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トランポリン相場「再上昇」の条件 ゴールドマン利益3倍強 シティ収入大幅増 米物価指数5カ月連続上昇、インフレ目標に接近
http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/918.html
投稿者 軽毛 日時 2017 年 1 月 19 日 01:41:03: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

コラム:
トランポリン相場「再上昇」の条件

岩下真理SMBCフレンド証券 チーフマーケットエコノミスト
[東京 18日] - 1月第2週以降、トランプ相場の勢いが失速し始めた。17日には米英中のトップ発言が相場材料となり、2017年を象徴する1日となった。

今年はこの3カ国動向、具体的にはトランプノミクスの具体化、英国の欧州連合(EU)離脱手続きの進捗、中国の人民元動向と対米関係に振り回される1年となろう。

17日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルには、トランプ氏のドル高けん制発言が掲載されたが、貿易問題での最大の標的が中国であることは間違いない。今年初めてダボス会議に出席した中国の習近平国家主席は、国際化や自由貿易の重要性を強調した。2015年8月に人民元を切り下げた当時、通貨安競争が懸念されたことを思うと、中国の役割が皮肉にも大きく転換している。

筆者の懸念は、トランプ新政権の外交手腕が未知数と言わざるを得ない点だ。主要7カ国(G7)の枠組みが機能しなくなる可能性が出てくる。

<トランポリン相場第2幕は調整期>

では、トランプ相場は終ったのだろうか。確かに、ドル円相場を見ると、昨年12月15日と1月3日に付けた118円台後半をピークに、11月下旬から積み上げてきたドルロングが調整局面入りしている。米10年債利回りも12月16日の2.62%手前がいったんの上値となっている。

しかし、結論から言えば、米長期金利が再び上昇する見方が残る間は、トランプ相場は終っていないと考える。トランプ相場の起点である米10年債は、買い戻されても2.3%台前半。トランプ期待が全て剥がれたわけではない。昨年とは異なり原油価格も安定、世界経済の足取りもしっかりしている。今年も米利上げ継続が見込まれる状況下、昨年初頭のような米10年債利回りの2%割れは想定し難い。

要するに、現在は2カ月弱続いた過度な期待に対する調整期間(ドル円の調整めどは積み上げ起点の110円程度)とみる。この不安定さこそ「トランポリン相場」であり、過度な期待の第1幕は終了、現在は調整の第2幕と位置付けられよう。

20日に就任式を迎えるトランプ次期大統領だが、これまでのツイッターの書き込みや11日の記者会見を通じて示されたのは、保護主義的な姿勢のもと製造業の米国回帰、雇用拡大が一番譲れない部分であることだ。しかるに就任前に歴代大統領の中でも群を抜く支持率の低さで、不名誉な状況にある。就任演説では、挽回を図るべく国民にアメリカ・ファーストを訴えることになろう。

就任後は、閣僚メンバーとの意見のすり合わせや、具体的な減税やインフラ投資に関する共和党議会との交渉など課題は多い。その調整には当初の想定以上に時間がかかりそうだ。それがさらなる失望感を生む可能性は一時的にはある。その後は、財政政策の満額回答は無理でも方向性さえ明確になれば、景気浮揚と物価押し上げ効果にはつながるとみるべきだろう。

当面は就任100日で立法措置を検討予定の3分野(法人税改革、インフラ投資、オバマケア代替案)で具体的な話がどのように進んでいくのかを見守る時間帯となる。だが、目先で注目されるのは就任初日の実行計画に掲げた北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉、環太平洋連携協定(TPP)からの撤退表明、エネルギー規制緩和について具体的な動きが出るかどうかだ。なお、トランプ氏の大統領就任は20日だが、「営業初日」は23日かもしれない。

<2017年のけん引役は日米独>

さて、16日発表の国際通貨基金(IMF)世界経済見通しでは、世界の成長率は2017年プラス3.4%、18年プラス3.6%と3カ月前と同水準に据え置かれた。ただ、16年(プラス3.1%見込み)で減速は止まり、18年に向けて成長力を強めていくイメージだ。

17年のけん引役は日米独。日本は円安効果でプラス0.8%に上方修正されたのに比べると、米国はトランプノミクス期待があっても、利上げによる抑制でプラス2.3%にとどまる見通しだ。IMFは財政政策への不確実性を指摘している。世界のバランスある経済成長を尊重するIMFとしては、保護主義色が強まりそうな気配には慎重にならざるを得ない。

一方で、英国はハードブレグジット(強硬なEU離脱)の前提ではなく、17年はポンド安の恩恵で上方修正、18年は下方修正となった。メイ英首相は17日、昨年の国民投票結果に基づきEU離脱方針を述べたが、議会の承認を受けてEUに通告、そこから2年の期限で離脱交渉が行われるプロセスに現時点では変更はない。今後も紆余曲折があるだろう。ユーロ圏では、ドイツとフランスの底堅さに比べると、イタリアの下ぶれ感が否めない。4―5月にはフランスの大統領選挙があり、ナショナリズムが波及しないかは注意が必要だ。

