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トランプリスクで円高再燃は杞憂か 中短金利急上昇 日銀物価見通し改善 地銀楽観できず=黒田 ギラギラ米資本主義復活=武者
http://www.asyura2.com/16/hasan115/msg/734.html
投稿者 軽毛 日時 2016 年 11 月 17 日 01:14:28: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

コラム:
トランプリスクで円高再燃は杞憂か

尾河眞樹ソニーフィナンシャルホールディングス 執行役員・金融市場調査部長
[東京 16日] - 「全ての米国民のための大統領になることを誓う」。11月9日、共和党のドナルド・トランプ候補はこのように述べ、2016年米大統領選挙に勝利したことを宣言した。この勝利宣言のスピーチには、3つの注目すべき重要なキーワードがあった。

まず、「Unify(統一)」だ。大統領選を通して米国内の分裂が心配されていたが、党や人種、性別を超えた融和と統一の方向性を示した。

次に、「Infrastructure(インフラ)」である。インフラの再建を行い、これによって多くの国民を職に就かせたいと明言した。

3点目は、「Partnership(パートナーシップ)」だ。諸外国に対しては敵意や摩擦ではなく、共通点を見いだし、協力していくと述べ、国際社会に対しても協調路線を示した。

選挙中のトランプ氏は人々の怒りや不安をあおるような発言が目立ったが、勝利宣言スピーチではそうした発言は影を潜め、米国のかじ取りを任された責任感すら感じられた。

アジア時間に105円台から101円台前半まで約4円急落したドル円も、同スピーチを好感して市場がリスクオンに転じると反転急上昇。翌10日には106円台を付ける展開となった(その後さらに勢いを増し、15日のニューヨーク市場では109円台前半に上昇、16日午前の東京市場では109円付近で推移)。

正直なところ、トランプ氏勝利による円高のインパクトがとりあえず短命に終わったのは、筆者にとって予想外だった。大統領、議会ともに共和党となり「ねじれ」が解消されたことや、上述したスピーチの内容が安心感につながり、トランプ氏の主張してきたインフラ投資、大型減税、金融規制緩和など、いわゆる「トランプノミクス」への期待が高まっている。少なくともこうした歓迎ムードが続いている間は、ドル円は堅調に推移する公算が大きい。

市場では「トランプノミクス」による米景気拡大期の長期化を織り込みつつあり、米長期金利の上昇もドル円相場をサポートするだろう。大統領就任後100日間は「ハネムーン期間」と呼ばれ、メディアの攻撃も少なく、支持も安定するといわれるが、今回もこれが当てはまるならばドル円は4月末頃までに112―113円程度へ緩やかに上昇する展開も想定できる。ただ、果たしてそれ以降も円安が持続するかは、不透明感が残る。

<米通貨政策がドル高要因を打ち消した苦い教訓>

トランプ氏は常々、「外交政策において、米国の国益を最優先する(My foreign policy will always put America’s interest first)」と述べてきた。米国はこれまで、国際社会秩序を守る、いわゆる「世界のリーダー」としての役割を重視してきたが、今後は「米国第一主義」、つまり「自分さえよければいい」モードに切り替わることになる。

トランプ氏は、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉や、環太平洋連携協定(TPP)からの撤退を公約としている。また、中国からの輸入品に45%、メキシコからの輸入品に35%の関税を課すことを公約としてきたばかりか、選挙戦中の演説では日本の自動車に現在2.5%しか関税がかけられていないことに疑問を呈し、38%まで関税を引き上げると述べたこともある。

これらがトランプ氏の根底に流れる思想であり本心だとするならば、勝利宣言スピーチで述べた「パートナーシップ」とは裏腹に、同氏の大統領在任期間中、「保護主義」や「貿易摩擦」が為替相場のテーマとして浮上する局面があるかもしれない。

米国政府が通貨政策で自国の利益を優先する場合、残念ながら為替レートはほぼ米国側の思惑通りドル安に向かう。ドル安によって米国景気が回復すれば、金利が上昇し結果的にドルが上昇するのではないかとの見方もあるが、少なくとも過去の例ではそうなっていない。

