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興奮してもリラックス、コーヒーの作用を解明する カフェインとの賢いつきあい方(前篇)  
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投稿者 うまき 日時 2019 年 3 月 16 日 00:01:19: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

興奮してもリラックス、コーヒーの作用を解明する
カフェインとの賢いつきあい方(前篇)
2019.3.15(金) 漆原 次郎
コーヒー豆などにはカフェインが含まれている。豆を炒った粉を煮出したコーヒーからも、私たち人はカフェインの作用を受ける。
 眠気を覚ましたいときや、仕事で気合いを入れたいとき、コーヒーを飲む。コーヒーに含まれる「カフェイン」の作用を期待してのことだ。たしかに、コーヒーを飲んだあとは、気分が高まるような気がしないでもない。

 全日本コーヒー協会が行った「コーヒーの需要動向に関する基本調査」によると、日本における1週間のコーヒー飲用杯数は、2016年で平均11.09杯という。カフェインは、コーヒーのほか、緑茶や紅茶などの各種お茶、またエナジードリンクなどにも含まれている。量の多少はあれ、私たちは日常的にカフェインを摂取しているのだ。

 今回は、かくも身近な「カフェイン」について学び直したい。体への作用とはどういったものだろうか。「眠気覚まし」や「興奮」の効果はよく言われているが、他に言われる「リラックス」や「酔い覚まし」などの効果はあるのだろうか。

 カフェインをめぐる数々の疑問を、専門家に投げかけてみた。応じてくれたのは、元東京福祉大学教授の栗原久氏。幅広くカフェインの作用について研究し、『カフェインの科学』という著書も出している。

 前篇では栗原氏に、カフェインとはどんな物質で、どんな作用があるかを聞いてみた。乱用薬物などとは一線を画す「効き目のほどよさ」が特徴のひとつといえそうだ。後篇ではより具体的に、カフェインとの賢いつきあい方についてアドバイスを受けることにする。

人類、コーヒーの興奮作用に気づく
栗原久氏(くりばら・ひさし)氏。元東京福祉大学教授。医学博士。群馬大学大学院工学研究科応用化学専攻修士課程修了後、同大学医学部にて助手(行動医学研究施設行動分析学部門)。途中、米国ニュージャージー州立ラトガース大学心理学教室、またテキサス大学ヘルスサイエンスセンター・サンアントニオ校薬理学教室への留学を経て、1997年、群馬大学医学部助教授。2006年より東京福祉大学教授。2018年に定年退職。カフェイン研究は、1980年代に起きた咳止め薬「ブロン」乱用問題を機に本格化。著書に『カフェインの科学 コーヒー、茶、チョコレートの薬理作用』(学会出版センター刊)など。出身・在住地である群馬県への愛が深く、NPO赤城自然塾による「赤城山検定」策定などにも従事。
――カフェインとは、どのような物質でしょうか。

栗原久氏(以下、敬称略) カフェインは「アルカロイド」とよばれる、窒素の原子(N)を含み、苦みを呈する物質の一種です。コーヒーの果実、また茶葉などに含まれていて、抽出した粉末は、舐められないほどの苦味を持ちます。

――コーヒーノキなどの植物は、そもそもなぜカフェインを持っているのでしょうか。

栗原 苦みを持っていれば動物、特に昆虫に食べられにくくなります。カフェインなどの苦み成分を持つ植物が生き残り、いまに至ったわけです。

――動物が普通は避けるカフェインを、人類は積極的に摂取しているわけですか。

栗原 ええ。もともと人類は、「コーヒーチェリー」とよばれるコーヒーの果肉を食べることから、カフェイン摂取を始めたものと考えられます。

 コーヒーチェリーは熟すと赤くなり、果糖が含まれるため甘くなります。人類はこの甘い果肉を食料にしたのでしょう。同時に、この果肉を食べると気分が興奮し、身体のパフォーマンスが高まるということにも気づいたのです。

 人類は、ほぼ体毛をもたず、発汗で体温調節できることから、長時間にわたり獲物を追いかけることができます。この得意技をさらに生かすうえで、カフェイン摂取は役立ったわけです。

 ほかに、チャノキの葉からも、興奮し、パフォーマンスが高まる効果を見出していたものと思います。

コーヒーノキの果実のうち、成熟して赤紅色になったものは「コーヒーチェリー」とよばれる。果肉の中には、2個の種子が包まれており、それが「コーヒー豆」。
――果肉の中の種子であるコーヒー豆を、わざわざ炒って煮出して「コーヒーとして飲む」という習慣は、どう生じたのでしょう。

栗原 いくつか仮説があります。

 ひとつは、囲炉裏などの火があるところで果肉を食べ、種をペッと捨てたところ、種が焦げて芳ばしい香りが上がり、お湯で煮てみたら美味しく、健胃やパフォーマンス向上の効果も感じられた。それにより焙煎が始まったというものです。

 もうひとつ、果肉を貯蔵していた倉庫が火事になり、焦げ跡から芳香がしたため、豆を焙煎することを発見したという説もあります。

 果肉を食べることは何千年以上も続いてきたものと考えられますが、飲むコーヒーの利用は12世紀ごろから広まったとされます。コーヒーを飲むようにもなったのは、人類にとっての重要な転機といえます。

パフォーマンス向上、気管支拡張、強心、血管収縮・拡張、利尿・・・
――カフェインは、体にどのように作用するのでしょうか。

栗原 まず、いまお話ししたようにパフォーマンスの向上があります。眠気が取れて目が覚めたり、疲労感が軽くなったりというものです。これらは、中枢神経系(脳)に対する作用としてくくることができます。

