また、立法府である国会の場で行政権を持つ閣僚が合憲、違憲を軽々に断言することは三権分立に反する恐れもある。
合憲、違憲を決める役割は裁判所にしかない。

自民党は選挙を戦うために地方議員を無視できないので、自民党支持者から拡大安保法制に疑問を持つ人が増えれば進めることはできない。
もう少しの頑張りだと思うけどね。

　この日は国会で、自民高村氏と民主枝野氏の対決があった。
　２人とも過去に司法試験に合格し弁護士資格を持つ。
　その2人が、安保法制の違憲性をめぐり、国会で丁々発止の論戦を交わす。
　安倍政権が国会に提出した安保法制のために、日本の今後の命運が大きく左右されようとしている今、これが重要なニュースでないとしたら、いったいニュースとは何だろうか…?
　当然他の民放各局はこぞってこのニュースを取り上げていた。最近権力の顔色をうかがってばかりいると批判も多い民放各局でさえ…!
　「ニュース7」は、この後世に残るかも知れない、特筆すべき重大なニュースを、こともあろうに「見て見ぬふり」をして、「日本酒のブランド化」などという愚にもつかぬ「おバカ向けバラエティ情報」を、延々と時間をかけて流していた。そして取り上げ方によっては政治的論議を呼ぶ可能性のある高村氏と枝野氏の論戦は素通りしたくせに、安倍氏が招集したろくでもない会議のニュースは流し、さも何か意味のあることをしているかのようなあの男の空虚な得意顔を映していた。
　「ニュース７」ではなく、「安倍政権広報・バラエティ７」という番組名に変えたらどうか。
　「高村氏と枝野氏の、安保法制の違憲性をめぐる国会論戦」と、「日本酒のブランド化」と、どちらが今の日本において重要なニュースか、などという問いを立てなければならないこと自体、恥ずかしくて涙が出そうになる。
　「天下の公共放送」の、筆頭の看板ニュース番組が、ジャーナリズムうんぬん以前に、知性だけでなく、人間として最低限の誇りを完全にかなぐり捨てているのを見るのは辛い。
　なぜなら、この「思考停止」「知性崩壊」の背景には、「権力に対する見苦しい卑屈な屈服」があることは、もはや疑う余地はひとかけらもないからだ。

　私は半世紀余りの人生の間、ずっとNHKを好んで見てきた。NHK対民放の視聴時間の比率は、６：４か７：３ぐらいだったのではないかと思う。
　印象に残った素晴らしい番組も、数えきれないほど、思い出しきれないほどあった。
　そのNHKが、「ニュース７」という看板番組から、腐臭を放ちながら崩壊していく。うわべだけは取り繕って、さわやかさを装い、アナウンサーが白々しい笑顔など浮かべているのが、かえってますますそのみじめな堕落ぶりを際立たせる。
　今日本という国が中枢から腐り、「思考停止」「知性崩壊」の惨状をさらしながら、ずぶずぶと崩れ落ちつつあるのと軌を一にしているようで、見ているのが辛くて耐え難くなる。もしニュース７のスタッフにいくらかでも良心が残っているのなら、何とかしてそれを取り戻し、「その場を無難にやり過ごす」ことよりも大事なことが世の中にはある、ということを思い起こしてくださることを切に願う。
6月11日
長谷川　宏（大学教員）
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