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スティグリッツ氏が書く日本経済再生への処方箋 インド富裕層「ドローン婚」中国「ベジ婚」 映画「この世界の片隅に」勝算は?
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/352.html
投稿者 軽毛 日時 2016 年 12 月 02 日 18:34:40: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

スティグリッツ氏が書く日本経済再生への処方箋

トレンド・ボックス

2016年12月2日(金)
米経済学者スティグリッツ氏は日本経済の再生には現状の政策より炭素税の導入が解決策になると提言する。低炭素社会にかじを切ることが大規模投資を促し、経済を活性化する。税収増は債務圧縮、教育に充てればよい。公的債務は永久債や財政ファイナンスも選択肢だが、それ以上にサービス業の生産性向上も課題だと指摘する。
ジョセフ・スティグリッツ氏

1943年米国生まれ。米アマースト大学卒、67年米マサチューセッツ工科大学で経済博士号取得。95〜97年クリントン政権で大統領経済諮問委員会委員長、97〜2000年世界銀行のチーフエコノミスト。2001年にノーベル経済学賞受賞。現在は米コロンビア大学経済学部教授。2011年に米誌「タイム」の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれる。『世界の99%を貧困にする経済』など著書多数。
 日本のバブルが崩壊し始めたのは25年前。それから四半世紀、「失われた10年」が繰り返される間、日本経済は低迷し続けてきた。

 そして日本の経済政策は批判にさらされてきたが、批判の一部は正当なものではない。経済成長は、それ自体が目的ではないからだ。我々が何より重視すべきは、国民の生活水準である。

 日本の人口は世界に先駆けて増加から減少に転じたが、生産性は上昇してきた。生産年齢人口1人当たりのGDP(国内総生産)伸び率は、特に2008年以降、米国を上回り、欧州よりもはるかに高い。

炭素税導入が投資拡大を呼ぶ

 それでもなお日本人は、成長率をもっと高められると信じている。私も同じ考えだ。

 日本は、供給サイド、需要サイドの両面に問題を抱える。また実体経済においても、財政面でも問題がある。これらの問題に取り組むには、日本の政策立案者たちがこの数年採用してきた政策よりも、もっと実効性の高い経済活性化策が必要だ。

 これまで推進してきた政策では、インフレ目標も達成できなかったし、経済が成長に向かうという信頼感を回復することも、経済成長を望ましい水準にまで押し上げることもできなかった。

 まず、大規模な炭素税を導入すればいい。加えて、同時に「グリーンファイナンス(二酸化炭素の排出が少ない社会を実現するための取り組みに資金を提供すること)」を整備すれば、経済の改善に向けた大規模な投資を促進できるだろう。

 こうした投資によって経済の資金が吸い取られる、あるいは炭素税導入により「炭素資産」の価値が下がる逆資産効果を招くというマイナスの効果は生じるが、炭素税導入に伴う大規模投資が生む効果の方が必ず上回る。

 逆資産効果の影響はごく限られたものにとどまる一方で、資本ストックが炭素税導入によってもたらされる新たな価格体系とうまく調和しないため、そのギャップを埋めるべく莫大な資金が投入されることになるだろう。どこかにボトルネックが生じない限り、その投資額は巨大になるはずだ。

 炭素税導入で増加した税収は、公的債務の圧縮に使うこともできるし、技術や教育への投資資金に充てることも可能だ。例えば供給サイドへの投資として、日本のサービス分野の生産性を向上させるための対策に投じるのも一案だ。

 このような支出は同時に経済を刺激する効果も発揮するので、日本はついにデフレからの脱却を果たせるかもしれない。

永久債で公的債務を置き換え

 海外では、日本の公的債務の大きさを不安視する論調が強い。今日の世界的な低金利の環境では債務の持続は容易だが、ひとたび金利が正常な水準へと近づけば日本が財政を維持していくことは難しくなる、というわけだ。

 私自身は、金利が近く上昇に転じることはないと考えている。だが、日本がそうした懸念を払拭したければ、取れる政策が2つある。

 第1は、国債の一部を永久債に転換することだ。永久債とは、償還の必要がなく、毎年(少額の)金利だけを支払う債券のことだ。これで日本政府は莫大な公的債務を抱えるリスクを政府の貸借対照表上から完全に消し去ることができる。

 この手法はインフレを招く、との懸念もあるだろう。だが、日本経済では、逆にインフレこそがまさに必要とされていることだ。

 日本が債務を永久債に置き換えるようなことをすれば、急激な金利上昇を招くとの懸念もあるが、あまりに大げさに吹聴されすぎている。念のため十分に慎重を期して、インフレ圧力が高まりすぎない限りは毎年、例えば債務の5%ずつを永久債に転換していくという手法も考えられる。

財政ファイナンスも選択肢だ

 あるいは、今抱えている債務を金利ゼロの国債に置き換えるという手法もある。つまり、禁じ手とされてきた「国家債務のマネタイゼーション」だ。

 こうした財政ファイナンスは、金利が付く永久債化よりもインフレを招きやすい要因となる可能性が高い。だからといって、マネタイゼーションを否定する論拠にはならない。よりゆっくりとしたペースで進める必要がある、というだけのことだ。