 また、気管支を拡張させる作用もあります。気管支喘息などにカフェイン摂取は有効とされています。

 さらに、心臓を刺激して機能を活発にさせるといった強心の作用もあります。

 薬理学的に有効とされる主なものは、これら3つです。

――他の作用はいかがでしょうか。

栗原 血管を収縮させたり拡張させたりといった作用もあります。脳の血管に対しては、収縮させるほうに働きます。脳の血管が広がってズキンズキンと感じるような偏頭痛に対しては、それを抑えることになるので有効です。

 逆に、手の先などの末梢血管には、拡張させるほうに働きます。末梢の血管が広がることで、血行はよくなります。

――利尿作用についても実感するのですが。

栗原 それもあります。カフェインは心臓の働きを活発にさせ、末梢血管を拡張させもするので、腎臓を通過する血液の量が増えます。腎臓でろ過される水分の量が増えるため、それが利尿作用として現れるわけです。

 特に寒い時期には、もともと交感神経が興奮状態にあって、心臓の働きは活発で血流が増えるなどしています。そこにカフェインの作用が加わるため、尿が出やすくなります。逆に暑い時期は、汗をかいて脱水傾向になっているため、あまり影響はありません。

「恐怖を打ち消す」というリラックス効果
――巷でいわれているカフェインの作用や効果についてもお聞きします。小説などで「コーヒーを飲んで体を温めて」という表現が見られますが、こうした効果はあるのでしょうか。

栗原 多少はあるかもしれませんが、それほどではありません。たしかにカフェインには代謝を高める作用もあり、熱産生は増します。けれども、皮膚の辺りの末梢血管が広がることで、熱を逃してもいます。このふたつはほとんど打ち消しあっていることになります。

――「コーヒーを飲んでリラックスして」という表現も小説などで見かけます。脳を興奮させる作用と相反する気がしますが・・・。

栗原 たしかに矛盾しているように思われるかもしれませんね。

 けれども、「リラックス」という状態を「不安や恐怖を打ち消す」状態と考えると、そう間違ってはいません。カフェインにはそうした効果があるからです。

 動物を使った研究を紹介すると、空腹のネズミが餌を取ると電気刺激を与えられる実験があります。餌を得る「快」と、電気刺激を受ける「不快」の程度が、同じくらいになる状況を作ります。そうした中でカフェインを与えられたネズミは、餌を取る率が上がったのです。恐怖などを打ち消しているものといえます。

 リラックス効果についてはもうひとつ、コーヒーやお茶には香り成分もあります。こうした香りも、巷で言われているリラックス効果と関係していると考えられます。

――運動競技に臨む人にとってのカフェイン摂取も効果的でしょうか。

栗原 そういえます。瞬発力に関係する運動と、持久力に関係する運動のどちらでもパフォーマンスを向上させます。

 瞬発系については、反応が早くなります。たとえば、相撲の立ち合いのような、ほんの一瞬の素早さを必要とするような場面で、カフェインを摂取しておくことは有効といえます。

 持久系についても、脳が興奮するため、「疲れたからこれ以上は危険だ。もう運動するな」という脳からのブレーキがかかりにくくなります。結果、パフォーマンス向上につながるわけです。実際、長距離走やトライアスロンの選手たちの多くは給水のとき、糖分の他にカフェインも入ったドリンクを補給しています。

乱用薬物とコーヒーの違いとは
――カフェイン摂取の作用に、個人差はあるのでしょうか。

栗原 あります。カフェインは肝臓で代謝され、腎臓で排泄されるため、まず、これらに障害のある人では代謝や排泄が遅れ、相対的にカフェインの作用が強くなります。

 また、男性より女性のほうが代謝・排泄は少し遅いとされます。特に妊娠中の方は遅くなります。本人だけでなく、胎盤で通じている胎児への影響も考えると、妊婦さんは、脳に作用するような物質の摂取を控えたほうがよいでしょう。

 子どもも原則的には、強くカフェインを含むようなものは摂らないほうがよいといえます。脳の成長は18〜20歳でピークを迎えますが、その成長途上にある子どもも、脳を興奮させる物質を摂ると、感度が高まってしまう増感現象をきたすおそれがあります。

――個人を考えても、カフェインが効くときと効かないときがある気がします。

栗原 それもあります。自分がどういう状態にあるかで変わってくるのです。

 眠くて仕方ないようなときは、カフェインを摂って多少は脳を興奮させたとしても、眠気が勝って寝てしまいます。一方、眠気がほどほどのときは、カフェインの作用が上回って、眠らないで済む、あるいは眠れなくなる、といったことになります。

 私たちの体には日周リズムもあります。起床後の朝や、体温のピークを迎える午後3時過ぎは、カフェインを摂取すると、脳が興奮するなどの効き目は強くなります。

――脳の興奮作用などはあっても、覚せい剤などと違って、カフェインは日常的に摂ってよいことになっています。作用がさほど強くないからでしょうか。

栗原 そうです。覚せい剤や麻薬などの乱用薬物と、コーヒーやお茶などの嗜好品との違いは、「その物質なしにいられないかどうか」です。乱用薬物は、自分の体が壊れてでも欲してしまうものですが、嗜好品はそうはなりません。コーヒーを飲みたくて、コーヒーを盗むような人はまずいませんよね。

 嗜好品に使われるカフェインのようなものは、長い人類の歴史においてずっと利用されてきたものです。それは、人びとの人生にとってプラスになるからこそ。一時的に何かよからぬ問題が起きたとしても、全否定するものではないと思います。

(後篇へつづく)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55734  

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