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浜田宏一内閣官房参与は本当に「変節」したのか? 流布される「金融政策無効論」への反論(現代ビジネス)
http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/105.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 12 月 22 日 11:10:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

浜田宏一内閣官房参与は本当に「変節」したのか? 流布される「金融政策無効論」への反論
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50548
2016.12.22 安達 誠司 エコノミスト 現代ビジネス


■数秒で理解できる知識に価値はない

筆者は、他の論者が何を言っているかとか、最近の経済に関する論争には全く関心がない。だが、いくつかの大手メディアが浜田宏一内閣官房参与(イェール大学名誉教授)の「変節」を大々的に取り上げているのを偶然みかけて大きな違和感を持った。

米国在住の浜田参与はだいたい2〜3ヵ月に1回程度のペースで来日されているが、筆者は、ほぼ毎回、何らかの機会をみつけて色々な議論をさせていただいている。とはいっても、筆者が仕事としている現実の経済の話というよりも、むしろ、筆者が必ずしも明るくはない理論的な話をすることの方が多く勉強になる。

浜田参与と同年代に活躍された経済学者の多くは既に引退されているが、浜田参与は、今でも積極的にセミナーに参加されたり、最新の経済学の論文などをフォローされており、その探究心の深さは本当に敬服に値する。本題とはずれるが、最近では、収益率の分布が正規分布に従わない場合の資産価格のモデリングについて、経済物理学の発展などを絡めて色々と教えていただいた。

この問題も非常に興味深いのだが、浜田参与が最近強く関心を寄せられているのが、「FTPL」と呼ばれる理論である。

「FTPL」とは、「物価の財政理論(Fiscal Theory of Price Level)」の略称である。アメリカでは、スタンフォード大学のジョン・コクラン教授、インディアナ大学のエリック・リーパー教授、プリンストン大学のクリストファー・シムズ教授、マイケル・ウッドフォード教授らが主な研究者である。

この理論の内容を一言でいってしまえば、「財政政策が物価を決める」というものである。それゆえ、「浜田参与がFTPLに傾倒している」となると、現状のリフレ政策に不満を抱く声の大きな論者が「浜田参与はリフレ理論を放棄した」とか、「日銀の金融政策は崩壊した」などと脊髄反射して、大騒ぎしてしまうのであろう。

このように、FTPLを「財政政策が物価を決める理論」と数秒で理解できる程度に単純化してしまうと、まるで「金融政策が全く効かない」という「金融政策無効論」のような錯覚に陥る。

今の日本のマスメディアは、難解な経済や政治の話題を極端に単純化して素人にも数秒でわかるように説明することに大きな価値を置いているが、数秒で理解できるような知識にはほとんど価値はないだろう。このFTPLの話も同様ではなかろうか。

また、FTPLは、2000年代初めに話題になったことがあり、この頃に「財政政策が物価を決める理論」と紹介されたが、その後は話題にならなくなった。最近のFTPLの議論はその頃とは大きく異なっている側面もあるが、日本での議論はこの初期段階の議論に基づいていることが多く、そこも問題だろう。

浜田参与は、クリストファー・シムズ教授に実際にFTPLについての話を伺い、感銘を受けられたということだが、理論家ではない筆者にとって、シムズ教授の論文は難解でよく理解できなかった。そこで、以下では、リーパー教授の「FTPL入門」的な論文とコクラン教授の論文をもとに、筆者なりの見解を述べたいと思う。

■広義の財政政策

まず、FTPLでいうところの「財政政策」とは、「広義の財政政策」のことではないかと考える。

「広義の財政政策」とは、通常の財政支出や増減税といった政府が行う財政政策に加え、中央銀行による国債の購入、及びそれを通じた長期金利の操作を含んでいると思われる。要するに、経済政策を、政府(財務省)と中央銀行が一体となった「統合政府」で考えるというアプローチである。

これまでのマクロ経済学では、「経済政策」といえば専ら「金融政策(「テイラールール」という政策金利の操作)」のことを示していた。

一方、財政政策は、伝統的に、一時的な財政赤字や政府債務の存在は許容したとしても、それは、将来の財政黒字によって返済され、将来を含む全期間で考えると、財政収支の合計はゼロになるという制約条件(「リカーディアン」の世界)がつけられていた。

すなわち、財政赤字とは、将来の税収増を見越した「需要の先食い」であるとみなされ、当然、自然増収が見込めないのであれば、将来のいずれかの時点で増税が実施されることによって財政収支はゼロになるということが前提条件となっていたと思われる。

FTPLは、この制約条件がはずされた場合(すなわち、「非リカーディアン」の世界)、マクロ経済の状況(特に物価水準)はどうなるのか、という議論である。従って、筆者は、「(広義の)財政政策のレジームが転換する」という点が重要な意味を持つように思える。逆にいえば、「財政政策のレジーム」が転換しない(均衡財政主義)状態をFTPLで考えても意味はない。

そこで、FTPLの話に戻るが、ごく簡単にいえば、FTPLでは、将来時点での増税によって財政が均衡するという条件をはずした場合、財政は、物価水準が上昇することによってもバランスするという考え方をとる。

すなわち、今後、政府が、将来の増税によって現時点の財政赤字を返済することにコミットせず財政拡大を実施したと仮定した場合、財政を均衡させるように、瞬時に物価水準の上昇がもたらされるという話である。

