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コラム:米大統領選、年後半のドル安要因に=佐々木融 「ブレグジット」波乱相場に備えよ G7の意義、過小評価は禁物=カーテ
http://www.asyura2.com/16/hasan108/msg/886.html
投稿者 軽毛 日時 2016 年 5 月 24 日 01:03:12: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

FX Forum | 2016年 05月 23日 20:20 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:米大統領選、年後半のドル安要因に=佐々木融
JPモルガン・チェース銀行 市場調査本部長
[東京 23日] - 先週末のドル円相場は一時、4月28日以来の110円台後半までドル高・円安が進んだ。いくつかの米経済指標が予想を上回り、18日に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が6月の追加利上げの可能性を高めたこともあって、ドルが上昇したためである。

ドル円相場は年初の120円台から4カ月間で105円台半ばまで12%程度下落した後、5月に入ってからは反発基調にある。4月末までのドル円下落は円高とドル安の双方によって引き起こされた。この4カ月間の主要通貨の騰落率を見ると、円が最強通貨となっている一方、ドルは英ポンドに次いで2番目に弱い通貨となっている。

一方、5月に入ってからのドル円の反発は主にドル高によるものだ。5月以降の主要通貨のパフォーマンスを見ると、ドルが最強通貨となる中、円は中位程度に位置している。

米利上げに関して、市場は7月27日のFOMCでの利上げさえ完全に織り込んでおらず、来年末までで見ても、合計2回の利上げを織り込むのがやっとといった状態になっている。今後市場が米国の利上げをさらに織り込んでいく中で、短期的にドルが上昇する余地はまだあるかもしれない。

しかし一方で、年後半にはドルにとって、かなり大きなリスク要因が待ち構えていることを忘れてはならないだろう。それは米大統領選挙である。

<中国発のドル売り・円買い誘発も>

今のところ共和党の大統領候補はドナルド・トランプ氏で固まり、民主党の候補もヒラリー・クリントン氏に決まりそうな情勢である。この両候補は、ドルの先行きにとってかなり深刻な影響を与えそうな共通の政策目標を重要項目として掲げている。それは通商政策である。

トランプ氏の選挙キャンペーン用ウェブサイトを見ると、7つの重要政策が掲げられており、「メキシコに壁建設の代金を払わせる」「ヘルスケア改革」「税制改革」などと並んで、「米中貿易の改革」がある。トランプ氏はその中で、「即座に中国を為替操作国と認定する」としている。

一方、クリントン氏のウェブサイトには、31項目の政策が掲げられている。その中に「製造業」という項目があり、大統領直属の首席貿易検察官(Chief Trade Prosecutor)というポジションを新設し、貿易取締官の数を3倍にし、「米国の労働者を傷つける中国に立ち向かい、為替操作に対して断固たる措置を取る」と記している。

両者とも、今のところ中国に主な焦点を当てているように見える。確かに、米国の貿易赤字の半分は中国に対する赤字であり、日本との貿易赤字は、対中赤字の5分の1程度しかない。したがって、巨額の円売り介入でも行わない限り、日本は標的にはならないだろう。

しかし、米中間の貿易摩擦の激化は、円相場には影響を及ぼすかもしれない。仮に、米国が対人民元でのドル安を促すような行動に出た場合、中国は外貨準備で保有するドルの為替リスクをヘッジするか、場合によってはドル建て資産を売却して、他の国の資産を外貨準備として保有するインセンティブを強めるかもしれない。

この時、それだけの大規模な資本移動を吸収できるのは、日本かユーロ圏しかないだろう。つまり、米国と中国の貿易摩擦激化は、中国によるドル売り・円買いの流れを誘発するリスクをはらんでいるのである。

<保護主義強まればドル安圧力に>

もう少し大きくマクロ経済的に考えても、米国が保護主義的な政策を強めたら、ドル安になることは想像に難くない。

米国は世界最大の経常赤字国で、世界最大の純債務国である。毎日のように世界の輸出業者は米国の輸入業者からドルを受け取り、それを自国通貨に換えようとしている。つまり、貿易取引に絡む為替フローだけを考えると、世界の為替市場はドル売りで溢れている。

このように毎日繰り返される世界の輸出業者によるドル売りは、米国に投資をしようと考える投資家によるドル買いで支えられている。そして、そうして積み上がったドル資産を世界の投資家は大量に保有している。

