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転機の米金融政策
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投稿者 あっしら 日時 2016 年 12 月 24 日 03:57:04: Mo7ApAlflbQ6s gqCCwYK1guc
 


転機の米金融政策
(上)成長期待 市場に危うさ 新興国、資本流出も

 米連邦準備理事会(FRB)が1年ぶりの利上げに動いた。イエレン議長はトランプ次期大統領の財政刺激策も念頭に、来年以降の利上げ加速の可能性も示唆した。最大の経済大国で動き出す金融政策の正常化と、財政出動による低成長打破の挑戦が、世界のマネーや経済に与える影響は計り知れない。

 「思ったよりも『タカ派』だったな」。米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果が公表された14日午後2時。ニューヨークの証券会社のトレーディングルームで、金融引き締めに積極的な中央銀行の姿勢を示す市場用語が飛び交った。

 2017年の利上げ回数の想定が従来の2回から3回に増えたからだけではない。イエレン氏はトランプ氏の財政刺激策を「詳細が分かる前に推測したくない」と述べ、市場に「政策が進む過程で利上げが一段と加速する」(米エコノミスト)という見方が広がった。

 「トランプ相場」に沸いてきた米株式市場。予想を超えたタカ派ぶりに大幅安となったが、15日には反発。すぐに動揺は収まった。政策転換への期待が勝った形だ。

 米国では大統領選後、財政出動による景気刺激と金融正常化の試みが並行して進む構図が急浮上した。市場がみせた反応は、内需拡大に対する期待に根ざした強烈な「株高、金利上昇、ドル高」という組み合わせだ。

 基軸通貨国の大転換は世界に大きな影響を及ぼす。格付け会社フィッチ・レーティングスのチーフエコノミスト、ブライアン・コールトン氏は「先進国には良い効果があるだろうが、一部の新興国では資金調達のコスト上昇や機会の低下が起こりうる」と分析する。

 日本には米内需拡大とドル高(円安)という二重の恩恵が及び、ドル高が響く米国よりも好環境との声もある。欧州も単一通貨ユーロの下落が進み、対ドルで02年以来のパリティー(等価)となる1ユーロ=1ドルも間近だ。欧州中央銀行(ECB)は買える資産に限界がみえるなかで量的緩和の縮小を決めたばかり。ユーロ安は追い風といえる。

 一方の新興国。海外からの資金調達に頼る国が多い分、米金利上昇やドル高は資本流出やドル建て債務の膨張を招きかねない。1年前、FRBが9年半ぶりの利上げに踏み切った直後には中国発で市場が混乱した。経済状況は改善しているが「リスクを注視しなければならない」(ティム・アダムズ元米財務次官)との声は絶えない。

 メキシコ銀行(中央銀行)はFRBの利上げ翌日の15日、0.5%の利上げを決めた。FRBに対抗し、通貨メキシコペソの急落やインフレ進行を抑える。米国がようやく今年1回の利上げにこぎつけたのに対し、景気停滞下のメキシコでは、すでに5回を数える。

 そもそもペソ安に弾みをつけたのは、成長の要である北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しを唱えるトランプ氏だ。中銀は利上げの声明で「米国で(メキシコの)貿易や投資を妨げる経済政策が成立する可能性」に警戒感をあらわにした。

 米内需が拡大すれば、輸出増を通じた成長という道筋もみえる。だがトランプ氏の保護主義はその実現を危うくする。市場の陶酔の影で蓄積するリスク。世界経済の成長の道筋とマネーの落ち着く先は、なお霧の中だ。

(ニューヨーク=大塚節雄、山下晃)

[日経新聞12月17日朝刊P.]


(下)構造問題、利上げを左右 回復の裏に「三大悲劇」

 「職なき男性(Men without work)」。米アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のニコラス・エバースタット氏の近著が、ちょっとした話題を呼んでいる。

 米国では25〜54歳の男性の就業率(就業者の割合)が1948年の94%から、2015年には84%まで低下した。働き盛りの男性の6人に1人が職に就いていない計算で、先進国の中でも異例の状態にあるという。

 グローバル化やIT(情報技術)化、金融危機の影響が重なって、職が見つからない低中所得層が増えているのが大きい。エバースタット氏はこの現象を「米国の知られざる危機」と呼ぶ。

 米経済が底堅い回復を維持しているのは確かだ。失業率は4.6%と約9年ぶりの低水準を記録し、もはや完全雇用の状態に近づきつつある。米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長が1年ぶりの利上げに踏み切ったのも無理はない。

 だが米経済を長くむしばんできた構造的な問題は残る。「職なき男性」はその一例にすぎない。労働参加率(働く意思のある人の割合)の低下、設備投資の停滞、生産性の伸び悩み――。ピーター・フィッシャー元米財務次官は「三大悲劇」の深刻さを強調する。

 企業の開業率(単一拠点の会社に限る)も比較可能な1977年の17%から低下傾向をたどり、2014年は10%にとどまった。多方面にわたる活力の衰えが響き、米経済の巡航速度を示す潜在成長率はいまや2%を割り込むといわれる。

 そのせいで景気を冷やさず過熱もさせない「中立金利」はゼロ近傍まで下がっているとの試算も出ている。現行の政策金利は年0.50〜0.75%。雇用や賃金の改善を過信して、実力以上の引き締めに動けば、景気の腰を折りかねない。イエレン氏が慎重を期し「緩やかな利上げ」を志向する理由はそこにある。

 しかしトランプ次期米大統領が公約した大型の減税やインフラ投資が具体化すれば、利上げのペースも調整せざるを得ない。どのタイミングでどれだけの財政出動に踏み切るのか。その景気刺激効果と金利高・ドル高の景気抑制効果をどう見積もればいいのか。金融政策運営の「変数」は劇的に増えてしまった。

 イエレン氏が注目するのは財政出動の中身だ。技術革新や雇用の流動化などを促し、生産性を高めて潜在成長率を押し上げる政策なら、米経済を良い方向に導ける。

 米ハーバード大のジェフリー・フランケル教授は「金融危機後の景気低迷を乗り切るため、金融緩和に頼りすぎてきた」と指摘する。いまの米経済が抱える本質的な問題は潜在成長率の低下で、これを解決できるのはFRBではない。

 必要な対応を怠ってきた政府が賢い財政出動で成長力を底上げする一方、踏み込みすぎた金融緩和のアクセルを徐々に緩めるのが理想的なポリシーミックスといえる。

 これに対してカンフル剤をむやみに打つような非効率な財政出動に走るのなら、景気の過熱や物価の上昇だけをあおり、予想以上の急激な利上げを迫られかねない。イエレン氏も「生産性を上げるのは望ましいが、完全雇用を達成するための財政刺激策は必要ない」とけん制している。

 一方、トランプ氏が本気で保護貿易や移民排斥に動けば、利上げどころではなくなるのかもしれない。米経済のニューノーマル(新常態)と格闘するイエレン氏のかじ取りが、より複雑になったことだけは間違いない。

(ワシントン支局長 小竹洋之)

[日経新聞12月18日朝刊P.5]

 

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