■財政支出の拡大は総需要を刺激する

ただし、話はそこで終わらない。ここまでの議論は、「物価が瞬時に変動する」と仮定した場合の話である。

一般的に企業による商品やサービスの価格設定は、それほど頻繁に行われない。せいぜい年1〜2回といった頻度が大半であろう。かなり頻繁に価格設定が変わるのは生鮮食品などであろうが、経済のサービス化が進むに従って、生鮮食品など、市況が強く影響する「コモディティ物」の消費支出全体に占める割合は低下してきている。そのため、物価の動きは極めて緩慢であることが知られている(このような価格変動の特徴を「Sticky Price」という)。

次に、物価が「Sticky」である場合に、政府が前述のような「規律づけができていない(将来の増税を担保できない規模の)」財政支出拡大を実施したらどうなるだろうか。

前述のように、価格が瞬時に変動する場合には、財政支出の拡大が直ちに物価上昇となって現れる。だが、コクラン教授らの論文によれば、価格が「Sticky」である場合、財政支出の拡大は、@総需要の拡大、もしくは、A実質金利の低下、という形で経済に波及することがある、という点だ。つまり、財政支出の拡大は総需要を刺激することになる。

興味深いのは、「実質金利の低下」である。財政拡大で、名目金利が上昇する可能性があるが、それを上回る予想インフレ率の上昇が観察されれば、実質金利は低下する可能性が高い。

この実質金利の低下も総需要拡大(設備投資や住宅投資、耐久消費財需要の拡大)をもたらすのは自明であろう。

もう少し詳しく理屈を述べると、FTPLの基本的な均衡式では、「実質政府債務(国債発行残高を物価水準で割ったもの)」が将来の「実質プライマリー財政黒字(税収から国債の償還や利払い費を除く財政支出を控除したもの)」の「現在割引価値(将来の「実質プライマリー財政黒字」を実質金利で割り引いたもの)」に等しくなる。

この場合、前述の財政支出拡大が国債増発で賄われた場合、それは、実質政府債務の増加となる。

一方、物価水準は「Sticky」なので短期的には変動しない。これが「将来の実質プライマリー財政黒字の現在割引価値の合計値」と等しくなるためには、「実質プライマリー財政黒字」が増加するか、現在価値に割り引く際の割引(実質長期金利)率が低下するしかない(もしくは両方)。

前述のように、総需要が拡大した場合、税収増が見込めるため、「実質プライマリー財政黒字」は増加するだろう。

一方、実質金利の低下は、予想インフレ率の動きに依存しているところが大きい。ここに金融政策が登場する余地が出てくる。すなわち、中央銀行の国債購入によって、実質金利を低下させることによっても、均衡式を均衡させることが可能となる。

さらにコクランの論文では、「家計が現金を保有することに価値を見い出す」という条件を加えると、中央銀行が民間部門からなんらかの資産を購入し、代わりに現金(マネタリーベース)の供給を増やすという政策(すなわち「量的緩和政策」)は、消費拡大につながるため、税収増からプライマリーバランスの黒字化に寄与する点にも言及している。

以上より、価格が硬直的な世界を考えると、金融(緩和)政策も財政(拡張)政策も、ともに、まずは短期的な需要の拡大に波及すると考えられる。

■「宗旨替え」以前の問題

一方、インフレ率への影響は価格がフレキシブルに変動する場合ほど単純ではない。

確かに先ほどの実質債務の均衡式だけをみれば、金融緩和は物価水準を押し下げる方向に働くことになる。だが、経済全体の体系を考えると、インフレ率は、フィリップス曲線で決まるため、実体経済の需給ギャップのマイナス幅の縮小はインフレ率の上昇に寄与する。そして、金融緩和も財政拡張もインフレ率上昇にも寄与することになる。

さらにいえば、金融政策の物価、及びインフレ率への影響は、インフレ率に対する感応度(インフレ率の変動に対し、どの程度、積極的に動くか)にも大きく依存する。FTPLの枠組みでは、中央銀行がインフレ率の変動に対し、より積極的(フレキシブル)に動けば動くほど、政策は「裏目」に出るという結果になっている。

そのため、コクラン氏やリーパー氏の論文では、財政政策が非リカーディアン的である場合は、「受動的な金融政策」がよいという結論になっている。そして、「受動的な金融政策」の例として「イールドカーブコントロール」を指摘している点も非常に興味深い。

以上は、FTPLについての比較的新しい論文では「序盤」の話に過ぎない。例えば、金融政策でいえば、「インフレ目標政策」や「フォワードガイダンス」などの将来の経済状況にコミットするような政策を考慮した場合にインフレ率がどのように推移していくかという点は、機会をあらためて言及したい。

本場のアメリカでも、研究は続いている模様だ。今年4月にシカゴ大学でコンファレンスが開催されたが(「Next Step for the Fiscal Theory of Price Level」)、公表されているプレゼンテーション資料や関連論文を見る限り、十分な実証分析がなされているとは言い難い状況である。

従って、FTPLは、これから新しいインプリケーションが得られる可能性がある研究者にとっては大変興味深い研究対象になりうるという話であろう。

また、そもそも、消費税率の引き上げや各種控除の見直しなどが実施され、「2020年までにプライマリーバランスを黒字化する」という目標が生きている日本の現状を「非リカーディアン」的な状況とみなすのは無理がある。そのため、FTPLから、これまでの金融政策の無効性が証明された、などと言われても仕方がない。「宗旨替え」以前の問題であろう。