こうした状態で、米国が保護主義的な姿勢を強めていった場合、米国に投資をしようとする投資家のドル買いが細ったり、米国に投資を積み上げている人が投資を引き揚げようとすることになる。市場には貿易赤字から発生するドル売り需要が大量にあるのだから、世界の投資家がドル買いの手を緩めるだけでもドル安圧力は増す。

1993年から1995年半ばまでの日米貿易摩擦、2002年から2003年までの鉄鋼輸入をめぐる貿易摩擦の際もドルは大きく売られている。ちなみに、現在の米経常赤字の対国内総生産(GDP)比は2.8%程度と、1990年代半ばの1.5%程度よりはるかに大きい。

大統領選まではまだ半年もあり、市場参加者は依然としてマーケットに与える影響を本格的には考慮していない。しかし、7月になり、トランプ氏とクリントン氏が正式に各党の大統領候補に指名され、副大統領候補が決まり、具体的な政策に関する論戦が始まるようになると、為替市場は米次期大統領下でのドルのリスクを意識し始めるだろう。

トランプ氏よりクリントン氏の方が影響はマイルドかもしれない。そうなると、年後半は米大統領選に向けた世論調査の結果に、市場が一喜一憂し、ドルが上下動することになる可能性が高いと考えられる。

しかし、政策は両者とも保護主義的な色合いが濃くなっており、いずれにしてもドルに与える影響はマイナス方向になる可能性が高い。

*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-tohru-sasaki-idJPKCN0YE11G?sp=true

FX Forum | 2016年 05月 23日 20:19 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:「ブレグジット」波乱相場に備えよ=斉藤洋二氏
斉藤洋二
斉藤洋二ネクスト経済研究所代表
[東京 23日] - 1992年に欧州連合(EU)発足を決定したマーストリヒト条約が調印されて、すでに四半世紀近くが経った。これまで英国はEUが目指す統合に対して非協力的な態度をとり続け、同時にEU加盟に伴うコスト負担の大きさに英国民の不満は高じていた。特に昨年来の移民・難民急増と過激派による攻撃の多発を受けて、EU離脱の声が一段と高まっている。

この国民の声を受け6月23日にEU離脱・残留を問う国民投票が実施される。しかし、昨年5月の総選挙でキャメロン首相が国民投票を公約した時点で現在のような接戦を予想する向きは少なかった。投票日までわずか1カ月とカウントダウンが迫る現在、結果は予想し難く、英国民のみならずEUそして世界の金融市場は固唾をのんで行方を見守っている。

この状況下、昨年夏に190円を超えていた英ポンドは現在150ー160円台に下落。そして対ドルでも1.4ドル台と2010年来の安値水準に下落している。すでにブレグジット(BREXIT、英国のEU離脱)は相当程度、相場に織り込まれているとも考えられるが、その結果がもたらす国際政治・世界経済への影響の大きさを考えれば、金融市場の不確実性は今後、日に日に高まっていくことになるだろう。

<「光栄ある孤立」を目指す国民性>

現在のロンドンでは、英連邦の名残から多数の民族が混在する結果、「多文化主義」が根付いている。単一言語、単一文化で暮らしてきた日本人にとっては 想像を超える世界だ。だが、英国人の本質はこの「多文化主義」よりも、むしろ大英帝国時代の非同盟政策で培われた「光栄ある孤立」を目指す国民性に認められるのではないだろうか。

英国は19世紀から一貫して独仏など大陸諸国に対して一線を引いてきた。1973年、EUの前身である欧州共同体(EC)に約15年遅れて参加しているが、その際にも国内で賛否両論が沸き起こり、また独仏において参加反対の声も高まった。

このような英国の大陸との異質性、そして現在のEU予算への拠出金の負担感やEU官僚への不満などからブレグジットを求める声が高まる。加えて、英国への移民はこの10年間、毎年20万人超の純流入となっている。ここにきて、治安悪化や雇用確保といった観点からも大陸との国境線の強化を求める声が高まるのは自然の成り行きだろう。

こうした歴史的背景と現在の政治経済情勢を反映して、高級紙はじめ多くの知識層は「残留」を唱えるが、大衆紙が主導し労働者階級が「離脱」を支持する傾向にあるのも否めない。多くの世論調査で残留派・離脱派は拮抗しており、2014年9月18日のスコットランド独立に関する住民投票同様、ぎりぎりまで議論が沸騰し、当日の開票速報に時々刻々、一喜一憂することになるだろう。