例えば1993年に発足したビル・クリントン民主党政権では、クリントン大統領が日米貿易不均衡是正を主張。当時の宮澤喜一首相と同年4月に行った会談後の記者会見でクリントン大統領は「日米の貿易不均衡是正に有効な方法は4つ。その第1は円高である」と述べた。クリントン政権発足時には125円台だったドル円相場は急落し、1995年に90円を割り込むことになる。

米国経済はこの間、回復局面にあったため、1993―95年に米国の政策金利が3.0%から6.0%まで引き上げられたにもかかわらず、ドル円相場は大幅に下落した。米国の通貨政策が米金利上昇というドル高要因を打ち消した一例である。

<TPP決断がトランプ政治のリトマス試験紙に>

2003年9月にドバイで行われた主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議も似たような例だ。共同声明に「為替相場のさらなる柔軟性が望ましい」との文言が加えられたことで、「人民元を安く固定している中国と、為替介入を繰り返している日本に対抗するため、米国がドル安誘導に動いたのではないか」との見方が広がり、ドル円は急落した。

その後、米連邦準備理事会(FRB)は2004年初旬から2006年にかけて1.0%から5.25%まで政策金利を引き上げたが、ドル円は2003年後半から2004年末にかけて下落が続いた。

米国政府は現在、表向きは「強いドルは米国の国益」とのスタンスを維持している。しかし、明確にドル高を批判してきたトランプ氏が大統領に就任すれば、同氏の発言がしばしばドル円の波乱要因になるだろう。

今月14日にはドル指数が100の大台を一時超えたが、これまでその大台が近づく、あるいはそれを超える場合には、米メディアでドル高がトピックとして取り上げられる上、要人のドル高けん制も目立つ傾向にある。

2015年4月15日、国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事が「ドルの急上昇は乱暴なほどだ」とドル高懸念を表明し、ドル安が進行。同年12月には、アトランタ連銀のロックハート総裁が「さらなるドル高は自身の見通しにリスクだ」と述べ、この発言もドル安を誘発した。

また、今年2月3日にドルが下落した局面では、ニューヨーク連銀のダドリー総裁が「ドル高は米国経済にとってマイナスである」と発言。いずれのケースも、発言の直前にはドル指数が100付近まで上昇していたのを見れば、単なる偶然とは言い難い。ドル高が一段と進めば、トランプ氏自身がこれに懸念を示す可能性もあるだろう。

来年発足するトランプ新政権において、同氏が勝利宣言で述べた3つのキーワード(統一、インフラ投資、パートナーシップ)が三拍子そろって実現すれば、今後の米国経済にも期待が持てるし、来春以降もドル円の上昇は持続しよう。しかし、トランプ氏の主張する「巨額のインフラ投資」や「極端な保護主義」は共和党の伝統的な「小さな政府」「自由貿易」とは正反対の政策であり、野党はもとより、共和党内にも反対意見は多い。果たして、「統一」と「インフラ投資」が実現するかは不透明だ。

3点目のパートナーシップについては、トランプ氏が環太平洋連携協定(TPP)問題をどう扱うかが1つの試金石となろう。同氏がこれまで述べてきた通り、来年1月20日の大統領就任直後にTPPからの脱退を表明するようなら、それ以外の移民問題や為替に至るまで、トランプ氏は幅広く保護主義政策を推し進める可能性が高い。

TPP脱退を表明しない場合も、これまでの公約を100%反故(ほご)にはできず、「為替条項」の条件を付けるなど、合意内容の修正を図る可能性もあろう。そうなれば、パートナーシップ実現はやはり難しいことになる。これらのリスクシナリオを踏まえれば、ドル円が仮に来春までに112―113円程度へ緩やかに上昇したとしても、それがドル高のピークになる可能性は高いかもしれない。

*尾河眞樹氏は、ソニーフィナンシャルホールディングスの執行役員兼金融市場調査部長。米系金融機関の為替ディーラーを経て、ソニーの財務部にて為替ヘッジと市場調査に従事。その後シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)で個人金融部門の投資調査企画部長として、金融市場の調査・分析、および個人投資家向け情報提供を担当。著書に「本当にわかる為替相場」「為替がわかればビジネスが変わる」「富裕層に学ぶ外貨投資術」などがある。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-maki-ogawa-idJPKBN13B05N


