参議院安保法制特別委員会の議事録公開が止まっている

本音は議決に表れる
参議院安保法制特別委員会の議事録公開が止まっている
http://blog.livedoor.jp/trecca/archives/44542765.html
2015/10/03

　参議院の安保法制特別委員会の会議録は、国会会議録検索システムのこちらのページに掲載されるはずなんですが、今これを書いている時点でも、公開済なのは7月24日(理事の指名)と7月27日(中谷大臣の趣旨説明)の分だけ。実質的な質疑に入った7月28日以降の分は、今のところ全く出ていません。参議院サイト内の「30日以内に参議院で行われた会議」にも、同委員会の会議録は出ていません。

　衆議院での審議の時はこれほど遅くはなかったはずで、おおむね2～3週間ほどで国会会議録検索システムに掲載されていたと思います。参議院のQ&Aページでも、会議録は、会議の日からおよそ12～14日後に国会会議録検索システムに掲載されると書いてあります。

　他の委員会、例えば安保法制とも関連の強い外交防衛委員会では、国会会議録検索システムのほうでは9月10日分まで、また「30日以内の会議録」のほうでは9月25日分まで上がっています。

■参議院に直接訊いてみたけれど…
　これはアカンと思い、参議院テレホンサービスに訊いてみましたが、「訂正・精査するのに時間がかかっておりまして…」ということ以上の情報は得られませんでした。大代表経由で記録部の方にも、いつ頃までに公開されるのか訊いてみたのですが、明言はありませんでした。せめて秋の臨時国会までには出るかどうか答えて頂きたかったのですが、その臨時国会すら開きたくないというのが政府与党の本音でしょうから、答えようがなかったのかもしれません。

　いずれにせよ、通常の訂正・精査ではとても公文書として後世に残せないほど、ボロが多すぎるという事なのでしょう。あの9月17日の捏造採決をはじめとして。

委員自身が公開している委員会会議録(未定稿)のまとめ

　参議院がなかなか公開しないので、とりあえず、こっちから探してみますか。
最近は個人の方が国会質疑を書き起こしたものも随分と増えていますし（例えばこちらの聞文読報さんなど）、また、質疑を行った議員がご自身のウェブサイトで会議録未定稿を公開している場合もあります。ここではそうした、議員自身が公開する会議録未定稿をまとめてみました。

