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日産が20年かけ開発、可変圧縮比エンジンの凄さ  ドローンの未来にアフリカで出会った 中国の次のテクノロジーフロンティア
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投稿者 軽毛 日時 2016 年 10 月 25 日 01:46:30: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

 
日産が20年かけ開発、可変圧縮比エンジンの凄さ

クルマのうんテク

執念で世界初の実用化
2016年10月25日(火)
鶴原 吉郎

日産自動車がパリモーターショーに出展した「可変圧縮比エンジン」。「Infiniti」ブランドのブースで「VC(Variable Compression)ターボ」として展示された。2018年の実用化を目指す
 前回に続いてパリモーターショーの話題をお届けする。今回パリモーターショーで見たかったものの1つが、日産自動車が発表した「可変圧縮比エンジン」だ。量産エンジンとして世界初の実用化となる、非常に画期的なものだと思う。筆者は実は、このエンジンの原型を約10年前に見ている。2005年2月に開催された日産の技術説明会で、開発中の先進技術の1つとして、今回実用化されたエンジンと同じ原理の可変圧縮比エンジンを見せられたのだ。

 当時の筆者は不明にも、こんな複雑な機構のエンジンは実用化されないだろうと思っていた。それが今回、10年あまりの時を経て実用化されることになった。しかも、このエンジンの開発開始からの年月は足掛け20年になるというから、技術者の執念には驚くばかりである。

可変圧縮比の意味とは?

 ここまで「可変圧縮比」という言葉を説明せずに使ってきてしまったが、改めて今回の新型エンジンの意味を考えていこう。この連載の第1回などで触れたように、圧縮比というのは、エンジンのシリンダーの中で、ピストンが一番下にあるときと一番上にあるときの容積の比率である。例えばピストンが一番下にあるときの容積が10で、ピストンが上昇し、一番上に達した時、すなわち容積が一番小さくなったときの容積が1なら、圧縮比は10ということになる。

 熱力学の教科書によれば、この圧縮比が高いほど、エンジンの熱効率も高くなることになっている。だから圧縮比はなるべく高くしたいのだが、むやみに高めることはできない。圧縮比を高くし過ぎると、ピストンが上昇している途中で、混合気が熱くなりすぎて、点火プラグで火をつける前に部分的な爆発が起こり、エンジンの異常な振動が発生してしまう。これがノッキングである。このため、従来ガソリンエンジンの圧縮比は、10程度が普通だった。

 しかし、実際にノッキングが起こる状況というのは、実は限られている。エンジンにかかる負荷が高い加速時などは、たしかにノッキングが起こりやすいのだが、一定の速度で走っているときなどは、エンジンの負荷が低く、ノッキングは起こりにくい。だから、ノッキングが起こりにくい状況ではなるべく圧縮比を高くしてエンジンの効率を上げ、ノッキングが起こりやすい状況のときだけ圧縮比を下げられれば理想的である。これまでのエンジンではそんなことはできなかったのだが、そのエンジンの理想を初めて実現したのが、今回の可変圧縮比エンジンである。

アトキンソンとどう違う?

 では圧縮比を変えるとはどういうことなのか? 世界初と言っておきながら矛盾するようだが、これまでもすでに圧縮比を変えるエンジンは実用化されている。いわゆるアトキンソンサイクルエンジンとか、ミラーサイクルエンジンとか言われているものがそれだ。厳密にいえばアトキンソンサイクルとミラーサイクルは違うものなのだが、一般には、吸気のタイミングを早めたり遅らせたりして実質的な圧縮比を変えるエンジンをこう呼んでいる。

 現在量産されているアトキンソンサイクルエンジンでは、吸気のタイミングを通常より遅くする「遅閉じ」を採用する例が多い。この場合、ピストンが一番下まで下がり、再び上昇して少し上に移動したところで吸気バルブを閉じる。ピストンが一番下まで下がったところでバルブを閉じるのに比べて、シリンダ内で空気を圧縮する行程が短くなるので、圧縮比が下がるというわけだ。難しい言葉でいうと、ピストンの実質的な下死点(空気を圧縮し始めるピストンの位置)を動かして圧縮比を下げる。