 
焦点:日銀、物価見通し小幅上方修正も トランプ氏当選後の円安好感
 
[東京 16日 ロイター] - 日銀がトランプ氏の米大統領選勝利後の円安・株高進行で、物価見通しを小幅上方修正する可能性を指摘する見方が浮上している。また、企業や家計の心理が好転し、プラスの循環が生まれ、緩和効果が強化されるとの期待感も出ている。

ただ、市場が反転すれば、デフレ方向への圧力が強まることになり、円安・株高の持続性の行方を注意深く見守っている。

<長期金利コントロールに手応え、金利差拡大で円安>

日銀内では当初、トランプ氏勝利なら、円高・株安が進むとの見方が多かったが、現実には急激な円安・株高が進み、デフレ圧力の後退要因として好感している。

複数の日銀関係者は、トランプ氏が選挙戦で言及した所得税・法人税の大幅減税、インフラ整備などによる大規模財政出動の影響に市場が注目。米長期金利が大幅に上昇する一方、米国の成長率が高まるとの期待感で、米株高も同時進行している点に注目している。

また、1.7%付近から一時、2.3%台に急上昇した米長期金利の動向が、日本の国債市場にどのように波及するのか注目されている。

16日の東京円債市場では、10年最長期国債利回りJP10YTN=JBTCが一時、0.035%まで上昇したが、日銀の目標とするゼロ%程度の範囲にとどまっている。

日銀は「イールドカーブ・コントロール(YCC)が機能している」(幹部)と評価。そのことが結果的に日米金利差の拡大となって、足元の円安進行の要因になっていると分析している。

前回10月31日、11月1日の金融政策決定会合では、2016年度から18年度までの物価見通しをそれぞれ引き下げ、2%の物価目標達成時期も2018年度に延期したばかり。

だが、1週間で8円という急激な円安が進行。複数の関係筋によると、日銀内部では、16年度と17年度の物価見通しを0.1%ポイント程度上方修正する可能性を議論すべきとの声も出ている。

<指値オペや買い入れ増減、議論なし>

今年9月に日銀は、金融緩和の程度を図る目安をこれまでの「量(マネタリーベース)」から「金利」に転換。短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度とする「イールドカーブ・コントロール(YCC)」を導入した。

金利が上下に急変動すれば、国債の買い入れ規模を増減したり、特定の年限の金利コントロールを意図した「指値オペ」を導入する方針も打ち出した。

複数の関係筋によると、現時点では、指値オペや国債買い入れの増額・減額は全く議論されていない。

米長期金利が上昇しても、国債運用ニーズの高い日本国内では、長期金利が急激に上昇する可能性は低いとみているためだ。

イールドカーブが日銀の目安の範囲内にとどまっている限りは、国債買い入れを増減する理由もないとの意見が多い。ある日銀OBは「当面は、政策変更がない可能性がさらに高まった」と述べる。

<円安・株高の持続性には慎重>

一方、円安・株高の持続性について、日銀内では慎重な意見が多い。トランプ氏の選挙期間中の発言には保護貿易や同盟関係の見直しなど、世界経済や安全保障に対する不透明感を高める内容も少なくなかった。

黒田東彦総裁は14日の名古屋市内での会見で、トランプ氏が反対を表明している環太平洋連携協定(TPP)が白紙となった場合には「潜在的に得べかりし大きなプラスが失われる可能性がある。その意味では(日本経済にとって)マイナスといえるかもしれない」と懸念を示した。

日銀では、トランプ次期政権の具体的な政策と実現性などを踏まえ、米国だけでなく世界経済に及ぼす影響や金融市場の先行きをにらみつつ、日本経済の今後の軌跡を慎重に見守っていく方針だ。

(竹本能文、伊藤純夫 編集:田巻一彦)
http://jp.reuters.com/article/focus-boj-idJPKBN13B136?sp=true


 


 
地域銀行の収益は楽観できない、十分注視したい=黒田日銀総裁

[東京 16日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は16日午前の衆院財務金融委員会に出席し、地域銀行の2016年9月期の利益は減少しているが「依然として高水準にあるのも事実」と指摘した。一方、競争激化や利ざや縮小で「今後の収益は楽観できない」として、「十分注視したい」とも述べた。重徳和彦委員(民進)への答弁。