問題を混迷化させている理由の1つは、内閣そして政党が意見不一致であることだ。例えば、キャメロン首相(保守党党首)やコ―ビン労働党党首は「EU残留」を唱えているが、保守党のジョンソン前ロンドン市長は「EU離脱」をけん引している。政治の迷走が先行き不透明感を高めている。

<英国とEUが失うもの>

離脱による経済損失については、4月18日に英財務省が試算を公表している。離脱する場合は、残留のケースと比べて、英国の国内総生産(GDP)は2030年までに最大9.5%、最低でも3.4%低下し、英国民の生活水準低下は免れない。

また、離脱後の貿易投資政策として、1)ノルウェーのような欧州経済領域(EEA)への加盟、2)カナダのようなEUとの2者間協定の締結、3)世界貿易機関(WTO)加盟国としてEU市場にアクセス、という3つの選択肢が挙げられているが、英国が目下どの方向を目指すのかも明らかにされていない。

どちらにしてもEU非加盟国となれば対EU貿易の関税が重くのしかかることになる。そして今後、メガ自由貿易協定(FTA)が主流となる時代において、英国が単独でFTAを世界中の国々と締結せねばならず、これまでと同様の経済効果を達成するのは困難であり、必然的に経済の縮小は避けられなくなるだろう。

このように離脱決定後は、貿易投資政策はじめ安全保障政策など国家の根幹について、1から議論が始まることとなる。つまり、様々な分野において離脱後10年から15年にわたり英国の混乱は必至との見方が強まっている。

そして、英国がEU加盟国としての地位を放棄するデメリットは大きい。この間の英国は人口増加を背景に経済も拡大傾向をたどってきたが、それらはEUに加盟しているおかげといっても過言ではないだろう。

また、シティが繁栄したのもEUの金融センターであればこそで、すでに金融機関においてはシティからの脱出を図る動きが強まっている。EU離脱となれば多くの雇用が失われると同時にシティの凋落を避けることはできない。

ともかくEUは経済から政治へと統合の深化を図り、トルコやウクライナを視野に入れるなど地域的拡大を進めてきている。特に2004年にロシアの軍事的脅威から逃れようとバルト3国がEUに駆け込んで以来、EUが政治統合の色合いを強めているが、この点がEUの発展のエネルギー源にもなってきたことは明らかだ。

しかし、EUはユーロ圏拡大過程において、南欧諸国の金融財政危機への対処の難しさに直面した。また、人の移動の自由を推進した結果、過激派組織による攻撃リスクも高まった。そして今後、英国の離脱が決定した場合、EUは3つ目の打撃を受けることとなり、求心力よりもむしろ遠心力が強まることは必至だろう。

<離脱なら1ドル=100円接近か>

これまで述べてきたように英国民投票の行方は世界経済の大きなリスクである。つまり、物価の安定と雇用の最大化という2つの使命を帯びる米連邦準備理事会(FRB)が金融政策運営上、このところ注視しているとする世界経済の安定を脅かす。

現状、英国民投票の直前にあたる6月14―15日に予定される連邦公開市場委員会(FOMC)において米利上げを予想する向きが多い。また、FOMCメンバーで投票権を有するダドリー・ニューヨーク連銀総裁らが早期利上げに対して前向きな発言を繰り返しており、ドル買いを支援する結果となっている。

しかし、各地区連銀総裁などの意見はともかく、イエレンFRB議長の本心は英国民投票への対応が優先課題ではないか。つまり、6月FOMCでの利上げは見送りと見るのが妥当である。

また、6月15―16日に行われる日銀金融政策決定会合において現在の国内経済成長の鈍化傾向を眺めて追加緩和実施の見方が強まっているが、日銀はFOMC同様に金融政策を現状維持とする可能性を捨て切れない。

以上を踏まえ、英国民投票の為替市場への短期的影響については、投票前後においてドル円は3円程度、ポンド円も5円程度のアップダウンは覚悟しておく必要があるだろう。最も可能性のあるシナリオを描くとすれば、5月後半から投票日に向けて105円水準へと円買いが進み、投票結果を見て離脱の場合は100円へと接近、残留の場合は110円台の水準へと円安に振れるのではないだろうか。

