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トヨタ中古車が炙り出したテロ資金ネットワーク(前編)
1台の中古車が行き着いた先は世界的なマネーロンダリングの玄関口
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米ジョージア州コロンバス在住のアニー・マレーさんのトヨタが行き着いた先は西アフリカ・ベナンにある世界的な資金洗浄ネットワークの玄関口だった PHOTO: YANICK FOLLY FOR THE WALL STREET JOURNAL
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CHRISTOPHER S. STEWART, ROB BARRY AND MARK MAREMONT
2016 年 12 月 21 日 12:23 JST
米ジョージア州コロンバス在住のアニー・マレーさんには、自分が所有していたシャンパン色の2009年型トヨタ・ランドクルーザーが、一体どのようにして西アフリカの野ざらしの駐車場にたどり着いたのか全く見当がつかなかった。
• トヨタ中古車が炙り出したテロ資金ネットワーク(後編)
マレーさんは毎週その車を運転し、教会に通っていた。しかし昨年の冬、経済状況の悪化に不運が重なり、ローン滞納で車を引き上げられてしまった。マレーさんのトヨタが行き着いた先はベナンのとある自動車売り場だった。そこは、世界的なマネーロンダリング(資金洗浄)ネットワークの玄関口。イランが支援するイスラム教シーア派武装組織ヒズボラの資金源になっていると米当局が疑っている場所だ。
ランドクルーザーは、お決まりの米・ベナン貿易ルートをたどり5700マイル(約9170キロ)以上を移動した。それは米連邦当局が5年前にテロ資金に関わる事件で一掃したと考えていたルートだった。
米当局は当時、海外の自動車販売で得た巨額の利益に南米の麻薬カルテルから得た利益を紛れ込ませ、マネーロンダリングに協力しているレバノンの銀行に預けているのではとの疑いを持っていた。
連邦捜査官の話やニューヨークの連邦地検が2011年に提起した訴訟内容によると、ヒズボラがその取引の手数料として分け前を受け取り、一部は米国の自動車販売業者に返金され、自動車購入に使用されていた。
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ベナンの広大な中古車置き場で売られるアニー・マレーさんが所有していたトヨタ・ランドクルーザーPHOTO: NO CREDIT AVAILABLE
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は米・ベナン間の中古車貿易を調査し、2011年の訴訟で特定された米自動車販売業者の一部が今も中古車購入を続けており、買い取った車は以前と同じ業者によって海外に輸送されていることを突き止めた。
ベナンでは、マレーさんのトヨタ車をはじめとする何百台もの自動車が、ある男が所有する駐車場に集められていた。米当局はこの男が中古車ネットワークの関係者とみている。
この記事で言及されている自動車販売業者と輸送業者は、テロ組織との関係を含め違法行為を否定した。しかし、現・元当局者によると、ヒズボラの中古車ネットワークは今も存在し、世界各地で行われる作戦の資金源となっている。
米連邦麻薬取締局(DEA)の報道官は「世界的な麻薬取引業者とテロ組織のこの『政略結婚』は米国や同盟国に著しい脅威を与え続けている」と述べた。
ヒズボラは社会福祉サービスも提供しているレバノンの政治組織。1980年代の米国人を標的にした数々のテロの犯人ともされている。ヒズボラは1995年に米政府にテロ組織に指定されており、米国民がヒズボラとビジネスを行うのは違法だ。一方、ヒズボラは長年、犯罪との関係を否定している。
米自動車販売業者はいずれもこの民事訴訟で不正行為を認めなかった。しかし、利益の一部を没収されたり、商売をやめたりした者もいた。2012年と13年に政府と合意した和解内容によると、消息不明の1人を除き全員が顧客を調査し、ヒズボラと関係があるとみられる人物とは二度とビジネスを行わないことに同意した。
原告の政府側の申し立てによれば、2007〜11年にネットワークを通じて取引された資金は3億ドル(約352億円)を超える。米自動車販売業者への取材によると、取引は実入りがよく、月に数万ドル稼ぐこともあった。その多くがレバノンからの移民で、自動車業での経験がほとんど、または全くない者もいた。1人は不動産業に、もう1人はカーペットを敷く仕事に携わっていた。
米国からベナンへの乗用車輸出額
https://si.wsj.net/public/resources/images/P1-BZ592A_TERRC_9U_20161219105407.jpg
2011年の訴訟が和解したあとも、十数人が連絡を取り合っていた。一部はオークションで顔を合わせていたと話す。その他はフェイスブックでつながっており、自分の車や旅行の写真を投稿していた。中には、ベナンへの最近の旅行で撮ったビーチチェアに腰掛ける一団の写真もあった。
