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戦後70年日本の強みは(下)自然資本と宗教に鍵:この論考のほうがずっと示唆に富む内容
http://www.asyura2.com/15/senkyo190/msg/265.html
投稿者 あっしら 日時 2015 年 8 月 07 日 04:59:59: Mo7ApAlflbQ6s
 

(回答先: 戦後70年談話:21世紀構想懇談会報告書全文:「戦後レジーム」世界観+米国型グローバリズム、安保法制・TPPなどを正当化 投稿者 あっしら 日時 2015 年 8 月 07 日 03:50:45)


戦後70年日本の強みは
(下)自然資本と宗教に鍵

今井賢一 スタンフォード大学名誉シニアフェロー

 「戦後70年」という節目は、日本の経済システムの大きな転換を迫る「内」と「外」の要因が鮮明になる年である。

 「内」では、コンピューターが人類の知性を超えるといわれる「情報技術の指数関数的な成長」にどう付き合うかという問題である。「外」では、文化的・宗教的要因に基づく国際関係の不安定性の強まりへの対応である。

 本稿の論点は、この2つの問題を考察するときに、「戦後70年」の経済的論議には2つの「忘れ物」があったということであり、その忘れ物のなかに、問題をとく重要な鍵があるということである。

 第一の「忘れ物」は「自然資本」である。自然資本とは、森林資源、農地、水産資源等の価値を資本として把握する用語である。もちろん、これらを個別に捉える議論はあったが、経済論議の正面に登場することはなかった。

 ところが、国連大学が最近まとめた「包括的『富』報告書」の自然資本・人工資本・人的資本の国際比較によると、日本に関して、次のような興味深い結果が報告されている。すなわち、本報告書が網羅した20カ国の中で、日本は持続可能な経路にあることがわかり、自然資本がプラスに成長した数少ない国の一つなのだ。

 この事実は一国の経済を国内総生産(GDP)のような唯一の指標で評価すべきでないことを示している。また、自然資本の存在、具体的には日本の国土の半分以上が緑の森林に囲まれていることは、新たに認識された日本経済の強みなのである。

 われわれが、自然資本を重視するのは、本稿の初めに設定しておいた課題、すなわちコンピューターが人類の知性を超える時といわれる「情報技術の指数関数的な成長」にどう付き合うかという問題を考察するには、「自然資本」という概念を対置して考えるのが適切だからである。

 人間一人の1秒あたりの計算能力は最大10の15乗といわれる。それがコンピューターによって10の20乗、25乗というように指数関数的に急カーブで増大すると、2045年には、人間能力の10億倍の能力を持つ人工知能が登場するという。これが、いま問題にされているコンピューターの指数関数的な成長である。

 それに対して、自然資本は成長ではなく、われわれの生活の質の向上、すなわち、きれいな水や空気、健康な土壌・植物・動物、森林、海、川のもたらすサービスなどを提供する資本である。抽象的にいえば「生命を支える生態系の総和」である。

 いま仮に、人間能力の10億倍の能力を持つ人工知能が出現したら、その人工知能は、生態系のような非定型の性質をもつ自然資本を形成してゆくことに役立つのだろうか。

 仮にそれが一時的に可能であったとしても、ハイエクの基本的想定、すなわち「人間の才能と技術は無限に多様である」ことを想起すれば、どう考えても、人工知能が自然資本を形成していくことは不可能だと考えざるをえない。

 多少、抽象的な議論になり過ぎたので、現実論で考えてみよう。

 私の友人のある女性アントレプレナー(起業家)は、これまで多様なベンチャービジネスを成功させてきた。彼女は最近、水をほとんど使わずにすむ野菜の人工栽培に成功し、現在、その野菜、さらには野菜工場を輸出するために、関係する企業が自らの技術の活用を目指して創意工夫をしている。

 このような過程を数多く知っている私としては、この種のプロセスを人工知能によって開拓することには無理があるといわざるをえない。

 私は自然資本の概念を重視し、それを慎重に発展させたいと考えるので、自然資本にかかわる議論を綿密に解明した米国の思想家、ジェイン・ジェイコブズの著書「経済の本質―自然から学ぶ」に要約されている次のようなスタンスをとりたいと考える。

