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ブラジャーで天下を取った男 ワコール創業者・塚本幸一
【第40回】 2017年1月18日 北 康利 [作家]
「電通鬼十則」に修正を加えた
「ワコールファイト十則」
君らは敗残兵やな
昭和29年(1954年)に初めて公募採用された大卒の新人は、入社してすぐ、幸一から商売人としての厳しい洗礼を受けることとなった。
ワコールが大企業として認知される以前の話である。女性下着の会社に就職するというのは、男なら誰しも抵抗感がある時代だ。就職難で和江商事しか入れなかったという者も多かった。
そのことを小耳に挟んだ幸一は、
「言ってみれば君らは敗残兵やな」
と、傷口に塩を塗るような言葉を口にした。
本来なら経営者としては言ってはいけない問題発言だろう。だが実は意味があったのだ。
戦前ほどでないにせよ、“大卒”というだけで当時は十分エリートである。彼らには内心その自負があった。事前にその天狗の鼻を折っておかないと、商売人としては使えない。幸一なりに考えた上での発言だったのだ。
実のところは幸一が期待した以上の人材が入ってくれており、内心ほくそ笑んでいた。実際彼らは、敗残兵どころかまれに見る精鋭としてワコールの快進撃を支えてくれるのである。
大卒の新卒組は二条通東洞院東入ルの塚本邸の離れ座敷の2階に住み込ませ、1年間、寝食を共にして鍛えることにした。当時は松下電器の松下幸之助や壽屋の鳥井信治郎など丁稚上がりの経営者がまだ多く残っている時代であり、彼らが船場などで商いの基本を身につけた話は巷間流布されていた。その教育システムを取り入れようとしたのである。
この時の新入社員の一人に伊藤文夫(後の副社長)がいた。例の高田馨滋賀大学経済学部教授の門下生である。
昭和29年(1954年)の暮れ、教え子がしっかりやっているか気になったのだろう。高田教授が和江商事を訪ねてきた。
応対に出た幸一は、
「先生のおかげでいい新人に入社してもらうことができました」
と心から礼を言った。高田も満足そうである。
「おかげさんで、うちもそこそこの規模の会社になりました。ところがこの世界では“雑貨屋とおできは大きくなるとつぶれる”という言葉がありまして、ここからが正念場やと思っております」
この言葉は本心だった。この場合の雑貨屋には縫製業者も含まれる。種類やサイズが増えて事業が大きくなるにつれ、商品管理が難しくなって過剰在庫や不良在庫を抱えやすくなるというわけだ。
すると幸一の悩みに高田はこう答えた。
「それはまさに私の専門分野ですな」
高田がこの時、幸一に解説したのは、在庫管理を数理処理して効率的にしていく商品管理システムについてであった。
大いに得るところがあると感じた幸一は、すぐにそれを採用することを決め、早速商品管理課が設置されることとなった。
そして経理に配属されていた伊藤が商品管理を担当することとなったのである。恩師の大学での教えを実地に生かせる機会だけにやる気が出るのは当然だ。
すぐにこの部署を取り仕切り、翌春に入社した片山、不破、鈴木、伊東という4人の大卒新人も伊藤が研修して各事業所に配置し、それぞれの事業所の商品管理を行うまでになった。
昭和30年(1955年)に入ると、前年の不況が嘘のようになり、ブラジャー、コルセットの需要が急速に伸び出した。この年の4月、200万円増資して資本金を800万円とし、大卒社員も含め、従業員数は300人に達しようとしていた。
そしてここから前年比3、4割増しで売り上げが増え、実際、新聞や雑誌に頻繁に「下着ブーム」の文字が躍るようになる。ようやくファンデーションに対する認識が定着し始めたのだ。これまで何度も触れてきた「下着ブーム」の到来である。
ここで商品管理のノウハウが生きた。
ファイト十則
下着ブームのなか和江商事は積極的な広告戦略でさらなる飛躍を果たしたわけだが、そのことについてはすでに述べた。そして和江商事を担当していた電通京都支局の村山千代を通じ、幸一がしばしば耳にしたのが“広告の鬼”と呼ばれた吉田秀雄社長の名前である。
吉田は幸一より17歳年長である。昭和22年(1947年)、公職追放になった前社長の後を受け、43歳の若さで電通の4代目社長に就任すると、いち早くテレビの普及に目をつけ、テレビコマーシャルを広告業界の収入源とするビジネスモデルを確立した。
大変仕事に厳しい人物として恐れられもしたが、常に業界のリーダーたることを意識した志の高さは他の追随を許さず、その情熱と腕力で部下の気持ちを一つにし、世界最大の広告会社である電通王国を築き上げた。