 

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コメント
 
1. 中川隆[5586] koaQ7Jey 2016年12月22日 13:12:31 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[6023]

浜田・黒田の異次元緩和はアメリカに資金提供するために行われた

安倍「官製相場」の正体。国民生活が疲弊し対米従属は加速する=吉田繁治 2016年10月20日
http://www.mag2.com/p/money/24781

2012年12月に発足した安倍内閣はアベノミクスを標榜し、株価上昇をその支持基盤としてきました。あれから約4年、いよいよ「株価政権」の総括検証をすべき時期が来ています。(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)

※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2016年10月19日号を一部抜粋・再構成したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した内容(約5,000文字)もすぐ読めます。

なぜ株価は景気を反映しなくなったのか?官製相場の欺瞞を斬る

安倍首相の「スタートダッシュ」

消費税10%法案を通した野田民主党の自滅により、自民党は2012年12月、3年4ヶ月ぶりに政権に復帰しました。首相自ら「アベノミクス」と呼ぶところの、安倍政権の経済・金融政策の始まりです。

安倍首相は前回の失敗から、「スタートダッシュが肝心」と決めていました。自公政権が確実になった12年10月に明らかになったのは、
◾脱デフレの大きなマネー増発策
◾10年で200兆円の国土強靱化の公共投資

でした。日銀法を改正し、独立権を奪ってでも、マネーを増発させるという強いものだったのです。

【関連】株も不動産も奪われる! 預金封鎖よりも怖い「財産税」の傾向と対策=東条雅彦

国土強靱化は、財政赤字を200兆円分拡大して危険だ、という財務省の反対で消えました。東日本大震災の復興予算として、別途、28兆円の政府支出が必要だったからです。

マネー増発を推進するミッションを持ち、黒田総裁・岩田副総裁体制になった日銀は、異次元緩和(量的・質的金融緩和)を開始します。

量的緩和は、金融機関がもつ国債を買ってマネーを増発する政策です。質的緩和は、日銀が日経平均(株式ETF=上場投信)とREIT(不動産投信)を買いあげて、価格を上げるものです。

日銀による株買い(ETFの購入枠は6兆円/年)、これは普通、中央銀行が禁じられていることです。

恐慌の研究家である前FRB議長のバーナンキは、「日銀がケチッャプを買えば物価上がる」と言っています。あるいはヘリコプターでお金をばらまけばいいとか、ニコリともしないで異常なことを言う。

日銀が増刷した円で店頭商品を買えば、需要の超過になり物価は上がります。車を100万台(3兆円)、住宅を100万戸(30兆円)買ってもいいが、さすがにそれはできない。そこで株を買う。

日銀の株買いは迂回(うかい)して行われた

金融機関は、国債をはじめとする債券と貸付金で預貯金や基金を運用しているので、余分な現金は持ちません。

量的・質的緩和を政策にした日銀が、郵貯、年金基金(GPIF)、かんぽがもつ国債を買う。政府系金融と基金(GPIF)はそこで得た円で、日米の株とドル国債を買う。ワンクッションおいていますが、日銀が直接に日米の株を買い、米国債を買うことと同じです。

日銀は直接買うETF(年6兆円の枠)以外に、迂回路をとり数十兆円の株買いを行ったと言えます。方法はごまかしめいて姑息ですが、マネーの流れとしては露骨です。

日銀は量的・質的緩和として、円を下げ、株を上げ、インフレに誘導する「可能な手段の全部」をとってきたのです。

株価上昇は、株主の資産(東証一部時価総額511兆円 ※16年10月18日時点)を増やします。同時に企業の増資コストを下げます。資産が増えた株主は、資産効果で消費を幾分か増やします(しずくのようにわずかなのでトリクルダウンという)。百貨店で、100万円級の機械式時計が売れたのが、この資産効果です。

株価は理論的には、企業の将来の税引き後の予想純益を、期待金利(リスク率を含む株式益回り:6.6% ※16年10月18日時点)で割ったものと等価です。これが表現するのは、株価は企業の予想純益の結果ということです。

しかし多くの人々には、「株価が上がった→景気がよくなったからだ」と理解されます。下がっていた血圧が輸血で上がったから健康に戻った、と思うような本末転倒ですが、投資家と上場企業は歓迎します。支持率が上がるので、政府与党も喜ぶ。

株価が下落し、支持率も低くなった前回の反省を踏まえた安倍首相は、スタートダッシュで円安の誘導、株価の上昇に躍起になりました。円安の誘導は、輸出を増やし、株価を上げるためでした。

マネーの流れ

ヘッジファンドは保有しているドル国債を日本に売り、得た円で、出遅れていた日本株を買う。そして実は、総資金量が420兆円と日銀よりも巨大な政府系金融(現在名ゆうちょ銀行、かんぽ保険、GPIF:総資金量420兆円)は、日銀に国債を売って得た円で、米国債も買っています。

公的年金の残高139兆円(15年12月)を運用しているGPIFの、15年12月のポートフォリオ(分散投資)は、「円国債38%、国内株23%、外国債券(主は米国債)14%、外国株23%」です。