 日本が金利の急上昇を避けるために取れる第2の方法は、日本政府の債務の大部分は自身からの借り入れであるという認識を出発点とする。

 米ウォール街では、問題は純債務──政府が外部の社会に対して負っている債務──であることを理解していない者が多いようだ。

 仮に政府が自身が抱える資産と負債を計算上、相殺して正味の債務だけを抱えるようにしたとしても、誰も変化に気付かないだろう。そして統計上の公的債務のGDP比だけに目を向けているウォール街は、突然、日本を好感し始めることだろう。

 これらの対策を全て講じたとして、それでも明らかに需要不足という状況に直面した場合でも、日本政府にできることはまだいくつかある。

 消費税率の引き下げ、企業の投資に対する税控除額の引き上げ、低・中所得世帯への支援策の拡大、技術と教育への投資の拡大などだ。

 これらの原資は全て貨幣の発行によって賄う。従来の経済学的思考からすれば、これもインフレを招くとの懸念を呼びそうだが、日本では、まさにその「懸念」が現実になることが求められているのだ。

 実は、日本は需要サイドよりも大きな問題を抱えている。労働時間当たりのGDPを見ると、供給サイドに問題がある。明らかに問題なのは、サービス分野における生産性の低さだ。

 日本は製造業分野では様々な創意工夫を成し遂げ感銘を受けるが、サービス分野ではそうした工夫が見えてこない。技術に強かった日本がその強さを生かして活躍するなら、次はサービス分野ではないか。例えば、医療における診断装置の開発などだ。

 しかし、安倍晋三首相はこうした解決策とは全く異なるアプローチを取り、日本と米国のほか太平洋を囲む10カ国との貿易協定であるTPP(環太平洋経済連携協定)を支持している。


安倍首相はTPP推進が改革をもたらすと考えているようだが…
(写真=Imaginechina/アフロ)
 安倍首相は、TPPは国内で必要とされる農業改革を推進する力になると考えている(興味深いことに、米国ではTPPが米国のひどくゆがんだ農業政策の是正に役立つと考える者はいない)。

 だが、実際には農業改革が日本のGDPに及ぼす影響は軽微だ。理由は単純で、農業のGDPに占める割合が非常に小さいからだ。それでも、改革はやはり望ましく、日本の若者が創意を発揮できる舞台を増やすことにつながる(もっともTPPがそうした創意工夫をもたらすための最善の策と言うつもりはない)。

日本は世界を先導できる

 一方、女性の全面的かつ平等な労働参加を推進しようという安倍首相の政策は正しい。こうした政策は、うまくいけば、生産性と経済成長の両方を一気に押し上げるはずだ。

 日本は、四半世紀に及ぶ停滞を経てもなお、世界第3の経済大国だ。日本が国民の生活水準を高める力となり得る政策を取るなら、他国の需要と成長も喚起することになる。

 これに劣らず重要なのが、以下の点だ。日本はこれまで革新的な商品や技術を開発し、それを世界と共有してきた。同様に、日本が何らかの政策で成功を収め、最終的にそれを輸出すれば、ほかの先進国も同じ、または似たやり方で国民の生活水準を向上させることができるだろう。

国内独占掲載:Joseph E. Stiglitz © Project Syndicate

(日経ビジネス2016年9月26日号より転載)


このコラムについて

トレンド・ボックス
急速に変化を遂げる経済や社会、そして世界。目に見えるところ、また見えないところでどんな変化が起きているのでしょうか。そうした変化を敏感につかみ、日経ビジネス編集部のメンバーや専門家がスピーディーに情報を発信していきます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226265/120100078/


 

インドの富裕層で人気の「ドローン婚」って何だ

シゴトタビ〜知られざるアジアの姿〜

韓国では「独身脱出大作戦」に若者が殺到
2016年12月2日(金)
小祝 誉士夫、高橋 学
 日本では結婚式や披露宴を開かなかったり、少人数での式が増えたりして、結婚ビジネス市場の縮小傾向に歯止めがかかりません。けれどもインドでは、結婚ビジネスは年25%以上の急拡大を続けています。インドの結婚ビジネス市場は1兆9000億ルピー(約3兆円)で、日本(約2兆5000億円)を上回っています。

 そんな伸び盛りの結婚ビジネス市場で、今、富裕層の間で人気を集めている結婚式があります。式当日、屋外パーティーの様子をドローンで撮影し、記念のショートムービーを作る「ドローン婚」です。


 インドは「ボリウッド」(映画制作拠点となっているムンバイの俗称)を中心に、映画制作が盛んな国ですが、近年はその映画技術を使って10〜20分の結婚式のショートムービーを制作するカップルが増えています。ドローンを使えば、空からのダイナミックなアングルで撮影できるため、富裕層を中心に好評を得ているのです。

 とはいえ、ドローンを使えばそれだけ費用は高額になります。「インドのシリコンバレー」と呼ばれるほどIT産業が発展しているプネー市にあるブライダルプロデュース会社のInnobella(イノベッラ)によると、利用料金は小型ドローンが12時間で2万5000ルピー(約4万円)。さらに、20分のショートムービーを制作するとなると、加えて20万ルピー(約31万円)が必要になります。

 フルサービスを利用しようとすれば、通常の結婚式費用に、約35万円も上乗せされる計算です。様々なアングルで撮るためにドローンを複数台用いれば、費用はさらにかさみます。