地域銀行の再編については、「業態を超えた経営連携・統合があっておかしくない」、「新しい金融テクノロジーを使ったサービスやさまざまな選択史も検討されていい」との見解を示した。

政府系金融機関の役割は、「あくまで民業を補完するもの」

と指摘。「世界的な不況が克服され日本経済も緩やかな回復軌道に乗っており、政府系金融機関の役割も基本は変わらないが現象的には縮小していく」との見方を示した。

(竹本能文)
http://jp.reuters.com/article/kuroda-boj-idJPKBN13B06H

 
コラム:ギラギラした米資本主義復活へ=武者陵司氏
武者陵司
武者陵司武者リサーチ代表
[東京 16日] - 米大統領選挙における共和党ドナルド・トランプ候補の勝利を受け、米経済や世界経済の将来に関する悲観的な見方が広がっているが、私はむしろ逆に捉えている。トランプ次期政権はさまざまな面で、期待できる要素を備えていると考える。

まず、共和党が大統領ポストに加えて上下両院の過半数も押さえたことによって、非常にパワフルな政府が誕生するということだ。政治経験のない実業家のトランプ氏を大統領候補に指名した共和党については、以前からの党勢の低迷もあり、選挙中はあたかも滅びつつある政治集団であるかのような論調が多かったが、ふたを開けてみれば「共和党独裁」とも呼べる時代が幕を開けた。

これには、2通りの見方ができる。1つは、現在のオバマ政権下での民主党大統領・共和党議会という「ねじれ」が解消し、政策運営がやりやすくなる点。もう1つは、共和党が自ら指名した大統領に対して、上下両院の過半数を占めるという(言い訳のしようがない)責任ある立場からチェック機能を果たさなければならないということである。

お目付け役(議会共和党)に対する国民の目が厳しくなるのは必至だ。よって、過激な選挙公約をトランプ氏が実行に移そうとしても、きちんとチェックアンドバランスが働くことになるだろう。

そもそも数々の暴言や移民問題などに関する一部の選挙公約を脇に置けば、トランプ氏が示している政策案は、荒唐無稽なものばかりではない。その骨子を素描すれば、1)強い米国の威信復活、2)財政支出拡大や大型減税による景気刺激、3)金融規制やエネルギー規制の緩和など、米経済ひいては世界経済にとってプラスに働くものが多い。

一部には、トランプ氏が繰り返す「AMERICA FIRST(米国第一主義)」や「MAKE AMERICA GREAT AGAIN(米国を再び偉大に)」との言葉を、「孤立主義」へのシフトと解釈する向きは多いようだが、世界から孤立した「偉大な米国」などあり得ないことは、トランプ氏は百も承知なはずだ。

米国で消費される商品の9割は輸入品であり、米国で製造されている商品の9割は輸出されている。米経済の繁栄は、グローバル貿易の繁栄と直結しており、両者はすでに抜き差しならぬ相互依存関係にある。このつながりを断ち切って、米国を偉大にすることなどできない。トランプ氏が他国の経済・通商政策を批判しているのは、不公正ないいとこ取りは許さないということであり、資本主義を否定しているわけではない。

むしろ、「本音主義」のトランプ政権誕生によって、「理想主義」のオバマ政権以来(特にリーマンショック後)抑制されてきた、ギラギラした米国流資本主義が復活するのではないかと私は見ている。

<レーガノミクスとの共通点>

では、具体的にはどのような政策が実行に移されるのか。ヒントは、1980年代のレーガン共和党政権にあると思う。

実は、先ほど列挙した政策骨子はすべてレーガン政権を彷彿させるものだ。共和党政権と言えば、バランスバジェット(均衡予算)へのこだわりがひときわ強い印象を受けるが、レーガン政権時には軍備拡張と同時に国内経済の立て直しのために大型減税と規制緩和が実施され、財政赤字が拡大した。また、インフレ抑制のための金融引き締め、その結果としてのドル高というポリシーミックス(レーガノミクス)が展開された。

それらは、新自由主義的な小さな政府を志向するサプライサイド改革をしながら、ケインズ的な需要政策を遂行するという、当時の経済理論からすれば矛盾に満ちたものであったため、「ブードゥー(呪術)経済政策」と批判されたが、実際には国内総生産(GDP)成長率や雇用が拡大するなど大きな成果を収めた(反面、貿易赤字と財政赤字の「双子の赤字」増大を招いた)。