※日銀がGPIFの国債を買いあげる→GPIFは得た現金で国内株、米国債、米国株を買う→GPIFに米国債を売ったヘッジファンドはそのマネーで日本株を買う

マネー運用には遅滞が許されないので、この迂回路取引がコンピュータの中で、一瞬で起こります。

安倍政権の初年度だった2013年には、外国人(ヘッジファンド)からの15.1兆円もの巨大買い越しがありました。

外国人の売買は、東証一部の年間売買額460兆円のうち320兆円(約70%:16年7月水準)です。国内勢(金融機関と個人投資家)は、1990年のバブル崩壊後の損失の累積で資産を減らしたため売買がとても少ない。国内勢の売買は140兆円です。

他方、多くがオフショア(タックスヘイブン:租税回避地)からであるヘッジファンドの売買が320兆円です。東証はこのヘッジファンドの支配下です。

ヘッジファンドの日本株買いと、円先物売りのマネーの多くは、GPIFにおけるような迂回路をとって日銀が買い続けている、政府系金融の国債の現金化から来ています。

安倍政権前から始まっていた「官製相場」

政治相場(あるいは官製相場)は、14年10月末に発表された「日銀の追加緩和」と「GPIFの運用方針の変更」から始まったように言う人が多い。

しかし、マネーの流れを比較貸借対照表で調べると、安倍政権が始まる前の12年の10月から秘密裏に開始されています。最初は、円安介入のための30兆円の政府系金融マネーでした。

※総資金量420兆円の政府系金融3機関が、日銀に国債を売ったマネーで、米国債を30兆円買った→米国債を売ったヘッジファンドが日本株買い/円の先物売りを行った

安倍政権が確実になる前、12年9月の日経平均の予想PER(加重平均)は、1ドル80円台の円高の中で12倍付近と低かった。米国ダウのPERは15倍と3倍高かった。

上場企業(東証一部2000社)においては、輸出製造業の株価シェアが大きい。円安/ドル高になると、利益が数倍に増えます。このため、円安で日本の株価は上がり、円高で下がる基本性格があります。

通貨の低下は、普通、国力(政治力)と経済力の低下を示します。しかし日本では、ドルでは同じでも円での輸出価格が上がる。このため、上場企業の利益が増える予想がたち、株が買われます。
(注)予想PERは、株価の時価総額を次期予想純益で割った株価/収益倍率であり、株価の高さ、低さを判断するための指標です

PERが15倍なら将来15年分の、未実現の企業純益を株価が含んでいます。16年10月の日経平均の加重平均のPERは、14.3倍付近です。単純平均のPERでは18倍と高い。日経平均は、ユニクロ(ファーストリテイリング)の34倍のような高PER銘柄を含むからです。

2016年10月現在、日経平均は1万7000円付近です。米国ナスダックの予想PER(単純平均)は現在21.9倍で、バブル価格の水準です。他国をあげると、インド18.2倍、英国17倍、米国ダウ16.8倍、上海総合14.4倍、ドイツ13.3倍、ロシア6.8倍です。


円安誘導という名の「米国債買い」を実行

安倍政権誕生の2ヶ月前、1ドル77円(12年9月)だった円は、その2ヶ月前から下がりはじめ、10月に80円、11月に83円、12月には87年円と13%の円安になっています。続く13年1月に92円、2月には93円と下がり、6月には岩盤に見えていた100円も超えたのです。
(注)円安のピークは、15年6月の125.8円です。16年2月のマイナス金利以降は、逆に円高になり16年10月は104円付近です

円安は、世界の外為市場(円の売買が日量120兆円:2016年)での「円売り/ドル買い」が「円買い/ドル売り」を超過することで起きます。なぜ50%(1ドル120円)もの円安になったのか?

ここで、財務省の外貨準備($1.26兆:126兆円:16年10月)は、目立つので使われなかった。かわりに、ゆうちょ銀行、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、かんぽに、推計30兆円の「円売り/ドル買い」を行わせたのです。

前述のように、日銀がゆうちょ、年金基金、かんぽがもつ国債を買い、政府系3機関は、そこで得た円で、円安誘導を目的にしたドル債買いを実行するわけです。

さて、米国政府は、為替介入を行う国を「為替操作国」と強く非難します。しかし、円売り/ドル買いで得たドルで米国債を買うと途端に沈黙します。この理由は何でしょうか?


アメリカ政府の債務は2000兆円

米政府の総債務(自治体と社会保障の債務を含む)は、日本国債の2倍の$20.0兆(2000兆円:16年)に膨らんでいます。米国債も$15兆(1500兆円:同年)に増えています。

財政赤字は毎年、$7000億付近(16年度は$7130億)です。17年には、公的医療費($2.8兆:280兆円:12年)の増加で、赤字は$1兆を超えるでしょう。

米国の人口ピラミッドは、日本の10年遅れです。医療費では診療単価が約2.5倍高く、総額で$2.8兆(280兆円:12年)です。3.2億人の国民の、健康な人を入れた1人あたり年間医療費は$9000(90万円)です。

日本の医療費は、40兆円で1人あたり31万円/年。米国は1人あたりで3倍も多い。米国の医療費は信じられない高さです。盲腸の手術や流産で200万円とか…日本は世界的には医療費は安い。

米国政府は、この高すぎる医療費のため、日本の10年遅れで高齢者が増えるとつぶれます(ほぼ確定でしょう)。

米国は、新規国債のうち50%は、経常収支が黒字の中国と日本に売らねばならない。米国内では50%分しか買い手がない。米国は、海外からマネーを借りる構造を続けています。円でドル国債を買うことは、マネーの流れとしては米国への貸し付けです。