 これに対して、日産が開発した可変圧縮比エンジンは、ピストンの下死点ではなく、上死点を動かして圧縮比を下げる。つまり、ピストンが一番上に達したときの位置を、通常よりも少し低くすることができる。すると、ピストンが一番上に達したときのシリンダ内の容積が増えるので、圧縮比が下がるという仕組みだ。

 では、アトキンソンサイクルと、可変圧縮比エンジンでは何が違うのか。アトキンソンサイクルでは、ピストンが一番下の位置から少し上昇したところでバルブを閉じる。従って、一度シリンダ内に吸い込んだ空気を、少し吸気ポート内に押し戻すことになる。このことは、エンジンが吸い込む空気の量が少なくなることを意味する。エンジンに取り込む空気の量が減れば、それに見合って燃焼室内に送り込む燃料の量も少なくなる。少ない量の空気を少ない量の燃料で燃やせば、発生する出力は小さくなる。

 先程、ふだんは高い圧縮比で運転していても、加速時など高負荷運転の状態ではノッキングしやすくなるので、圧縮比を下げる必要があると書いた。しかし、ここで圧縮比を下げるためにアトキンソンサイクルを持ってくると、出力が下がってしまうことになる。高負荷時、つまり出力が欲しいときに出力が下がってしまうわけで、こういう場面ではアトキンソンサイクルエンジンは使えないことが分かる。

 つまり、アトキンソンサイクルは、実質的にエンジンの排気量を小さくする効果があるので、高負荷時ではなく、むしろそれほど出力を必要としない状況で、燃費を向上させる技術として使われるものだ。今回の日産の可変圧縮比エンジンでも、負荷の低い領域ではアトキンソンサイクルとして、燃費を稼ぐようにしている。

リンクを介してクランクを駆動

 このように可変圧縮比エンジンは、可能な限りエンジンの圧縮比を高く保つことで熱効率を向上することができるので、これまでも多くのメーカーが実用化に挑戦してきた。面白いものでは、今は消滅してしまったスウェーデン・サーブがかつて、シリンダーヘッドを動かして燃焼室の容積を大きくすることで圧縮比を変えるエンジンを提案したことがある。

 これに対して、今回日産が採用したのはリンク機構を活用したものだ。通常のエンジンはピストンとクランク軸を「コンロッド」と呼ぶ部品で結合する。コンロッドとは「コネクティングロッド」の略で、文字通りピストンとコンロッドを結合するためのロッドだ。これに対して日産の可変圧縮比エンジンは、コンロッドをクランク軸と直接結合するのではなく、複雑なリンク機構を介してクランク軸と結合するのが特徴だ。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/264450/102100046/p2.jpg

VCターボエンジンの仕組み。左が圧縮比14:1、右が8:1の状態。モーターでリンクの支点を動かすことで圧縮比を変える
 英語で恐縮だが、上がその説明図だ。複雑に見えるのだが、原理自体は非常に簡単である。中心的な役割を果たすのは「マルチリンク」という部品で、中央にクランク軸が、一端にはコンロッドが取り付けられている。マルチリンクの役割は、ちょうどシーソーのようなものだと考えていただければいい。シーソーでは一方の端が上がれば、もう一方の端は下がる。それと同じで、マルチリンクも中央のクランク軸と結合された部分を中心に回転できるようになっていて、一端が上がれば、もう一端は下がる。

