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日本の貧困対策「周回遅れ」が伊勢志摩サミットで発覚
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投稿者 軽毛 日時 2016 年 6 月 04 日 00:35:14: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 


【第51回】 2016年6月3日 みわよしこ [フリーランス・ライター]
日本の貧困対策「周回遅れ」が伊勢志摩サミットで発覚
国連「持続可能な開発目標(SDGs)」採択から初の記念すべきサミットであった「G7伊勢志摩サミット」。そこで明らかになったのは、世界から取り残されかねない日本の姿だった。
「持続可能な開発目標」発効後初の
記念すべきサミットだったが…
「G7伊勢志摩サミット」が開催されたた三重県賢島周辺
 2016年5月26日・27日、三重県で開催されていた「G7伊勢志摩サミット」は、「G7伊勢志摩首脳宣言(骨子・原文・仮訳)」を公開して終了した。
 今回のG7伊勢志摩サミットは、昨年(2015年)9月、国連が「持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable development goals)」を採択してから初のサミットという、重要な節目であった。  
国連「持続可能な開発目標(SDGs)」ページのトップ。子どもを抱いた女性の左側に「尊厳ある人生を保証する」とある
 SDGsが「目標(ゴール)」である以上、期限がある。目標を達成する期限は、約13年半後の2030年。すべての国々は、普遍的に適用されるSDGsにもとづき、
「すべての国々に普遍的に適用されるこれら新たな目標に基づき、各国は今後15年間、誰も置き去りにしないことを確保しながら、あらゆる形態の貧困に終止符を打ち、不平等と闘い、気候変動に対処するための取り組みを進めることになります」〈国連広報センター:持続可能な開発目標、2016年1月1日に発効(概観)、※太字は筆者による〉
 という方針に対して、具体的な取り組みを開始することになる。
 もちろん日本も、SDGsは大いに意識しているはずだ。伊勢志摩サミット公式サイトにも、
「・開発
G7伊勢志摩サミットは「持続可能な開発目標(SDGs)」を中核とする「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の採択後初めてとなるサミットです。今後のアジェンダの実施には、民間・市民社会を含むあらゆるステークホルダーが参加するグローバル・パートナーシップが不可欠です。」(G7伊勢志摩サミット主要議題)
 という記載がある。ただし私は、世界経済・政治・外交・気候変動・エネルギー……と独立した課題であるかのように「開発」という項目があり、そこでSDGsが軽く触れられている扱いに違和感を覚えなくはない。なぜならSDGsは、保健・格差・貧困など世界のありとあらゆる課題を包括的に「つまみ食い」せず解決するための目標だからだ。
首相官邸の「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」ページ(左)と、G7伊勢志摩サミットwebサイトのトップページ(右)。やる気の差が見た目の差に現れているのではないことを期待したい
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 今回は17項目の目標のうち、本連載のテーマとも密接に関係する最初の3項目、
・あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を
・(前略)食料の安定確保と栄養状態の改善を達成する(後略)
・あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進
 に関して、「G7伊勢志摩首脳宣言(骨子・原文・仮訳)」を、「認定NPO法人 自立生活サポートセンター・もやい(以下「もやい」)」理事長・大西連さんにお話を伺った。
各国のファーストレディーの近くに
「ホームレスベッド」が
大西連(おおにし・れん)氏。1987年東京生まれ。炊き出し・夜回りなどのホームレス支援活動から、生活困窮者の相談支援に携わるように。生活保護や社会保障削減に関し、現場からの発信・政策提言を続けている。2014年7月より、NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長。著書は『すぐそばにある「貧困」』(ポプラ社)など。「もやい」の活動スペース「こもれび荘」にて
 大西さんは、「G7伊勢志摩サミット」に先立って開催された「市民の伊勢志摩サミット」(2016年5月23日・24日)に参加し、「持続可能な開発目標(SDGs)」分科会でスピーカーを務めた後、引き続き、伊勢志摩サミット期間中、各国からの記者のために開設された国際メディアセンター・NGOワーキングスペースにおいて、展示・企画などを行った。それらに入場するには、外務省の発行した通行証が必要だ。つまり大西さんは、日本のNGO・NPOを代表して伊勢志摩サミットに参加した一人なのである。大規模国際イベントでは、多くの場合、NGO・NPOの参加を歓迎する。
「でも、国際メディアセンターとNGOワーキングスペースは、首脳たちが会談する場所から20kmくらい離れてたんです」(大西さん)
 そこには、誰がいたのだろうか?
「各国関係者、三重県や地元自治体の方も見えていましたが、主に各国のメディアの方々です。メディアの方々だけで5000人くらいでした。首脳会談が行われている場所に入れるのは、本当に一部の人だけです」(大西さん)
 もしや、「NGOやNPOにも参加の機会を与えました」という日本政府のポーズ?