経常収支の赤字国は、感覚では逆ですが、資本収支では黒字になります。資本収支の黒字とは、マネーが流入することであり、現象形は、海外の金融機関が米国債、株、社債、MBS(住宅ローン担保証券)を買って、ドル預金をすることです。

わが国の民間では、国内の運用先がない三菱UFJグループ(総資産281兆円:16年6月)が、米国運用を増やしています。米国経済は、海外資金が大挙して引き揚げるとひとたまりもない。このため、米国はユーロや円より約2ポイントは高い金利を続けねばならない。


米国が利上げしなければならない本当の理由

米国が14年10月に、3回行った量的緩和(QE:$4兆:400兆円)を停止し、2015年12月にFRBが0.25%利上げした本当の理由は、金利が低いままだとドル債が売られ、海外から来たマネーが逃げる恐れがあったからです。逃げはじめてからの利上げでは、間に合わない。

米政府とFRBが、日本に金融緩和を強く勧めるのも、米国債と株を買ってもらうためです。異次元緩和にも米国への資金環流という条件がついていました。リフレ派は亡国のエコノミストに思えます

リーマン危機のあと、400兆円のドルを増発した3度のQE(08年〜2014年)でマスクされていた米国の「大きな対外不均衡」は、今も世界経済における根底の問題であり続けています。

米国の対外総債務は、$20兆(2000兆円)、対外資産を引いた純負債は$8.8兆(880兆円)と巨大です(15年末)。

一方で日本は、官民で948兆円の対外資産をもち、対外債務は609兆円です。339兆円の純資産があります(15年末:財務省)。経常収支が黒字になり、バブル経済で世界ナンバーワンと言われた1980年代以来、企業と金融機関が営々と貯めてきたものが、対外純資産になっています。

関連して言うと、中国は、公式には$2.1兆(210兆円:14年)の対外純債権国とされています。しかし、15年と16年に民間で起こった「元売り/ドル買い」に対抗して、政府が行った「元買い/ドル売り」により、今は、純債務国に転落していると推計できます。

2015年12月で$3.3(330兆円)とされている外貨準備では、銀行の持ち分と政府の持ち分が二重に計上されています。中国の4大銀行は、全部が国有です。選挙と議会制度がない共産党国家・中国の経済統計には、かつてのソ連と同じ問題があります。


ヘッジファンドによる円売り・日本株買いのカラクリ

アベノミクスとは、インフレを目標にした、

1.日銀の国債買いによる通貨増発
2.ドル買い/円売りによる円安誘導
3.政府系金融とGPIFによる日本株買いと米国債買い


です。

2%のインフレを目標にしたのは、年金・医療費・介護費(社会保障費)が年率3%(3兆円)で増え続け、それが国債の増発に繋がって、債務比率(政府総債務1277兆円/名目GDP505兆円=253%)が拡大することを防ぐためです。

分母の名目GDPが年率で3%以上増え続けないと、債務比率が大きくなり、近い将来の財政破綻が確定するからです(名目GDPの下限目標=実質GDP1%+インフレ率2%)。

仮にインフレになっても、企業所得と税収が増える中で世帯の所得が増えない場合、国民の生活は苦しくなっていきます。年金支給額が固定されている年金生活者3100万人(15年:厚労省)と、円安では企業所得が減る多くの中小企業の雇用者4100万人(06年:経産省)、合計で7200万人は、インフレで実質所得が減ります。

しかし、それらは構わない。政府にとっては、差し迫る財政破綻の防止がはるかに大切だとされたのです。


円安と株価上昇には有効だった量的・質的緩和

需要が増えることによる物価上昇に効果がなかった量的・質的緩和は、12年末から15年までの円安と株価上昇には有効でした。13年と14年の物価上昇は、円安での輸入価格上昇が主因です。世帯消費と企業の設備投資は増えていません。

東証では、年間420兆円の売買額の70%が、オフショアからのヘッジファンドによるものです。国内の個人投資家と金融機関は、90年からのバブル崩壊、00年のIT株崩壊、08年9月からのリーマン危機で3回の大きな損失を被ったことから、売買額が30%に減っています。

個人投資家700万人の多くは、上がるときは損失を回復するため売り越す、下がるときは難平(なんぴん)買いで買い越すという行動を取ります。


2012年末以降の日本株式市場の売買構造

このため、わが国の株価を決めているのは、70%のシェアになったヘッジファンドの売買です。


1.ヘッジファンドが買い越せば上がり、売り越せば下がる

2.下がっては、政府と投資家が困る

3.ヘッジファンドが売り超になると、3つの政府系金融(総資金量420兆円)と日銀(同459兆円:16年10月)が買いをいれる

という単純な基本構造が、2012年末から2016年10月まで続いているのです。

しかし2016年は、政府系金融と日銀の買いに対する株価上昇の反応が鈍い。この理由は、

1.アベノミクスによる株価上昇が政治相場(または官製相場)であることを皆が知った

2.このため二番目に大きな売買シェアを持つ個人投資家(700万人)が、政府系金融に追随した買いを入れなくなった

ことにあります。


米国の後追い。2015年から日本でも自社株買いが増加している

1日平均売買額が2.9兆円(15年平均)だったものが、2.3兆円(16年7月)に減った現在の東証一部で、大きく増えているのは自社株買いの4.3兆円です(16年1月〜9月)。