他方、新興国は十人十色の動きを見せている。昨春の資源価格の底打ちにより、新興国全体として減速感は和らいだ。また、米利上げ後も資源国通貨はそれほど弱っていない。ただ、アジア周辺諸国では、独自要因で下ぶれた国がいくつか存在する。具体的には、インドネシア、タイ、韓国だ。これらの国は、中国次第ではさらに下ぶれる可能性がある。

その中国は、今回のIMF見通しで成長率が上方修正された(前回10月は修正なし)。IMFは引き続き中国過剰債務問題について警告し、上下リスクの存在を指摘しているが、17年プラス6.5%、18年プラス6.0%という成長見通しは、健全な不動産調整をこなす減速過程であり、望ましいソフトランディングシナリオと言える。

ちなみに、前回のIMF見通しで同じく予測修正がなかったサウジは、今回は下方修正となり、中国と明暗を分けた。原油減産に乗り出すほど経済が弱っていることが示された。サウジにとって、原油価格の安定は死活問題であり、今年後半も減産合意の継続が見込まれる。

<FRB内はタカ派的な雰囲気に>

最後に米国の金融政策について触れておきたい。昨年12月の連邦公開市場委員会(FOMC)議事録によると、トランプノミクス期待で、連邦準備理事会(FRB)内がタカ派的な雰囲気に転じているのは事実だ。ドル高についても、財政によって過熱する景気を抑制する役割を担うとポジティブに受け止めている向きがある。

6日には今年の投票権があるシカゴ地区連銀のエバンズ総裁が、トランプ新政権下で見込まれる財政刺激策を自身の経済見通しに反映させたことを明らかにし、「米経済は今年2―2.5%の成長を遂げ、インフレ率は来年までにFRBの目標2%水準に戻ると自信を深めた」「指標次第だが、上ぶれなら3度の利上げもあり得ないわけではない」と述べた。かつて労働市場の足取りが弱かった頃はハト派だったエバンズ総裁だが、現在はタカ派に傾いている。

また、12日には同じく投票権のあるフィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁が、「(FF金利が)100ベーシスポイント(bp)かこれを上回る水準になれば、まずは償還元本の再投資を停止し、その後時間とともにバランスシートを縮小することは真剣に検討すべきだ」とタカ派発言をした。

つまり、米利上げペースが速まる可能性にも目配りする必要はあろう。3月14―15日開催のFOMCに向けて、賃金上昇と緩やかな成長が持続可能であるかを点検していくしかない。米10年債利回りの重要な節目は2.6%であり、再び抜ければトランポリン相場の第3幕となろう。

*岩下真理氏は、SMBCフレンド証券のチーフマーケットエコノミスト。三井住友銀行の市場部門で15年間、日本経済、円金利担当のエコノミストを経験。2006年1月から証券会社に出向。大和証券SMBC、SMBC日興証券を経て、13年10月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

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http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-mari-iwashita-idJPKBN1520US

 


ゴールドマンの10−12月、利益3倍強−債券トレーディングが好調
Dakin Campbell
2017年1月18日 22:11 JST

米ゴールドマン・サックス・グループの昨年10−12月(第4四半期)決算は、利益が前年同期の3倍強に増えた。債券トレーディング収入が拡大した。
  18日の発表によると、純利益は23億5000万ドル(約2670億円、1株当たり5.08ドル)と前年同期の7億6500万ドル(同1.27ドル)から増加。前年同期は住宅ローン問題の決着のための引当金を積んだ。
  第4四半期の債券トレーディング収入は前年同期比78%増の20億ドルと、ブルームバーグがまとめたアナリスト予想の15億9000万ドルを上回った。株式トレーディング収入は9.2%減の15億9000万ドルで、アナリスト予想平均の16億2000万ドルに届かなかった。
  全体の純収入は12%増の81億7000万ドル。予想は77億6000万ドルだった。費用は23%減の47億7000万ドルで、アナリスト8人の予想の44億8000万ドルを上回った。
原題:Goldman Sachs Earnings Climb as Trading Outpaces Expectations(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-18/OJZ7XB6KLVRR01


ゴールドマン、10-12月期は予想上回る増益
ゴールドマンは10-12月期のROEで米銀首位に踊り出た
By LIZ HOFFMAN
2017 年 1 月 18 日 22:21 JST

 米金融大手ゴールドマン・サックス・グループが18日発表した2016年10-12月期(第4四半期)の純利益は前年同期から大幅に増加した。

 10-12月期の純利益は23億5000万ドル、1株利益は5.08ドル。前年同期は住宅ローン担保証券(MBS)販売に絡む50億ドルの和解金が響き、1株利益が1.27ドルにとどまっていた。和解金の影響を除くと4.68ドルだった。

