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森を見ず木も語らぬ愚 抑止力を議論し尽くせ(サンデー毎日)
http://www.asyura2.com/15/senkyo186/msg/173.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 6 月 04 日 16:30:05: igsppGRN/E9PQ
 

森を見ず木も語らぬ愚 抑止力を議論し尽くせ
http://mainichibooks.com/sundaymainichi/column/2015/06/14/post-126.html
サンデー毎日 2015年6月14日号 サンデー時評


倉重篤郎のサンデー時評 連載57

「木を見て森を見ず」

 細かなことばかりに気を取られて、大局を見失うことなかれ、という警句。好きな言葉だ。おのれの思考のスケールの小ささに気づくたびに自ら言い聞かせている。

 ただ、新安保法制論議の中から、以下の文脈で聞こえてきたこの言葉には首をひねりたくなるものがある。つまり、自衛隊の活動拡大はリスクを増大するだろう、という議論が「木」であって、そのことによって得られる抑止力が「森」だというのである。野党やメディアは「木」ばかり喧伝(けんでん)するが、肝心な「森」効果を忘れていませんか、とのたまうのである。

 高村正彦自民党副総裁が5月27日の衆院特別委での質問でそれを語り、安倍晋三首相が感に堪えぬように相づちを打つのであった。

 だが、果たしてその語法は正しいか。疑問が次々に湧いてくる。

 集団的自衛権行使容認で他国艦船防護のための戦闘を新たに認め、後方支援というある意味戦闘行為並みに危険な業務をワールドワイドに展開するようになっても、そのリスクについてまともに語ろうとせず、「木」として貶(おとし)め、切り捨てる姿勢はいかがなものか。

 自衛官はこれまでも災害支援などでリスクの高い仕事をしてきており、訓練活動などでの殉職者は1800人を数え、新法制でもその安全については十分配慮している、というのが、安倍氏、中谷元(げん)防衛相の答弁の大意である。

 そこからは、新法制で日本の自衛官を従来と質の違う任務に従事させる、という最高指揮官としての使命感や責任感が伝わってこない。リスクは増えるものの、それを大きく上回る抑止力が得られる、と言いたいのであれば、まずはリスク増を率直に認め、それがどういうものかをあらゆる角度から詳(つまび)らかにし、それを軽減させるための措置の効果と限界を説明しないことには、派遣される側が家族も含めて納得できないであろう。

 この法制を推進する自民、公明の議員も裏に回れば「リスクが増えるのは当然だ」と語るし、現場の自衛官も敏感にそれを感じ取っている。齋藤隆・元統合幕僚長は、戦死者にどのように向き合うか、その際に自衛官、警察官、海上保安官の合祀(ごうし)の問題をどうするか、そういった議論を開始すべき時期にきている、とまで語っている。

 ◇1000兆円の借金で社会保障切り刻む国が軍事拡大予算どうする

 要は、皆本音ではそう思っていることについて、建前論でしか答弁できないことの不健全さである。まさに、頭隠して尻隠さず。「王様は裸」状態ではないか。政府側の懸念は、リスクを公言すると、国民世論からの感情的な反発が一層高まり、法案の円滑審議に支障をきたす、ということらしい。だが、この重要問題に対しそんな覚悟のない半端な対応で法案成立までこぎつけようというのであれば、数の驕(おご)り極まれり、である。

 派遣リスクだけではない。語るべき「木」はまだ他にもある。

 一つは、立憲主義との整合である。憲法9条の縛りによって歴代内閣が戦後一貫してできない、としてきた集団的自衛権行使を一部でもできるとした法理は、政府側説明を何度聞いても理解困難である。自衛権一般を「国家固有の権能」と認めたにすぎない1959年砂川判決と、結果的に集団的自衛権を否定している72年政府見解を論拠としていること自体が「牽強付会(けんきようふかい)」(山崎拓・元自民党幹事長)であり、法の支配を表看板にする国家としては、国民の大半が理解でき、世界からもナルホドと思われる理論武装をすべきである。

 リスクは、自衛官の命だけではない。これだけの軍事活動の拡大にどれだけの予算、人員が必要になるのか。自衛隊のキャパシティー(能力)リスクについてもほとんど説得力のあるデータが開示されていない。1000兆円の借金を抱え、社会保障を大幅に切り刻んでいくしかない国家がどこからそれをひねり出すのであろうか。

 戦後70年かけて作り上げてきた専守防衛という国家ブランドの維持、発展も考えなければならない。いったん失ったものをまた手にするのは思いのほか難しい。

 安倍氏が本当に「森」全体を見ているのかどうかも疑わしい。

 確かに、軍事的な意味での抑止力は増強されるであろう。

『平和のための戦争論』(ちくま新書)で、植木千可子早大教授がわかりやすく説くところによると、抑止力とは、相手に戦争を思いとどまらせる力であるが、軍事力だけではそれを達成できない。こちらの能力、意図を相手に正しく伝える意思疎通のパイプと、状況についての共通認識が必要だ。