　[質疑日]の欄をクリックすると、その日の会議録があるページにジャンプします。
また日付に★印があるものは、安倍首相の答弁があるものです。

質疑者自身の公式サイトで公開されている参議院安保法制特別委の会議録未定稿

会派	議員	質疑日	概要
生活	山本太郎	7/29★	「原発への弾道ミサイル着弾の影響について～想定していません」
		7/30★	「イラク戦争～日本も戦争犯罪者になる？！」
		8/3	「経済的徴兵制～当時の経済同友会専務理事の暴走なのか?!」
		8/19①	「今回の安保法案は、第3次アーミテージ・ナイ・レポートの完コピだ!」
		8/19②	「政府が集団的自衛権行使容認のよりどころとする砂川判決こそ、米国からの指示だった!」
		8/21★	「総理発言『ルールは横には置けないんです!?』」
		8/25★	「原爆投下や空襲は戦争犯罪・国際法違反か?」の質問に、答弁回避の安倍総理」
		8/26	「前原かねいち氏の意向を受けて、防衛省がニュータイプの徴兵制?!」
		9/2	「DM・戸別訪問・ポスティング…狙い撃ち?!違法な選挙運動みたいな自衛隊員募集」
		9/4	「専守防衛で志願した自衛隊。戦争法案で服務宣誓のやり直し?!」
		9/8	参考人質疑：「米軍による広島・長崎への原爆投下、東京大空襲をはじめとする日本全国への空襲は、国際法違反・戦争犯罪か?」
		9/14★	「辺野古テント座り込み抗議の文子おばあの総理への手紙、辺野古新基地中止・日米地位協定改定」
		9/17	鴻池委員長不信任動議賛成討論：『断腸の思いで･･･』。顛末は･･･速記録『議場騒然、聴取不能･･･』」
共産	井上哲士	7/30★	「必要最小限の武力行使」とは？／昨年1～2月の米軍と自衛隊の共同訓練は中東での戦闘を想定したものか？
		8/3	「弾薬」の定義について／兵站支援の拡大により劣化ウラン弾などの輸送も可能になるのでは？、など
		8/25★	沖縄で8月12日に起きた米軍ヘリ墜落事故当時に行われていた日米の特殊作戦共同訓練について
		9/4	河野統幕長の訪米記録の問題について／海賊対処拠点であるジブチの自衛隊基地の利用拡大の動きについて、など
		9/8	参考人質疑：武力行使の一体化論について、など
		9/9	河野統幕長の訪米時の会談記録について／南スーダンPKOへの自衛隊派遣について
		9/15	中央公聴会：「自国防衛のための集団的自衛権」という政府の主張は国際法の上から見てどうなのか？、など
		9/17	鴻池委員長不信任動議への賛成討論
共産	小池晃	7/29★	「戦闘地域での兵站／軍事攻撃の標的に　米軍の武力行使と一体」
		8/11	「戦争法案の施行前提に自衛隊が部隊編成計画／"８月成立" 日程表まで作成」(自衛隊の内部文書の暴露あり)
		8/19	8/11の続き：「『軍軍間調整所』日米共同作戦　防衛相存在認める」
		8/21★	「自衛隊内部文書／首相『問題ない』と開き直るが…」
共産	大門実紀史	8/5	「戦争法案の必要論崩れる外相 “中国を脅威とみなさず”」
社民	福島みずほ	8/4★	「ミサイルは武器でなく弾薬」
		9/9	河野克俊統合幕僚長の米軍幹部への発言について／民間企業による兵站活動への協力について／自衛官募集の住民票閲覧について、など
		9/17	鴻池委員長不信任動議への賛成討論
民主	福山哲郎	7/28★	「当てはめを変えれば集団的自衛権の行使は容認できる」とする根拠は？
		8/3	「法的安定性は関係ない」と発言した礒崎補佐官への参考人質疑
		8/25★	自衛官の安全確保に関する法的担保について：北側三原則を受け入れたというが、法案のどこにその規定が？
		9/11★	前回(8/25)の続き
		9/17	鴻池委員長不信任動議への賛成討論
民主	小西洋之	8/3	集団的自衛権の違憲論点：昭和47年政府見解の解釈について
		8/11	集団的自衛権の違憲論点、憲法前文の平和主義について
		9/4	砂川判決に関する山口繁・元最高裁長官の見解について
民主	蓮舫	8/21★	安保法案反対デモを批判した武藤貴也議員の離党理由について／外国軍隊の武器防護活動の範囲について、など
民主	蓮舫	9/4	河野統幕長訪米発言の資料について／自衛隊の安全確保措置の法的担保について
民主	藤田幸久	8/19	「ホルムズ海峡の機雷掃海」事例をめぐる外交上の問題について
民主	藤田幸久	9/2	「ホルムズ海峡事例」の立法事実の有無について (※リンク先の表題は9/10外交防衛委となっていますが、議事録の中身は9/2安保特別委のものです)
維新	小野次郎	8/26	国民保護法の適用を伴わない存立危機事態とは？／集団的自衛権行使の法的要件について
元気	山田太郎	7/30★	安保法制案に対する国民の「不明」「不信」「不安」を払拭するために
元気	田中茂	8/3	集団的自衛権行使上の政策判断について
		8/19	NATOのような集団的自衛権を伴う軍事同盟をアジアで構築できるか、など
		9/2	朝鮮半島有事の対応について、など

　毎回の質疑の会議録を公開しているかどうかは議員によりまちまちですが、こうして見ると大半が法案反対会派の議員で、賛成派は「日本を元気にする会」のお二人くらいですね。え？与党議員はどうせ無視したんだろって？いえ、特別委員会で質疑を行った議員については、ひと通りチェックしました。佐藤正久議員のブログでは、さすがに質疑のポイントが良くまとまっているなと思ったり(ただ会議録がなかったのが残念)、山本一太議員のブログでは「総理の分かりやすい答弁を引き出すことに専念した46分間の質疑」という正直すぎるタイトルに笑ってしまったり。

地元有権者に受けるのは、質疑報告よりお祭り報告なのか…

　あと、これは与党議員に限った話ではありませんが、各委員の公式サイトを調べる中で、7月～9月という季節柄のせいか、地元の夏祭りや各種イベントの写真がやたらと目につきました。別に載せてはいけないという訳ではありませんが、特別委員会に名を連ねているのに、委員会質疑の報告はまったく上げずに、地元のイベント報告ばかりとなると、国会議員のセンスとしては如何なものかと…。

　もちろんその方が地元有権者の反応はずっと良いのでしょう。「○○先生のホームページに、ほら、こないだのお祭りの写真が載ってるよ！」といった感じで。でも、国民全体を縛る法律を作るのが国会議員。それを、町内会の会長を選ぶようなノリで選んでいるとすれば、どうか考え直していただきたいと思います。