会社や輸送記録のほか十数人に取材した結果によれば、少なくとも10人の自動車販売業者が捜査後も西アフリカへの自動車の輸出を続けていた。
一方、海上輸送情報会社ピアーズから得た輸出記録を確認したところ、2012年以降に米国からベナンに自動車を輸出した輸送大手10社のうち5社は政府の訴訟で名前が挙がった人物や企業と関係があるか、米国がヒズボラを相手取って起こした他の訴訟の対象とつながりがあった。記録によると、その期間にベナンに輸出された自動車約30万台のうち少なくとも3分の1をそれら5社が占めていた。
5社のうちの1社はミシガン州デトロイトを拠点とするグローバル・シッピング・サービシーズだ。2011年の政府の申し立てによれば、同社はヒズボラと関係のある複数の自動車販売業者から900万ドル以上を受け取った。会社や輸送記録によると、同社のオーナーであるアリ・カイン氏は会社を解散し、社名をスペシャライズド・オーバーシーズ・シッピングに変えて同じ場所で自動車輸出業を続けた。ピアーズのデータによると、2012年以降にスペシャライズドがベナンに輸送した自動車は2万台を超える。
カイン氏はヒズボラとの関係を否定し、自分は仲介役であり、自動車が最終的にどこに行くかは一切知らないと話した。同氏は「私は旅行代理店のようなものだ」とし、「FBI(連邦捜査局)やCIA(中央情報局)のように行動し、世界中の捜査対象の悪党全員を知っていなければならないというのか」と述べた。
米国からの中古車の輸出は合法であり、ベナンの市場は活況を呈している。ベナンに輸出された車のほとんどは、後に隣国ナイジェリアに密輸されている。ナイジェリアは一部中古車の輸入を禁じており、他の中古車には高い関税を課している。
米国の輸出データによると、昨年のベナンへの乗用車の輸出総額は4億3400万ドルと2005年の4700万ドルから大幅に増えている。石油に依存するアフリカ諸国の経済問題やドル高が原因で自動車輸出はこのところ落ち込んでいる。しかし、最近の一連の事件は脅威が続いていることを物語っている。
フロリダ州タンパで昨年、連邦当局が中古車販売業者のハンジャル・ダンダチェ容疑者を起訴した。録音された政府の情報提供者との会話の中で、ダンダチェ容疑者はヒズボラとの関係を自慢げに話し、その後、中古車の輸出を通じて15万ドルを資金洗浄することに同意したとされている。
ダンダチェ容疑者の弁護士は、容疑者は取引を進めるためにマネーロンダーと関係があるとうそをついただけで、ヒズボラとは一切関係がなかったと説明した。
ダンダチェ容疑者はマネーロンダリングの罪状を認め現在は服役中。事件に詳しい関係者によると、捜査当局はダンダチェ受刑者がフロリダの自動車輸出業者の一団と関係があり、何カ月もかけてベナンの複数の銀行から1500万ドルを受け取ったとみている。
昨年10月にはジョージア州アトランタで、ヒズボラの工作員とされる人物が武器取引とマネーロンダリングの疑いで逮捕された。同人物は、ベナンの自動車貿易業界に仲間がおり、15%の手数料でマネーロンダリングを請け負っていると話していた。この事件について司法省はコメントを控えた。
政府の訴訟に携わった元国務省スタッフのデービッド・アッシャー氏は「われわれは米国を介した大掛かりな策謀を許し、相当な努力を払ってきたにもかかわらず、それを止めることができずにいる」とし、「それらは全てありふれた日常に潜んでいる」と指摘した。
※この記事は後編に続きます>>
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http://jp.wsj.com/articles/SB11484601320931144569304582508203315914694
トヨタ中古車が炙り出したテロ資金ネットワーク(後編)
米国で回収されたトヨタ車が、いかにしてベナンにたどり着いたのか
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CHRISTOPHER S. STEWART, ROB BARRY AND MARK MAREMONT
2016 年 12 月 21 日 17:07 JST
マレーさん(63)と夫のトムさんは2009年にランドクルーザーを購入した。数カ月後、トムさんが死去し、自宅で保育サービス業を営むマレーさんはローンの返済に窮するようになった。そこで友人に車を貸し、毎月の費用を賄ってもらうことにした。
• トヨタ車が炙り出したテロ資金網(前編)
だが、友人からの支払いが途絶え、今年初めに銀行に車を回収されてしまったという。「アフリカについては本で読んだり、テレビで見たりした以上のことは何も知らない」。マレーさんは自分の車がどこに行き着いたかを聞いたとき、こう話した。
ランドクルーザーはオハイオ州シンシナティの自動車販売業者KSユーズド・オート・セールスに競り落とされた。同社のマネジャー、ハレド・サバー氏によると、買い手から電信送金を受け、ベナンへの輸送を手配した。