トランプ氏の政策骨子は、現在明らかになっている点から推察すると、このレーガノミクスとの共通点が目立つのである。相違点を挙げれば、環太平洋連携協定(TPP)反対や移民コントロール強化などだが、これらも孤立主義というよりは、自国利益の極大化を目指す上での戦術であることは容易に想像がつく。トランプ氏が生粋のビジネスマンであることを忘れてはならない。

国内においてはまず、トランプ氏が宣言している通り、大規模な減税を伴う拡張的な財政政策が取られる可能性が高い。現在、米国では格差問題が深刻化しているが、トランプ流の解決策は、民主党ヒラリー・クリントン候補が目指していた富裕層増税などによる所得再配分ではなく、公共投資拡大などによる貧困層向けの直接的な雇用創造になるのではないか。

具体的には、1)老朽化したインフラの更新・新規投資、2)ここ数年低迷していたエネルギー投資のテコ入れ、3)住宅投資の促進、などが予想される。こうした拡張的な財政によって、現在2%程度と見られている米国の潜在成長率は大きく改善が図られることになろう。

また、トランプ氏は、ウォール街のリスクテークを抑制する金融規制改革法(ドッド=フランク法)に反対しているが、それは的を射ている。金融市場が活性化しない一因は、リーマンショック以降の過剰な金融規制と資本基準の厳格化によって、金融機関と投資家がリスクテークをできなくなったことだ。ドッド=フランク法の見直しが部分的なものにとどまったとしても、規制強化の流れが反転すれば、リスクテークは促進され、市場の活性化につながるだろう。

むろん、米経済はすでに完全雇用にあり、インフレも2%到達が見えている。この段階で、財政緩和によって背中を押すことはバブルを作り出す恐れがあるとの批判もあるかもしれないが、だからこそ金融政策には逆向きの引き締めが求められることになる。

実際、トランプ氏は折に触れ、金融緩和政策を批判している。財政緩和と金融引き締めという適切な組み合わせが適度に追求されるならば、米景気は過熱せず、着実な成長を続ける可能性が高い。あるいは、逆に下向きにいったん行くとしても、伝統的な景気循環サイクルに戻るだけであり、パニックに陥る必要はない。

<孤立主義ではなく覇権再構築>

最後に、トランプ次期政権の誕生が安倍政権の政策運営に与える影響はどのようなものになるのだろうか。現在のところ、TPP頓挫の可能性が高まっていることや、日米同盟が揺らぐリスクなどを心配して、悲観的な見方が多いようだが、冷静になって考えてみる必要があろう。

まず、米国が外交面で孤立主義に転じるというのは本当なのか。前述した通り、米経済成長は世界経済成長に依存しており、その世界経済メカニズムは米国が広げた資本主義理念に頼っている。米国を輝かせたいならば、世界に関与を深めるしか道はないはずだ。地政学的に見ても、レーガン政権時と同じく、強い米国をアピールすることが一番、理にかなっている。実際、トランプ氏は、国防予算の上限撤廃や軍備増強を提唱している。同盟国に応分の負担増を求めているのは、むしろ覇権の再構築に熱心な新政権誕生を予感させる。

また、自国製造業を守るためにドル安政策に舵を切り、日本など主要国を通貨安戦争・貿易戦争に導くとの見方もどうだろうか。そもそも財政緩和は金利上昇要因であり、金利上昇はドル高要因だ。すでに市場は、そうした期待を胸に、ドル高円安方向に動いている。為替はトランプ氏の一義的な政策目標ではないはずだ。トランプノミクスの最大の焦点は、財政緩和だと思う。

むろん、確かなことは来年になってみないと分からないが、言えることは、トランプ氏には、レーガン大統領のように、米国の次の一時代を築くチャンスがあるということだ。資本主義の申し子が、偉大な大統領として歴史に名を残す好機をみすみす逃すとは思えない。

