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韓国激震 怒りの底流
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投稿者 あっしら 日時 2016 年 12 月 07 日 17:28:29: Mo7ApAlflbQ6s gqCCwYK1guc
 


[ニュース複眼]韓国激震 怒りの底流

 韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が任期満了前の辞任を表明した。野党3党は条件なしの即時辞任を求める構えで、先行きはなお見えない。政治の混乱に加え、韓国経済も停滞。デモを通じた国民の怒りも収まらない。混迷の背景にあるものは何か。

■朴氏、変革の期待裏切る ソウル大名誉教授 張達重氏

 朴槿恵大統領の国民向け談話は、自身の退陣に言及したものの辞めるまでのプロセスは明示しなかった。退陣の意味がはっきりしないし、大統領自身の過ちも事実上認めていない。談話を聞いた国民は違和感をおぼえたのではないか。

 朴大統領の退陣を求める大規模集会に主催者発表で100万人規模の人が集まったのは、2012年の大統領選挙で国民が朴氏に「韓国社会の正常化」を託したことと関係がある。

 1987年の民主化以降、韓国では様々な対立が生まれた。保守政党と革新政党の理念の対立、経済格差を伴う世代間の対立、大統領と同じ出身地の人間が会社や役所の人事で優遇されることによる地域間の対立などだ。政権交代を繰り返す度にこんな対立が深刻化し、社会問題の根を深くした。朴大統領は保守政党出身だが穏健なイメージが強く、バランスの良い政治を進めて社会を正常化してくれるとの期待があった。

 実際は外交にせよ内政にせよ独断が目立った。強硬な北朝鮮政策や周囲の意見を取り入れない人事が典型だ。財閥偏重を解消する「経済民主化」も実効性のある政策は打てなかった。

 その上、友人の崔順実(チェ・スンシル)被告の娘が名門女子大学に不正入学するのに力を貸したとされる。日本以上に学歴が重んじられる韓国では不正入学は受験経験者から親まで幅広い世代の反感を買う。国民の期待に応えられず反感まで買えば、国民が朴大統領に強い怒りを向けるのは無理もない。高級官僚などエリートと呼ばれた人々が社会の尊敬の対象ではなくなり、国の統治モデルが揺らいだことも背景にある。

 今後のポイントは抗議集会などで見せた国民の意思が、韓国社会の改革につながるかどうかだ。可能性は五分五分だとみている。今回の件を見ても分かるように、韓国大統領の非常に強い権限が問題を生む土壌になっている。権限の一部移譲が国会で議論になっているが、国民の声を受け止めて行動に移す政治家がいなければ実現できない。

 もしかしたら既存の政党の枠組みでは、国民が望む政治の実現は難しいかもしれない。次期大統領を選ぶ過程で与党「セヌリ党」でもない、最大野党「共に民主党」でもない第3の勢力が出てくる可能性がある。

(聞き手はソウル=山田健一)

 チャン・ダルジュン 71年ソウル大学大学院修了。78年東大客員研究員、ソウル大教授を経て13年から名誉教授。15年サムスン物産社外取締役。68歳。

■財閥支配、閉塞感を増幅 漢城大教授 金商祖氏

 朴大統領の談話で、経済政策を決定し執行する行政府首班としての大統領はもはや存在しない。政策のコントロールタワーが崩壊し、韓国経済は船長を失った船のように漂流が続く。

 政治家、官僚、企業、消費者は明日どうなるか分からない状況では判断を下せない。韓国では近く日本型不況に突入するとの懸念があるが、経済指標で見るとすでにその状態にある。

 韓国経済の問題は1997年のアジア通貨危機のような金融の危機ではなく、企業の競争力低下や内需の停滞など実体経済の不振の側面が大きい。長期的な視点に立った構造改革が必要な状況なのに手を打てないのは憂慮される状況だ。

 朴氏が2012年の大統領選で当選した背景に、父の故・朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領以来の近代化の総仕上げになるという期待が保守・進歩陣営双方にあった。保守政治家ながら財閥改革を促す「経済民主化」を掲げ、韓国が成熟した社会に発展するとの期待があった。だが後に政策を撤回し、経済も停滞する中、裏切られたという思いが4%の支持率に表れた。

 友人の崔被告が娘を名門の梨花女子大学に不正入学させていた事実も若者の怒りを呼んだ。若者の間では「ヘル朝鮮」(地獄のように生きづらい韓国社会)という言葉が流行するほど閉塞感が強い。サムスンなど財閥への就職は難しいが、崔被告が支配する2つの財団に財閥が資金を出した事実は怒りを増幅させた。

 資金拠出を強要された被害者である財閥が、容疑者という側面も強調されているのは政経癒着の問題が根強いからだ。朴正熙時代には政府は事業の許認可権や金融支援を材料に資金拠出を要求していた。だが、今では財閥オーナーが支配力を維持するための不透明な支配構造の維持や、子供への継承問題を巡る不当な取引などを政府が黙認する対価という側面が強い。

 今回の事件が、朴大統領が断念した経済民主化が動く契機になればいい。強すぎる財閥は市場の競争を阻害している。財団への資金拠出が取締役会の決定を経ずになされていた事実は問題だ。株主や債権者、従業員ら利害関係者がそれぞれ持つ権利を行使し、オーナー家をけん制するなど支配構造を改善する力につながれば大きな成果だろう。

(聞き手はソウル=加藤宏一)

