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 群馬大学病院の事故でわかる日本医療の大問題  インフォームド・コンセントがなされていない
http://www.asyura2.com/16/iryo5/msg/280.html
投稿者 軽毛 日時 2016 年 8 月 30 日 10:19:03: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

2016年8月30日 勝村久司

群馬大学病院の事故でわかる日本医療の大問題

群馬大学医学部附属病院の腹腔鏡手術等による医療事故の報告書が7月末に公表された。日本では相変わらず手術や投薬のミスなどによる医療事故の報道が絶えない。患者側の医療不信も根強く残っている。そこで、DOL編集部では、かつて陣痛促進剤による被害で長女を失い、医療事故や薬害の再発防止に向けた市民運動に取り組む勝村久司氏に、本件に関して執筆を依頼した。同氏は厚生労働省の「医療安全対策検討ワーキンググループ」や「中央社会保険医療協議会」、日本医療機能評価機構の産科医療補償制度再発防止委員会などの委員を歴任。群馬大学附属病院の医療事故調査委員も務めている。
実は2度目の調査報告書だった

群馬大学病院の医療事故
写真はイメージです

 2016年7月30日、群馬大学医学部附属病院で手術後に患者が相次いで死亡した医療事故の調査報告書が公表され、大きく報道されました。
 実は、一連の事故は2014年夏から発覚しており、翌年には1度、事故調査報告書がまとめられていました。したがって、今回公表されたものは、やり直しをした2度目の事故調査報告書だったのです。
 これまでの経緯は次の通りです。
 同病院は、2010年12月から2014年6月までの間に確認された92例の腹腔鏡下肝切除術のうち、58例が保険適用外の疑いがあり、そのうちの8例が術後4ヵ月以内に亡くなっていたとして、2014年夏に最初の事故調査委員会を立ち上げました。
かつむら・ひさし
1961年生まれ。京都教育大学理学科卒業。1990年、陣痛促進剤による被害で長女を失い、医療事故や薬害などの市民運動に取り組む。厚生労働省の「医療安全対策検討ワーキンググループ」や「中央社会保険医療協議会」、日本医療機能評価機構の産科医療補償制度再発防止委員会などの委員を歴任。群馬大学附属病院の医療事故調査委員にも就任した。著書に『ぼくの星の王子さまへ』(幻冬舎文庫)、共著書に『どうなる!どうする?医療事故調査制度』(さいろ社)など。
 その委員会には、5名の外部委員が含まれているとされていましたが、そのうちの4名は、最初の会議に出席を依頼されたのみで、それ以降は会議に呼ばれておらず、実質的に議論に参加できていませんでした。しかも、参加を続けた残りの1名は、病院の顧問弁護士であり、とても外部委員と呼べるものではありませんでした。さらに、2015年3月にまとめられた報告書の内容を遺族に説明する際に、病院側が勝手に加筆した箇所があったことがわかるなど、事故調査のあり方自体が大きく批判され、信頼性が揺らぐこととなったのです。
 そのため、大学は、2015年8月末に、完全に外部委員だけからなる新たな事故調査委員会を設置し、調査をやり直すことを決めました。新たな委員会は6名で構成され、筆者も委員の一人となりました。
 この委員会は、1度目の委員会が対象とした腹腔鏡下肝切除術死亡8事例に加え、開腹肝切除術死亡10事例を併せた18事例の事故を対象にしました。そもそも、群馬大学の腹腔鏡による手術の事故は、千葉県立がんセンターで腹腔鏡の手術事故が多発したことがきっかけで発覚したものであり、全国的に腹腔鏡の手術の安全性が問われる事態でしたが、加えて、群馬大学では、腹腔鏡ではない通常の開腹手術でも死亡事例が相次いでいたことが発覚したための対象の拡大でした。