 しかし、富裕層はその程度の上乗せは全く意に介しません。式の最中に上空をドローンが飛び交うこと自体も、招待客を楽しませる演出であり、結婚式に派手さを求める若い富裕層カップルの間で、ドローンは今やマストアイテムになっているのです。

ロハスを背景に中国で人気の「ベジ婚」

 派手婚のインドに比べて、洗練された質素さを追求する結婚披露宴が、中国では流行しています。それが、精進料理だけを提供する「全素宴」です(中国では精進料理を「素菜」と言います)。

 中国では、クリントン元米大統領の長女のチェルシー氏や、中華圏で有名なシンガー・梁詠h(ジジ・リョン)など、憧れのセレブがここ数年、披露宴にベジタリアンメニューを提供したことが話題になりました。

 その流れを受け、ブライダル企業や披露宴を行うレストランが「全素宴」 のサービス、いわば「ベジタブル結婚式」(ベジ婚)を展開し始めたのです。

 価格は10人掛け1テーブルで約3000元(約4万6000円、中国では人数ではなく、テーブル数に応じて料金が発生)。これは一般的な披露宴と同じ料金です。素菜とは言え、鶏肉の風味と食感の干し豆腐、蟹味噌風味のニンジンペーストなど料理の技術を駆使したメニューが次々と運ばれてきます。ベジタリアンや敬虔な仏教徒以外でも満足感のある、豪華な料理が楽しめるというわけです。


中国の若いカップルに人気の「全素宴」では、肉を使わない見栄えの良い料理が次々と出てくる
 中国では古来、素菜が親しまれ、精進料理は日本以上に発展しています。また本来、仏教徒はその教えによって、「動物性の食品を食べない」のが原則のため、現在でも仏教徒向けに上海市内をはじめ各地に多数のベジタリアンレストランや素菜を提供する飲食店があります。

 そのため、素菜が広く浸透しており、最近では若者の間で健康志向から素菜への支持が広がっています。

 以前から素菜を提供する店で、一般的な宴会や忘年会を催すことはできましたが、披露宴プランを提供し始めたのは最近になってから。近年、中国ではロハスや癒しの要素を日常的に取り入れる女性が急増する中、そうした女性たちに「全素宴」は注目を集め、結婚式に独自性を出したい意向と相まって、一気にトレンドとなったのです。

韓国では出会い系映画イベントに男女が殺到

 一方、日本同様に近年未婚率が高まっている韓国では、結婚以前の問題である、恋人ができない若者たちを支援するイベントが爆発的な人気を呼んでいます。首都ソウルにある複合映画館(シネコン)が独身男女を対象に出会いの場を提供する、その名も「ソロ脱出大作戦」というイベントです。

 このイベントでは、特設のFacebookページで、独身男女をそれぞれ100人募集。集まった男女は、映画館の席に隣同士で座り、上映される恋愛映画『About Time』(邦題『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』)を鑑賞します。

 上映終了後は隣席の異性に対し、過去の映画の名台詞を舞台上で叫ぶといったプログラムを用意するなど、アピールタイムが設けられています。そして、見事成立したカップルには無料の映画チケットがプレゼントされます。

 実はこのイベントが大当たりし、男女計200人の募集枠に、倍率150倍の約3万人もの応募が殺到。応募時には自己紹介だけでなく、イベント参加への熱意を訴える情熱的なコメントが要求されます。難関を突破した当選者は、韓国軍兵士、女子校出身者、草食系男子など特徴のある人。あるいは、以前の恋愛から間隔が空いている人も優先的に当選しているようです。大きく話題になったことから、主催者側は今後も定期的に同様のイベントを開催していく予定です。


メガボックスがFacebookページで募集した「ソロ脱出大作戦」には若者の応募が殺到
 本コラムでは、アジア各国の最新トレンドを発信している「TNCアジアトレンドラボ」の情報をベースに、トレンドを深掘りした記事を連載します。次回からは、アジアの食のトレンドについて、複数回に分けて紹介していきます。最初のテーマは「SNS映えする“フォトジェニック”なフード」です。アジア各国で広がる、拡散間違いなしの最新スイーツをまとめて紹介します。


このコラムについて

シゴトタビ〜知られざるアジアの姿〜
 日経ビジネスが2014年12月、新たな書籍シリーズを刊行した。アジア各国を仕事で訪れるビジネスパーソンを対象にした出張完全ガイド本「シゴトタビ 日経ビジネス」だ。
 アジア各国について、出張の機会は増えても、それぞれの国や都市の「生」の情報はあまり知られていない。空港からホテルまでいかに移動すると渋滞に捕まらず、スムーズに動けるのか。現地で会食をセッティングする場合、レストランはどこを予約すべきなのか。現地の最新トレンドを出張の限られた時間で知るにはどこを訪れればいいのか。ビジネスパーソンが海外出張時に直面するあらゆる疑問に応えたのが「シゴトタビ」シリーズだ。
 本コラムではこの「シゴトタビ」本の中から役に立つ情報を厳選してピックアップする。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/274978/113000017/


 
日経ビジネスオンライン
映画「この世界の片隅に」に勝算はあった?

