２００３年の鹿児島県議選をめぐる公選法違反事件で無罪が確定した志布志市の元被告と遺族計１７人が、違法捜査で多大な苦痛を受けたとして、国と県に総額２億８６００万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が１５日、鹿児島地裁であり、吉村真幸裁判長（川崎聡子裁判長代読）は違法捜査があったとして、国と県に元被告１人当たり４６０万円、総額５９８０万円の支払いを命じた。

　判決は、県警の取り調べで、親族の逮捕を予告するなど脅迫による自白強要があったと認め、「社会通念上許されない」と批判。「捜査幹部が事件の筋読みを誤り、虚偽自白をさせた」と指摘した。

　また、被告全員が否認に転じた後に地検がした５回目の起訴についても、「行き過ぎで合理性を肯定することができない」と述べた。

　一方、捜査の端緒については、「情報に基づき捜査を開始した」として、違法だとは認めなかった。

　訴えていたのは、０３年選挙で初当選した中山信一元県議（６９）ら無罪となった１２人（１人は提訴後に死亡）と、公判中に死亡した男性の遺族５人。

　中山元県議らは会合で現金を配って票の取りまとめを依頼したなどとして０３年に公選法違反罪で起訴されたが、同地裁は０７年、元県議にアリバイがあったと認定。「強圧的な取り調べがあったとうかがわれ、自白は信用できない」として、全員を無罪とし、一審で確定した。（2015/05/15-11:57）

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201505/2015051500055&g=soc

　２００３年の鹿児島県議選をめぐり、公選法違反の罪に問われた１２人全員の無罪が確定した「志布志事件」で、元被告と遺族計１７人が国と県を相手に、元被告１人当たり２２００万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、鹿児島地裁（吉村真幸裁判長）は１５日、県警の捜査や地検が公判維持したことを「違法」と認定し、国と県に元被告１人当たり４６０万円、総額５９８０万円の賠償を命じた。

　吉村裁判長は、最大の争点となった捜査の違法性について（１）必要限度を超える任意捜査や体調を配慮しない取り調べをした（２）長時間、どう喝、誘導を繰り返した（３）容疑を認めなければ親しい人も逮捕するとうそを告げて自白を強要した−として捜査員の違法行為を認定し「社会通念上、許されない」と指摘。捜査を指揮した当時の志布志署長らには「事件の筋読みを誤った過失があった」とした。

　元被告全員が否認に転じた後の地検の起訴と公判維持については「行き過ぎで合理性が肯定できず国賠法上、違法」と指摘し「検察官は職務上の注意義務に違反し、過失があった」と結論づけた。地検の捜査の過失も一部認めた。

　県警が事件をでっち上げたとの元被告の主張については「県警は住民による選挙買収の情報を把握し、それに基づいて捜査を開始した」として退けた。

　元被告の無罪が確定した０７年の鹿児島地裁判決は、強圧的に自白を引き出した可能性を指摘したが、捜査の違法性までは認めていなかった。１５日午後には、起訴されなかったが県警の取り調べを受けた住民７人が県に１人当たり３３０万円の賠償を求めた訴訟の判決が、鹿児島地裁である。

＝2015/05/15　西日本新聞＝

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/169056