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(わたしの紙面批評)安保めぐる与党協議 朝日新聞紙面審議会委員・中島岳志さん  朝日新聞
http://www.asyura2.com/15/senkyo183/msg/232.html
投稿者 ダイナモ 日時 2015 年 4 月 14 日 16:02:24: mY9T/8MdR98ug
 

 ◇速い展開に翻弄された新聞/踏みとどまり丁寧な議論を

 2月中旬から3月中旬に行われた安全保障をめぐる与党協議は、あまりにもさまざまな問題が一気に話し合われたため、議論に追い付くことができない国民が続出したのではないか。

 政府・自民党は「恒久法制定」や「周辺事態法改正」「PKO法改正」「文官統制改革」「邦人救出」「船舶検査」など次々と新たな提案を行った。公明党は高めのボールを投げ続ける自民党への対応に追われた。2月21日の記事では、与党協議における自民党の狙いを「公明側に何らかの形で『歯止め』をかけさせて顔を立てる代わりに、妥協を引き出す戦略」と分析している。要は集団的自衛権を拡大させたい自民党と、歯止め役としての実績を強調したい公明党のマッチポンプが生じているというのだ。実際、その後の経緯を見ると事態は指摘通りに進行しているように見える。

 朝日新聞は、この批判を繰り返し展開すべきである。「安保法制 公明が大筋容認」という見出しを掲げた3月14日の紙面や与党協議の共同文書を掲載した3月19日の紙面でも、さらに詳細な分析と批判を掲載すべきだったのではないか。例えば3月21日の紙面では、与党の正式合意によって「自公が憲法解釈変更に基づく法律の枠組みを容認したことになる」と記されているが、閣議決定時から公明党は「解釈改憲などしていない」と主張してきたはずだ。

 歯止め策の具体化は、統一地方選の後に先送り状態になっている。今後、メディアによるチェックは重要度を増す。2月・3月の紙面は、朝日新聞も展開の速さに翻弄(ほんろう)され、次々に自民党から出される新しい提案に振り回された感が否めない。国民はゆっくりと考える時間を与えられず、また一つ一つの提案に対する適切な情報や議論を得られないまま、日々、混乱と消化不良が続いた。結果、ほとんどの国民は話題に追い付くことができず、議論が発展しないまま、統一地方選になだれ込んだ。いまだに与党合意の内容を理解できている国民は少数にとどまるだろう。3月21日の社会面に掲載された「安保法制 分かります?」は、国民の多くが「もはや何が分からないのかすら分からない」状態に陥っていることを率直に扱っている。

 これは自民党の作戦通りの展開といえよう。国民が漠然とした消化不良に置かれる中、その隙に強引にまとめてしまおうという戦略が進んでいるように見える。メディアはこの戦略の共犯者となってはならない。かつてであれば大問題になったレベルの提案が、あっという間に過ぎ去り、また次の大問題に移ることがくり返されたが、何度も何度も踏みとどまり、じっくりと丁寧に議論を構える態度が必要とされるだろう。3月9日の社説では与党に対して「立ち止まって考えること」を要求しているが、朝日新聞は立ち止まって考えることができたかを問い返し、これから進められる国会論争に備えてほしい。

 その点、4月3日に本格的にスタートしたシリーズ「読みとき 安全保障法制」は素晴らしい。これも一度だけの企画ではなく、何度も整理の仕方を工夫して伝えてほしい。繰り返しを厭(いと)わないことが重要だ。

 昨年7月3日にスタートし、今年3月27日に完結した「検証 集団的自衛権」は極めて重要な連載で、日々のニュースでは知ることのできなかった生々しい政治過程を明らかにした。自民党、公明党、外務省、防衛省、内閣法制局の思惑を読み解き、その上で展開された繊細な人間関係と駆け引きを記述している。読み物としての面白さを備えながら、憲法解釈のあり方を鋭く問う傑作だ。

 ただ、記述が昨年7月の閣議決定までで終わっていることが残念である。同時進行する日々の政治過程についても、今回の連載のような高レベルの記事を読みたいと強く思う。ジャーナリズムの底力をいま一度見せてほしい。

 (記事は東京本社発行の最終版)

 ◆この欄は4人の紙面審議会委員が輪番で担当します。

     *

 なかじまたけし 北海道大学大学院法学研究科准教授。専門は南アジア地域研究、日本思想史。2005年「中村屋のボース」で大佛次郎論壇賞。


4月14日 朝日新聞朝刊より
 

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