 上の説明図はどちらも、ピストンが一番上にある「上死点」の状態なのだが、この状態で、マルチリンクのコンロッドが取り付けられているのとは反対側の一端の位置を上に上げると、コンロッドを取り付けた点は下に下がる。すると、ピストンの位置も下に下がるので、燃焼室の容積が大きくなり、圧縮比は下がるという仕組みだ。このマルチリンクの位置をずらすために、この図では右側にある「ハ―モニックドライブ」と書いてある部分の回転軸を回して、2本のアームの位置関係を変える(こちらの動画参照)。

 この仕組みは、約10年前に筆者が取材したときと全く変わらない。だから、この複雑な仕組みをよく実用化したな、と思ったのだが、今回改めて取材してみて、いろいろと感心させられた。構造が複雑になることの懸念の1つは摩擦の増加だ。通常、動きにかかわる部品が増えるほど、部品同士が摩擦する個所が増えるので、摩擦も増える。このことがエネルギーの損失につながる。

摩擦も騒音も減る

 ところが、今回のエンジンは従来のエンジンよりも部品点数が増えているにもかかわらず、むしろ摩擦損失は減っているという。その大きな理由は2つある。1つは、ピストンとシリンダーの間の摩擦が減ることだ。燃料の爆発力でピストンが押し下げられ、その力がコンロッドを通じてクランク軸を回す時、ピストンがだんだん下がってくると、コンロッドは斜めにクランク軸を押すことになる。このとき、コンロッド自体もクランク軸からの反力で、下から斜めに押されることになる。この斜めに押される力によってピストンはシリンダーの内壁に押し付けられる。このときに発生する摩擦力が大きいのだ。

 これに対して、日産の可変圧縮比エンジンでは、ピストンが下に下がるとき、コンロッドはほぼ真上からマルチリンクを押してクランク軸を回す。このため、ピストンに横向きの力が加わらず、ピストンとシリンダーの間の摩擦が大幅に減る。

 もう1つ大きいのは、バランサー機構が不要なことだ。通常の4気筒エンジンでは回転バランスが悪いため、排気量2.0L以上のエンジンでは、騒音・振動をキャンセルするためのバランサー機構を付けることが多い。このバランサー機構というのは平たく言えば、振動を打ち消すように重りを付けた軸を回転させるもので、エンジンの騒音・振動は減るが摩擦は増える。今回の可変圧縮エンジンは、エンジン自体の回転バランスも向上するためバランサー機構が不要になるという。

 また、このバランサー機構は通常、クランク軸の下に配置するのだが、可変圧縮比エンジンではこれが不要なので、今回の可変圧縮比エンジンでは圧縮比を変える機構をクランク軸の下に配置できた。これにより、エンジンの高さが増えることなく可変圧縮比エンジンを実現できた。


圧縮比を変える機構。クランク軸の下に配置されている。
 発表資料によれば従来の4気筒エンジンの振動に起因する騒音レベルが30dB(デジベル)なのに対して、新型エンジンの振動は10dBに減るという(いずれもバランサーなし)。dBというのは音や電波の強さを表す単位で、長さなどの単位と違って20dB小さくなるということは、音圧が1/10になることを意味する。つまり、今回の可変圧縮エンジンは、従来の4気筒エンジンに比べて騒音レベルが1/10ということになる。ちなみに、排気量3.5LのV型6気筒エンジンの騒音レベルは3dBということなので、可変圧縮比エンジンよりもさらに小さいのだが、7dB低いというのは、音圧にしてだいたい半分くらいなので、可変圧縮比エンジンとの差はそれほど大きくない。

燃費が27%向上?

