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「当事者意識」を言う人は、たぶん他人事と思っている 都の負担分を580億円
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投稿者 rei 日時 2015 年 5 月 29 日 12:41:11: tW6yLih8JvEfw
 

「当事者意識」を言う人は、たぶん他人事と思っている

2015年5月29日(金)  小田嶋 隆


 新国立競技場の整備費をめぐって、舛添要一都知事と下村博文文部科学大臣の間で論争が起こっている。

 発端は、舛添知事が26日の記者会見で、国が都の負担分を580億円と試算した点などを取り上げ「全くいいかげん。支離滅裂だ」と批判したことだった。

 これを受けて、翌27日、下村文科相は「(試算は)途中段階として首相官邸に報告したもの。詳細が分かり次第、随時都に説明したい」と、負担分の説明が遅れた経緯を伝え、あわせて「コストダウンをはかりながら期限を守ろうとしている。(新国立競技場を)都も活用するわけだから、一緒に前向きに考えてもらいたい」と理解を求めた。

 また、一連の発言の中で、下村文科相は、舛添都知事に対して「当事者意識をもってやってもらいたい。開催都市の知事だとの自覚で、一緒にやろうという思いを持ってほしい」と、その姿勢に注文をつける言葉を残している(ソースはこちら)。

 舛添都知事は、さる連載コラムで《新国立競技場の建設について、誰が最終的に責任を持つのか!?》《根拠不明な都の拠出額「500億円」 文科省は新国立競技場問題に誠実な回答を!》という寄稿をしている(こちら)。

 一読する限り、私の目には、舛添都知事の言い分は極めてまっとうに見える。

 彼が指摘している通り、新国立競技場建設に関する国の説明は、まったくもって当事者意識のかけらもない、葬儀屋の挨拶みたいな空虚な文言に終始している。

 もっとも、新国立競技場は、下村文科相が指摘するまでもなく、東京が開催都市となる2020年東京オリンピックのメーン会場である。その意味では、東京都自身、「国立」という名前にもたれかかって知らん顔を決め込んでいて良い立場ではないのだろう。

 とはいえ、逆に考えれば、東京都としては、自分のところで開催する五輪のメーン会場であるからこそ、その予算の使われ方や、工期の管理や見積もりのされ方について、口を出す権利を持っているはずでもある。

 とすれば、事前に何の説明もない状況下で、いきなり580億円もの負担増が耳に入ったら、舛添都知事ならずとも腹を立てる。当然の話だ。

 そこへ持ってきて、言うに事欠いて「当事者意識」である。
 これはいったいどういう理路から発せられた言葉なのだろう。

 借金を踏み倒しにかかっている側の人間が、貸主に対して

「これだけの金額が丸々不良債権になったらあんただって自分のクビが危ないんじゃないか?」

 と、盗っ人猛々しくも、追い貸しを催促するという話は聞いたことがある。

 しかしながら、どんな図々しい借り手であれ、カネを受け取る側の人間が、カネを出す相手に向かって「当事者意識をもってやってもらいたい」と説教をカマすなどというバカげた話は聞いたことがない。文科相は何か悪い夢でも見ているのではなかろうか。そうでないのだとすると、日本の子供たちの教育を統べる立場の人間としてあまりにも礼を欠いている。できれば目を覚ましてほしい。

 新国立競技場の建設については、はじめからおかしなことだらけだった。

 デザインの公募のされ方(応募資格が厳格すぎて、事実上はじめから「世界的有名デザイナー」が設計することになっていた)、審査員の人選、選定の経緯、発表のされ方などなど、設計から建設に至るプロセスのすべての段階で、そもそもの最初から批判の声が渦巻いていた。

「なんだこりゃ」
「こんなの1300億でできるのか?」
「完成予想図を見ると、日本青年館周辺の建物は全部ひっくるめて更地にするみたいだけど、土地の収用やら立ち退きやらは間に合うんだろうか」
「ゼネコンの関係者以外でこの巨大廃墟を喜ぶ都民がいるようにはとても思えないわな」
「っていうか、屋根が総武線の線路を超えて慶應病院の門の前まで届きそうになってるけど、いったいどこのガミラス帝国と戦うつもりでこんな宇宙基地を作るんだ?」