サバー氏は2011年の訴訟で名前は挙がっておらず、輸送を処理する仲介人についても、車がアフリカ到着後にどこへ行くかについても何も知らないと話した。同氏は「彼らが私の口座に送金してくれる限りは、取引をする。私が知っているのはそれだけだ」とし、「私がやっていることは全て合法だ。私は誰よりも正直だ」と述べた。
輸送記録によると、ランドクルーザーは今春、フロリダ州ジャクソンビルでベナンに向かう船に積まれた。輸送に関わった企業のうちの2社は2011年の政府の訴訟にも関係していた。
記録によると、2社のうちの1社はデトロイトに拠点を置くスペシャライズド・オーバーシーズ・シッピング。同社のオーナーは、2011年の訴訟でヒズボラに関連した資金移動で数百万ドルを受け取ったとされていた。
また、もう1社はブルー・アライアンス・シッピング。同社のために働いていたコネティカット州の自動車販売業者2人は、政府の訴訟でヒズボラに関連した口座から3600万ドル以上を受け取り、海外に車を輸出していた疑いがかけられていた。
ブルー・アライアンスのさらにもう1人の従業員も、米当局がマネーロンダリングネットワークで極めて重要な役割を果たしていたとみている人物の下で以前働いていた。その人物とは輸送業を営むレバノン人のメルヒ・アリ・アブ・メルヒ氏。同氏が経営する複数の会社が、ベナンへの資金移動と自動車輸送の大部分を管理していた疑いが持たれていた。
メルヒ氏の会社の元従業員3人によると、同氏は2010年後半、米市場から突然手を引いた。ジャクソンビルにあった同氏の会社は別の輸送会社と合併。後にブルー・アライアンスを共同創設し、元の顧客の多くの仕事を続けていたという。
メルヒ氏は昨年、ヒズボラに関連した「マネーロンダリング活動と広範な麻薬取引」をほう助したとして財務省のブラックリストに載せられた。リストには同氏の家族や関連会社も含まれており、その中にはベナンの自動車輸送会社もある。
この件について、レバノンのメルヒ氏の会社にコメントを求めたところ、息子のアテフ・メルヒ・アブ・メルヒ氏が応じた。アテフ氏も父親と共にブラックリストに載せられている。同氏は自分たちはテロ組織と仕事はしておらず、米政府のブラックリスト入りについても抗議していると説明。「ヒズボラがしたいことをするのに、私たちは必要ないだろう」と述べた。
コトヌーの自動車置き場
マレーさんのトヨタ車は6月にはベナンに到着し、最終的にコトヌー近くの広大な自動車置き場に運ばれた。車には、波と舵輪の取っ手をモチーフにしたトレーディング・アフリカ・グループ社のロゴが貼られていた。
30エーカー近くあるその場所は、レバノン人実業家のカセム・ミーティ氏が管理していた。同氏は、ヒズボラの工作員にマネーロンダリングと金融サービスを提供したとして、2013年に米財務省が名指しした人物だ。米企業はそのような人物とは取引を控えるべきであることを意味する。
財務省当局者は当時、ミーティ氏と同氏の会社を公然と名指ししたのは、ヒズボラと麻薬取引を支援する「手の込んだ多国籍のマネーロンダリング組織」を壊滅させることが目的だと説明した。しかし、ミーティ氏は米国のテロ関係者のブラックリストには含まれていない。米企業はリストにある人物とは取引を禁じられている。
財務省によると、ミーティ氏と同氏の会社は2008年から11年初めにかけて、少なくとも2500万ドルを米自動車販売業者と輸出業者に送金した。その後2011年から12年にかけて、政府の監視をかわすため異なる会社を使い、350万ドル以上を米自動車販売業者に支払った。
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ヒズボラのマネーロンダリングの仕組み
ミーティ氏に取材したところ、財務省の調査結果もヒズボラとの関係も否定した。スペシャライズド・オーバーシーズ・シッピングとブルー・アライアンスについては、両社を知っているが、取引はしていないと述べた。
また、マレーさんのトヨタ車がどのようにして同氏の駐車場にたどり着いたのかは分からないと話した。米国の輸出書類には同氏の名前は見当たらないが、ベナンの移送記録によると、車は港に到着してすぐに同氏の駐車場に運ばれた。
ミーティ氏は「駐車場を使いたいという人に対し、車がどこから出荷されかや誰が出荷したかはいちいち聞かない」と述べた。
コネティカット州の自動車販売業者2人のうちの1人であるウィリアム・アズィーディン氏は、自分はブルー・アライアンスの単なる従業員の1人にすぎず、どのような経緯でトヨタ車がミーティ氏の駐車場に行き着いたかは分からないと話した。ブルー・アライアンスは既に廃業している。
もう1人のコネティカット州の自動車販売業者であるハッサン・ハマディ氏も詳しいことは知らないと述べたが、「FBI(連邦捜査局)が私の助けを必要としているなら、その準備はできている」と調査に協力する姿勢を示した。
最近までランドクルーザーはうっすらとほこりをかぶった状態でミーティ氏の駐車場に置かれていた。どの車もフロントガラスに同氏の会社であるトレーディング・アフリカ・グループのロゴが入ったステッカーが貼られていた。
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