 日産はこの可変圧縮比エンジンに「VC(Variable Compression)ターボ」という名前を付けているのだが、面白いのはこのエンジンをV6エンジンの「VQエンジン」の後継エンジンと位置づけていることだ。VCターボの特徴の1つは、先程から紹介しているように、エンジンの運転状況に合わせてなるべく高い圧縮比を保つことによって、熱効率を向上させ、ひいては燃費を良くすることができることだ。日産は従来の同等出力のV6エンジンに対して、VCターボは27%燃費を向上させることを目指すと発表している。

 3割近くも燃費が向上するとは凄い、と思ってしまうのだが、この向上幅は可変圧縮比システムだけで達成されているわけではない。2005年に最初に日産が可変圧縮比エンジンを公開したときに、開発担当エンジニアは燃費向上効果が10%強だと語っていたので、恐らく可変圧縮比だけを取り出した燃費向上幅はこの程度だと考えられる。

 では残りの17ポイントは何かというと、VCターボエンジンと同等出力のV6エンジンの排気量は3.5L程度なので、VCターボエンジンは排気量3.5LのV6エンジンを2.0Lターボで置き換えるダウンサイジングエンジンと考えられる。つまり27%の燃費向上幅は、可変圧縮比とダウンサイジングの両方の効果によりもたらされているということなのだ。ちなみにVCターボの最高出力は200kWで、排気量3.5LのVQ3.0HRエンジンの225kWに比べると低いのだが、逆にVCターボの最大トルクは390N・mと、VQ3.5HRの350N・mよりも高い。

市場の変化が後押し

 パリモーターショーの会場で話を聞いた開発担当者によれば、可変圧縮比エンジンの技術的な開発そのものは、実は10年ほど前にはほぼ終了していたという。それでは商品化になぜ10年もかかったのか。それは「商品としての魅力」をどこに求めるかということの追求だった。

 2005年に公開された試作エンジンは、2.0Lの自然吸気エンジンだったのだが、単に2.0Lの自然吸気エンジンを可変圧縮比にして、燃費を10%程度向上させたとしても、コスト上昇分に見合う商品の魅力アップにはつながらないと日産は判断したのだろう。これに対して今回は、ターボと組み合わせてV6エンジンを置き換えるエンジンとして位置づけた。これなら燃費向上幅は大きくなるし、コンパクト化・軽量化にもつながる。しかもVCターボはV6エンジンに近い振動・騒音特性を備えている。可変圧縮比化に伴うコストアップも、V6エンジンの代替ということであれば吸収しやすい。

 ただ、こういう商品企画は、少し前までだったら難しかっただろう。今回のVCターボエンジンは、まず米国向けの「Infiniti」ブランドの車種で2018年から商品化される予定だが、米国では少し前までV6エンジンやV8エンジンといった“多気筒エンジン信仰”が強く、V6エンジンを直列4気筒エンジンで置き換えるようなダウンサイジングは、商品力が低下するとして受け入れられなかっただろう。

 こうした多気筒エンジン信仰は、現在でも完全になくなったわけではないが、一頃に比べればだいぶ薄れてきた。米国でも今後、燃費規制の強化が進むことを考えれば、こうしたダウンサイジングは避けられない方向だ。世界で初めての可変圧縮比エンジンが日の目を見ることになった背景には、こうした市場の嗜好の変化がある。

 もう1つ、個人的な興味としてスカイラインのエンジンがどうなるか、ということがある。現行型のスカイライン(海外ではInfiniti Q50)は、ドイツ・ダイムラー製の排気量2.0L・直列4気筒ターボエンジンを搭載している。このエンジンを採用した当時は、日産を代表する車種に海外製のエンジンが搭載されたということで話題になったのだが、今回のVCターボは排気量2.0のターボで、ダイムラー製エンジンと同クラスだ。「このエンジンはスカイラインにも載るんですよね?」という筆者の質問に、パリモーターショー会場の説明員は「個人的な思いとしてはそうなればいいと思いますが…」と言葉を濁していたのだが。