*斉藤洋二氏は、ネクスト経済研究所代表。1974年、一橋大学経済学部卒業後、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。為替業務に従事。88年、日本生命保険に入社し、為替・債券・株式など国内・国際投資を担当、フランス現地法人社長に。対外的には、公益財団法人国際金融情報センターで経済調査・ODA業務に従事し、財務省関税・外国為替等審議会委員を歴任。2011年10月より現職。近著に「日本経済の非合理な予測 学者の予想はなぜ外れるのか」(ATパブリケーション刊)。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-yoji-saito-idJPKCN0YE05Y


Column | 2016年 05月 23日 19:41 JST 関連トピックス: トップニュース
オピニオン:G7の意義、過小評価は禁物=カーティス氏
 5月23日、コロンビア大学のジェラルド・カーティス名誉教授は、多極化の時代だからこそ、共通の価値観を持つ主要7カ国(G7)サミットには意義があると指摘。写真は伊勢志摩サミットのロゴデザインと安倍首相。2015年12月に都内で撮影(2016年 ロイター/Koji Sasahara/Pool)
 5月23日、コロンビア大学のジェラルド・カーティス名誉教授は、多極化の時代だからこそ、共通の価値観を持つ主要7カ国(G7)サミットには意義があると指摘。写真は伊勢志摩サミットのロゴデザインと安倍首相。2015年12月に都内で撮影(2016年 ロイター/Koji Sasahara/Pool)
ジェラルド・カーティス コロンビア大学名誉教授

[東京 23日] - 多極化に伴って国際秩序が不安定化している時代だからこそ、共通の価値観と問題意識を持つ主要7カ国(G7)サミットには意義があると、米国の政治学者、ジェラルド・カーティス・コロンビア大学名誉教授は説く。

また、日米の政治情勢については、大統領選でのドナルド・トランプ氏の躍進によって米国政治・社会の断層があらわになる一方で、日本では第2保守政党の不在が権力に対するチェック・アンド・バランス(抑制・均衡)機能の低下をもたらしていると指摘する。

同氏の見解は以下の通り。

<多極化時代ゆえの存在意義>

率直に言って、私は以前、G7はもう廃止すればよいと考えていた。世界2位の経済大国である中国を含まないG7サミットで、国際的な諸問題が議論されても、有効な対策が練られるとはとても思えなかったからだ。また、後述するように、G7内部でも政治・経済事情の違いは一段と大きくなってきており、当然ながら政策の優先順位は違う。それは財政出動に対する日本とドイツ・英国の温度差にも示されていると言えよう。

しかし、中国やロシアなどの台頭に伴う多極化の進展で国際秩序が一層不安定化しているにもかかわらず、20カ国・地域(G20)など、より大きな枠組みがうまく機能しない状況を見て、最近はG7の存在意義を再確認させられることが多い。今回の伊勢志摩サミットを含め、G7会合に目に見える成果を求めることは難しいが、少なくとも共通の価値観を持つ先進国のリーダーたちが年に一回集まって話し合うことは無駄ではない。

もちろん、官僚が作ったシナリオを踏襲するだけだったり、ただパフォーマンスとして共同コミュニケ(声明)にサインするだけなら、多大なコストと時間の費消であり、もうやめたほうがよい。ただ、グローバル経済の低迷にせよ、難民問題や核不拡散問題にせよ、同じような思考のベースを持つ首脳陣が互いの意見をぶつけ合い、それぞれに政策のヒントを得て自国に持ち帰るのであれば、意義深いものとなるはずだ。

南シナ海や東シナ海などで海洋進出の動きを活発化させる中国へのスタンスは、欧州と日米では異なるだろう。また、対外強硬路線をとるロシアに対するスタンスも、北方領土問題を抱え、プーチン大統領との対話を重視する日本と、その他の国々は違うだろう。

しかし、G7には、平和的に問題解決にあたるという共通認識や、もっと言えば、民主主義という共通理念がある。新たな国際秩序の構築が求められる中で、G7のように長い歴史があり、比較的小規模な枠組みはかえって国際諸問題の解決にあたって存在意義を増していくのではないかと考えている。

<トランプ旋風で米国社会の「断層」があらわに>

ただし、一言で先進国陣営とくくっても、各国の政治・社会事情の違いが大きくなってきている点には留意が必要だろう。例えば、日米においてもその差異は顕著だ。

まず米国について言えば、大統領選挙におけるドナルド・トランプ氏の存在は、泡沫候補の予想外の快進撃という以上の意味を持つ。彼の言動が米国社会を激しく揺さぶった結果、隠れていたいくつもの断層があらわになったのだ。