 現時点で明らかになりつつある様々な問題点も、ひとつひとつ検討してみれば、2012年11月に新国立競技場の設計案が「新国立競技場 国際デザイン・コンクール」によって、最終的にロンドンを拠点に活躍する建築家のザハ・ハディド氏の案に決定した時点で、多方面の専門家によって指摘されていたものばかりだ。

 私自身、デザイン案が発表された当時の悪評をよく覚えている。

 というのも、私は、国立競技場を建て替えて、あの場所に巨大な陸上トラック付きの総合競技場を新築することに当初から反対の意見を持っていたからだ。

 反対していたのは私だけではない。

 サッカーファンの大部分は、陸上トラック付きのデカい競技場にはネガティブな印象を抱いている。ということはオダジマならびにサッカーファンの意見は、ある面でサッカーへの利益誘導を旨とする、我田引水の見解であることを免れ得てはいないわけで、だから、私は、大威張りで自説を押し出そうとは思っていない。

 というわけですので、以下の10行ほどは、まあ、参考程度に読み流してください。

 味の素スタジアム(東京スタジアム)や、日産スタジアム(横浜国際総合競技場)などをはじめ、国体仕様で建設された陸上トラックつきの総合競技場は、どこの県にあるどの競技場を見ても、サッカーを観戦するためのスタジアムとしては圧倒的に臨場感に欠ける。

 その、観客席からピッチまでの距離が遠い、球技場としてははなはだ魅力に欠ける巨大な競技場を、果たして、五輪が終了した後、どうやって採算ベースに乗せるのか。そのことを考えただけでも、新国立競技場のザハ案は、馬鹿げて見えた。

 このことは、2013年9月に五輪招致が決定したことを受けて書いた当欄の原稿の中でも少し触れている。
 興味のある向きは読みなおしてみてほしい。

 個人的には、巨大さや、予算規模、可動式の観客席や陸上トラックを設置することのデメリットを除いても、純粋な形として、あのデザインは好きになれない。

 私のまわりには、同じ考えを抱いている人間が多い。まあ、類は友を呼ぶと言ってしまえばそれまでなのだが、ともあれ、私の周辺にいる中年男性の多くは、あのデザインに抵抗を感じるのである。

「大体さ、ろくでなし子が逮捕されるんなら、どうしてザハが無事なんだ?」

 なによりも残念なのは、あの新国立競技場自体が、壮大な無責任の集積である点だ。
 いったい、あの巨大なスタジアムについて、誰が責任を取るのだろうか。

 設計者だろうか。
 設計者を選んだ審査員の有識者たちだろうか。
 見積もりをしたゼネコンや施工にたずさわることになる合同企業体であろうか。
 それとも、JSCだとかJOCみたいな組織のトップだろうか。
 あるいは、招致をプッシュした石原慎太郎元都知事ならびに猪瀬直樹前都知事かもしれない。
 でなければJSCの監督官庁である文部科学省の大臣なのか?
 もしくは、総理大臣かもしれない。
 結局、答えはいまもってわからない。

 にもかかわらず、早い時期から予算オーバーが懸念され、工期の遅れが心配され、施工の困難が予想されていた状況をものともせずに、計画は奇妙な具合いに見直されたり手直しされたりしながらも、全体としてじりじりと前に進み、解体への反対運動が起こっていた旧国立競技場も、あっさりと破壊されてしまった。

 で、ここへ来て、いよいよどうにも間に合わなくなった時点で、はじめていきなりお手上げのポーズをしてみせる形で、関係者が、各方面にバカな説明を繰り返し始めた次第だ。で、何をどうトチ狂ったのか、当事者以外の何者でもない文部科学大臣自らが、予算オーバーの尻を持って行く相手に向けて、当事者意識を持てだのという驚天動地の説教を垂れているわけです。