(Yが)キーパーソンに聞く

プロデューサー、真木太郎GENCO社長に聞く
2016年12月2日(金)
山中 浩之
松浦です。本日朝、「この世界の片隅に」を観てきました。
やられました。個人的評価ですが、「七人の侍」に匹敵する傑作です。
「シン・ゴジラ」の時は「みんな語りたがっているし、自分が語る必要はないだろう」と思って断ってしまいましたが、今回なにか企画はありますか。機会があるなら万難を排して書きます。

************

 11月16日の夕方、「宇宙開発の新潮流」の筆者、松浦晋也さんから私にこんなメールが届きました。取材に執筆にご親族の介護と八面六臂の松浦さんが「機会があるなら万難を排して」というなら、相当面白いに違いない(彼のブログでの映画紹介はこちらで読めます)。

 11月12日に公開されたアニメーション映画「この世界の片隅に」(片渕須直監督)。戦前に広島・呉市に嫁いできた女性の、終戦をまたいだ日常を描く、という内容は、いかにもお説教されそうな反戦映画っぽいし、「のん(本名:能年玲奈)」さんの声優起用も話題作りのような気がして気が向かなかったのですが、これはもしかしたらと早速映画館を検索したら、当日夜は「え、満席売り切れ?」。

 驚いて翌日朝一番の席を予約し、見に行って、己が先入観を蹴飛ばしたくなりました。すぐに『この世界の片隅に』(こうの史代)の単行本も全巻購入し、原作のすばらしさと、それをどれほど大事にしながら映像化したのかも知りました。

 上映館数が63館という小規模な公開でスタートしたのに、観客動員数が2週連続10位を記録とスタートダッシュに成功、3週目に6位にランクアップしたことも話題になっています。上映館も続々と増加中。

 しかし、原作にたくさんのファンがいるとはいえ、一般的な知名度は決して高くなく、内容も「これは当たる」とは考えにくい。それをこんなに丁寧に(=お金と時間を掛けて)制作し、回収できると踏んだのはなぜなのか。この映画のプロデューサーであるアニメ企画・プロデュース会社GENCO(ジェンコ)の真木太郎社長にお話を伺ってきました。

映画「この世界の片隅に」プロデューサー、GENCO真木太郎社長
Y:よろしくお願い致します。

真木太郎社長(以下真木):どうぞよろしく。しかし、映画の話なら、片渕監督じゃなくてよかったんですか。

Y:そちらは、既に良質なインタビューが出そろっていますし、よろしければ別途お願いしたいと思います。今回は商売、そろばん勘定のお話を聞かせていただければと。

真木:あ、やっぱり日経さんだから、まずお金の話なんですね(笑)。

Y:そういうことです(笑)。まず真木さんはどの時点でこの映画にかかわられたんでしょうか。

真木:僕は途中から呼ばれたんです。経緯を簡単に説明しますと、2010年、片渕監督が前作「マイマイ新子と千年の魔法」(2009年11月公開)を終えて、次に「これをアニメ化したい」と取り上げたのが、こうの史代さんのマンガ『この世界の片隅に』でした。

「この世界の片隅に」映画公開まで
・2010年8月 片渕監督、MAPPA丸山社長(当時)に「この世界の片隅に」の映画化を相談
・2011年6月 MAPPAに制作準備室設置、シナリオ作業開始
・2012年8月17日 ツイッターで制作発表
・2012年9月 キネカ大森(テアトル東京系列)に「『この世界の片隅に』製作準備進行中」のポスター貼られる
・2013年1月 GENCO(ジェンコ)真木社長、企画に参加
・2015年3〜5月 クラウドファンディングでパイロット版資金調達に成功
・2015年6月3日 製作委員会結成、映画製作が本決まりに
・2015年7月4日 約5分のパイロットフィルム完成、試写
・2016年6月 アフレコ開始
・2016年7月 「のん(本名:能年玲奈)」が「すず」の声優に決定
・2016年9月 本編の試写開始
・2016年11月12日 映画公開
 片渕監督は自腹で夜行バスで広島に何十回も行って、映像にするための取材を重ね、街を歩き、当時を知る人へのインタビューを行いました。こうのさんの絵があるとはいえ、映画とは画角も違いますし、膨大な資料と取材がないと、片渕監督が望むような映像化はできない。広島行きを重ねながら、コンテ作業…実際のアニメの絵を描く前段階ですね、もちろん、シナリオも作っていました。

資金調達が捗らなかった理由

Y:集めた資料の膨大さと緻密さが、ネットで話題になっていましたね(片渕監督自身の制作日記はこちら。参考記事リンクは記事末尾に掲載します)。

真木:ええ。で、なんとか映画制作を離陸させるべく、片渕監督と組んで一緒にやっていた制作スタジオ、MAPPAの丸山正雄さんが、いろいろな方に「一緒にやらないか」と声を掛けていたのですが、なかなか組むところがない。その後私が参加したのが2013年の1月でした。でも、そこから順調だったわけでもなくて、やっぱりお金が集まらないんです。

Y:それはなぜでしょうか。

真木:日本の映像物は、テレビ、映画、アニメ、実写を問わず、たいていは製作委員会という、民法上の任意組合によって資金が調達されているのはご存じですよね。参加する企業各社は、出資者、投資家であると同時に、メディアビジネスのプレーヤーでもある。例えば、ビデオメーカーが投資して、完成した映画のビデオの窓口(販売やレンタルの権利)を取る。テレビ局が投資するなら、自局で広告宣伝をして、放映もできる。