幸一が着目したのは吉田が昭和26年(1951年)に制定した「鬼十則」という行動規範である。この「鬼十則」こそ電通マンを電通マンたりえさせた精神的支柱だと見抜いた彼は、それをほとんどそのまま真似て「ファイト十則」というものを昭和32年(1957年)11月に制定した。
「ファイト十則」
1、仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
2、仕事とは先手先手と働きかけて行くことで、受身でやるものではない。
3、仕事に大小を考えるな、常に全力をたたきこめ。
4、難しく思う仕事は進んで狙え、そしてこれを成し遂げる所に進歩がある。
5、摩擦を恐れるな、切磋琢磨せよ、人間は惰性に流され易い。
6、周囲を引き摺り廻せ、引き摺るのと引き摺られるのとでは、永い間に天地のひらきが出来る。
7、計画を持て、長期の計画を持って居れば、忍耐と工夫とそして正しい努力と希望が生まれる。
8、自信を持て、自信がないから、君の仕事には迫力も粘りもそして厚味すらないのだ。
9、頭は常にフル回転、八方に気を配って一分の隙もあってはならぬ、サービスとは、そのようなものだ。
10、賢愚は他人の領分、威張っても値打に変りはない、只実行だ、でないと君は卑屈未練になる。
これはほとんどすべて吉田の「鬼十則」をそのままコピペしたものである。いいものはいいとして取り込む遠慮のない図太さが幸一の強みだろう。彼の場合、
「あれは真似じゃないか」
という後ろ指に耐えるだけの、自信というか厚かましさのようなものが備わっていた。
それどころか、さらに彼独自の視点が加わる。まさにイノベーションと言っていいだろう。たとえばこの「鬼十則」をもとにした「ファイト十則」でも、幸一は三つの項目に関して内容を変えているのだ。
これは彼の思考を知る上で興味深いので、以下、比較してみたい。
3、大きな仕事と取り組め、小さな仕事は己れを小さくする。(「鬼十則」)
3、仕事に大小を考えるな、常に全力をたたきこめ。(「ファイト十則」)
5、取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは…(「鬼十則」)
5、摩擦を恐れるな、切磋琢磨せよ、人間は惰性に流され易い。(「ファイト十則」)
10、摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。(「鬼十則」)
10、賢愚は他人の領分、威張っても値打に変りはない、只実行だ、でないと君は卑屈未練になる。(「ファイト十則」)
3に関しては、“大きな仕事”だけを選別できる広告業界と、仕事の大小をつけずすべてに全力で取り組まねば完成品は生まれない“ものづくり”業界との違いがあるだろう。そもそも女性下着の世界を“小さい仕事”などと思う不心得者が出ないとも限らない。
「鬼十則」の5の“取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは…”というのは、「鬼十則」の中でも特に有名なフレーズなのだが、これも幸一は採用しなかった。
商売は駆け引きの世界である。スッポンのように一度取り組んだら放さないなどという商人は早晩行き詰まる。ここは「鬼十則」の10を彼らしくアレンジして“摩擦を恐れるな、切磋琢磨せよ”としている。
そして幸一は「ファイト十則」の10でさらに商人として大事な姿勢について説いている。外からどう見られるかなどを気にしている暇などない。只実行あるのみだと叱咤しているのだ。
〈あの人はやり手だとか、立派だとか、信用がおける人だとかいろいろと人物評価をされるが、一番困った人間は自分で自分の評価をしている人間である。そして、人間の持つ習性と言ってもいいくらい、他人から見た実力よりもずっと高い評価を自ら行い、私は立派なんだ、皆が信用してくれているんだ、やり手なんだと思い込んでいる人間がいかに多いことであろうか。それをいい励みの材料として、そうなりたいと日々の努力を積み重ねているのなら大いに期待ができ将来が楽しみだが、何の修行も努力もしないで、出身学校だけでそのように思っている人間ほど、どうしようもない人間はない〉(塚本幸一『貫く「創業」の精神』)
〈あれこれと考えても、実行しなければ、考えないのと同じである。そのような暇があれば、今実行できることをやった方がいい。そして、悪い結果が出た時こそ、自分を正しく評価する良き物差しと考え、素直に反省すればいい。そして、やってやってやり抜いていれば、“ヘタな鉄砲も数打ちゃ当たる”というように、自然と真の能力なり、人間形成ができるようになるのだと、戦後一貫してやり抜いてきたつもりである。また、このような生き方こそが、私の生き甲斐であると言えるし、若さとファイトを保つ私の生活態度でもある〉(前掲書)