 「楽観的に考えると世界は富んでいて、われわれの行動を修正し、修正し、さらに修正すべく、興味深く建設的な機会を無限に与え続けているのだ」

 このような態度をとらず、かつての英国のように自然は征服すべきものだと考えると、自然資本の成長率は極度のマイナスとなるのである。

 第二の忘れ物は、初めに述べた国際的な不安定性にかかわる宗教問題である。

 この問題については、近年2冊の書物、すなわち、評論家・竹内宏氏の「経済学の忘れもの」と、寺西重郎・一橋大学名誉教授の「経済行動と宗教」が刊行されたので議論の空白はかなり埋められた。だが、われわれの行動指針にはまだ距離があるので、その糸口をつけることが、当面の課題である。

 戦後の産業ダイナミズムをつくりだした故松下幸之助翁は、自らの人生、生き方を後世に残すため、大阪城の下に5000年後までの保存を目指した文書入り容器「タイム・カプセル」を埋められた。松下翁の直弟子としてその後タイム・カプセルの設計・構築を続けている建築家の東方洋雄さんは「大夢カプセル」という新用語を創出し、カプセル自体にも工夫をこらして、日本の各地でその普及活動につとめられている。

 その意義は、こういうことである。

 現在の日本の社会では、先祖を末永く墓に祀り、自分も死後、一族と生きている孫たちとの仮想的な交流を夢見るという死後の世界を想定することが困難になっている。実際問題として墓参りは形骸化している。この地球の上で自分は何をしたのか、いかなる人生であったのかを考える暇もなく、定型的に儀式は終わってゆく。

 「大夢カプセル」は、このような無味乾燥的な世界を補うために、生前に「自分史」を書き、真鶴海岸の絶景の場所に鉄鋼製の箱で地下保存し、例えば子や孫がそれぞれの人生の節目で開けて読み、あらためて自己認識の機会を得るというような事業を実行しているのである。

 ここで注目したいのは大げさにいうと、西洋文明に起源をもつ現代文明の行き詰まりをいかに打開するかという思想的基盤との関係である。

 かつての欧州の中世都市では、人々はキリスト教の教えに基づいて永遠性を求め、「文明の産物を凝縮して貯蔵し伝達する構造」として「天」を目指し高くそびえる教会をつくり、そこは人々が日常の安定を祈るとともに、ときに自分の死後の世界の感触をもえられる場所となった。

 キリスト教と資本主義が結びついた西洋文明が世界の中心であったことは間違いないが、人類文化という視点からは、人間と天上の神のみを見る思想には限界がある。

 最近、梅原猛先生が「人類哲学序説」で述べられているように、草や木も動物も人間と同じように扱う思想が必要なのであり、そこに自然資本と宗教が結びつく思想が生まれる。「大夢カプセル」の革新的精神はこれを受け継ぎ、どのような宗教、どのような宗派をも受け入れる試みなのである。

 このような実践を進めていくことが、宗教的対立に基づく国際的不安定に関する日本のスタンスを示すことになろう。

ポイント
○日本は自然資本がプラス成長の数少ない国
○人工知能が自然資本を形成するのは不可能
○人間と天上の神のみを見る思想に限界あり

 いまい・けんいち 31年生まれ。一橋大名誉教授。専門は産業組織論

[日経新聞8月7日朝刊P.31]

 

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コメント
 
1. 2015年8月10日 09:01:23 : 94cf2nbD0Y

[かつての欧州の中世都市では、人々はキリスト教の教えに基づいて永遠性を求め、]


キリスト教でもいいんだけど、 キリストの教え「 殺すな 人を愛せ 」 教え

を実行せず、人殺し 戦争侵略したのは 西洋キリスト教こくだったわけで。

全然キリストの教えを守らない、なんじゃそれは。

キリスト教はたいしたことはない、役立たず。 キリストに帰れ、キリスト教は。


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