これは、事業法人の買い超に含まれます。年間では5.7兆円の買い超になるでしょう(13年1.5兆円、14年2兆円、15年3兆円)。

自社株買いは、市場で流通する株式数を減らします。会社利益は同じでも、1株あたり利益は上がったようになり、株価も上がります。タコが自分の足を食べることに似たこの自社株買いは、上場大手企業が留保利益で将来投資をせず銀行預金として貯まった、現金100兆円で行われています。

自社株買いでも、買いが増えれば株価は上がるので「株価上昇という形の株主配当」とされています。経営者が株主サービスとして行うのです。問題は、自社株買いは、いつまでも続けることはできないことです。

米国の2012年以来の自社株買いは、とても大きい。16年の第一四半期で$1820億(18.2兆円)です。年間では73兆円という巨額です。米国では、日本よりはるかに個人株主の要求度が高い。株価が1年も下がり続ければ、資産を失った株主により、株主総会で経営者が追放されます。

このため、経営者は米国FRBの量的緩和と、わが国と同じ将来投資の少なさから滞留したキャッシュフローで、年間73兆円もの自社株買いで事実上の減資をしているのです。

時価総額で世界一のアップル($6091億=60兆円:16年9月)は、社債を発行しゼロ金利マネーを得て、それで巨額の自社株買いを行っています。米国のダウやナスダックの大手企業の株価は、大きな自社株買いで20%から30%は高値になっているでしょう。

本稿執筆時点のダウは1万8161ドル、ナスダックは5243ポイントで史上最高値圏です。過去10年の純益を元にしたシラーP/Eレシオ(26.6倍:16年10月)が示すように、数十%のバブル性があると見ることができます。株価維持のために膨らみすぎた自社株買いの減少があれば、下がります。

自社株買いは、政府主導の官製相場と同じく、3年も5年もと続けることはできません。事実、2016年は米国の自社株買いはピークアウトして、今後は減少する傾向も見えます。

米国の自社株買いの傾向に注目してください。これが減ると、米国株は下がります。米国株が下がると、日本と欧州にも即日に波及します


株価が景気を反映しなくなった理由

ポートフォリオ投資とHFT(超高頻度売買)を組み合わせた売買シェアが、60%まで増えています。10年代の国際金融は、ネットワークで、リアルタイムに連結されているからです。

世界中の国債や株の売りも買いも、コンピュータ画面で一瞬です。株と債券の金融市場は、インターネットで変容しています。売買を叫ぶ「場立ち」があった「のどかな市場」ではない。

それでなくても、わが国の日経平均は米国ダウの子供です。米国株を売買しているヘッジファンドがポートフォリオ(分散投資)で、日本株をたとえば12%と一定割合にしているからです。米国株が下がると、ポートフォリオの中の米国株が減少します。かわりに、12%枠と決めている日本株の構成比が上昇します。これでは日本株の下落リスクが大きくなる。

株価罫線を分析するトレンド理論(傾向理論)とは違う、ランダムウォークの理論では、向こう3ヶ月で10%上がる確率があるときは、10%下がる確率も同じです。このため、ポートフォリオでのリスクが、コンピュータが自動計算する数値で大きくなる。

従って、米国株が下がると日本株を売って減額調整するプログラムが組み込まれています。ヘッジファンドのほとんどの売買で行われているHFT(超高頻度売買)がこれです。人間は関与せず、現物・先物・オプションの売買を組み合わせ、瞬時に売買が行われます。

ファンドマネジャーの関与は、ポートフォリオの割合(パラメータ)を変えるときです。以上の売買構造が増えたため、日米の株価の動きは同時化します。日米だけではない。

世界の株式市場(時価総額6000兆円:世界のGDPの1倍)が、ほとんど瞬間連動して動きます。基礎的な経済指標によるファンダメンタル理論(端的に言えば、景気がよくなると株価が上がる)は、ほとんど関係がなくなっているのです。
http://www.mag2.com/p/money/24781

浜田宏一氏、失敗の本質〜なぜリフレ派は「対米売国奴」に墜ちたのか?=吉田繁治 2016年11月24日
http://www.mag2.com/p/money/27546


筆者は、浜田宏一内閣官房参与(政府の経済ブレーン)について、「この人はすでに脳が老化している」と感じます。脳が老化していないとすれば、我が国の異次元緩和は「米ドル(米国債)を買うことで、米国に資金提供をするために行われた」ことになります。(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)

※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2016年11月23日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した内容(約7000文字)もすぐ読めます。

日本の異次元緩和は、アメリカに資金提供するために行われた

リフレ派の、遅まきの白旗

アベノミクス開始から4年、日経新聞の記者が浜田宏一氏にインタビューをしています(2016年11月15日)。浜田氏は経済学で東大とエール大学の教授を歴任し、安倍政権の内閣官房参与を務めています。安倍政権がとったリフレ政策の総帥の立場にある人です。


記者の質問:
日銀は、国債の買い入れを年80兆円に増やしました。4年経っても、物価目標とする2%に達していません。

浜田氏:
国民にとって一番大切なのは、物価ではなく、雇用や、生産、消費だ。最初の2年はうまく働いた。しかし、原油価格の下落や、消費税率の5%から8%への引き上げに加え、外国為替市場での投機的な円高も障害になった。


<筆者の解釈>

異常な金額の金融緩和は、インフレ目標(2%)の達成を目的に行われたことは明白でした。ところが浜田氏はまず、「国民にとって一番大切なのは、物価ではなく、雇用や、生産、消費だ」と、質問に対するはぐらかしを行っています。

