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[FT]秘密に包まれる米新型ステルス爆撃機の詳細
2015/10/30 6:30
米空軍のデボラ・リー・ジェームズ長官が27日、米国の新型戦略爆撃機を開発する800億ドル（約９兆6500億円）の契約をノースロップ・グラマンが勝ち取ったと発表すると、報道陣から質問が飛び始めた。
長距離爆撃機「ＬＲＳ−Ｂ」のエンジンは誰がつくるのか。空軍は新型機にどんな名前をつけるのか。爆撃機は他のどんな兵器システムとの連携を目指しているのか――。
ほぼすべての質問が曖昧な返答しか得られず、米国が2001年に統合打撃戦闘機Ｆ35の開発をロッキード・マーチンに委託して以来、最も重要な決定を取り巻く謎めいた印象が強まった。
老朽化しつつある既存機に代わる新型爆撃機100機を供給するプロジェクトの獲得で、ノースロップは確実に米軍事産業の色あせた２番手企業から重要な航空機供給事業者へと変貌を遂げるだろう。
■くじかれたライバル
今回の選定は、ロッキード・マーチンとボーイングの野望をくじくことになる。両社は契約獲得を目指してコンソーシアムを組んでおり、米軍向けに航空機を丸ごと建造できる、たった２社のメーカーになることが確実視されていた。
バージニア州に本社を構えるティールグループのアナリスト、リチャード・アブラフィア氏は、発注先選定の意味するところが一部不透明なのは、まさに同プロジェクトの重要性のためで、だからこそ当局者がそれを秘密に包んでいるという。ＬＲＳ−Ｂが置き換える航空機には、76機のＢ52爆撃機が含まれる。Ｂ52は冷戦初期に設計され、1952年に初めて飛行した航空機の型式だ。
「重要なのは、設計とコスト、そして新型機に伴うリスクだった」。アブラフィア氏はこう言う。「それはもちろん、統合打撃戦闘機とは異なり、発注先選定の後でさえ完全に闇に包まれている」
だが、レキシントン・インスティテュートのアナリスト、ローレン・トンプソン氏によると、今回の選定が関係企業の展望を一変させるのは確実だ。1980年代にステルス爆撃機Ｂ２を開発したノースロップは、毎年一握りの有人航空機しか生産しない企業から、米国にとって戦略的に最も重要ともいえる兵器システムの供給企業になる。
新型爆撃機は、米空母を自国領土の爆撃射程圏外に締め出しておける中国やロシア、あるいは潜在的な敵対勢力の空・海防衛力の向上に対抗することを目的としている。
「契約先の決定が維持されれば、ノースロップ・グラマンは予見できる限りずっと固定翼軍用機を生産することになる」とトンプソン氏は言う。「一方、ボーイングには、軍用機事業がジェット旅客機の軍用化バージョンを生産する存在に成り下がる可能性がある」
■ノースロップ買収の可能性は低い
ボーイングにとって取り得る対応の一つは、契約を取り返すためにノースロップの軍用機事業を買収することだ。だが、多くの観測筋にとって、この選択肢はあり得ないように思える。米国防総省が事業者間の統合について次第に声高に不満を表しているからだ。
国防総省で調達の責任を負うフランク・ケンドール次官は先月、同省は議会に対し、軍事企業同士の合併を阻止する新規則を設けるよう要請する計画だと述べた。この動きは、ユナイテッド・テクノロジーズがヘリコプター部門のシコルスキー・エアクラフトを90億ドルでロッキードに売却する計画が速やかに承認されたことに対する不満が動機になっているように見えた。
ボーイングが自社の地位を守る最善のチャンスは、今回の選定に異議を唱えることかもしれない。これは米空軍の350億ドルの空中給油機プロジェクトが欧州のＥＡＤＳ（現エアバス・グループ）とノースロップのコンソーシアムに与えられた後、ボーイングが業務を奪い返した戦術だ。
商用ジェット機の767型機をベースにした空中給油機と737型機をベースにした偵察機ポセイドンは、ボーイングの軍事生産事業の柱を成す軍用化商用ジェット機の一部だ。ボーイングとロッキードのコンソーシアムは27日、異議を唱える可能性を示唆した。
By Robert Wright in New York
（2015年10月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙）
（翻訳協力 JBpress）
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