 収入は12%増の81億7000万ドル。主力4部門のうち3部門で増収を遂げた。だが投資銀行部門は3.9%の減収。株式引き受け業務の落ち込みが響いた。

 トムソン・ロイターがまとめたアナリスト予想は、1株利益が4.82ドル、収入が77億2000万ドルだった。

 株主資本利益率(ROE)は11.4%と、前年同期の3%から持ち直し、米銀大手のトップに浮上した。このところ首位に立っていたウェルズ・ファーゴは、不正な営業慣行を巡る影響でROEが低下している。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwia8Onwj8zRAhWMU7wKHUAOBJMQqOcBCBwwAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10504433381807684657504582567042217510180&usg=AFQjCNEc4_cCz2-vRs7z0tk2-ZscIq502w
 

 
ドイツ銀、シニアバンカーの2016年ボーナス支給を取りやめ−関係者
Stephen Morris、Ambereen Choudhury
2017年1月18日 21:29 JST
早ければ今週中にも決定を通知へ
若手バンカーの大半は固定給のため影響なし
ドイツ銀行は2016年が業績不振だったために同年のボーナスを恐らく支給しないと、今週中にもシニアバンカーらに伝える。同行の決定について知る関係者が語った。
  関係者が匿名を条件に述べたところによると、ドイツ銀は昨年暮れに住宅ローン担保証券販売をめぐる支払いで米司法省と合意したが、ボーナス取りやめの決定はこれと直接の関係はない。また、最高水準の成果を挙げた従業員には引き留めのためのボーナスが支払われる。若手従業員の大半は既に固定給システムに移行しているためボーナス取りやめの影響はないという。
  ドイツ銀の広報担当者はコメントを控えた。
原題:Deutsche Bank Is Said to Scrap Senior Bankers’ Bonuses for 2016(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-18/OJZ4PD6S972901


 

シティ、トレーディング収入が大幅増
シティも他の銀行同様、11月の米大統領選でトランプ氏が勝利し、相場が大幅に上昇した動きから恩恵を受けた

By CHRISTINA REXRODE AND TELIS DEMOS
2017 年 1 月 18 日 23:26 JST

 米銀行大手シティグループが18日発表した2016年10-12月期(第4四半期)決算は7%増益となった。11月以降の「トランプ相場」がトレーディング部門の追い風となった。

 純利益は35億7000万ドル(前年同期は33億4000万ドル)。1株利益は1.14ドルで、トムソン・ロイターがまとめたアナリスト予想の1.12ドルを上回った。

 収入は170億1000万ドル(同184億6000万ドル)。アナリスト予想の173億ドルを下回った。

 シティも他の銀行同様、11月の米大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利した後の市場の値動きによる恩恵を受けた。

 トレーディング収入(会計上の調整除く)は前年同期比31%増の37億ドル(前年同期は28億2000万ドル)。ジョン・ガースパッチ最高財務責任者(CFO)の12月時点での予想(約20%増)を上回った。

 コンシューマー・バンキング部門の利益は2%増。北米事業の伸びが最も大きかった。

 シティ全体の費用は9%減少した。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiksJvcj8zRAhVIErwKHZ5BCx8QFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10504433381807684657504582567131295473076&usg=AFQjCNGqqndhkA3fTG7JBwyvubRzyC8EZw


 


米シティの10−12月期、利益が予想上回る−トレーディング収入31%増
Dakin Campbell
2017年1月18日 23:04 JST
純利益は7.1%増の35億7000万ドル
債券トレーディング収入は金融危機以降の最高
米銀シティグループの昨年10−12月(第4四半期)決算は、利益がアナリスト予想を上回った。トレーディング収入が31%増と同行の先月の見積もりを超えた。
  18日の発表によると、純利益は前年同期比7.1%増の35億7000万ドル(約4050億円、1株当たり1.14ドル)と前年同期の33億4000万ドル(同1.02ドル)から増加。ブルームバーグがまとめたアナリスト25人の予想平均は調整後1株利益1.12ドルだった。
  債券・通貨・商品トレーディング収入は30億1000万ドルで、会計上の調整を除き前年同期比36%増。ブルームバーグのデータによればこれは金融危機以降の最高。アナリスト予想は28億3000万ドルだった。
  株式トレーディング収入は15%増の6億9400万ドル。アナリスト予想は7億800万ドルだった。
  債券と株式を合わせたトレーディング収入は31%増の37億ドル。全行の収入は8%減の170億ドルでアナリスト予想の173億ドルを若干下回った。営業費用は9%減の101億ドル、予想は102億ドルだった。
原題:Citigroup Trading Revenue Climbs 31% as Profit Beats Estimates(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-18/OJZ9MO6JTSFA01


 

12月米消費者物価指数:5カ月連続上昇、当局のインフレ目標に接近
Shobhana Chandra
2017年1月19日 00:57 JST

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総合指数の前年比は2.1%上昇、前月を0.4ポイント上回る
エネルギー価格や居住費などが大幅上昇