 要はミサイルや艦船、戦闘機、兵員数といったハードパワーだけではない。それを背景に相手国としぶとくかつ冷静に対話し、そのことが双方にとっておもわしくない結果をもたらす、という共通認識を作り出すコミュニケーション力が必須である、ということだ。だが、この2年余の安倍政権を見て、中韓両国と腹を割って話し合ったとは、とても言えない。むしろ、いたずらに相手を警戒させ、相手国の反日ナショナリズムを煽(あお)り立ててきたのではなかろうか。

 ここでは抑止力はジレンマとして働く。ある国が相手国の脅威を感じ軍備を増強する。相手国もその脅威に負けてはならじと対抗する。そのエスカレーションが軍拡競争となり、結果的に前線での紛争確率を高めることになる。軍事合理性に基づいた個々の行為の総和が、結果としてより戦争に接近させるという合成の誤謬(ごびゆう)である。

 外交力の強靱(きようじん)化により、軍事的な抑止力の足らざる部分を補えないか、という問題意識もある。70年間一回も戦争をしてこなかった日本こそ、その論議の有資格者であり、イノベーター(革新者)としての資質を持つ、と信じたい。

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 ■人物略歴
 ◇倉重篤郎(くらしげ・あつろう)
 1953年7月東京生まれ。78年東京大教育学部卒、毎日新聞入社、水戸、青森支局。政治部、経済部。2004年政治部長、11年論説委員長、13年専門編集委員

 

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コメント
 
1. 2015年6月04日 16:49:08 : leSwsH6EVs
安保法制論議でこの言葉が出てからというもの
木という字が十字架に人が掛かっている姿に見え出したな。

「木を見て森を見ず」というのは
見方が殺される数と敵を殺す数を比較してみろ
それぐらいの犠牲は当然だとの開き直りともとれるな。


2. 佐助 2015年6月04日 19:48:42 : YZ1JBFFO77mpI : EADAn2gPfQ
木を見ても森を見ずて言えば
小さな部分にこだわって大きな全体を見失う政府(安倍軍国後継政権)

「日本の商品の世界的優位性」によって世界信用収縮恐慌でも悲観論いっしょくにならない,そのため迫りくるインジケータの振り切れることも予知できなくなる。

第二次世界信用収縮恐慌下で、縮小する輸出と国内市場で外資を煽り年金で支え,アベノミクスという株価ミニバブル,だがバブルは必ず弾けるということを、国民が学んだ。だが、この教訓を、国家も企業も個人も忘れ、木を見ても森を見なくなり、思考を停止し、逃走パニックを発生させる。

そして基軸通貨ドル一極からユーロ・円(元)三極への移行も見えなくなる。そのために基軸通貨ドルを助けることができなくなる。

さらに取付け騒ぎパニック発生を沈静化させた見えない本当の原因は、政府や経済界の口先声明や徹夜で輪転機を回して積み上げた札束ではない。「信用膨張商品は、名目の一割を流通させて運営されているため、一斉に取付けるなら、バブルは必ず弾ける」ということを、国民が学んだ。だが、その後長く、金融会社の倒産がなくなると、この教訓を、国家も企業も個人も忘れ、木を見ても森を見なくなり、すべての人間が、死を連想して思考を停止し、死から逃れるために、逃走パニックを発生させる。

インフレ待望論者は、インフレを起こせば、国家や企業の赤字は、手品のように消えてなくなる。と同時に、利益のない低価格に悩む企業を助けられるという妄想を抑えることができない。

金融商品と原材料の値上がりを放置しながら、消費者の所得は増やさないまま、生産工場を海外に移転すれば、どうなるか? その答えは、国内市場が縮小するため、消費者物価のインフレは発生することができない。そして、エコノミストの目には、アベノミクスミニバブルの膨張が頂点に近づく足音は、匂いはしても聞こえない。

マンガ資本主義の常識は「自由な貿易と内外投資が、世界市場を拡大させるので、バブルは絶対発生しない」と確信している。この常識は、第一次世界金融大恐慌の体験から、世界のエコノミストが、全員一致して受け入れたアト知恵の金科玉条になっている。そのために世界経済は関税と通貨切下げ競争で、再び悪夢を体現する。

政府には消費者の購買力を縮小させ,バブルから早期脱出する手段は戦争であるという妄想をもつ人はビックリするほど多い。なにしろ日本は、朝鮮戦争特需やベトナム戦争特需を体験しているため、戦争による景気回復を待望する妄想は、鍵もかけないで放置されたままである。

木を見ても森を見ない平和憲法を変えて核武装し、世界の憲兵の仲間入りをしたいという流れが、いまや多数派となりつつあることは非常に残念だ。


3. 戦争とはこういう物 2015年6月04日 19:52:09 : N0qgFY7SzZrIQ : WJiCmAappI
「ア●ノミックス」「●●平和××法」につづく、「あべっちゃま君」の言葉魔術。論理的整合性が在ろうとなかろうと、国際放送で連発されれば国民はそれが正しいと思い込んでしまう。
 このまま「選挙圧勝」国会が、5ケタの民衆に取り囲まれる事でもない限り、如何なる悪法でも通過するのが今の日本。

4. 2015年6月04日 22:13:48 : L9tqm96UfE
・海外で戦争する国に!? 力を合わせて戦争法案ストップ!《日本共産党》
https://www.youtube.com/watch?v=jlGyZuQTIlE

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