断層の1つは、格差拡大に根差すものだ。2000年以降、毎年、生活水準が上がる20%の人々と、取り残される80%の人々。トランプ氏は後者の層を中心に支持を広げている。

また、白人層のアイデンティティ危機がもたらす米国社会の断層がある。米国勢調査局の予測によれば、米国の総人口に占める白人の割合は18歳未満では2018年か2019年にも過半数を割り込む見通しだ(全体では2043年)。人種の多様性は米国の強さとダイナミズムの源だが、白人の労働者階級を中心に、不平不満が高まっているという現実がある。トランプ氏は、明らかにそのはけ口となっている。

民主主義の良さは、センターレフト(中道左派)とセンターライト(中道右派)があり、政治がセンター寄りの選択肢を国民に与えながら、妥協できる中間地帯があるということだ。ところが、8年間のオバマ大統領在任中の民主党政権と共和党議会との徹底的な対立を経て、そうした中間地帯は脆くなってしまっている。そこにトランプ氏が現れて、過激な発言で対立をあおっているところに米国政治の危うさがある。

トランプ氏は共和党候補に指名されても本選では負けるだろうと思うが、民主党筆頭候補のヒラリー・クリントン氏が大統領になったとしても、この米政治・社会の断層は残されたままだ。民主党自身、割れてしまっている。性的少数者の権利や温暖化対策などを重視する富裕層の中には、保守派の急先鋒であるティーパーティに席巻された共和党を嫌い、民主党支持に回った人々がいるが、この層は民主党左派の経済政策には賛同しておらず、その結果、党内亀裂に拍車をかけている。

G7では、各国の国内政治が大きな話題になることはないだろうが、背景にある格差拡大など主要国に共通する社会問題の深刻さはトップ同士で共有し、議論を尽くしたほうがよいだろう。

<「一枚岩」になりすぎた日本政治のリスク>

一方の日本は、逆のリスクを抱えている。それは、政治が「一枚岩」になりすぎたという問題だ。米国のような政治の断層も危険だが、野党勢力が著しく弱体化し、与党一強下で官邸に権力が集中しすぎている状況は、健全な意味でのチェック・アンド・バランス(抑制・均衡)機能が働きにくいという点で危うい。

日本に必要なのは、2つの保守政党だ。残念ながら、今の民進党にその一翼を担う力があるとは思えない。民進党が割れて、そこに自民党の一部が移り、第2の保守政党が生まれる必要がある。だが現在、そうした大きなスケールの政界再編を主導できそうな剛腕政治家は見当たらず、安倍官邸の一強状態は当面続くのではないか。

そうしたなか、懸念されるのは、自民党内の一部に存在する中国に対する過度な脅威論、封じ込め論が支配的となってしまうことだ。むろん、日本の対中脅威論の高まりは中国側の挑発的な行動に原因が求められるが、日本側が封じ込めにこだわれば、中国側の過剰反応を招き、悪循環を引き起こす恐れがある。

そもそも経済規模で日本の何倍にもなっていく中国を封じ込めるなど、不可能な話だ。日本の対中外交の選択肢は日米安保を軸に地域的な力のバランスを維持しながら、中国を国際秩序により責任ある形で関与させるエンゲージメント政策であるのだ。

今のところ、安倍政権が進めている日米同盟深化の取り組みや、南シナ海問題で中国との対立の火種を抱える国々との連携強化などは、エンゲージメント政策から逸脱しておらず、許容範囲内だ。日本の政治家には、くれぐれも中国の台頭や挑発的な行動には冷静かつ慎重に対処してもらいたい。

G7では、南シナ海問題に限らず、中国に関する様々な問題も議論されよう。一枚岩の対応を目指すのは難しいと思うが、少なくとも対応策について、多様なアイデアが共有されることを望みたい。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、ジェラルド・カーティス氏へのインタビューをもとに同氏の個人的見解に基づいて書かれています。

*ジェラルド・カーティス氏は日本研究で知られる米国の政治学者で、コロンビア大学名誉教授。東京財団名誉研究員。東京大学、慶應義塾大学、早稲田大学、政策研究大学院大学などの客員教授を歴任。1974―90年コロンビア大学東アジア研究所長。1940年生まれ。

*本稿は、「伊勢志摩サミット」特集に掲載されたものです。
http://jp.reuters.com/article/opinion-g7-gerald-curtis-idJPKCN0YE0DL
 

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