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iAU5jkalzgyg/v2/-1x-1.png

12月の米消費者物価指数(CPI)は5カ月連続で上昇、金融政策当局のインフレ目標に近づいた。総合指数は前年比で2.1%上昇と前月の1.7%上昇から一気に0.4ポイント加速して2%台に乗せた。
  米労働省が18日発表した12月のCPIは前月比0.3%上昇。伸びはブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値と一致した。前月は0.2%上昇だった。エネルギー価格の他、居住費などの上昇が目立った。変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIは前月比0.2%上昇。  
  12月の総合指数の前年比上昇率は、2014年6月以来の最大。連邦準備制度のインフレ目標は個人消費支出(PCE)価格指数で前年比2.0%とされている。11月のPCE価格指数は前年比1.4%上昇だった。

  ジェフリーズのシニアエコノミスト、トーマス・サイモンズ氏は「全体的な傾向として、インフレが加速しつつあるといえる」と分析。「広範で緩やかな物価上昇が見られる」とし、金融当局は今回の統計を好ましい内容と受け止めるとの見方を示した。
  12月のCPIを項目別に見ると、エネルギーは前月比1.5%上昇。ガソリンは3%上げた。食品は6カ月連続で横ばい。
  居住費は0.3%上昇。帰属家賃が0.3%上昇した。
  航空運賃は1.9%上昇と、2015年6月以降で最大の伸び。新車は0.1%、中古車は0.5%それぞれ上げた。一方で衣料品は0.7%低下し、これで2カ月連続での値下がりとなった。
  統計の詳細は表をご覧ください。
原題:Consumer Prices in U.S. Rise for Fifth Month on Shelter, Gas (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-18/OJZCA16VDKL001

 


トランプ時代の米ドル相場〜グローバリゼーション疲れ
高島修(シティグループ証券チーフFXストラテジスト)

10MTVオピニオン


なぜグローバリゼーションの勝ち組であるアメリカやイギリスでアンチ・グローバリゼーションが強まっているのか。それに対してクリアな答えを示しているのが、エマニュエル・トッド氏だ。そう語るシティグループ証券 チーフFXストラテジスト・高島修氏。ではトッド氏の答えはどのようなものなのか。

=================================================

アメリカやイギリスはグローバリゼーションの勝ち組ではなかったのかということです。なぜそれらの国でアンチ・グローバリゼーションが強まっているのでしょうか。実際、私は米系金融機関で勤めていますので、アングロサクソン系の優位性を強く感じます。なぜこれほどうまくやってきた人たちが、国としてグローバリゼーションに反する選択をしているのか、疑問に思うのは当然だと思います。

これに対してクリアな答えを示しているのが、フランス人の人類学者、エマニュエル・トッド氏です。最近、この人の本がいろいろと売れていますので、ご存じの方もいるかと思います。彼がよく使うキーワードが「グローバリゼーション・ファティーグ」で、グローバリゼーションに対する疲弊、疲れのことです。平たくいえばアンチ・グローバリゼーションのことで、これ自体は珍しい概念ではありません。

エマニュエル・トッド氏の指摘で面白いのは次の2点です。英米はグローバリゼーションに成功しすぎたため、貧富の格差が拡大した。だから、国内でグローバリゼーションから取り残された一般の人たちが、グローバリゼーションに対する反感を他の国よりも強めた。つまり、グローバリゼーション・ファティーグは、アングロサクソン系のアメリカ・イギリスだからこそ出ているのだと主張している点です。

彼の主張によると、アングロサクソン系の社会は絶対核家族型だと言います。日本やドイツは子どもが比較的大きくなるまで家で育てるのですが、アングロサクソン系の家庭は比較的小さい頃から子どもを独立させて、個人主義を植え付けさせていきます。ですから、親が持っていた美徳や概念を子どもが引き継ぎにくい環境にあります。ですから、アングロサクソン系の社会では、数十年に一度、非連続的な大きな変化が発生しやすいのです。

その一つが1980年代のサッチャー革命、レーガン革命(あるいはレーガノミクス)であり、これらによって両国は個人主義と新自由主義を徹底していきました。また、アメリカとイギリスはもともと覇権国家としての側面もあったために、グローバリゼーションに成功していったのです。その成功が大きくなりすぎたがゆえに貧富の格差が拡大し、グローバリゼーション疲れが起きていると、彼は主張しているのです。

こうした主張が正しければ、トランプ革命やブレクジットはサッチャー革命やレーガノミクスによって加速した英米主導の個人主義・新自由主義の流れを大きく変えていく転換点になっているのかもしれません。

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トランプ時代の米ドル相場〜グローバリゼーション疲れ
提供元:10MTVオピニオン
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48906


 


「偉大な田舎者」トランプが世界経済を混乱させる
分断される世界で日本は闘えるのか
2017.1.13(金) 池田 信夫
会見で再びトランプ節さく裂、メディア叩きに支持者ら歓声
米ニューヨークで記者会見するドナルド・トランプ次期大統領(2017年1月11日撮影)。(c)AFP/DON EMMERT 〔AFPBB News〕
アメリカのトランプ次期大統領の当選後初めての記者会見が行なわれたが、口汚いだけで中身はほとんどなかった。経済については、生産拠点の海外移転に「重い国境税」をかけると主張し、「中国や日本やメキシコに対する貿易赤字で多額の損失が出ている」と日本を名指しした。