このコラムについて

クルマのうんテク
2013年に、トヨタ自動車グループの世界生産台数が、世界の自動車メーカーで初めて1000万台を超えるなど、日本を代表する製造業である自動車産業。その一方で、国内市場では軽自動車がシェアの約4割に達し、若者のクルマ離れが話題になるなど、クルマという商品がコモディティ化し、消費者の関心が薄れていると指摘されている。しかし、燃費向上競争の激化や安全性向上ニーズの高まり、さらには今後の自動運転技術の実用化に向けて、外からは見えにくいクルマの内部では大きな変化が起こっている。このコラムでは、クルマのテクノロジーに関する薀蓄(うんちく)を「うんテク」と命名し、自動車エンジニアの見えざる戦いの一端を紹介したい。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/264450/102100046/?ST=editor

 


高城剛「ドローンの未来にアフリカで出会った」

記者の眼

中国の次のテクノロジーフロンティア
2016年10月25日(火)
染原 睦美
 今、テクノロジー領域において静かな注目を浴びているのがアフリカだ。今年9月には、米フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOが訪れ、テクノロジーハブや学校を訪問。その人材の厚さに「彼らこそが僕の求める人材だ」と感嘆したと報道された。

 元々アフリカにはその素地があった。2007年には、ケニアでモバイル送金サービス「M-PESA」が登場。今や世界に2500万人のアクティブユーザーがいる。アフリカは、元々、高価なパソコンを使い、インフラ化した電話回線を利用するインターネット環境において、世界から見れば出遅れた存在だった。一方、そうだったがゆえに、一足飛びにパソコンや有線をスキップしてモバイル環境が普及するのが早かったともいえる。むしろ、アフリカは今となってはモバイル先進国とも言えるだろう。

 そのアフリカで現在注目を浴びるのがドローンだ。1年の半分を海外で生活し、ドローン製造大手の中国・DJIや仏パロットに取材をしている高城剛氏に、アフリカにおけるドローンの可能性やその未来について話を聞いた。


高城剛(たかしろ・つよし)氏。
1964年東京・葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。総務省情報通信審議会専門委員など公職を歴任。著書に『ヤバいぜっ!デジタル日本』(集英社新書)『空飛ぶロボットは黒猫の夢を見るか? ドローンを制する者は、世界を制す 』(集英社ビジネス書)などがある。12月2日にはを国技館で単独トークイベント「裏があってもいいじゃないか!」を行う。(撮影:北山 宏一)
一足飛びで普及したモバイル

 高城氏によれば、「先端のテクノロジーが今、アフリカで芽を吹いている」。8月に訪問したケニアやマダガスカル、モザンビークといった場所で高城氏が見たのは、電気もない、銀行もATMもない、水もない、といった状況で、モバイルとドローンが普及している現実だった。電気や水がないような国々で、モバイルとドローンが果たす役割は大きく、世界中の企業がその実験場としてアフリカに集まっているという。

 「(世界最大のドローン企業で中国の)DJIも含め、多くのドローン関連企業が注目しているのがアフリカです。アフリカは、薬の配送など実利用としてドローン需要の緊急度合いが高い。誤解を恐れずに言うなら、ドローンの落下リスクよりも、人の死亡リスクの方が大きいわけですから、墜落して誰かがけがすることを考えるより、多くの人の命を救える可能性に懸けるというのは、至極当然の流れともいえるのかもしれません。点滴1個、注射器1個運ぶのが困難な国が多いのが現実です。今までは小型のセスナを飛ばしていますが、当然コストが異常にかかる。それをすぐにでも解決できるのがドローンです」

 「M-Pesaが2007年に登場してそれ以降モバイルバンキングがどんどん普及した。その次に来るのがインフラです。今まで行商をしていたおばちゃんから、緊急医療における水や薬の配送にまでドローンが活用できる。これは、米国や日本のようにすでにインフラが発達している国とはまったく違うレベルで起きます。緊急度合いや導入後の課題解決のパワーが圧倒的に違うのです」

 「8月に僕が行ったケニア、マダガスカル、モザンビークの3国だけでも、聞いたことのない米国のドローンベンチャー3社に遭遇しました。中国も政府が援助目的で参入しているような感じでした」