電通は、女性の新入社員が月間100時間を越える残業を原因として過労自殺したことを受け、平成28年(2016年)12月、社員手帳に記載のあった「鬼十則」を外すことを決めた。
昨今、残業や働きすぎに対する社会の意識は変わりつつある。“必死になって仕事をする”“仕事人間”といった言葉は今後死語になっていくのかもしれない。
そんな中、ワコールは「ファイト十則」を手帳から外すことはしないという。
幸一の掲げた理想は、下敷きとした吉田秀雄の「鬼十則」に改良を加えただけのことはあって、寿命の長い普遍性を持っていたと言えるだろう。
(つづく)
(作家 北 康利)
http://diamond.jp/articles/-/113393
山崎元のマルチスコープ
2017年1月18日 山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
投資信託選びは「売れ筋」より「ブロガー」の方が当てになる
「投信ブロガー」が選ぶベストファンドと、実際の売れ筋ファンドは、まったく別物。どうしてこういうことが起きるのだろうか
投信ブロガーが選ぶファンド
ベストテンが発表!
投資信託についてブログに記事を書き、情報を発信する「投信ブロガー」が優秀ファンド(投資信託は「ファンド」と俗称される)を選ぶ、「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2016」という表彰の発表会が、2017年の1月14日に東京・渋谷のシダックス・ホールで行われた。主宰は「rennyの備忘録」という投信ブログを管理するハンドルネームrennyさんだ。
マネーリテラシーが高く、投資信託に詳しく、また投資信託を愛する人々はどのような投信に高い評価を下したのだろうか。
早速、ベストテンと特別賞を見てみよう。
【投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2016投票結果】
1位 <購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド
(設定・運用、ニッセイアセットマネジメント)
2位 たわらノーロード先進国株式
(アセットマネジメントOne)
3位 バンガード・トータル・ワールド・ストックETF (VT)
(ザ・バンガード・グループ・インク)
4位 iFree 8資産バランス
(大和証券投資信託委託)
5位 セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド
(セゾン投信)
6位 ひふみ投信
(レオス・キャピタルワークス)
7位 ひふみプラス
(レオス・キャピタルワークス)
8位 世界株式インデックスファンド
(三井住友トラスト・アセットマネジメント)
9位 <購入・換金手数料なし>ニッセイTOPIXインデックスファンド
(ニッセイアセットマネジメント)
10位 セゾン資産形成の達人ファンド
(セゾン投信)
特別賞 ひふみシリーズ(ひふみ投信・ひふみプラス・ひふみ年金)
(レオス・キャピタルワークス)
特別賞は、同一の運用(同じマザーファンド)で販路が異なるだけの「ひふみ」のシリーズの獲得票数を合計すると2位相当になるので、票の分散を救済する意味合いで設けられたものだと理解した。
表彰式の模様は、投信ブロガーの水瀬ケンイチ氏のブログ「梅屋敷商店街のランダムウォーカー」に詳しい。
表彰式の冒頭に紹介された森信親金融庁長官のメッセージ全文も掲載されている。
森長官のメッセージは、たとえば「良質な投資商品を普及させる上で、投資家自身が投資信託の質の向上に向けた取組みを進めていくことは、とても有意義だと考えます。皆様には、投資を行う顧客の目線に立って、投資商品を客観的・公平に評価し、広く発信していく運動を更に深化させていただければ幸いです」とたいへん好意的で力の入ったものだった。
ブロガー投票と全く違う
売れ筋投信「上位5本」
さて、このリストを一般によく売れていて、純資産残高が大きくなっているファンドの純資産残高ランキング上位5本と比べてみよう。
以下が純資産残高ランキングの上位ファンドだ(「ベストファイブ」と呼んでもいいのだろうが、「ベスト」という言葉は使いたくないと思う商品群だ…)。
【純資産残高上位投資信託(除くETF)】