よくも悪くも、彼は平均的なアメリカ人だ。日本人の知っている知的なアメリカ人は東海岸の一部にいるだけで、中西部の白人はトランプのように太った田舎者である。普通のアメリカ人が普通の大統領を選ぶのは民主制として当然だが、世界経済への影響は大きい。

分断されたアメリカがトランプ大統領を生んだ

これまでトランプは一貫してメキシコ人を敵視し、「国境に壁を築く」という計画を今回も表明した。これは突飛な笑い話と思われがちだが、アメリカ社会の最大の問題をシンボリックに表現している。

アメリカの最大の問題は、国内が分断されていることだ。白人はキリスト教と英米文化を中心とするアメリカの伝統になじんでいるが、非白人は世界中から異質の文化を持ち込んでくる。かつてはその最大の要因は黒人で、1960年代の公民権運動以来、彼らを同化させてきた理念がポリティカル・コレクトネス(政治的な正しさ)だった。

公民権運動は黒人差別をなくして「機会均等」を実現する運動だったが、黒人の置かれている劣悪な条件を是正するには、彼らを逆に優遇することが必要だという「結果の平等」の考え方が出てきた。それが大学の定員を人種ごとに割り当てるなどのアファーマティブ・アクション(積極的是正措置)だ。

日本語に訳せないことで明らかなように、これらはアメリカの特殊な問題だが、90年代から流れが変わってきた。どこの国でもエリートは「多文化の共生」などのきれいごとを言うが、大衆は反対する。それが冷戦期の資本主義と社会主義の対立が終わったあと、エリートと大衆の対立を招いてポピュリズムを生んだのだ。

特に重要なのは黒人ではなく、メキシコ人などのヒスパニック(スペイン語系)が増えてきたことだ。黒人はアメリカに同化しており、英語を話してキリスト教を信じているので、アメリカ的な価値を共有しているが、メキシコ人にはスペイン語しか話さない移民が多い。彼らは人口の15%を占め、そのうち不法移民が1000万人以上いる。

これは他国にはどうでもいい問題だが、アメリカ人にとっては身近で深刻な問題であり、特に白人には不満が強い。そのタブーに挑戦したのがトランプだった。

ポピュリズムで世界は「オレサマ化」する

国民がその代表を選ぶのが民主制だから、アメリカ人の低い知的水準を代表する大統領が選ばれるのは当然だが、今まではそれを官僚やメディアなどワシントンのエリートが阻止してきた。ところがインターネットでエリートが「中抜き」された結果、一種の「直接民主制」としてトランプが出てきた。

しかしトランプ大統領が暴言を実行するのは、容易ではない。合衆国憲法では大統領には予算編成権も法案提出権もなく、宣戦布告もできない。それは憲法が、民主制によってトランプのようなポピュリストが出てくることを想定してつくられたからだ。建国の父の先見の明は、200年以上たって効果を発揮したのだ。

「三権分立」というのも神話で、実際には連邦議会が強い権限をもち、与党の決定を大統領が執行するので、彼が与党を代表しているときは強いが、与野党がねじれると何も決まらない。オバマ大統領のようにずっと少数与党だと何もできないが、それは彼が無能だったからではなく、制度的な欠陥なのだ。

この点でトランプは、与党の共和党が上下両院で多数派になったので、オバマより「強いリーダー」になる可能性がある。しかし彼の立場は、共和党内では非主流の右派なので、彼が選挙で打ち出したような民族差別を共和党が法案化することは考えられない。

アメリカ人のパスポート保有率は30%で、7割は世界を知らない田舎者だ。他国といえばよその州のことだから、アメリカ合衆国全体の利益は考えるが、その外の世界情勢には関心がない。

このような孤立主義はアメリカの伝統で、第1次大戦後にアメリカが世界のリーダーになったとき、ウィルソン大統領は国際連盟を創設したが、議会は承認しなかった。アメリカのエリートの「リベラルな国際主義」と議会に代表を送る大衆の対立は、100年前から始まっていたのだ。

エリートは「世界全体の公益」を考えるというが、そんな抽象的な理念があるのは彼らの脳内だけだ。大衆は具体的な国益だけを考えるので、彼らが合理的に行動したら、世界が分断されるのは当然だ。世界が分断されて「オレサマ化」する傾向は、今後も続くだろう。

トランプを「外圧」として利用しよう

「日本との貿易で損失が出ている」と言うトランプは、いまだに1980年代の貿易摩擦のようなイメージをもっているようだ。トヨタのメキシコ工場にも介入し、ツイッターで「トヨタに35%の関税をかける」と公言したが、そんな権限は大統領にはない。

そもそもトヨタのメキシコ工場はカナダから移転するので、アメリカの雇用とは無関係だ。個別の介入で「雇用創出」はできない。雇用はGDPの従属変数だから、雇用を増やすには成長するしかないのだ。