自分たちが政策目的にしていたインフレ目標より、雇用(失業率)、生産(企業の売上)、消費(世帯の需要)が大事だと言っています。学者にあるまじき、理論的誠実さのない態度です。

次に、金融政策は効いたという主張の上で、

1.2014年6月以降の原油価格の下落 [$105(14.06)→$47(15.01)]
2.消費税の引き上げ [5%→8%(14.04〜)]
3.投機的な円買い [122円(15.12)→101円(16.08)]

の3点が、物価を下げる働きをした、と言っています。この3点がなければ、金融政策により2%へのリフレが成功したということを言うためです。しかし、これはリフレ派の物価に対する基礎理論と矛盾しています。

また、2015年12月1ドル122円から16年8月101円への円高を、浜田氏は「投機的」と言っています。あたかも、投機的ではない円高・円安があるかのような言い方です。常々から、為替の売買(円・ドルでの1日100兆円:2016年)のうち90%は、貿易用や投資用の実需に基づかない通貨投機的なものです。浜田氏が言う「投機的な通貨売買」とは、何を意味するのでしょうか?

「物価は貨幣現象」という基礎理論を自己否定

リフレ派の物価に対する基礎理論は、「物価は貨幣現象」ということです。これは、金融緩和政策に対する国会質問で、安倍首相が鸚鵡(おうむ)返しに「物価は貨幣現象なんです」と答えていたことからもうかがえます。

安倍首相は、物価について他の理論を知らない。このため、これが国際標準だと言いながら講義した浜田氏の「貨幣現象論」を信じたのです。罪深いことですが、アベノミクスの始まりがこれでした。

【フリードマンの仮説】

「物価は貨幣現象」という仮説は、1929〜1933年の米国大恐慌を研究したミルトン・フリードマンが言ったことです。

1933年までに、銀行の信用収縮と取り付けから、米国のマネーストック(マネーサプライ)は2/3に減少していました。引き出されるマネーの不足のため、20%の銀行は、営業を停止したのです。
※『大収縮 1929-1933』:ミルトン・フリードマン、アンナ・シュウォーツ

マネー不足のため、需要不足が起こっています。卸売物価は、恐慌の初年度(1930年)に13.5%低下し、個人消費は17%も減っています。

以上の現象をもとに、「物価は貨幣現象である」と仮説を作ったのです。これが、「中央銀行がマネーサプライを増やせばインフレになる」ということも意味するようになっていきます。

【マネーサプライとベースマネー(マネタリーベース)は違うもの】

なお、日銀の当座預金は、金融機関がもつ現金性預金であり、ベースマネー(マネー増加の元になるのもの)ではあっても、世帯と企業が実体経済(消費と設備投資)に使う預金のマネーサプライではありません。

【岩田規久男日銀副総裁の誤り】

リフレ派の岩田副総裁は、「日銀が国債を買ってベースマネーを年70兆円増やせば、マネーサププライも70兆円(6%)増える」と言っていました。

現在、マネーサプライ(M3)の増加は3.2%(16年10月:日銀マネーストック統計)に過ぎない。前年比での2%から3%の増加は、異次元緩和前と変わらない。つまり、異次元緩和はマネーサプライを増やさず、需要を増やして物価を上げる効果はなかったのです。


記者の質問:
デフレ脱却に、金融政策だけでは不十分だったということですか。

浜田氏:
私がかつて、「デフレは(通貨供給量の少なさに起因する)マネタリーな現象」だと主張していたのは事実で、学者として以前言ったこととは、考えが変わったことは、認めなければならない」

<筆者の解釈>

考えが変わったことは認めなければならない……そうではない、「間違えていた」と認めねばならないのです。間違えていたと言わない理由は、「では、責任は?」となるからです。男らしく責任をとるつもりは、毛頭ないからです。

なぜ間違えたのか?

経済学は、単純化した理論モデルを作る性癖があるので、まだ、これを認めていませんが、現実のマクロ経済は、数えきれないくらい多くの要因が複雑に絡む、気象のような「複雑系」でしょう。

「物価は貨幣現象である」というような、1つの原因と結果からなる線的な関係ではない。(「マネー量→インフレ/デフレ」ではなく、実際の物価には他の要因も絡んでいる)

ところが浜田氏は、マネタリストの元祖フリードマンの「仮説」を、疑いもせず信じ込んだのです。自分で、現実の経済から学問をしなかったからです。他人が書いたもの(他人が分析したもの)を読んで、理論としたのです。

このため「副作用を含む異次元緩和」を実行してしまったのです。これを日常用語で言えば「ついにやらかしてしまった。その取り返しはつかない」ということになるでしょう。

診断と処方が誤っていたため、医薬が目的の効果を発揮せず、死にまで至る他の病気を引き起こす副作用のみを生んだということです。

失礼なことをあえて言うと、筆者は浜田氏のリフレ論の本を読んで、「この人はすでに脳が老化している」と感じたのです。「自分は○○を知っている、××がこう言っていた」といったことしか書かれていなかったからです。