Y:言い換えると、映画単体でのリクープ(投資の回収)ではなく、関連した商品を自社で扱う権利による利益も含めて、ビジネスとしての採算を考えるわけですね。

真木:その通りです。そして、製作委員会方式には功罪どちらもありますが、「窓口のビジネスが優先される」のが特徴というところは現在では、誰もが認めざるを得ないと思います。

真木:窓口を取ったら、どれくらい売れるか、売れるものが作れるかが最優先になる。コミックが売れるか、パッケージ(DVD、ブルーレイなど)が売れるか。これは関係者全員が分かっている話なので、悪口ではないと思います。しかし、投資である以上「どう回収するか」が説明できないといけません。「この映画の金融商品としての魅力は何か」が問われるわけです。

Y:なるほど。どうやって判断するんですか。

真木:アニメでも実写でもそうですけれど、例えば「原作、脚本を読んだら分かる」「監督を見れば分かる」、実写なら「キャスティングで分かる」と言われます。しかし、結局これは「当たった作品は、誰々の原作、そして監督、こういうキャスティングだった」という、トラックレコードが必要なんです。過去の実績が常識というか、投資するかしないかの「物差し」になっていて、そのガイドラインから外れたものはジャッジできないわけですよ。

Y:その点「この世界の…」は。

真木:原作にも監督にも確固たるトラックレコードがない。つまり物差しから外れています。

いい作品になるのは間違いない。当たるかどうかは分からない

 例えば、片渕監督の映画を知っている人、こうのさんの原作を読んで好きな人。これはいるわけです。この人達に聞けば「ああ、それはいい、すばらしい映画になりますよ」と言うでしょう。「じゃ、当たりますか」と聞かれたら、「分からない」が答えです。

 金融商品としては「やってみないとわからない」。運用益が出るかどうかの、つまり、ジャッジする素材、材料が乏しかったわけです。「この世界の…」は。


©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
 アニメが得意なジャンルは、ファンタジー、奇跡、異世界とのコミュニケーション、メカニック、友情・努力・勝利で最後は何かをつかみ取る。そういうのがこれまでの物差しであり、常識だった。そうでないものは苦戦する。極めて厳しい戦いになる。この業界の人間なら、最初から分かっていることです。丸山さんも片渕監督も、もちろん僕も分かっていた。

Y:なるほど。題材は戦時下の日常のドキュメンタリーで、しかも、何かをつかみ取るという映画ではないですね。じゃ、真木さんは「この世界の…」の製作委員会の主幹事を、ジェンコが引き受けよう、という決定をした段階で、どう考えていたんでしょう。

真木:資金をいくら出すのか、最低どのくらいの資金が集まったら実際に委員会を立ち上げるのか、うまく行かなかった場合は主幹事としてどう責任を取るのか。「ここくらいまでは我慢する。これ以上は出せない」という数字を想定して、「足りない資金を集めていきましょう」と、そんな感じですね。つまり幹事会社の役割って、そういうものだと思います。

 意外に製作委員会ではこういうのは少ないんですよ。投資予定額が全額集まったら、初めて(実際にアニメを作る)制作会社にお金を出すやり方が多いんです。この映画の場合は「いつ必要なお金が全部集まるのかはまるで分からない」状態でした。だって、投資するのは企業ですから、各社とも稟議がありますからね。稟議をあげるには、映画の目論見書が必要です。ジェンコは主幹事として、プロデューサーとして、出資者を探し、説得する、という立ち位置です。でも、すぐに出資が集まる目論見書なんて、そんな簡単にはできない。

Y:ジェンコとして、そこにどんな勝ち目があると見ていたんですか。

真木:難しい企画なのは間違いない。じゃ、やめるか。アニメだろうが映画だろうが、自動車だろうがエレクトロニクスだろうが何だろうが、そこでやめる人もやめない人も、どの業界にも産業にもいるでしょう。

Y:でも、それはある程度でも成算があってこそでしょう。

「目論見書」としてのパイロットフィルム

真木:言い換えると、既存の業界のガイドライン、物差しを打ち破るにはどうすればいいかということですよね。金融商品なら、「あなたのお金をどう運用するか」を語る目論見書は、フルカラーで、上質紙で、その気にさせる体裁がなくてはいけませんよね。きちっとしていないと、いかに論理的に正しくても、パチものに見える。僕らも同じです。「この世界の…」の“目論見書”は、体裁、中身がものすごくきちっとできていないと、集まる人も集まらない。お金も集まらない。そこで「パイロットフィルムを作ることが必要だ」と判断したんです。

Y:パイロットフィルム。

真木:それを見れば「これはすごい、人が入る映画になるだろう」と分かるものが必要だ、それは現物に勝るものはない、と。ただし、それを作るにもお金がかかるわけです。資金調達に必要なパイロットフィルムも、資金調達がないと作れない。

Y:おやおや。

真木:もうひとつの大きな要素が、クラウドファンディングです。クラウドファンディングについては、1年半くらい前に、身近でやっていた人に話を聞いたり研究会に出たりして勉強していたんです。で、これは「資金調達と資金を出す応援団との両面があるんだな」と理解しました。

真木:では、アニメーション映画を製作するに当たっては、どっちが大事なんだろうか。「応援団の方が大事だな。彼らが作ってくれるクチコミが大事だな」が結論でした。アニメ映画は数億円の費用がかかり、制作が始まってから映画ができるまでざっと2年以上かかりますから、集められる資金としてもかかる時間としても、大きすぎ、長すぎます。理想的には、公開するタイミングが見えたくらいで応援してもらうのがいいのですが、まず我々には目の前にお金がないといけない。でもプロデュースすることは決めた。「じゃあ、思い切ってここで応援開始してみよう」と。

