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ニュージーランド。この海の下に“謎の大陸”が沈んでいる ©iStock.com
海底に沈んだ“幻の大陸”を調査せよ! 世界の科学者を悩ませる「ジーランディアの謎」が熱すぎる/文春オンライン・msニュース
山田 泰広
2020/10/04 06:00
http://www.msn.com/ja-jp/news/science/%e6%b5%b7%e5%ba%95%e3%81%ab%e6%b2%88%e3%82%93%e3%81%a0-%e5%b9%bb%e3%81%ae%e5%a4%a7%e9%99%b8-%e3%82%92%e8%aa%bf%e6%9f%bb%e3%81%9b%e3%82%88-%e4%b8%96%e7%95%8c%e3%81%ae%e7%a7%91%e5%ad%a6%e8%80%85%e3%82%92%e6%82%a9%e3%81%be%e3%81%9b%e3%82%8b-%e3%82%b8%e3%83%bc%e3%83%a9%e3%83%b3%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e3%81%ae%e8%ac%8e-%e3%81%8c%e7%86%b1%e3%81%99%e3%81%8e%e3%82%8b/ar-BB19FLAq
この地球上に、海底に沈んだ謎の大陸がある――。
そう言われても、伝説やおとぎ話の類だと思う人がほとんどかもしれない。だが、本当に「謎の大陸」が南太平洋に沈んでいて、今では世界中の国立研究機関や著名大学の科学者たちが国際研究チームを組織し、日夜真剣にその謎に迫ろうとしている……と聞いたら、どうだろうか。JAMSTEC(国立研究開発法人・海洋研究開発機構)に所属する私も、実はそのメンバーの一人だ。
この海の下に“謎の大陸”が沈んでいる ©iStock.com
海底に沈んだ大陸は、名前をジーランディアという。元々はオーストラリア大陸の東側にあったと考えられ、現在はニュージーランドやニューカレドニアなどの島々をわずかに残して、ほぼすべてが海底に沈んでいる。
2300万年前に沈んだ大陸
沈んだ時期は良く分かっていないが、どうやら8500万年前という途方もない昔から沈降を開始し、2300万年前にはほぼ完全に水没してしまったようだ。これは人間が地球上に現れるよりも前の話。この大陸は数々の謎を秘めながら、今も海の底で眠り続けている。
しかし、そもそも「海底に沈んだ大陸がある」などとどうして分かったのかと、疑問に思う人も多いかもしれない。これを理解するためには「大陸」とは何か、普通の海底とは何が違うのかについて、知っておかなくてはならない。
大陸と海底は“岩石の種類”が違う
普通に考えれば、大陸とは「大きな陸地」のことだと思うだろう。しかし、地球科学の分野では、大陸は必ずしも海の上にある(=陸地である)必要はない。たとえば大陸の端っこに、こんな場所があると想像してみてほしい。そこは潮の満ち引きによって一日のうち何時間かは陸地、残りの何時間かは海の下となる。では、ここは大陸の一部だと言えるだろうか?
そこで判断の材料とされるのは、表層部を覆っている土砂などを取り除いたときに見える、その土地を作っている岩石の種類である。大陸を作っている岩石は花崗岩と呼ばれる白っぽい岩石だが、海底を作っている岩石は玄武岩などの黒っぽい岩石なのだ。上記のような場所であれば、土地は白っぽい花崗岩でできていて、大陸の一部であると言えるはずだ。
かつて地球上には、すべての大陸が合体してできた超大陸があったことが分かっている。それはパンゲアとかゴンドワナなどと呼ばれている。いま地球上にあるすべての大陸は、この超大陸が分裂して、現在の場所に移動してきたものと考えられている。その、元となる超大陸が花崗岩でできていたのだ。
なぜジーランディアが見つかったのか?