 こんなバカな話があるだろうか。
 先にリンクを張った記事の中で、舛添都知事は次のように述べている。

「新国立競技場建設の責任者に能力、責任意識、危機感がないことは驚くべきことであり、大日本帝国陸軍を彷彿とさせる。日本を戦争、そして敗北と破滅に導いたこの組織の特色は、壮大な無責任体制になる。」

「東京裁判の記録を読めばよく分かるが、政策決定について誰も責任をとらないし、正確な情報、不利な情報は上にあげない。新国立競技場建設について、安倍首相には楽観的な情報しか上がっていなかった。これは、各戦線での敗北をひた隠し、「勝利」と偽って国民を騙してきた戦前の陸軍と同じである。」

 まさにご指摘の通り、新国立競技場建設をめぐる物語は、意見の集約のされ方や、現状認識のあり方、決断のされ方やその受け継がれ方に至るまで、旧日本軍の無責任体制そのものだ。

 ミッドウェーで敗戦の予感を抱いた現場の人間の声は上に伝えられず、ガダルカナルを経て、本土にB-29の編隊の飛来が相次ぐ事態になっても、沖縄に砲弾の雨が降っても、それでも御前会議に招集された面々は勝利を確信しているかのように振る舞い、戦略の見直しを進言する人間はいなかった。

 この度、建設費をめぐって、舛添さんと下村さんの間で論争が起こったことは、幸運なめぐりあわせだったと私は考えている。

 もし現職の都知事が、猪瀬さんのままだったら、580億円の追加支出は都の臨時予算としてすんなり計上され、文科相と都知事が握手する絵柄の写真付きで、

「都民の夢のために、580億円を快諾」

 とか、そういう記事が配信されていたのかもしれない。
 それどころか、工期が遅れていることや予算がショートしていること自体、報道されていなかったかもしれない。

 うちの国の巨大組織は、誰も責任を取らないで済むタイプの決断を好む。
 というよりも、われわれは責任を分散させるために会議を催している。

 その種の組織で満場一致による決議が好まれるのは、「メンバー全員に決断の責任を分散させることで、事実上、責任の所在を無化」せんとしているからであり、役人が諮問機関や有識者会議に結論を委ねるのも、責任を外部にアウトソーシングしたいからにほかならない。

 てなわけで、真正面から責任を追及できるのは、今回の場合で言う舛添さんのような「部外者」ないしは、「獅子身中の虫」、あるいは「前任者のクビを切ったボス」に限られる。

 東京五輪については、舛添都知事の手腕に大いに期待している。

 なんとなれば、

「ぼくたちには夢の力が必要だ」

 という、どこかバブル待望を思わせるたわけたポエムと

「お・も・て・な・し」

 だとかいう、実体の伴わない自己満足のホスピタリティー自慢の合わせ技で招致した、ふわふわでぐにゃぐにゃの五輪幻想にトドメを刺して、シンプルで無駄の無い質素な等身大の東京五輪を実現するためには、招致の利権に群がった人間とはまったく別の視点から五輪関連の権益を清算できる実務家が必要だと思うからで、その役割をこなす人物として、もしかしたら、舛添さんは、ハマリ役なんではなかろうかと考えはじめているからだ。

 都知事に就任して以来、舛添さんは、猪瀬さんが手がけていた事案(六本木渋谷間の深夜バスとか)のいくつかを、にべもなく廃止している。

 これは、期待できる。

 舛添さんが、最終的に、何を始め、何を作るつもりでいるのか、私はよく知らないのだが、ともあれ、前知事と前々知事が始めた色々なものを廃止し、解体し、縮小しつつある姿勢には支持を表明しておく。

 最後に、サッカーファンとしての我田引水の利益誘導的意見であることを断った上で、紛糾する新国立競技場問題への解決策を提案しておきたい。
 予算は、たぶん2億円もあればなんとかなる。

 都の予算で、横浜国際総合競技場(日産スタジアム)のネーミングライツを買うのだ。
 で、名前を「新東京国立競技場」とする。
 大丈夫。外人さんにはバレない。

 千葉県にある空港もずっと「新東京国際空港」と呼んでいたわけだし、成田からの道すがらに通りかかる浦安の遊戯施設も「東京なんたらランド」と名乗っている。

 とすれば、神奈川県にある競技場が東京を名乗ったところで何の不思議もない。

 で、国立競技場の跡地には、ナショナルサッカースタジアムを建設する。
 舛添さんが、この案に乗ってくれるのなら、副知事になっても良いと思っている。
 電話を待っている。