 それと、これは片渕監督が別のインタビュー(こちら)で説明していましたが、シネコンは事実上、公開初日と翌日の動員でその映画をどれくらい上映するかを決めます。スタートダッシュがどうしても必要なので、まずパイロット版を作り、「この続きが見たい」という人を予め増やしておくことが、「この世界の…」をヒットさせるために必要だ、という考えがありました。

Y:なるほど、スタートダッシュが見事に決まった背景に応援団結成があったわけですね。

自腹で100万円用意していました

Y:「makuake」でのクラウドファンディングは2015年の3月〜5月、3カ月弱でしたが、目標額の2000万円は最初の8日間であっさり集まった。

■このクラウドファンディングの主旨
劇場用アニメ映画『この世界の片隅に』の公開実現に向けて応援してくださる「制作支援メンバー」を募集しています。この映画は、準備作業に4年を費やし、シナリオ・絵コンテが完成したところまで辿り着きました。集まった資金は、作品をこの先のステップに進めていくためのスタッフの確保や、パイロットフィルムの制作に使わせてください。片渕須直監督が、こうの史代の愛した主人公すずさんに命を吹き込みます。
すずさんの生きた世界を一緒にスクリーンで体験しましょう。

(makuakeのプロジェクトページより引用)
真木:そうです。こちらは、一般の方が投資するための「目論見書」ですから、ものすごく丁寧にやったつもりです。自分たちがこの映画の中身を信じていること、すばらしいものができると信じていることをなんとか伝えようと。目標は2160万円(税込)でしたが、結果は3912万1920円(同)。サポーターの方は当時の国内のクラウドファンディング市場の最高記録である3374人、金額は、国内のクラウドファンディング市場の映画ジャンルとしては現在に至るまでの最高額が集まりました。イベントで話しましたけれど、僕、集まりが悪かったら個人的に100万円突っ込もうと用意していたんですが、開始早々に数百万円を越えまして「あ、これなら大丈夫」と(こちら)。

 もちろん、この金額でも映画本編には足りません。でも、パイロット映像は作れます。それが資金調達につながれば、クラウドファンディングに出資してくれた皆さんに応えることができる。正確に言えば、投資ではないので「価値を買う」ことになり、金銭面でのリターンはありません。価値は何かといえば、この映画に支援するという満足感しかないんです。


©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
 ですので、頂いた側が言うと大変いやらしいのですけど「俺はあの映画を応援した」と言える証明として、クレジットにお名前を入れますよ(注:税込み1万800円以上の支援者)、支援者に対しては60回以上のメールマガジンを出して「いま映画制作はこんな状況です」と報告し、共有している。これも言葉は悪いけれど“共犯”意識を持ってもらいたくて。

パイロットフィルムを待たずに資金調達できた

Y:そして、2015年の7月に5分間のパイロットフィルムが完成するわけですが、製作委員会はその前、6月に結成されていますよね。これは?

真木:クラウドファンディングの反響を見て、朝日新聞社が、出資に手を上げてくれました。その段階で出資に関してはあんまり心配しなくていいかなと思いました。ですので、製作正式決定という記者会見を広島で行いました。

Y:では、パイロットフィルムを製作するための手段のクラウドファンディングで、ある意味、資金調達ができてしまったんですね。しかし、3374人は大変な数ですが、映画のヒットを予感させるには少ないような印象もあります。出資側は、人数よりも金額を評価したのでしょうか。あるいは、この人数でも出資を促すには十分だったのでしょうか。

真木:人数が多いか少ないかは難しい判断です。しかし、ひとりひとりの熱量は凄かった。大応援団をバックにつけたという印象はありました。

Y:クラウドファンディングの成功はどこに理由があると思われますか。

真木:プロデューサーとしての感覚なんだけど、3374人が約4000万円ものお金を出してくださったというのは、本当に不思議なんです。もちろん、支援者は作家や作品に恋をして、一生懸命応援してくださるわけですが、失礼な物言いを許して頂きたいんですけど、だけど、こうのさんファンだけでも、片渕監督のファンだけでも、これだけの人数、金額には届かないと思うんです。当時は、原作も各巻それぞれ数万部で、片渕監督も一般には無名ですから。どう考えても何でこんなに跳ねたのかわからない。

真木:だけど、最近思うのは、感覚的な答えなんですけれど、常識や物差しだとか、トラックレコードだとか、何らかの方程式や枠によって、ほとんどのエンタメ作品が製造されているじゃないですか。日本に限らず、世界中、安全パイであることが最優先で。金融商品ですからね。より確実なリターンを期待されればそうなる。そうでないものは、「冒険」だと捉えられてしまう。

 全てが安全パイだとは言いません。でも、投資家の目を意識すれば、冒険がだんだん少なくなっていく。つまり、作品から作家性が乏しくなっていく。それを観客は心の底で感じていたんじゃないかな。送り手が観客無視になっている。これはメーカーも、出版もそうですよね。

