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マイナス金利の導入、海外では「ブーム」終焉か 上野泰也のエコノミック・ソナー 米国では中央銀行当局者らが「距離を置く
http://www.asyura2.com/16/hasan108/msg/895.html
投稿者 軽毛 日時 2016 年 5 月 24 日 01:50:06: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

(回答先: 消費税増税よりもはるかに負担が重い 社会保障費の「増税」についても語ろう [橘玲の日々刻々] 投稿者 軽毛 日時 2016 年 5 月 24 日 01:42:46)

マイナス金利の導入、海外では「ブーム」終焉か

上野泰也のエコノミック・ソナー

米国では中央銀行当局者らが「距離を置く」発言
2016年5月24日(火)
上野 泰也

FRB(連邦準備制度理事会)のイエレン議長ほか、米国の中央銀行当局者は「マイナス金利」という政策から距離を置く発言を行っている (写真:ロイター/アフロ)
 欧州でユーロ圏さらにはハンガリーにまで広がり、日本でも1月に突然導入された「マイナス金利」という実験的な金融緩和策。米国でも導入論議が一時盛り上がったが、ブームのピークは過ぎ去ったように見える。筆者が特に注目したのは、以下の2つの動きである。

「マイナス金利」についての2つの動き
@ 米国で展開された「マイナス金利」導入論議は「やらない方がよい」ということで意見集約が進んだ模様であり、市場の思惑も沈静化した。


A 欧州で最も大幅な「マイナス金利」を実施しているスウェーデンで、インフレ目標の柔軟化や住宅バブルへの目配り強化の方向性が出てくるなど、流れが変わってきた。
「マイナス金利」についての発言を調べてみる

 まず、上記の@についてである。

@ 米国で展開された「マイナス金利」導入論議は「やらない方がよい」ということで意見集約が進んだ模様であり、市場の思惑も沈静化した。

 欧州に続いて日本でもマイナス金利が導入された後、米国ではこの問題について当局者のコメントが相次いだ。2月1日の討論会でフィッシャーFRB(連邦準備制度理事会)副議長がこの政策について「(以前に)想定していたよりも効果的だ」と評価したことで、米国が仮にリセッション(景気後退局面)入りする場合にはマイナス金利導入が真剣に検討されるのではないかという見方が、市場で広がりかけた。

 しかしその後、慎重論を口にする米国の中央銀行当局者が、相次いで以下のような発言を行った。


■図1:米国の中央銀行当局者たちのコメント
発言者 コメント
イエレンFRB議長 「2010年頃に追加の金融緩和策として検討したが、金融市場への衝撃を懸念し、好ましくないとの結論に至った」「導入してもうまく機能しない恐れがあった」(2月10日 下院で証言)
ダドリー・ニューヨーク連銀総裁 「(マイナス金利導入は)きわめて時期尚早の議論だ」「私にとっては今すぐに議論すべきものではないと考えている」(2月12日 記者会見)
カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「必要になるとは予想していない」(2月16日 講演後)
ブラード・セントルイス連銀総裁 「現在、そうした類の動きを検討する状況ではない」(2月17日)
ウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁 「(マイナス金利が必要という考えは自分にとって)非常に遠い」(2月18日 記者団に)
メスター・クリーブランド連銀総裁 いくつかの国ではいい効果も出ているが、米国での適用は避けたいと述べて、慎重姿勢を示した(2月19日 講演後)。
カプラン・ダラス連銀総裁 マイナス金利の米国での導入を排除するものではないが、多くの反作用が起きる恐れもあるとして、慎重な姿勢を示した(2月24日)。

「マイナス金利」という政策から距離を置いた米国

 そして、3月7日にはフィッシャーFRB副議長の発言内容が、「(マイナス金利は米国では)直ちに必要な状況ではない」「すでに導入している国々では予想以上に機能しているが、米国の金融システムは複雑で効果があるか不明だ」となり、2月1日時点に比べると明らかにトーンダウンした。

 最終的には、イエレンFRB議長が3月16日のFOMC(連邦公開市場委員会)終了後の記者会見で、「万一追加緩和が必要な状況に置かれた場合、さまざまな手法がある。過去の経験からすると、例えば、マチュリティー(償還までの期間)がより長い債券を買い入れることが可能なほか、フォワードガイダンス(将来の金融政策運営に関するコミットメント、いわゆる「時間軸」)に関しても多様な選択肢がある。これらの手法は採用可能で、金融緩和が必要になった場合には実際に用いることができる。マイナス金利は、われわれが積極的に検討しているものではない」と明言して、論議にけりをつけた。

 5月に入ってからも、米国がマイナス金利という政策から距離を置いたことを示す発言が断続的に出てきている。17日にはロックハート・アトランタ連銀総裁が、マイナス金利は「理論的には可能だが、現実的な選択肢ではない」と発言。ウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁も同日、マイナス金利は「政策を並べたリストの末端にある」とした。

