イラクの国営テレビは、旧フセイン政権のナンバー２で、過激派組織ＩＳ＝イスラミックステートと連携していたとされるイブラヒム元革命指導評議会副議長が軍事作戦で死亡したと伝え、イラク政府としては軍事作戦の成果を強調するねらいがあるとみられます。

　イラクの国営テレビは１７日、イラク軍の高官などの話として、旧フセイン政権で最高幹部だったイブラヒム元革命指導評議会副議長が死亡したと伝えました。元副議長は１７日朝、北部のサラハディン県で行われた軍事作戦で殺害されたということで、国営テレビは遺体だとする写真を放送しました。元副議長は以前にも死亡したという情報が伝えられていて、イラク政府は今回、ＤＮＡ鑑定を行うなど確認を進めるとしています。
　旧フセイン政権で元大統領に次ぐナンバー２だった元副議長は、政権崩壊後、行方不明となり、旧フセイン政権に近い武装勢力を指揮してアメリカ軍やイラク政府などへの攻撃を繰り返していたとされています。また、去年、過激派組織ＩＳがイラク第２の都市モスルを制圧するなど勢力を拡大した際には、ＩＳへの支持を表明し、連携していたと言われています。
　イラク軍はアメリカなど有志連合による空爆の支援を受け、ＩＳに支配されていた北部の主要都市ティクリットを今月初めに奪還するなど攻勢を強めていて、今回の報道は、イラク政府として軍事作戦の成果を強調するねらいがあるとみられます。

　イラクでは、過激派組織ＩＳ＝イスラミックステートの進撃を食い止めようと、西部アンバール県で政府軍が部隊を増強するなど、各地で激しい戦闘が続いています。

　イラクでは今月初め、政府軍がＩＳに支配されていた北部の主要都市ティクリットを制圧したあと、ＩＳがイラク西部のアンバール県の主要都市ラマディで反撃に転じるなど激しい戦闘が続いています。
　中東のメディアによりますと、ラマディでは一時、中心部から数百メートルの所までＩＳの戦闘員が迫ったの対し、政府軍が１８日、部隊を増強し、進撃を食い止めているということです。
　市民の中には、市街戦に巻き込まれることを恐れて避難する人たちが増え続けていて、１８日も新たに数百人が東におよそ１００キロ離れた首都バグダッドに到着しました。
　また北部のベイジでは、ティクリットから撤退したＩＳが先週、製油所の施設の一部を占拠しましたが、アメリカ軍などが連日空爆を行った結果、１８日までに多くの戦闘員が撤退したとみられ、政府軍がほぼ管理下に置きました。
　しかしベイジでは、これまでもＩＳがいったん撤退したあと再び攻勢を強める一進一退の攻防が続いており、戦況は予断を許さない状況です。

　イラク西部で、過激派組織ＩＳ＝イスラミックステートと政府軍の戦闘が激しさを増し、家を追われた避難民が新たに９万人に上ることを受けて、国連は国際社会に緊急の支援を呼びかけています。

　　イラクでは、政府軍が北部の主要都市ティクリットを過激派組織ＩＳから奪還したのに続き、西部のアンバール県で今月に入って大規模な掃討作戦を始め、ＩＳと一進一退の攻防が続いています。
国連の人道問題調整事務所は１９日、声明を発表し、アンバール県の主要都市ラマディと周辺の村で戦闘から逃れるため家を離れ、新たに避難民となった人の数が９万人に上ることを明らかにしました。
　避難民のほとんどは徒歩でおよそ１００キロ離れた首都バグダッドなどに逃れ、国連機関が非常食や水、衛生用品といった緊急物資の配布に当たっているということです。
　しかし、イラクでは長引くＩＳとの戦闘によって去年１月からこれまでに２７０万人以上が避難民となり、対応できなくなりつつあるということです。
　国連は深刻な資金不足から、イラクでの人道支援活動が縮小されたり打ち切られたりするおそれがあると窮状を訴え、国際社会に緊急の支援を呼びかけています。