Y:はい…。

真木:ということなんじゃないのかと、映画が支持されたと思えた今そう感じます。映画のプロの目利きより、3374人のほうが正しかった。

 片渕監督が何年も掛けてほとんど独力、いや、監督補と二人三脚で作ってきた映画が、クラウドファンディングで公開への資金の足がかりを得て、映画ができて、だけど宣伝費も公開規模も小さい。それでも、公開されるや劇場が満員で立ち見になる。見てくれた観客がSNSで「ねえねえ、いい映画があるよ」と広げてくれて、公開2週目でさらにお客さんが増えている。1週目より2週目の興行収入が伸びるって、あまりない例です。数えるほどですよ。それを支えたのは、デジタル、アナログ含めてのクチコミですよ。テレビでは、NHKで大きく取りあげていただきました。


©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
 作家性の強い映画を作りたいクリエイターはいっぱいいる。でも、場がない。お金もかかるし、アニメ映画はひとりではできません。億単位の資金と数年の時間を、ビジネスサイドが支えないといけない産業です。その割にはクリエイティブ、作家性が大きいという実態があります。そこを削って「回収」を優先してきた。こういう、アニメの映画のヒットの常識がひとつも入っていない作品なのに支持されていることが、「こういう映画を作ってもいいんだね」という、業界内外へのメッセージになると、とてもいいと思います。

前作「マイマイ新子」から学んだこと

Y:クラウドファンディングの出資者の方に、なにか傾向は見えますか。

真木:当然ですが、原作のファン、片渕監督のファンが多いです。やっぱり男性が多かったし、これもトークショーで話したのですが、47都道府県全部に出資者がいました。東京が一番多く、次が神奈川県、その次が広島県です。映画館がない地域からも出資してくれた方がいました。

Y:ああ…。ところで、製作委員会ができてから完成までが1年3カ月ですね。ずいぶん短くないですか。

真木:それは、そこまでの3年をかけて、片渕監督が丹念な調査を経て、絵コンテなどを完成させていたからです。

Y:なるほど。

真木:丸山さんとの長い付き合いもあるんだけど、とにかく、制作できるかどうかわからない映画にそこまでやる監督に惚れた。もちろん、前の作品がすばらしかったこともあります。でも、すばらしいけれど赤字だった。(そうなると)みんなが(次の作品に対して)引くじゃないですか。「いい映画だけど当たらないよね」と。

Y:えっ、前の作品というと「マイマイ新子と千年の魔法」のことですよね。興行収入、そんなに振るわなかったのですか。

真木:もしかして「マイマイ」、見ていますか。

Y:公開されてすぐ、阿佐ヶ谷のミニシアター「ラピュタ阿佐ヶ谷」で。そういえばこれも、アニメ好きのライターさんに「絶対見ろ」と言われて行ったんでした。ぎゅうぎゅうの満員でしたが。

真木 興行収入は4000万〜5000万円じゃないでしょうか。ラピュタ阿佐ヶ谷はすてきな劇場ですが、小さいですからね…。

Y:それでは、前作はビジネスとしては非常に厳しかったんですね。

真木 先ほどのクチコミは、どんな映画でも機能します。ただし爆発力は、メディアがバックアップしないと得にくいです。大手メディアがガンガン騒いで、スポット広告を打って、という事ですね。でもそれには莫大なコストがかかります。従来の「常識」を満たす映画しかやってもらえない。今回のヒットで分かるとおり、こういった(常識外れの)映画にもニーズはあるんですね。だけど、やってみないと最終的には分からない。

結局、勝算はあったのか?

Y:事前に判断はできない、と。うーん、これだけお聞きしても、実のところ真木さんに、この映画についてのビジネス上の成算、勝算があったのかどうか、まだ分からないんですが、実際のところどうだったんでしょう。

真木:勝算は…なかった!

Y:うわっ(笑)。

真木:というとヘンだけど、分からない。「やるだけのことをやれば、なにか道はあるだろう」という程度。

 オリンピックの選手でも、相撲でもよく言う台詞ですけど、自分を信じるだけ。「これだけ練習したんだから」と、あれと一緒じゃないですかね。ショービジネス、映像ビジネスには鉄板はないから。どうしたって「当たると分かっていた」といったらウソになりますよ。当たってから「俺は当たると思っていた」と言うのと同じ。

Y:揚げ足取りになりますけれど、これまでの片渕監督の作品のプロデュースに何か、「やっていないこと」があったんでしょうか。

真木:うーん、参加するときに、あんまりそういうことは意識はしていなかったけれど、これまで、どういうことをやっていたのかは分かりますよね。普通のことを一生懸命やってこられた。でも、それだけではお客さんに届かない、ということは分かった。

 お客さんが見て、僕らが見て、「これはダメだ」だったら仕方ない。でも、「こんないいものを作ったのに人が入らないのは、プロモーションにやっていないことがあるんだろう」と、むしろそう思った。「まだまだやりようはある。なにをやらなければいけないのかは分からないけれど」というのが、参加を決めたときの正直な気持ちだと思います。その「なにか」の一つとして、今回は、クラウドファンディングがあったということじゃないでしょうか。

 もちろん、前作から世の中が変化していることもあるし、片渕監督がものすごく進化していることもある。でも、今回うまくいっている理由はそれだけじゃない。そして、彼の魅力を論理的に言葉で伝えるのは、僕じゃなくてファンの方、あるいは評論家の仕事だと思います。