 キム・サンジョ ソウル大経済学博士。94年から現職。財閥改革が専門で、少数株主保護や企業の支配構造改善を求める市民団体の経済改革連帯の所長も。54歳。

■大企業と中小、格差拡大 大東文化大教授 高安雄一氏

 韓国国民の不満が噴出した背景には経済の停滞と格差の拡大もある。朴政権は経済改革を試みたが、結局できずじまいだった。

 韓国経済の潜在成長率は3.5%程度だが、ここ数年の実績は3%を切ることが多い。原因はまず輸出の不振にある。韓国の国内総生産(GDP)は約5割が輸出だ。外需が減ると経済が落ちこむ構造と言える。

 以前は米国だけを見ればよかったが、今は米国と中国の最終需要がほぼ半々だ。最近は中国の伸び悩みのあおりを受けている。

 内需が小さい韓国はもともと経済成長を外需に求めてきた。輸出をけん引したのは財閥企業だが、ここに韓国の構造問題が潜む。輸出不振は財閥企業の業績を悪化させる。普通は賃金を下げるが、韓国の財閥企業は労働組合が強く賃金を下げにくい。特に今年は現代自動車で賃金交渉が難航し、十数年ぶりに全工場でストライキが起こった。

 こうした体質は結局、下請け企業に取引価格や賃金の引き下げという形でふりかかる。日本と違って韓国の中小企業は技術力が乏しく、財閥企業に言われるがままのケースが大半だ。大企業と中小企業の格差が広がり、不満が広がった。

 朴大統領は大企業の経営者と労働者が話し合う政労使委員会を作り、両者の歩み寄りを促そうとしたが、実現することなく、事実上機能は停止したままだ。

 韓国は日本と同様に高齢化が進み、潜在成長率は30年代に2%を切ると言われる。成長力を上げるには生産性を高める必要があるが、それには労働組合の改革が不可欠だ。

 経済成長には教育改革も重要だ。今は皆が一流大学に行って財閥企業などの大企業を目指す。中小企業に行くと人生の敗者だと見られてしまい、技術力のある中小企業が育ちにくい。朴大統領は技術者養成の専門大学を生かした教育改革も目指したが、退陣表明によりこれも頓挫してしまった。経済活性化につながる構造改革を進められなければ、中国など他の新興国に追いつかれる可能性もある。

(聞き手は福士譲)

 たかやす・ゆういち 90年経済企画庁(現内閣府)入庁。在韓日本大使館勤務、筑波大准教授などを経て現職。九州大博士。専門は韓国経済。50歳。

■デモ、過去にも国動かす 静岡県立大准教授 奥薗秀樹氏

 朴大統領の退陣デモが勢いをみせたのは「父の偉業を汚した娘」というとらえ方をされたためだ。父である朴正熙元大統領は1960〜70年代に経済成長を導いた人物として保守派に人気があり、顔に泥を塗った格好の朴氏への怒りが爆発した。嘘はつかない政治家という朴氏の従来のイメージも落胆につながった。

 デモで実際に効果を上げてきた国という点も参加人数が増えた背景にある。60年の李承晩元大統領退陣、87年の憲法改正はデモがきっかけの一つだった。国民は成功体験に基づき運動に参加したとみられる。

 朴氏は国会に進退を委ねると表明したが、実際の退任はずっと先になる可能性がある。各党の利害が一致せず統一案の作成が難しいからだ。朴氏は承知の上で談話を発表しており、あわよくば長く大統領職に残りたいと考えているようだ。

 早期辞任を嫌がる1つ目の理由は不名誉な辞任を避けたいと思っていることだ。もう一つは、今大統領選になれば北朝鮮に融和的な野党が政権を取るという危機感だ。朝鮮半島情勢が緊迫するなか、まずは世論が落ちつくのを狙っている。

 国会で弾劾案が可決されるかは見通せなくなった。ただ、もし可決されても弾劾が成立するかどうかは世論がカギを握るだろう。

 最終的に弾劾の是非を審理する「憲法裁判所」は87年の民主化で復活した司法機関で、国民の意をくみたいという意識を持っているとされる。過去には世論に沿った判断を下しており、今回も同様となる可能性がある。

 今回の問題は日韓関係にプラスにならない。朴氏追及の動きが強まれば、慰安婦合意や日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の無効論まで勢いを持つ恐れがあるからだ。日本は感情的にならず、合意内容を粛々と前に進めるべきだ。

 北朝鮮にとっては、今核実験などの挑発に踏み切れば北に強硬な朴氏を勢いづかせる。北に融和的な政権を誕生させるため、しばらくは挑発を自粛するのではないか。

(聞き手は白石透冴)

 おくぞの・ひでき 93年広島大院博士課程前期修了。NHK記者、韓国東西大助教授などを経て10年4月より現職。専門は韓国政治外交。52歳。


[アンカー] 暮らしへの不満、政治不信と共振

 韓国で初雪を観測した先週末の大規模抗議集会から3日目、朴槿恵大統領がついに任期満了前の退陣を表明した。幼少期からの苛烈な競争や格差拡大にたまっていた不満のマグマに、大統領と友人の疑惑が火を付けた。

 韓国の知人に聞くといま目の前で起きているのは「革命」なのだという。56年前、初代大統領の李承晩を退陣させたのも不正選挙に怒る学生らの「4・19革命」だった。その後も韓国市民は街頭に繰りだし、政治を動かす体験を得てきた。

 「米日中ロのマッチョなリーダーたちに囲まれた韓国」。韓国紙にこんなコラムが載った。北朝鮮では最高指導者が軍部隊の視察を繰り返している。韓国人のエネルギーに改めて驚きながら、先の見えない韓国にどこか不安も覚える。(ソウル支局長 峯岸博)

[日経新聞12月1日朝刊P.9]

 

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