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【第1回】 2018年12月28日 樺沢紫苑 :精神科医・作家
楽しいことをイメージするだけで「免疫力」まで高まる不思議
人生うまくいく人の感情リセット術
Photo:PIXTA
仕事がうまくいかず焦る。人間関係にイライラする。将来のことがなんとなく不安……。そんな「苦しい」感情を放置すると心も体も不健康になり、ますます苦しくなります。本連載では、精神科医の樺沢紫苑氏の新著『人生うまくいく人の感情リセット術』から、脳科学と心理学に基づく科学的メソッドで、一瞬で気持ちをプラスに変える法を紹介していきます。
楽しいことを話し出すと
一瞬で笑顔に変わるのは…
以前、“「苦しい」が「楽しい」に変わる方法”という講習会を開催したとき、簡単なワークをしました。
最初に、名刺サイズのカードを参加者に配ります。そして、仕事や生活で「苦しい」「つらい」「嫌だ」と思うことを、たくさん書いてもらいます。みなさん、次々とカードに書き出していました。
書き終わったあとに、隣の参加者とペアになってもらい、カードのなかから最も「苦しい」と思うことをそれぞれ発表してもらいました。初対面のせいか、みなさん緊張した面持ちで、笑顔もほとんど見られません。
次に、仕事や生活で「楽しい」「幸せ」と思うことを、書いてもらいます。そのあとに、カードのなかで最も「楽しい」と思うことを、それぞれ発表してもらいました。すると、驚くべきことが起こったのです。
「よーい、スタート!」
私のかけ声と同時に、自分の「楽しい」を話し出した参加者の表情が、一瞬でやわらぎ明るくなったのです。ほとんどの人が笑顔を見せ、実に楽しい雰囲気が、会場全体に広がりました。何分か前までは、緊張し、固くなっていた参加者の表情が、ここまで短時間でガラッと変わるとは……。
「楽しい」ことをイメージするだけで、「苦しい」気持ちはリセットされ、楽しい気持ちに変わる。さらには、笑顔まで出てくることが、実験で明らかにされました。
感情をリセットさせると
免疫力まで高まる
人生うまくいく人の感情リセット術 樺沢紫苑
本コラム著者・樺沢紫苑先生の新著が発売中
人間は「楽しい」ことをイメージするだけで「楽しい」気持ちになります。
一方で、「苦しい」ことをイメージするだけで気分が落ち込み、ストレスを感じるようにもなります。
UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の演劇学科で行なわれた実験があります。被験者は、これまでの人生で起こった最も気がめいることについて1日中考え、それを科学者の前で演技しながら表現する、というものです。
実験の間、被験者は2つのグループに分かれて、スタニスラフスキー方式の練習をしました。これは、おびえる場面であれば、おびえたものの記憶を詳細にたどり、実際におびえた感情を引き出しながら演じるというものです。片方のグループには気がめいる記憶を、もう一方のグループには、楽しい記憶だけを思い出して演じてもらいました。
その後、2つのグループから数回採血し、免疫機能を継続的に調べたところ、楽しい記憶を思い出したグループの免疫細胞は数も多く活発でした。それに対して、気がめいる記憶を思い出したグループは、免疫細胞の数が著しく低下し、その活動性も低くなり、感染症にかかりやすい状態になっていたのです。
「悲しい」「苦しい」「つらい」ことをイメージするだけで、わずか1日で免疫力が低下するという、驚くべき身体の変化が観察されたのです。
これはつまり、ストレスを受けるか受けないかは、あなたが実際にストレスを受けているかどうかが問題ではないということ。実際は、あなたの頭のなかが「苦しい」と感じているか、「苦しい」で埋め尽くされているかによって決まるのです。
ですから、「苦しい」からといって、「苦しい」ことばかりを考えると、余計にストレスホルモンを増加させ、ストレスの悪影響を受けてしまうのです。
乗り越えた自分をイメージすると
モチベーションがわく
「苦しい」ときこそ、「楽しい」ことをイメージしなさい!
そう言われても、なかなか簡単にはできません。
でも、安心してください。誰でも簡単にできるイメージ・トレーニングがあります。
それは、「苦しいを乗り越えた自分」をイメージすること。
「今の困難を乗り越え成長した自分」をイメージするのです。
加圧トレーニングをしていると、「猛烈に苦しい」「もう頑張れない」と思うときがあります。そんなとき、心のなかで「10キロ減量!」と叫びながら、自分が10キロやせた姿をイメージします。脂肪でふくらんだメタボ腹ではない、筋肉で引き締まったお腹を想像するのです。
そうすると、不思議なことに「苦しい」は消えてなくなり、「まだまだ頑張るぞ!」とモチベーションがわいてきます。
これはもちろん、ビジネスシーンでも応用できます。
たとえば、「見積書」提出の締め切りが迫って猛烈に忙しいビジネスマン。
時間に追われながらも、数字を間違うことは絶対にできない、緊迫した状態です。そんなときこそ「楽しい」ことをイメージしてみます。
「これが終わったら、ビールと餃子だ!」
と心のなかで叫び、仕事のあとに祝杯をあげている自分をイメージするのです。
「そんなことで」と思われるかもしれませんが、自分にとって「楽しい」瞬間をイメージすると、間違いなく「苦しい」気持ちは薄まります。
逆に、「苦しい」「つらい」「どうしよう」「間に合わない!」と、悪いことばかり考えると、どんどんパニック状態に陥ります。余計に仕事がはかどらなくなるのです。
肉体は自由でなくとも、精神は自由――。
考えるだけなら何でもできます。どうせなら「楽しい」ことをイメージして、ストレスを吹き飛ばしましょう。
幸福物質ドーパミンを
脳内に大量に分泌させるには
「3億円のドリームジャンボ宝くじ。もし当選したら、どう使う?」
考えただけで、ワクワクしますよね。
「夏休み。1週間の海外旅行。どこに行って、何をしようか?」
まだ、出かけてもいないのに、ガイドブックを片手に、旅行の計画を立てている瞬間、とってもワクワクします。
なぜ、「楽しい」ことを考えただけで、ワクワクするのでしょうか?
それは、「楽しい」をイメージすると、幸福物質のドーパミンが分泌されるからです。
ドーパミンは不思議な物質です。
目標を達成して「やったー!」と大喜びする瞬間にドーパミンが出ている、というのは感覚的にも理解しやすいと思います。実は、ドーパミンは目標を立てるだけでも分泌されるのです。
宝くじでいえば、「買ったとき(当選をイメージしたとき)」と「当選したとき(結果が出たとき)」の2回分泌するイメージです。
目標を明確にイメージし、実現したときの自分を想像すればするほど、ドーパミンはたくさん分泌されます。
ビジネスの成功法則の本によく「成功した自分を明確にイメージしよう」と書かれています。その理由は、明確にイメージするほど、ドーパミンが分泌されるからです。
ドーパミンはモチベーションを高める物質です。「やるぞ!」「頑張るぞ!」という気持ちを引き出してくれます。
ドーパミンは、脳の機能をアップさせて、目標の実現を後押しする――。
そんな究極のスーパー脳内物質が、「楽しい」をイメージするだけで分泌されるのです。「楽しい」をイメージしないほうが損というものです。
https://diamond.jp/articles/-/189071?
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