Y:それは分かります。言葉にするのが本当に難しい。

言葉にしにくいから、必死で伝えたくなるのかもしれない

真木:でしょう? 僕も、意図的にどこかを切り出して言葉にして打ち出すことが結局できませんでした。片渕の映画は「見てナンボ」の部分が大きい。そして、人によって泣くところが違う。パターンで泣かせるんじゃないんですよね。言葉にできない「匂い」があるというか。そして、見終わったときの気持ちが後々まで残って、何かの拍子に思い出してぐっとくる、ある意味重たい映画。人生に影響を受けてしまいそうな映画だと思います。

Y:見ないと分からないから言葉にしたくなるのかもしれません。

真木:そう、見た人はそのなにかを、一行でもいいからと、誰かに必死に伝えようとするんでしょうね。プロデューサーだから複雑な気持ちも一杯あるので、一観客として見たらこの映画はどうだったんだろう。それが分からないのがちょっと残念ですね。

 この映画で最初に完成したのは中島本町のシーンなんです。主人公のすずさんがお使いに行ってキャラメル買って、という。なぜここか、というと、この場所は原爆で失われた街で、現在は平和記念公園になっているところなんです。片渕監督はこの場所を知っているお爺さんお婆さんにさんざんインタビューして話を聞いたんですね。で、再現した街を映画で見てほしいから、いの一番にここを、と監督は考えたんですよ。実際には、完成を待たずにお亡くなりになった方もいましたが…そして、そこがパイロット版にもなったわけです。

Y:なるほど…。ところで、もし、片渕監督以外だったら、「この世界の…」をプロデュースしましたか。

真木:えっ、うーん…他の監督だったら、別の「売れそうな」原作にしたら、と言ったでしょうね。ジェンコは、この作品だけやっているわけじゃないから、常識に従った判断を下すことももちろんある。でも、全部そうするのかというと、これはそうしなかった一本。

Y:結局、主幹事を引き受けたのは、ビジネス、勝算云々というより、真木さんのロマン、ということでしょうか。

真木:まずは片渕さんのロマンでしょう。そういうところはある。ありますね。片渕を男にしたい。興行収入も二桁行きたい。そうすれば次の作品につなげることができる。プロデューサーにもロマンがあるけれど、監督のロマンを実現することが仕事です。

Y:そういえばお聞きするのを忘れるところでした。興収の目標はいかがですか。

真木:現状(公開10日目)だと5とか6(億円)とかですが、3週目がまた前週を上回るようになれば(編注:取材後、上回りました)二桁も見えてきます。上映館も63館から82館に増えてきたし、東京以外にも拡大します。ただ、クチコミは数字につながるまでにやはり時間がかかるんです。

Y:あっ、もうひとつ最後に。のん(本名:能年玲奈)さんの起用は真木さんの仕掛けた「勝算」のひとつだったんでしょうか?

真木:いえ、キャスティングは片渕監督のアイデアです。話題作りかどうかは、映画を見れば一目瞭然でしょう? 片渕監督の力を持ってしても、彼女の声がなければ、この映画はこうはいかなかった。それだけが事実です。


©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
参考にさせていただいた記事(順不同)
●WEBアニメスタイル 「1300日の記録」

●おたぽる なぜ“クラウドファンディング”を選んだのか? 『この世界の片隅に』片渕須直監督ロングインタビュー【前編】

●おたぽる 「アニメだから観ない」という枠をどう突破するか――『この世界の片隅に』片渕須直監督ロングインタビュー【後編】

●シネマズ 「この世界の片隅に」は、こうして作られた。「みんなで作る映画」を目指した、片渕須直監督の情熱

●忘れられた庭の静かな片隅 【レポート】『この世界の片隅に』公開記念!ネタバレ爆発とことんトーク!@新宿ロフトプラスワン(2016/11/20)

●マンバ通信 「この世界の片隅に」監督・片渕須直インタビュー 調べるだけではだめだ、体験しないと!

●gigazine 「『世界』を描かないと『片隅』が見えてこない」、映画「この世界の片隅に」片渕須直監督インタビュー

●Makuake

●シネマトゥデイ アニメ『この世界の片隅に』小規模公開ながら10位初登場!拍手喝さいの劇場も

●シネマトゥデイ のん『この世界の片隅に』キャラメル味の結婚に思うこと

●ウィキペディア この世界の片隅に

このコラムについて

(Yが)キーパーソンに聞く
日経ビジネスの変わり種デスクYが、本人的に話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎月1人、興味深いキーパーソンに出会えます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/284031/120100018  

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コメント
 
1. 2016年12月02日 18:55:24 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[3355]

>スティグリッツ 日本経済再生への処方箋
>炭素税導入に伴う大規模投資が生む効果の方が必ず上回る

一体、誰が、少子高齢化と安全保障リスクが高い衰退国家に投資するんだw

>永久債で公的債務を置き換え 財政ファイナンス

今さら何を言ってるんだ?

QE=財政ファイナンスは、既にやりすぎのレベルと批判され

その反動でYCCになったのだが?

>消費税率の引き下げ、企業の投資に対する税控除額の引き上げ、低・中所得世帯への支援策の拡大、技術と教育への投資の拡大

つまり、構造改革は先延ばしして、さらに、これまでのアベノミクスを強化しろということだなw

ま、こういう人がいると安倍政権にとっては追い風ではあるねw



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