1.フィデリティ・USリートB(H無) 1兆5448億円
(フィデリティ社)
2.新光 US-REITオープン 『愛称:ゼウス』 1兆5016億円
(アセットマネジメントOne)
3.ラサール・グローバルREIT(毎月分配型) 1兆1989億円
(日興アセットマネジメント)
4.フィデリティ・USハイ・イールドF 8841億円
(フィデリティ社)
5.ダイワ 米国リート・ファンド(毎月分配型) 7335億円
(大和アセットマネジメント)
(※ モーニングスター社、2017年1月13日付データのランキングを参照しました。同社ウェブサイトはhttp://www.morningstar.co.jp/)
一目見てお分かりいただけるように、投信ブロガーが選んだベスト・テンに売れ筋の上位5ファンドは1本も登場しない。
なお、投資信託全体の純資産残高ランキングでは、1位から5位までと10位のファンドはETF(上場型投資信託)であり、1位の日経225連動型上場投資信託(野村アセットマネジメント)は4兆円を超える純資産を持っているが、ETFは日銀の金融緩和政策に伴う購入で残高が膨れあがっている。必ずしも投資家が持っているとは限らないので、ランキングから除外した。
ランキングから外しておいて言うのも気が引けるが、資産残高上位に入ったETFは(筆者は日経平均連動型よりもTOPIX連動型を好むが)、運用管理手数料(信託報酬)が低廉で、良い投資対象商品だ。日銀だけに持たせておくのはもったいない。特に、NISAでじっと持つには向いている。株式と同様の売買手数料が掛かるので、ネット証券にNISA口座を開いて持つのがいい。
売れ筋上位5ファンドに
共通する悪しき特徴
さて、売れ筋の5商品はいずれも、(1)毎月決算を行い分配金を出す「毎月分配型」の投資信託で、(2)概ね3%台の販売手数料が掛かり、(3)運用管理手数料(信託報酬)が1%台(多くは1.5%以上)だ。
率直に言って、これら3つの特徴は、いずれも、投信を選ぶ際に「1つでもあれば、除外すべきだ」と言える決定的欠点だ。
利益による分配金には税金がかかる。運用で利益が出ているとするなら、利益が年1回の分配に比べて、毎月分配すると課税の時点が前倒しされるので、必ず損をすることになる。
「年金を補うのにいい」などという売り文句もあるが、投資家は銀行預金を持っているだろうから、そちらのお金を使えばいい。預金も持たずに全額をこれら5本のようなハイリスクな投信で持つのは不適当だから、分配金のためにこのようなファンドを買うことが適切な行動になる可能性はゼロだ。
短い間隔で頻繁にある分配金が嬉しいという感じ方は、行動経済学的に説明できるが、明らかに損なのだから、これは「克服すべき非合理性」だ。率直に言って、売り手は商品開発にあっても、販売にあっても、投資家側の非合理性を最大限に利用しようとしている。
3%を超える販売手数料も感心しない。投資信託には、「ノーロード」と呼ばれる販売手数料がゼロの商品があり、賢い投資家はノーロードの投信を選ぶのが常識だ。人間のセールスマンを通じて買うと、販売手数料が掛かるケースが多い訳だが、3%はいかにも払い過ぎだ。人がいいにもほどがある。
また、年率1.5%を超える運用管理手数料も高い。10年保有すると単純計算で投資額の15%もの支払いになる。実際には、大幅に元本割れすることが多いだろうから、そこまで掛からないかもしれないが、元本割れはもっと嬉しくあるまい。
純資産残高上位の5ファンドを持っている方は、「マネーリテラシーのかけらもない」と言い切って構わない。
現実には、たちの悪いセールスに乗せられたのだろうと推測する。この純資産残高のランキングには、日本の投信販売の残念な現実が見える。
ちなみに、これらのファンドを持っている人にとって、金融論的に正しい行動は「即刻全額売却」である。買値よりも下がっているとしても、躊躇なく売っていい(値下がりは既に起きた損であり、意思決定論的には無視するべき「サンクコストだ」)。付け加えるなら、こうしたファンドを平気で売ったセールスマンとも縁を切るべきだ。現実的な対処としては、そこまでやらなければ、また新しいダメ商品を買わされてしまうだろう。
念のため、投資信託投資の「べからず三原則」をまとめておこう。
◆投資信託投資の“べからず”三原則
その一、販売手数料が掛かる投信を買うべからず。
その二、分配金が毎月ある投信を持つべからず。
その三、運用管理手数料が年率1%以上の投信を持つべからず。
二番、三番に該当する投信をお持ちの方の対策は、買値・現値に関係なく「即刻売却」だ。
ブロガーが選んだ
ファンドの長所とは?