トランプは、大統領就任の初日にTPP(環太平洋経済連携協定)から脱退すると表明したが、これは大統領には拒否権があるから可能だ。しかし「国境税」をかけるのは議会であり、大統領にはできない。NAFTA(北米自由貿易協定)から脱退することは不可能だ。

根本的な間違いは、貿易赤字は損失ではないということだ。経常収支の赤字は資本収支の黒字(海外に対する借金)と同じだが、世の中に借金をしていない企業はない。民間企業は借金が多すぎると破産するが、基軸通貨国のアメリカは破産しない。むしろ世界の投資がアメリカに集まっていることが、その活力を維持しているのだ。

トランプの政策は、1980年代のレーガン政権をまねている形跡がある。レーガン大統領も経済は何も知らなかった。「日本叩き」でアメリカの製造業を保護しようとして、日米構造協議などで圧力をかけたが、ほとんど成果がなかった。貿易摩擦で得をしたのは日本だった。

構造協議で大店法は廃止され、金融自由化が進み、非関税障壁が見直された。アメリカの日本叩きは見当違いだったが、日本人は外圧がないと動かないので、刺激があった方がいい。日本を変える外圧として、トランプ大統領を利用してはどうだろうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48916
 

 

トランプ時代の米ドル相場〜グローバリゼーション疲れ
高島修(シティグループ証券チーフFXストラテジスト)

10MTVオピニオン


なぜグローバリゼーションの勝ち組であるアメリカやイギリスでアンチ・グローバリゼーションが強まっているのか。それに対してクリアな答えを示しているのが、エマニュエル・トッド氏だ。そう語るシティグループ証券 チーフFXストラテジスト・高島修氏。ではトッド氏の答えはどのようなものなのか。

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アメリカやイギリスはグローバリゼーションの勝ち組ではなかったのかということです。なぜそれらの国でアンチ・グローバリゼーションが強まっているのでしょうか。実際、私は米系金融機関で勤めていますので、アングロサクソン系の優位性を強く感じます。なぜこれほどうまくやってきた人たちが、国としてグローバリゼーションに反する選択をしているのか、疑問に思うのは当然だと思います。

これに対してクリアな答えを示しているのが、フランス人の人類学者、エマニュエル・トッド氏です。最近、この人の本がいろいろと売れていますので、ご存じの方もいるかと思います。彼がよく使うキーワードが「グローバリゼーション・ファティーグ」で、グローバリゼーションに対する疲弊、疲れのことです。平たくいえばアンチ・グローバリゼーションのことで、これ自体は珍しい概念ではありません。

エマニュエル・トッド氏の指摘で面白いのは次の2点です。英米はグローバリゼーションに成功しすぎたため、貧富の格差が拡大した。だから、国内でグローバリゼーションから取り残された一般の人たちが、グローバリゼーションに対する反感を他の国よりも強めた。つまり、グローバリゼーション・ファティーグは、アングロサクソン系のアメリカ・イギリスだからこそ出ているのだと主張している点です。

彼の主張によると、アングロサクソン系の社会は絶対核家族型だと言います。日本やドイツは子どもが比較的大きくなるまで家で育てるのですが、アングロサクソン系の家庭は比較的小さい頃から子どもを独立させて、個人主義を植え付けさせていきます。ですから、親が持っていた美徳や概念を子どもが引き継ぎにくい環境にあります。ですから、アングロサクソン系の社会では、数十年に一度、非連続的な大きな変化が発生しやすいのです。

その一つが1980年代のサッチャー革命、レーガン革命(あるいはレーガノミクス)であり、これらによって両国は個人主義と新自由主義を徹底していきました。また、アメリカとイギリスはもともと覇権国家としての側面もあったために、グローバリゼーションに成功していったのです。その成功が大きくなりすぎたがゆえに貧富の格差が拡大し、グローバリゼーション疲れが起きていると、彼は主張しているのです。

こうした主張が正しければ、トランプ革命やブレクジットはサッチャー革命やレーガノミクスによって加速した英米主導の個人主義・新自由主義の流れを大きく変えていく転換点になっているのかもしれません。

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トランプ時代の米ドル相場〜グローバリゼーション疲れ
提供元:10MTVオピニオン
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48906



「偉大な田舎者」トランプが世界経済を混乱させる
分断される世界で日本は闘えるのか
2017.1.13(金) 池田 信夫
会見で再びトランプ節さく裂、メディア叩きに支持者ら歓声
米ニューヨークで記者会見するドナルド・トランプ次期大統領(2017年1月11日撮影)。(c)AFP/DON EMMERT 〔AFPBB News〕
アメリカのトランプ次期大統領の当選後初めての記者会見が行なわれたが、口汚いだけで中身はほとんどなかった。経済については、生産拠点の海外移転に「重い国境税」をかけると主張し、「中国や日本やメキシコに対する貿易赤字で多額の損失が出ている」と日本を名指しした。

よくも悪くも、彼は平均的なアメリカ人だ。日本人の知っている知的なアメリカ人は東海岸の一部にいるだけで、中西部の白人はトランプのように太った田舎者である。普通のアメリカ人が普通の大統領を選ぶのは民主制として当然だが、世界経済への影響は大きい。