「もちろん、不十分な点はありました。同じ敷地内にあっても国際メディアセンターとNGOワーキングスペースは建物が違っていたり、連絡が悪かったりなど。とはいえ、NGOの企画や記者会見に来てくれるメディアがいたり、記事として配信されたものもありました」(大西さん)
G7伊勢志摩サミット・NGOセンター(国際メディアセンターに隣接)で展示された「ベッド」。日本国内だけで1万人以上のホームレス状態の人々が実際に眠る路上の環境を再現したもの。ネズミは本物(剥製)ということ(提供:認定NPO 自立生活サポートセンター もやい)。トレーラー動画・メイキング動画もあり
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 NGO・NPOの企画の一環として、「もやい」は「ホームレスベッド」一台を展示した。といっても、本物のベッドではなく、路上生活者たちが寝ている環境を「ベッド」風にしたアート作品だ。ちょうど、伊勢志摩サミット期間を含む2016年5月21日〜29日、千葉県印西市の「メガマックス千葉NT店」で、4点の「ベッド」が展示された。「厳選されたセメントを使用したコンクリートは、高い硬度と反発力で体を力強く支えます」といった解説がされているベッドの数々にご関心がある方は、ぜひ「ホームレスベッドコレクション2016」サイトもご参照いただきたい。
「もやい」が伊勢志摩サミットに参加することは、早い時期から決定していた。「ホームレスベッド」の展示も?
「いえ、たまたま千葉での展示と同じ時期でベッドが完成していたこともあり、『誰一人として置き去りにしない』というSDGsのテーマに、ぴったりだと思ったので」(大西さん)
 外務省、さらに会場を警備する警察の許可を取るため、調整に調整を重ねるという苦労はあったものの、ホームレスベッドは、無事、展示された。各国首脳の反応は?
「直接、来て見ていただくことはできませんでした。オバマさんに寝てみてほしかったんですけどね(笑)。ファーストレディーの方々は、NGOワーキングスペースの近くまで来てくださいました。安倍昭恵さんが、カナダ首相夫人・イタリア首相夫人と一緒に来て、すぐ近くでおこなわれていたオリンピック・パラリンピックの啓発イベントにも参加していました。残念ながらNGOのワーキングスペースには立ち寄ってもらえず。SPが周囲にたくさんいたので、近づいて説明することはできませんでした。一方で、各国のメディア関係者、省庁や関係者のみなさまには大変好評でした。ともすれば大きな話になりがちな国際会議の雰囲気の中で『現場感』を出せたのではないか、と」(大西さん)
 その成果は、「G7伊勢志摩首脳宣言(骨子・原文・仮訳)」に盛り込まれただろうか? 残念ながら、否である。
先進諸国の貧困問題を置き去りに
伊勢志摩首脳宣言の内容
「今回のG7伊勢志摩サミットでは、国際経済・景気・パナマ文書・シリア難民など、現在進行中の巨大な問題の数々が大きくクローズアップされました。もちろん、どれも重要な問題ですし、それらは『G7伊勢志摩首脳宣言』や附属文書に盛り込まれています。でも、『格差』が入っていないんです」(大西さん)
 原文を確認してみると、男女間の「wage gap(賃金格差)」はあるのだが、「inequality(不平等・格差)」は全くない。「poverty(貧困)」は「なくさなくては」「減らさなくては」という文脈で出てくるが、32ページのうち、たった4ヵ所だ。「持続可能な開発目標(SDGs)」の「誰も置き去りにしない」「あらゆる形態の貧困に終止符を」「不平等と闘い」は、忘れられてしまっているかのようだ。
「難民の貧困や、アフリカの問題などは言及があるんです。でも、先進諸国の貧困問題としては、男女間の賃金格差しかないんです。『おいおい、自分たちの足元を取り残すなよ』と思ってしまいました」(大西さん)
 貧困は解消したい。少なくとも、解消されたことにしたい。でも格差の解消、特に先進国である自国の中での格差の解消には、取り組みたくない。先進国首脳たちのそんな姿勢が、見たくないのに見えてくる。SDGsの目標10「国内および国家間の不平等を是正する」に照らして、私も「あらまあ」と言いたい。格差を解消せずに貧困だけを解消することはできない。パナマ文書問題は、「解消すべき格差が、具体的に見つかった」という問題でもある。そのパナマ文書が問題にされているのに、「格差」には触れられていないのだ。
 もちろん、「G7伊勢志摩首脳宣言」には、保健・女性など、SDGsに含まれている項目も含まれてはいる。完全にSDGsが無視されているわけではない。保健の問題もジェンダーギャップも重要な問題だ。でも、どうも釈然としない。
「そもそも『すべての人々に』『誰も取り残さない』、そのために『包摂的に』『持続可能に』取り組むことが、SDGsの最も肝心なところなんです。でも、保健・女性といった、現在の日本政府が進める重点課題、つまり、『おいしい』ところだけ、つまみ食いされてしまっていますね」(大西さん)
世界から取り残されそうな
日本の動きは?