脳が老化していないとすれば、「我が国の異次元緩和、は米ドル(米国債)を買うことで、米国に資金提供をするために行われた」ことになります。

リフレ派は米国にマネーを誘導するエージェント

これには、実は証拠があります。最近の浜田氏は、「日銀が米国債を買って、円を増発する方法もある」と言い始めているのです。

ユーロの中央銀行であるECB(中身はドイツマネー)が、ギリシア、ポルトガル、スペイン、イタリアなどの南欧債を買うことで、資金提供したことと同じです。

A国の国債、債券、通貨を、B国のマネーで買うことは、B国からA国にマネーを提供することと同じです。

ご記憶にある方もおられるかもしれませんが、異次元緩和の開始直後に、当方は、露骨な表現を使い、浜田氏を「亡国のエコノミスト」と書いたことがあります。
(注)小泉内閣にも類似の人がいました

異次元緩和であふれた銀行の当座預金マネーが、ドル買いに向かったからです。三菱UFJグループの事例で言えば、総資金量(298兆円:16年3月期)のうち、外国貸出が43兆円、外国債券が28兆円です。

合計で71兆円が主に米国に行っています。同時期の国内の貸し出しは59兆円、国内証券が34兆円で、合計94兆円です。
(注)16年9月期の海外運用は6兆円(8.5%)減ったように見えますが、これは$1=101円の円高・ドル安によるもので回収したわけではありません

我が国で資金量が最大の銀行は、国内55:海外45の資金運用です。国内の金利がゼロやマイナスなので、海外で運用したからです。このマネーの海外流出も、異次元緩和が国内のマネーサプライを増やさなかった原因です。

三菱UFJグループも、ゆうちょ銀行や、年金のGPIFと同じように、日銀に国債を売って、そのマネーを米国に提供しています。

民間銀行は、異次元漢和による国内金利(0%やマイナス)と米国金利(1.5〜2.5%)の、大きくなったイールド・スプレッドを確保するため、政府の政策に従属した運用をするしかない。

浜田氏が、「異次元緩和は国内のマネーサプライを増やすものではなく、ドル買い(ドル預金)やドル国債買いにより米国のマネーサプライを増やす」ということを知った上で異次元緩和を推進したのなら、確信犯です。

その言動からは米国の金融エージェントに見える浜田氏は、だから「日銀が米国債を買って、円を増発する方法もある」と言い始めたのかもしれません。これは国民経済にとっては害です。

前FRB議長のバーナンキも、日本に異次元緩和を勧めていました。あれは明らかに、「米国債を買ってくれ」という意思表示だったのです。

2014年10月の大事件〜日銀もGPIFも「米国の支配下」にある

2014年10月に米国がテーパリング(FRBによる国債買いの順次縮小:10ヶ月)を終えたとき、その同じ月に、我が国の公的年金を運用するGPIFが「米国株と米国債の保有を2倍に増やす」方針を発表しています。

(注)14年10月末には、日銀も追加緩和で国債の買い増しを発表しています(年80兆円)

実は、2015年8月から、米国債の1位保有国である中国政府が、米国債を売り始めました。それ以降の売りの累積は$1260億(12.6兆円:ブルームバーグ)です。

中国政府が米国債を売ったのは、自国のGDP成長率の低さと、不動産の不良債権の実態を知っている民間の「元売り/ドル買い(=元の海外流出)」が2015年8月から大きくなって、大きな元安を招く恐れがあったからです。このため中国政府は、民間の「元売り/トル買い」に対抗する「ドル国債売り/元買い」を行ったのです。

中国政府が米国債を売る分、別の買い手がいなければ、米国の金利は上昇し、レポ金融に依存した米国金融と株価は深刻な影響を受けます。しかし米国FRBは、ドル信用の維持のためテーパリングは終了せねばならない。

そこで日本政府に頼んで、ゆうちょ銀行とGPIFのマネーを、米国債と株の運用資金として提供するということだったのです。

こうしたことは、政府は平気で行います。

以前、安倍首相が、NYSE(ニューヨーク証券取引所)で、「Buy Abenomics」と叫んだことがあります。これは米国に対して、強制的な買いを促すものではありません。あくまで、お願いのレベルです。

ところが、米国政府が日本に言うときは異なります。「強制」の意味をもつのです。従来は財務省が、これを「外圧」と言っていました。今はこの言葉は消えましたが、同様のことが続いています。

状況証拠からは、リフレ派は(狙ってか狙わずかは不明ですが)、米国にマネーを誘導するエージェントに見えるのです。
http://www.mag2.com/p/money/27546



2. 2016年12月22日 14:33:12 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[3463]

>浜田宏一内閣官房参与は本当に「変節」したのか? 流布される「金融政策無効論」への反論

金融政策は万能ではないから、当然、状況や政策によっては、副作用が上回ることもあるが、現状では無効とは程遠い

しかし上の吉田などもそうだが、まともに金融経済政策が理解できず、万能論を前提にしてアホな批判を言う人間が多いということだな


3. 2016年12月22日 19:37:04 : 2LiKY8ftgY : PTfAaIrqs6s[662]
変節と いうより逃げた 政治から

4. 2016年12月22日 22:10:44 : 0fa7BTMj6E : BKDb7NrwxzM[3]
この投稿記事は秀逸だ。実態を見事に描いている。
エスタブリッシュメント側に立った経済記事は希望的観測が多く、大抵その予測が短期的には当たるが、長期的には外れている。

この記事は明らかにこのエスタブリッシュメント側のインチキ予測の矛盾を的確に暴いている。

要は今や、反権力側にたたなければ正確な分析は不可能だということだ。但し残念ながら反権力側は経済オンチが多い。勉強不足だ。この意味でこの記事は貴重な存在だ。


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