分断されたアメリカがトランプ大統領を生んだ

これまでトランプは一貫してメキシコ人を敵視し、「国境に壁を築く」という計画を今回も表明した。これは突飛な笑い話と思われがちだが、アメリカ社会の最大の問題をシンボリックに表現している。

アメリカの最大の問題は、国内が分断されていることだ。白人はキリスト教と英米文化を中心とするアメリカの伝統になじんでいるが、非白人は世界中から異質の文化を持ち込んでくる。かつてはその最大の要因は黒人で、1960年代の公民権運動以来、彼らを同化させてきた理念がポリティカル・コレクトネス(政治的な正しさ)だった。

公民権運動は黒人差別をなくして「機会均等」を実現する運動だったが、黒人の置かれている劣悪な条件を是正するには、彼らを逆に優遇することが必要だという「結果の平等」の考え方が出てきた。それが大学の定員を人種ごとに割り当てるなどのアファーマティブ・アクション(積極的是正措置)だ。

日本語に訳せないことで明らかなように、これらはアメリカの特殊な問題だが、90年代から流れが変わってきた。どこの国でもエリートは「多文化の共生」などのきれいごとを言うが、大衆は反対する。それが冷戦期の資本主義と社会主義の対立が終わったあと、エリートと大衆の対立を招いてポピュリズムを生んだのだ。

特に重要なのは黒人ではなく、メキシコ人などのヒスパニック(スペイン語系)が増えてきたことだ。黒人はアメリカに同化しており、英語を話してキリスト教を信じているので、アメリカ的な価値を共有しているが、メキシコ人にはスペイン語しか話さない移民が多い。彼らは人口の15%を占め、そのうち不法移民が1000万人以上いる。

これは他国にはどうでもいい問題だが、アメリカ人にとっては身近で深刻な問題であり、特に白人には不満が強い。そのタブーに挑戦したのがトランプだった。

ポピュリズムで世界は「オレサマ化」する

国民がその代表を選ぶのが民主制だから、アメリカ人の低い知的水準を代表する大統領が選ばれるのは当然だが、今まではそれを官僚やメディアなどワシントンのエリートが阻止してきた。ところがインターネットでエリートが「中抜き」された結果、一種の「直接民主制」としてトランプが出てきた。

しかしトランプ大統領が暴言を実行するのは、容易ではない。合衆国憲法では大統領には予算編成権も法案提出権もなく、宣戦布告もできない。それは憲法が、民主制によってトランプのようなポピュリストが出てくることを想定してつくられたからだ。建国の父の先見の明は、200年以上たって効果を発揮したのだ。

「三権分立」というのも神話で、実際には連邦議会が強い権限をもち、与党の決定を大統領が執行するので、彼が与党を代表しているときは強いが、与野党がねじれると何も決まらない。オバマ大統領のようにずっと少数与党だと何もできないが、それは彼が無能だったからではなく、制度的な欠陥なのだ。

この点でトランプは、与党の共和党が上下両院で多数派になったので、オバマより「強いリーダー」になる可能性がある。しかし彼の立場は、共和党内では非主流の右派なので、彼が選挙で打ち出したような民族差別を共和党が法案化することは考えられない。

アメリカ人のパスポート保有率は30%で、7割は世界を知らない田舎者だ。他国といえばよその州のことだから、アメリカ合衆国全体の利益は考えるが、その外の世界情勢には関心がない。

このような孤立主義はアメリカの伝統で、第1次大戦後にアメリカが世界のリーダーになったとき、ウィルソン大統領は国際連盟を創設したが、議会は承認しなかった。アメリカのエリートの「リベラルな国際主義」と議会に代表を送る大衆の対立は、100年前から始まっていたのだ。

エリートは「世界全体の公益」を考えるというが、そんな抽象的な理念があるのは彼らの脳内だけだ。大衆は具体的な国益だけを考えるので、彼らが合理的に行動したら、世界が分断されるのは当然だ。世界が分断されて「オレサマ化」する傾向は、今後も続くだろう。

トランプを「外圧」として利用しよう

「日本との貿易で損失が出ている」と言うトランプは、いまだに1980年代の貿易摩擦のようなイメージをもっているようだ。トヨタのメキシコ工場にも介入し、ツイッターで「トヨタに35%の関税をかける」と公言したが、そんな権限は大統領にはない。

そもそもトヨタのメキシコ工場はカナダから移転するので、アメリカの雇用とは無関係だ。個別の介入で「雇用創出」はできない。雇用はGDPの従属変数だから、雇用を増やすには成長するしかないのだ。

トランプは、大統領就任の初日にTPP(環太平洋経済連携協定)から脱退すると表明したが、これは大統領には拒否権があるから可能だ。しかし「国境税」をかけるのは議会であり、大統領にはできない。NAFTA(北米自由貿易協定)から脱退することは不可能だ。