*武者陵司氏は、武者リサーチ代表。1973年横浜国立大学経済学部卒業後、大和証券に入社。87年まで企業調査アナリストとして、繊維・建設・不動産・自動車・電機エレクトロニクスなどを担当。その後、大和総研アメリカのチーフアナリスト、大和総研の企業調査第二部長などを経て、97年ドイツ証券入社。調査部長兼チーフストラテジスト、副会長兼チーフ・インベストメント・アドバイザーを歴任。2009年より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。
http://jp.reuters.com/article/column-ryoji-musha-idJPKBN13B0DV

 

焦点:中短期金利が急上昇、円安・株高受けた緩和期待の後退で

[東京 16日 ロイター] - 16日の円債市場で、中短期金利が急上昇した。トランプ氏が勝利した米大統領選後に進む円安・株高を受けて、日銀の追加緩和観測が大きく後退し、過剰なリスクを落とす動きが加速した。

ただ、財政拡大路線を掲げるトランプ氏の政策実行性に懐疑的な見方も根強く、円安・株高に歯止めが掛かれば、債券買いが再開する可能性もある。

<マイナス金利深掘りの期待後退>

「日銀は現行の金利上昇を容認している」(国内証券の債券関係者)──。日銀は16日に実施した中期・長期を対象にした国債買い入れで、オファー額を増額せずに据え置いた。

市場では金利上昇に対するけん制姿勢を示さなかったとの受け止めが優勢になったという。中期対象の買い入れが低調となり、午後の取引では、前日の5年債入札で在庫を抱えた証券からの投げを誘発した。

5年債利回りJP5YTN=JBTCは前日比8bp高いマイナス0.040%と1月29日以来、2年債利回りJP2YTN=JBTCは同9bp高いマイナス0.095%と2月1日以来の水準に上昇した。

日銀が当座預金残高の政策金利残高に適用しているマイナス0.1%をともに上回った。金利水準だけでいえば「もはやマイナス金利深掘りの可能性が消滅する水準」(同)まで切り上がったことになる。

背景には米大統領選で勝利したトランプ氏の政策期待がある。「トランプ氏が掲げる10年間で1兆ドル規模のインフラ投資をはじめ、大規模な財政出動、広範にわたる減税といった政策で、米経済が押し上げられるとの思惑から円安・株高が進み、インフレ期待の高まりで米連邦準備理事会(FRB)の12月利上げを支援するとの思惑が浮上している」(クレディ・アグリコル証券・チーフエコノミストの尾形和彦氏)という。

<日銀YCC後に膨らむ先物売りポジション>

「10年最長期国債利回り(長期金利)はプラス0.100%を目指す動きになるのではないか」と国内金融機関の債券関係者はみる。

同関係者は、米大統領選前の10月初旬から債券相場先行きに対する見方を弱気に切り替えた。日銀が9月21日に「イールドカーブ・コントロール(YCC)政策」の導入決定後、国債先物オプション取引でプット(売る権利)の買いポジションが膨らんだためだ。

国債先物オプション価格の149円50銭におけるプット建玉は、15日現在で6063枚とこの1カ月間で5000枚余り急増した。「日銀のYCC政策導入によって、長期的に国債買い入れを軸にした量の限界を意識。短期のマイナス金利が変わらなくても、イールドカーブが超長期にかけて上方にシフト(金利が上昇)し、事実上のテーパリングとの見方が市場に広がったのだろう」と、同関係者はオプション取引における売りポジションを分析する。

<日銀の許容上限はプラス0.10%か>

国債先物価格149円50銭を10年債利回りに引き直すと、おおむねプラス0.10%程度。日銀のYCC政策では、短期のマイナス金利政策とともに、10年国債金利の操作目標をゼロ%程度を設定している。「日銀が許容する10年債利回りは、0%を中心にマイナス0.10%からプラス0.10%程度ではないか」(国内証券)との市場の見方が出ている。

ただ、このまま一本調子で金利が上昇するとの見方は少ない。トランプ氏の政策期待で円安・株高・金利上昇に振れているが、その実行可能性に不透明が強いためだ。「トランプ氏の正式な政策や確たる数値で(相場が)動いているわけではなく、あくまでも憶測に過ぎない。どこかで円安・株高・金利上昇が収まってくる可能性が大きい」(尾形氏)との声が少なくない。

(星裕康 編集:田巻一彦)
http://jp.reuters.com/article/focus-mid-short-rates-idJPKBN13B11N  

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