「マイナス金利」実施中のスウェーデンでも潮目に変化

 次にAについて。

A欧州で最も大幅な「マイナス金利」を実施しているスウェーデンで、インフレ目標の柔軟化や住宅バブルへの目配り強化の方向性が出てくるなど、流れが変わってきたこと。

 世界最古の中央銀行であるスウェーデンのリクスバンクは2月11日、主要政策金利であるレポレートを0.15%ポイント引き下げて▲0.5%に、預金ファシリティ金利を▲1.25%にするなどの追加緩和を発表した。

 同国のインフレ目標は、2%ピンポイントである。だが、3月の消費者物価(CPI)は、伸びが加速したものの前年同月比+0.8%止まりで、住宅ローン変動の影響を除いたベース(CPIF)でも同+1.5%である。

 その一方で、スウェーデンの景気はきわめて好調に推移しており、2015年10-12月期の実質GDPは前期比+1.3%に加速。前年同期比は+4.5%。2015年通年では前年比+4.1%の高成長である。

 低インフレと高成長の組み合わせに対して極端な金融緩和を続けることのバランスの悪さに加え、同国では住宅バブルの膨張が問題視されており、金融政策のあり方があらためて問われている。インフレ目標を2%から引き下げるべきだといった主張も出てきている。

インフレ目標は柔軟なものにして、ひずみの拡大を防ぐ

 キング元イングランド銀行(BOE)総裁らによるスウェーデンの金融政策の調査および勧告を経て、同国の金融政策はデフレリスク警戒に偏ったものから、金融システムの安定にも従来以上に目配りしたものへと、シフトしつつあるようである。

 リクスバンクのイングベス総裁は4月6日の講演で、2%という目標を見直すべきだといった意見からは距離を置きつつも、いったんやめていたインフレ目標に対する上下1%の許容変動幅設定を復活させることを検討していると表明し、この案に個人的には賛成だと明言した。インフレ目標をより柔軟なものにし、要するに1%であっても許容して、過度の金融緩和によるひずみや景気の過熱を防ごうというのが、その趣旨だろう。

 さらにリクスバンクは4月14日、インフレ目標の基準とする物価指標をCPIからCPIFに変更する可能性を柔軟に検討すると表明した。数字が高い方のCPIを基準にしてインフレ目標政策を運営する方針に切り替える場合には、追加で金融緩和を行う必要性は低下する。

 以上のほか、マイナス金利幅拡大を含む一連の追加緩和策を決めた直後の3月10日の記者会見で、「一段の金利引き下げが必要になるとは思わない」など、利下げ(マイナス幅拡大)に打ち止め感を強く漂わせる発言をドラギECB(欧州中央銀行)総裁が行ったことが、市場で注目された。

マイナス金利が長く続くことへの懸念を表明

 また、イングランド銀行(BOE)がマイナス金利に否定的なメッセージを発している。カーニーBOE総裁は2月26日の講演で、各国の中央銀行によるマイナス金利政策は「近隣窮乏化」の環境を生み出し、世界経済を低成長にとどめるリスクがあると警告。ウィールMPC(金融政策委員会)委員も同様に、3月8日、マイナス金利は近隣窮乏化を招く為替管理の1つに近いと述べた。

 なおカーニー総裁は来日していた3月31日に、金融安定理事会(FSB)の議長として記者会見を行った中で、日銀のマイナス金利について「何年も続くことになれば金融機関の収益を損ない、金融安定のために重ねてきた進展を台無しにする」と述べて、あからさまに懸念を表明していた。

 一般に、金融機関の収益は「長短のミスマッチ」を主な源泉にしている。多額の不良債権の処理が必要な場合には、そのための原資を稼がせることを念頭に、利下げを積極的に行うことによって「イールドカーブ(利回り曲線)を立たせる」のが常道である。

グローバルに見れば「ブーム」は峠を越えた

 一方、金融機関に十分な体力があり、貸出金利の低下などを通じて景気を刺激する方の優先度が高い場合には、ある程度まで「イールドカーブを寝かせる」ことにつながる緩和策をとることに合理性がある。

 しかしながらこの場合でも、マイナス金利を導入したり、さらにその幅を拡大したりするなどして、「度が過ぎる」フラット化圧力をイールドカーブに加えると、中長期の収益見通しが大幅に削られた金融機関のリスクテイク能力低下を通じて、金融システムの円滑な作動がかえって阻害されてしまう。

 そうした点を含め、マイナス金利という新しい政策が抱えている問題点の認知度が徐々に高まってきたため、マイナス金利に関する一種の「ブーム」は、グローバルに見れば峠を越えたというのが、筆者の受け止め方である。

 もっとも、日本では日銀の黒田総裁が、現在▲0.1%になっているマイナス金利幅をECB並みの▲0.4%まで将来拡大することは技術的に可能だと繰り返している。残念ながら、グローバルな大きな流れはどうやら、あまり意に介していないようである。


このコラムについて

上野泰也のエコノミック・ソナー
景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/052000045/  

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