 貧困問題・生活保護問題の取材を本格的に開始してから、ちょうど満5年になる私は、この5年間で、
「日本政府は、貧困問題なんて、ましてや声を出せない貧困の子どもなんて、どうでもいいんだ」
 と確信するようになった。この5年間で、社会保障・社会福祉は全面的に後退している。「子どもの貧困対策」「障害者の雇用促進」「女性活躍」といった耳当たりのよい言葉が一つあれば、その数倍〜数十倍、貧困・排除・差別を推進したり放置したりする政策の動きがある。この状況で、「日本政府は、貧困問題に取り組み、貧困と表裏一体の格差にも取り組む可能性がある」と信じるのは難しい。
「でも、今後の国際社会のありかたは、『持続可能な開発目標(SDGs)』でかなり変わるでしょう。2030年、目標を達成するために、各国、もう動き始めていますから。韓国は、とても積極的です。ドイツも、具体的な計画を立てていますし、コロンビアは進捗状況を示したりしています。『取り残されちゃうぞ、日本』と危機感を覚えています。日本のメディアにも、外務省にも政府にも、危機感を持ってほしいです。2030年、達成できてなくてはならないんですから」(大西さん)
 もちろん、政府が「やる気ありません」と明言しているわけではない。2016年5月20日には「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」が設置され、各省庁による会合も持たれている。しかし議事録には和泉洋人総理補佐官の発言として、
「今後、国内実施と国際協力の両面で率先して取り組んでいくべく、我が国の内外の取組を省庁横断的に総括し、優先課題を特定した上で、「SDGs実施指針」の策定を進めていきたいと考えております」(※太字は筆者による)
 とある。「優先課題を特定した上で」は「つまみ食いして」の婉曲表現なのであろうか? ちなみに、SDGsのポリシー「誰も置き去りにしないことを確保しながら、あらゆる形態の貧困に終止符を打ち、不平等と闘い」を実現するにあたって、最も重要な役割を担っているのは厚生労働省であるはずだ。会合には、厚生労働省からの出席者もいたのだが、発言はなかった。
「『G7伊勢志摩首脳宣言』には、先進国内、日本国内の貧困と社会保障に関して、あまりにも言及がありません。これは、政府の優先順位の低さであり、日本国民の関心の低さの現れでしょう。でも、このままでは、日本社会の持続可能性がありません」(大西さん)
 高齢化と社会保障費増大は、日本社会の危機の象徴とされてきている。2016年6月1日、生活保護世帯のうち高齢者世帯が初めて50%を超えたことが報道された(日経新聞記事など)。
「社会保障の『ホームチェンジ』が必要なんだと思います。たとえば、生活保護世帯の約75%、うち高齢者世帯では90%が単身世帯なのに、未だに生活保護基準は『標準世帯(33歳男・29歳女・4歳児)』を前提に検討されています。このような、長年使われてきている前提、委員会・審議会で検討する現在の形式なども含めて、大きな議論が必要だと思います」(大西さん)
「周回遅れ」の日本に
生活保護の拡大と活用でチャンスを
 セーフティネットと言えるものが生活保護しかない、という現状を変えていく必要もある。
「でも短期的には、雇用や保険から漏れる人の救済は必要です。他に何もないから、生活保護が必然的に増えるんです。『現在あるパイをどう分配するのか』という考え方からは、『削減ありき』となるのは仕方ありません。あとは『どう削るか』です。でも、そうではなくて、社会保障全体をどう考えるのか、生活保護をどう位置づけ、他の制度をどう補完するのか。そういう大きな議論が必要なのではないでしょうか」(大西さん)
 生活保護に関する議論として、少なくとも「ネット世論」で、財源を理由とした削減論、削減論に対抗する人権論、または削減論と人権論の「落とし所」を探る論ではない何かが、広く語られたことはあっただろうか? 私の記憶にはない。
「政府が『財源』を理由にして削減を主張するのは、よく分かります。市民社会は対抗上、その財源論に反対しているうちに、視野が狭まって『社会保障が厳しいので、限られた財源の中で考える』しかしなくなっている気がします。あまりにも、限定された環境の中での議論や提言やアプローチに慣らされてしまったのだと思います。
 例えは不適切かもしれませんが、日常的に殴られていると、何日か殴られないと『ああよかった』とホッとして、『暴力は悪い』ということに気づけなくなりますよね。それと似ていると思います。社会保障の削減が進んでいることは、ある種の暴力が続いているということですから」(大西さん)
 日本という国の全体が軋んでいる中で、さまざまな問題が起こっている。「持続可能な開発目標(SDGs)」は、日本が抱える数多くの問題と背景を、まるごと、包括的に解決するためにも使えるはずだ。
 とりあえず、SDGsの「誰も置き去りにしないことを確保しながら、あらゆる形態の貧困に終止符を打ち、不平等と闘い」は、生活保護基準を「健康で文化的な」レベルに向上させ、維持し、それ以下の生活をしている人々を今すぐ一人残らず生活保護の対象にすること(現在は50〜80%が対象になっていないと試算されている)で実現できる。しかし生活保護は、制度そのもの・生活保護基準ともども、さらに激しく揺るがされる可能性が浮上している。
 次回は、2016年5月28日に再開された社保審・生活保護基準部会で提示された、これからの生活保護制度見直しについてレポートする予定だ。
「誰も置き去りにしない」どころか、「ほとんどが置き去りにされる」、さらには「日本が置き去りにされる」となりかねない動きに、引き続き、関心と注目をいただきたい。

http://diamond.jp/articles/-/92389
 

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