を改変するだけで、生き物を自由にデザインできるとは思っていませんが、生き物を自由にデザインできる未来が来ること自体は全く否定しません。

道具さえあれば“編集”できるのか?
 生命の設計図は、DNAにデジタルのデータとして書かれていることになっています。ゲノム編集技術とは、この生命の設計図を消したり書いたりできるよ、今までの遺伝子組換えと呼ばれていた技術よりも消しゴムや鉛筆の適用範囲と精度が高まったよ、というだけの話なのです。

「編集」とは名ばかりで、生き物を自由に編集できるようになったよ、という技術ではないのです。

 例えるならば、人類史に残るロシア人の大文豪が書いた膨大なロシア語の書物を目の前にして、ロシア語を全く理解できない輩が、印刷された文字を書き換えるの消しゴムと鉛筆を手にしただけで「これで私は、この文章を自由に編集できる!」と吹聴しているようなものなのです。

「文字を消したり書いたりできることと、文章を編集できることって、根本的に異なるものですよね」と言いたくなる私の気持ち分かりますか?

 こういった指摘に対して、技術扇動家たちは言うのです。「どの遺伝子がどういった役割をしているかのデータベースはドンドン拡大している。だから、生き物を自由に編集することはもうできたようなものだ」と。

 これも上の例で例えると、「ロシア語の辞書が拡充しているから、文字さえ書き換えられれば、文章を自由に編集できるのは同義だ」と、ロシア語を読もうとしたこともない輩が言っているのと同じだということです。

 確かに、遺伝子機能のデータベースは日々拡充されています。しかし、ロシア語の例に例えると、ロシア人の大文豪が書いた書物は10万以上の単語が使われているのに、彼らが手にしている辞書には1000の単語しか収録されていないようなものだったり、そもそもひとつの単語はいろいろな意味を持っているのに、どれもひとつの意味しか収録されていない、そんな不完全な辞書であるということを無視した議論になっているのです。

 子供が使う単語さえも網羅できていない辞書があるだけで、ロシア語の文法も全く分からないのに、「大文豪が書いた文章を、どこからどうやって編集するつもりなのかな?」と言いたくなる私の気持ち分かりますか?

 文学作品において、単語の一つひとつが有する意味は、その文脈によって解釈が変わることも多いです。また、皮肉や感情を込めてわざとおかしな単語を使うこともあれば、後々の伏線のためにわざと違和感のある表現を残しておくようなこともあるでしょう。

 言葉と同様に、遺伝子もひとつの遺伝子が多様な意味を持ちます。まだまだ現在の科学では全て解き明かされているわけではないですが、生き物が進化の過程としてさまざまな環境を生き残るために過ごして来た時間や、生き物としての形態という初期値との関係で、現在のゲノム配列が決まっていることは、生命現象の解明に真摯に向き合っている人なら誰もが同意してくれる事実だと考えます。

 つまり、こういうことです。文章や文学に興味や理解がある人ほど、たとえ印刷された文字を書き換えられる鉛筆と消しゴムに加えて、完璧な辞書とロシア語の理解があったとしても、「人類史に残る大作家が書いたロシア語の文学を、より良いものに編集できるというなんて、無知にも程がある」と思うでしょう。

 それと全く同じように、生命を理解することに興味や理解がある人ほど、不完全な消しゴムと鉛筆と、まだまだ辞書とも呼べないような遺伝子データベースしかない現段階で、「近い将来にはゲノムを自由に編集でき、生命を自由にデザインできる時代は到来している」と喧伝する輩を見るたびに、「それ釣れますかー」「儲かってますかー?」という気持ちになる私に、同意してくれるのではないかと感じます。

・・・などと僕が書いたところで、ロシア文学の深遠さや、生命の神秘には全く興味も持たず、今日のバズりやPVだけ追っかけて、かっるーいことを言う扇動家の言説の方が、実際、釣れちゃうし稼げちゃうのが今の日本社会です。

 いろいろな価値観の人たちの存在があっての「社会」だし、社会ってだから面白いのだと思うものの、こうして誰も幸せにならない戦争とか始めちゃうのが人類なんだろうなと諦め気味に思う今日このごろです。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55646  

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