歴史を遡ると19世紀末頃から、ニュージーランド周辺の海底はかなり浅いことが分かっていた。その浅瀬がジーランディアと名付けられたのも、この頃だ。だが、本格的な調査が始まったのは、21世紀に入ってから。進歩した海底調査の技術を使って、ニュージーランドが周辺の「浅瀬」を調べてみたところ、なんと広範囲に渡って花崗岩でできた土地が“海の下”に広がっているとわかったのだ。
この結果は世界に衝撃を与えた。なぜなら、大陸を示す白っぽい岩石(花崗岩)でできた土地が海底に広がっている場所など、世界のどこにもないと考えられていたからだ。
先述の通り、本来海底は玄武岩などの黒っぽい岩石でできているはず。だが、花崗岩でできた“海底”が現に見つかった――。これはつまり、ジーランディアはかつて超大陸の一部だったが、分裂後、どこかのタイミングで海の底に沈んだ、ということを意味する。
現在のサイエンスでは解けない“矛盾”
しかし、そこには大きな矛盾がある。というのも、現在のサイエンスでは“大陸は沈まない”と考えられているからだ。
実は、大陸を作っている花崗岩は軽いため、そもそも沈みにくい性質を持っている。これまでも、分裂した大陸は海の底に沈むことなく、地球の表面をあちこちに移動してきたことが知られている。
だが、ジーランディアは実際に、海の底に沈んでいるのだ。一体、これをどう理解すれば良いのか――。
謎を解く“カギ”は……
この謎に対して、科学者たちはいくつかの仮説を立てている。中でも有力視されているのは、「何らかの原因で大陸(ジーランディア)が引き延ばされ、厚さが薄くなったことで全体の標高が下がり、海面よりも低くなってしまったのではないか」という説だ。引き延ばされた原因としては、大規模な火山活動や、プレート沈み込みによる影響などが考えられている。
しかし、仮にそれが正しかったとして、なぜジーランディアだけでそんな現象が起き、他の大陸では起きていないのか、その理由はまったく分からない。
謎を解くカギはどこにあるのか。国際研究チームは現在、それはジーランディアの海底地形の“凹み”に溜まった土砂の中に眠っているのではないか、と考えている。
深い凹みの中を調べれば……
これまでの調査で、ジーランディアの表面にはかなり凸凹があることが分かってきた。この凸凹は、ジーランディアが引き延ばされるときにできた岩盤の割れ目(断層)に沿ってできたものだと考えられている。
海底では、このような地形の凹みに土砂が溜まりやすい。そこで、なかでも最も深い凹みを探して、そこに何が溜まっているのかを調べることで、いつ頃からどのように沈んでいったのか、つまり、ジーランディアがどのように引き延ばされていったのかが分かるかもしれないのだ。
もし、引き延ばされるさなかに大規模な火山活動があったとしたら、土砂のなかにも火山に由来する岩石が混じるはずだ。また、プレート運動に関連してジーランディアが引き延ばされたのなら、土砂の中にもその運動の痕跡が残っているかもしれない。
問題は、このような深い凹みの底に溜まった土砂をどうやって調べるか、である。
ここで役に立つのは、海底油田を探すときに使う技術だ。海底油田を探すときには、まず音波を使って海底に溜まった土砂の性質を大まかに調べ、それから井戸を掘って地下に何があるかを詳しく調査する。ジーランディア調査でも同じ方法が有効なのだ。
実際に、調査船を使ってジーランディアを音波で調査した結果、そこにはかなり深い凹みがあること、そしてその凹みは土砂で埋まっているらしいことが分かってきた。あとは井戸を掘れば、ジーランディアの謎が解けるかもしれない――。
ジーランディアには“地球の謎”が秘められている
このように大きな科学プロジェクトは、個人で進められるようなものではない。だからジーランディアに詳しい科学者が集まって、国際チームを作っているのだ。現在は日本・オーストラリア・ニュージーランド・ニューカレドニアなどの研究機関や大学の科学者が中心となって、30〜40人規模で調査を進めている。
海底で深い井戸を掘るには莫大な費用がかかるため、プロジェクトの実現に向けて、それぞれが各国で政府や担当省庁と交渉している。順調に進めば数年以内に井戸を掘ることになるはずだ。
そのときには、JAMSTECの調査船「ちきゅう」が活躍するだろう。「ちきゅう」は、“ライザー掘削”という技術を備えている世界で唯一の科学調査船であり、人類が未だ成し遂げていないマントルや巨大地震発生域への大深度掘削を目標にしている。同船は国際深海科学掘削計画の主力船としても、地球探査を行っている。
ジーランディアの謎が解き明かされる日、それは私たちの大切な星、地球がどのようにして今の姿になり、今後どのような姿に変化してゆくのか、私たちの理解がまた一歩進む日になる。
もし大陸が沈んだり消えたりすることがあるのならば、過去の超大陸は実はもっと大きかったのかもしれない。あるいは、これまでに知られていない、別の超大陸があった可能性もある。
さらには、大陸が沈んで“消える”などということが実際に起きるのならば、遠い未来の地球には陸地が一つもない……と、そんな可能性さえ考えられる。大陸が沈むということがもつ意味は大きいのだ。
ジーランディアの研究から地球全体の謎解きへ、「ちきゅう」による深海調査への期待は大きい。
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