マダガスカルのモロンダバにあるバオバブの並木。昼間は暑すぎ、電気が通っていないために夜は真っ暗で、子供たちがサッカーの練習を出来るのはほんの2時間ほどだ(撮影:高城 剛)
 「1つ20ドルくらいのスマートフォンがものすごい勢いで普及しています。村に一つソーラー発電機があって、そこで皆が充電するといった世界ですが、それでも普及している。動物を追い込むのもスマホで連絡を取り合ってやっているんですから(笑)」

 道がない場所にドローンが空中に道を描き、それが配送網になる世界がすぐそこまできているのだという。


インフラは整備されていない分、スマホの普及率は高い。電気が通っていない村に暮らすこの子たちの中にもスマホを持っている子がいて、使い方を熟知している(撮影:高城 剛)
現物を「アップロードする」世界へ

 そもそも高城氏がドローンに注目し始めたのは2012年のこと。当時、毎夏訪れていたスペインのバルセロナの電気屋で見つけた小さなドローンがきっかけだったという。手に取ったのは、仏パロットの「AR.Drone2.0」。以降、30機を超えるドローンを手に入れ、投資した額は1000万円以上に上るという。

 高城氏は、過去、ドローンに限らず、スーパーコンピューターから指先サイズのスマートフォンまで最新のテクノロジーとあればとにかく飛びついてきた。その高城氏が考えるドローンの可能性は「現実社会のインターネット化」だ。

 「インターネットの世界では、あらゆるデータを蓄積して再構築できる企業が勝者になりました。グーグルなどがまさにそうです。今後、ドローンの世界でも似たようなことが起きる。つまり、現実世界のデータを蓄積し、再構築する新しいグーグルやヤフーが出てくるはずです」

 「インターネットの最大のカルチャー革命は、アップロードの世界にあった。人々が自室にこもりながら自分が見た世界、自分が感じたことをアップロードできるようになった。ドローンの世界でも同じようなことが起きます。例えば、目の前に美しい花があったとき。今なら撮影した写真をFacebookにアップしたり、友達に送ったりするのが関の山。これが、ドローンの世界では、実際にその花を送れるようになる。『現物のアップロード』です。この世の中にはデジタル化できないものの方が圧倒的に多いんです。そのデジタル化できないものを、いかにネットワークと端末によってインターネットの潮流にのせられるか。インターネットが『重力』を持ち得る大きなきっかけとなるのがドローンなんです」

 「ドローン1人1台」時代が来れば、目の前にあるおいしいパンや珈琲を誰かに送ることもできる。手作りのお弁当を彼氏に届けることも可能だ。もはや、鞄さえいらなくなるかもしれない。

 現在は、米アマゾン・ドット・コムの配送ドローンや、警備会社などの警備ドローンといった企業における事例が目立つドローン。高城氏は、ドローンが「1人1台時代」になってこそ、そのインパクトが発揮されるという。まさに、パソコンが、企業のものから企業内個人へ、そして家庭へ、さらにスマートフォンの1人1台時代に移行していった経緯と同じだ。

 「現在のドローン市場は、コンピューター市場と比較するとWindows95より前の段階。『ドローン1人1台』の世界は、これから3年後か、5年後か分からないが、少なくとも10年以内には起こりうる世界だと思っています」

 「広告やマーケティングの世界も変わるはずです。今までは、パソコンやスマートフォンの中での行動で嗜好性を判断していたものが、実世界での人の行動がターゲットになります。街全体がデータの宝庫になり、メディアになります。今でもスマートフォンやビーコンを使った現実世界での広告はありますが、それがもっと拡張するイメージですね。例えば、今、東京駅の前にいる人が何人いて、どんな服を着ていて、それぞれがどこに向かっているか。東京駅前にいる赤い服を着た人にだけ広告を打つ、といったことも可能ですよね」