投信ブロガーが上位に選んだファンドを見ると、「投資信託投資では、このようなファンドを選ぶといい」という特徴を何点か選び出すことができる。
まず、販売チャネルによっては手数料が掛かる場合があるが、ベストテンの著しい特徴は、1位の「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」がその名の通り購入手数料ゼロなのを筆頭に、販売手数料がゼロのノーロード投信であることだ。賢い投信投資家にとっては、ノーロードが常識だ。
3位の「バンガード・トータルワールド・ストックETF」(VT)は、海外上場のETFなので外国株式と同様の売買手数料と外国為替の手数料が掛かるが、ネット証券で買うと手数料は安いし、運用管理手数料が現在年率0.14%と低水準なので、まとまった金額を運用する場合、短期間で売買コストの元が取れる。この商品は、日本株(8%程度)や小型株も含めて世界の株式に広く投資するインデックスファンド(株価指数に連動する投信)だ。
ちなみに、3位の商品は、これ一本だけで投資を済ませることに好適であり、マーケットにコメントする職業柄、自分が保有する投信を売り買いしたくない筆者は、この商品だけを持っている(お金が必要になるまで売らない方針だ)。「他人に投資を勧めながら、自分で投信を持っていないのは寂しい」という批判の声に押されて、昨年、1000口単位ほど自分のお金で購入した。
セゾン投信とひふみ投信は、もともと共に販売会社を通さない通称「直販」と呼ばれる販売方法なので、もちろん販売手数料を取らない。5位、6位、10位に直販の商品をランクインさせた(7位の「ひふみプラス」は販売会社経由なので、販売会社によっては購入時に手数料が掛かる)。
「セゾンバンガード・グローバル・バランスファンド」や「ひふみ年金」(運用は「ひふみ投信」と同内容)には、一部の個人型確定拠出年金でも投資することが出来る。
上位にランクインしたファンドは、いずれも運用管理手数料(信託報酬)が低廉だ。1位の「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」、2位の「たわらノーロード先進国株式」は、共に外国株式に投資するファンドであるにもかかわらず運用管理手数料が0.2%台前半と低水準だ。2位のファンドは、一部のネット証券の確定拠出年金でも投資できる。
特に1位の「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」は過去二度にわたって運用管理手数料を引き下げている。この投資家寄りの姿勢が多くの投信ブロガーの心の琴線に触れて、大差を付けての1位となった。今後、このファンドのように、純資産残高が大きくなったファンドは運用管理手数料を引き下げることが常識となると好ましい。
投信ブロガーによるランキングのもう一つの特徴は、インデックスファンドが多いことだろう。上位3本はいずれもインデックスファンドだし、4位、5位も中身はインデックスファンドの組み合わせだ。
仮に、積立投資で資産形成を行いたい場合であれば、1位の「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」を6割、9位の「「<購入・換金手数料なし>ニッセイTOPIXインデックスファンド」を4割の比率で、ネット証券を使って積み立てるといい。1000円単位で積立投資の金額を指定できる。
なお、「ひふみ投信」のシリーズと「セゾン資産形成の達人ファンド」は、それぞれ運用者の判断で個別に投資銘柄を選ぶアクティブファンドだ。もう少し運用管理手数料が下がると嬉しいが、人気のあるアクティブファンドがあること自体はいいことだ。
投信ブロガーによるランキングを参考に、良い投資信託を選ぶための三原則をまとめておこう。
◆良い投資信託を選ぶための三原則
その一、ノーロード(購入手数料なし)が当たり前。
その二、運用管理手数料(信託報酬)が安いものがいい。
その三、内外の株式のインデックスファンドを中心に投資する。
概ね、この通りに考えていただいて間違いない。アクティブファンドにも期待したいが、もう少し運用管理手数料が下がるまで待ちたい。バランスファンド(内外の株式・債券など複数の資産クラスを組み合わせた投信)も悪くない場合があるが、筆者の意見としては、現状では、国内・海外とも債券に投資する部分が余計に感じる(「個人向け国債・変動金利型10年満期」でも持つ方がよい)ことを付け加えておく。
(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)
http://diamond.jp/articles/-/114551
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