(文・イラスト/小田嶋 隆)

副知事に就任されても
〆切は守ってくださいね


『場末の文体論』
 本コラムから4冊目となる単行本がついに発売されました。今回は小田嶋さんが自分のルーツを語るコラムを収録。帯に中学時代のオダジマが感銘を受けたというトルコのことわざ「明日できることを今日するな」を入れたところ、この本に関わる皆さんが次々に締め切りを忘れてしまったという……。無事間に合ってよかったです(うれし泣)。【書籍担当編集者T】

このコラムについて
小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明

「ピース・オブ・ケイク(a piece of cake)」は、英語のイディオムで、「ケーキの一片」、転じて「たやすいこと」「取るに足らない出来事」「チョロい仕事」ぐらいを意味している(らしい)。当欄は、世間に転がっている言葉を拾い上げて、かぶりつく試みだ。ケーキを食べるみたいに無思慮に、だ。で、咀嚼嚥下消化排泄のうえ栄養になれば上出来、食中毒で倒れるのも、まあ人生の勉強、と、基本的には前のめりの姿勢で臨む所存です。よろしくお願いします。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20150528/281755  

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コメント
 
01. 2015年5月29日 13:57:59 : snAc501eHi
下村は、議員辞職してないのか?

政治資金法に明らかに触れているのに、、、ワルの根源だ。


02. 2015年5月29日 20:51:00 : 2QBqDKD7DU
>国立競技場の跡地には、ナショナルサッカースタジアムを建設する。

サッカーには、埼玉スタジアムを利用すればよいのではないか。


03. 2015年5月29日 22:08:36 : YK28omLvf2
サッカーも金権まみれ。FIFAなど金権の塊、
IOCも一つの商売。ナショナリズムを煽りたい政治家にとっても好都合。

04. 2015年5月30日 06:18:14 : atuowgrUnM
真夏の東京で五輪って、死者出るぞ。
熱のこもらないアスファルトにするのもいいけど、そもそも一回目みたいに10月開催ってコトにしとけばよかったのに、と思う猛暑続きの五月。

経費は無理やり少なく見積もる、儲けはどーんと下駄履かせる、ってのは、お役所仕事の基本だよね。
公務員的〜〜を目の敵にしてるはずの橋下ですら、よくやる手。

説明不足でむかつくのはわかるけど、五輪誘致を決めたのは東京なんだろ。議会で決めたんだろ。
文句あるなら慎太郎や猪瀬に言え。
他の道府県で、国政&地方、一度でも選挙の争点や議題になったか?
なのに国税は当たり前みたいに五輪に使われる。
都税使って、都民に何のメリットが!?
とかマスゾエは吼えてたけど、だったら都に誘致して、道府県民に何のメリットがあるんだ?
全額、都民の税金だけで賄ってほしいくらいなんだが。


05. 2015年5月30日 18:57:08 : VDlpJ8VSx6
>>04. 2015年5月30日 06:18:14 : atuowgrUnM

>五輪誘致を決めたのは東京なんだろ。

今回の五輪誘致の主体は”国”だろ、批判の矛先が違ってる!

オリンピックの主体が”東京都”と言うのであれば、内閣に訳のわからない
担当大臣を作ったりするべきではない、文科省はサポートに徹するべきだ


06. 2015年5月31日 07:40:05 : 38xqq7xWok
国が東京でやるって決めたの?お前のトコでやってくれって頼まれたの?押し付けられたの?都と国と、どっちが先?
日本に誘致しようってそもそも決めたのは誰?

07. 2015年5月31日 13:09:02 : VDlpJ8VSx6
>>06. 2015年5月31日 07:40:05 : 38xqq7xWok

入口の話をして何か意味があるの
東京都が望んだ事だから四の五の言わず金を出せってか?


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