 「あとは街中にどんなセンサーを埋めるか。そのビジョンを国レベルでどのようにハンドリングしていくかが重要になってくると思います。これは公共の知財として、水道とかガスとか、そういうレベルで考えた方がいい。すでにシンガポールなどは国家レベルのプロジェクトとして進めています。ロボティクスのための公共管理部門が必要で、落下のリスクヘッジやそのためのアラート設計、管制塔のグランドデザインといったものが必要になってくると思います」

 「僕だったら、福岡のような150万人規模の都市で、まずは実証実験をやりますね。まず、GPSの側面やバッテリーの側面から考えてもなるべく南である方が望ましい。GPSの衛星は赤道面上にあるので日本では南の方が感度が高い。バッテリーについては、温かい地方の方がバッテリーの持ちがいい。街中に5メートルおきにセンサーを置き、大手のデベロッパー、銀行、鉄道会社などにドローンを渡します。すでに地方で利権を持っている人たちにまずどんどん使ってもらうでしょうね」

日本はもう「技術大国」ではない

 現状、ドローン1台のパフォーマンスはそこまで高くない。バッテリーは飛行時間にしておおよそ20〜30分程度、運搬できる物の重さは2キロ程度に留まる。

 「パソコンのサーバー管理でも、1台のサーバーでまかないきれなかったり、リスクが高かったりということを、ミラーリングや分散型のサーバーで管理することは今や当然になりました。ドローンの世界でも、1台のドローンでできないことを複数のドローンでやるようになる世界がきます。『フォーメーション』と呼んでいますが、40台のドローンを飛ばして、重いものを運んだり、1台ダメになってもカバーできたり。それを実現するためにも、インフラとしてのセンサーネットワークが必須になってきます」

 世界的に見れば、中国のDJIが存在感を高めているのが現状。そのほかフランスのパロットは特に個人用のドローンを中心に市場を席巻する。一方で、生き馬の目を抜くようなスピードで成長するテクノロジー市場において、現在もまだ王者は決まっていない。

 「DJIは世界的に見て、今、最も大きいメーカーであることは間違いない。一方で、今がピークであるような気もしています。中国を見渡せば、(スマートフォンメーカーの)シャオミや、新興ドローンメーカーのYUNEEC(ユニーク)といったところに注目しています」

 一方で、日本はどうか。高城氏は、苦笑いしながら、こう答えた。

 「日本ですか。大企業のサラリーマンが強すぎて、新しい息吹が出てきづらい状況になっていますね。ソニーのAIBO終了くらいの時期で、その傾向は一気に強まった。一方で“技術大国”という言葉ばかりが遺産のように残ってしまっている。年間何度も中国に行き、DJIやシャオミの開発者と話していると、ちょっと太刀打ちできないなという気がします。スピードの速さ、投資の規模感、起業精神といったようなものの、どれをとっても中国はずば抜けています。一方、日本は、人はいいし、お金はあるし、技術や部品、才能もある。実際にDJIの幹部は『僕らのドローンは日本製だよ』と言っているほど、カメラなど日本製が使われているケースが散見されます。あとは、これを生かすも殺すも、国や企業のトップのビジョンということなのでしょうね」


(撮影:北山 宏一)

このコラムについて

記者の眼
日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。
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コメント
 
1. 2016年10月25日 21:21:58 : oCrAJL4UVg : BSkALVEdcgY[184]
日産は やたら強調 開発を

2. 2016年10月28日 00:00:12 : qiNM7jknEs : RLumgmenC5c[158]
このエンジン、複雑な機構なので、長期間の使用には向かないだろう。時代は電気自動車に向いている。それでも日産自動車が敢えて発表したのは、このまま行けば歴史の隅に追いやられ、発表する機会を失ってしまうと考えたからか。

1960年代の若者は、ガソリン自動車に熱中していたな。ツインキャブだとか、DOHCだとか。1980年代にはターボとかDOHC24バルブとか、もう最高潮だった。今はどうだい ?


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