根本的な間違いは、貿易赤字は損失ではないということだ。経常収支の赤字は資本収支の黒字(海外に対する借金)と同じだが、世の中に借金をしていない企業はない。民間企業は借金が多すぎると破産するが、基軸通貨国のアメリカは破産しない。むしろ世界の投資がアメリカに集まっていることが、その活力を維持しているのだ。

トランプの政策は、1980年代のレーガン政権をまねている形跡がある。レーガン大統領も経済は何も知らなかった。「日本叩き」でアメリカの製造業を保護しようとして、日米構造協議などで圧力をかけたが、ほとんど成果がなかった。貿易摩擦で得をしたのは日本だった。

構造協議で大店法は廃止され、金融自由化が進み、非関税障壁が見直された。アメリカの日本叩きは見当違いだったが、日本人は外圧がないと動かないので、刺激があった方がいい。日本を変える外圧として、トランプ大統領を利用してはどうだろうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48916


 

【社説】メイ英首相が表明した「誠実な」EU離脱
メイ英首相(写真)は17日の演説で完全かつ誠実なEU離脱を表明した
2017 年 1 月 18 日 19:01 JST

 英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)が昨年の国民投票で決まった後、英国民の関心はブレグジットが「ハード」か「ソフト」かに奪われた。テリーザ・メイ首相は17日の演説で、ブレグジットはEUからの完全かつ誠実な離脱を意味するとし、この議論に事実上の終止符を打った。これは賢明だ。

 メイ首相は、英国は関税のないEU単一市場から離脱し、EUと新たに包括的な自由貿易協定(FTA)を結ぶことを目指すと述べた。英政府はEUの関税同盟を離脱し、EU加盟諸国に対外共通関税(CET)を適用する用意がある。首相によると、英国はモノの貿易を簡素化するためにEUと独自の関税協定を交渉する方針だ。

 この枠組みは、よりソフトなブレグジットの支持者に衝撃を与えた。先週末にメイ首相の演説内容が漏れ伝わったことから、16日のポンド相場は対ドルで1%余り下落した。彼らは何を期待していたのだろうか。国民投票後は何らかの形での離脱は避けられないというのが政治の現実であり、ポンドは17日に反発上昇した。

 EU単一市場にとどまれば、英国は引き続きEUへの資金拠出が求められるほか、EUの経済関連規則やEU司法裁判所の管轄権を受け入れなければならず、政治的に容認し難いほどの移民流入を認める必要がある。EU残留派はこうした譲歩には価値があると主張したが、国民投票では反対に遭った。

 メイ首相の戦略により、EUが離脱交渉中や離脱後の英国を無力にすることは避けられるはずだ。EU単一市場と関税同盟からの離脱は、英政府が諸外国との間で独自の貿易協定を結ぶことを可能にする唯一の方法だ。ドナルド・トランプ次期米大統領は英タイムズ紙に対し、米国は近いうちに英国との二国間貿易協定について交渉を始めるとし、この機会を逃すべきではないと述べた。

 両国が協定を結ぶ見込みであることは、EUに対する影響力という意味でも有益かもしれない。EUの一部からは、EU離脱を検討する可能性がある他の加盟国への教訓として英国に罰を与えたいかのような声が聞こえてくる。こうした向きは交渉をできる限り有利に運びたいと考えており、単一市場へ引き寄せることが切り札だった。メイ首相はこの切り札が出される前に手を打った。

 英国とEUはそれぞれの最善の利益について交渉できる。双方にとって賢明なのは、他方の成功を手助けするよう振る舞うことだ。欧州のモノにとって英国は大きな市場であり、英国は欧州の主な金融センターにとどまりたい。メイ首相は演説で、EUが英国に対して懲罰的な取り決めをすれば、欧州大陸にとって「悲惨な自傷行為」になると警告した。

 EUにとって最大の脅威は、英国が単一市場の外で成功を収めることではない。EUは不満を抱いた市民が求める経済的繁栄をいつまでも実現できずにいる。英国をEU離脱に駆り立てたのは、欧州大陸が移民統制、テロとの闘い、雇用創出や所得拡大に失敗していることだ。

 EUからの完全離脱により、英国の関心は経済成長につながる改革の必要性に集中する可能性もある。ブレグジットが失敗に終わるとの観測から、一部の保守党員は英国を資本と人材の中心地にする上で必要とされる大胆な施策から全く、あるいは少しずつ後ずさりしている。これは投資資金を呼び込むとともに新たな事業を奨励するような税率の設定と、EUが目指しているとみられる高福祉の見直しを指す。

 言い換えれば、メイ首相は国民に対し、自治における次の大きな局面に足を踏み入れているのだと伝えている。こうした考えを促した国民には、何が必要か分かっている。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjbi6CAkMzRAhVKfbwKHWgOBRkQqOcBCBwwAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10504433381807684657504582566762271056458&usg=AFQjCNE0sjJOc6Wdd9T34CQmc3qt_ID6iA


 


日銀は長期金利目標を引き上げるか 超長期国債厳しい1年−日銀支援少、増発 女性と移民が日本の活力源 失敗経験からメリット
http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/898.html  

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