病院主導の事故調査では再発防止は困難
群大の事故は日本の医療界全体の問題

 群馬大学の1度目の医療事故調査の例でもわかるように、病院側が主導している医療事故調査では、健全に原因を分析し、本気で再発防止につなげることは困難です。そのため、きちんとした医療事故調査がなされてこなかった日本の医療は、新たな技術である腹腔鏡による手術だけでなく、従来から行われていた開腹手術でさえ、長年にわたり、その質や安全性を吟味することが十分にされてこなかった可能性があります。
 すなわち、今回の一連の事故は、群馬大学の中の特異で個性的な原因を探るというよりは、日本の医療界全体に横たわる原因を探るものでもあったのです。
 その一つに「インフォームド・コンセント」の問題があります。
 1度目の事故調査報告書では、調査対象とした腹腔鏡手術後の死亡例8例全てにおいて、それぞれ、「手術前のインフォームド・コンセントにおいて,代替治療の選択肢,合併症や死亡率の具体的データが示された記録がないことから,不十分な説明であったと判断した。」と記載されました。そして、その記載に対して、担当した主治医は以下のような反論文を出しました。
「インフォームド・コンセントについては、群大病院の指針に則って1時間以上かけて行っていた。診療録に記載していなかったことについては、反省している。手術説明同意書では、「予定術式」「病名」「入院期間及び手術日」「術式」「合併症」「説明医師氏名」「患者氏名」「立会人住所・氏名」を記載し、「手術説明図」も使っていたことから、「簡単な術式」「合併症」しか記載されていないとする報告書の指摘は正しくない。」
 それだけに、2度目の報告書では、インフォームド・コンセントの問題は、重要な論点の一つでした。
 実際には、手術日の前日などに主治医が主張するような説明がされていたようです。しかし、「1時間以上」というのは言い過ぎではないか、インフォームド・コンセントの際には看護師も同席するべきだが、ほとんどされていなかったのではないか、カルテに記載がないものをやったと認めてよいのか、などの指摘もされてしかるべきものでした。
 ただ、2度目の報告書では、そのようなレベルの問題ではなく、「そもそも、本来なされるべきインフォームド・コンセント説明、適切な方法、適切なタイミングでなされていなかったことが問題である」という主旨の記載になりました。

インフォームド・コンセントの意味
日本では勘違いの医療者も多い

 そもそも、インフォームド・コンセントとは何でしょうか。

 日本では、単に「説明と同意」と訳されがちなために、手術等の内容の説明をして同意文書にサインをしてもらう、という行為だと勘違いしている医療者も少なくないようです。しかし、これでは、世界中で、「医療の重要な原則」とされているインフォームド・コンセントの主旨が全く反映されていません。
 そのような中で、2011年に日本内科学会が作成した「研修カリキュラム」の「医療倫理のポイント」にインフォームド・コンセントについて記載された内容は、非常に適切な内容になっています。です。
 まず、次のように定義されています。
「インフォームド・コンセントとは、意思決定能力(判断能力、治療同意判断能力などともいう)を備えた患者が、誰からも強制されていない状況下で、十分な情報の開示と医師の奨励を受け、それらを理解したうえで、医師の奨励する診療計画に賛成し,医師に当該行為を患者に行うことを許可することである。」
 さらに、看護的観点からは、「インフォームド・コンセントにおいて看護師は、患者と医療専門職が協同し患者にとって最善の選択と決定がなされるために、患者のアドボケート(擁護者)として、重要な役割を果たす。まず、医療が提供される際に患者の人権が侵害されることを防ぐ、権利擁護者としての役割がある。そして、患者が自分自身の価値観やライフスタイルによって、自分のニーズに即した選択が出来るように支援する。患者の自己決定の支援者としての役割もある。さらに、患者の尊厳を守り、最善の選択が出来るように支援し、患者の決定を尊重するという役割も課されている。医師から患者に伝えられた情報の詳細や、その情報を受けた患者の反応を知る為に、看護師は可能な限り情報を伝えられる場や意思決定がなされる場に居合わせることも忘れてはいけない。」と記載されています。

手術前日のインフォームド・コンセント
それでは患者が十分に検討できない

 群馬大学のインフォームド・コンセントの問題が、もし、「手術の前日に、1時間以上かけて行われていて、看護師が同席しており、その旨がカルテにも記載されていた」ならば良かったのでしょうか。それでは、全く的外れです。
 手術のために入院をして、様々な検査をして、「明日いよいよ手術だ」という日に改めて手術の説明を受けてサインをしたとしても、それはインフォームド・コンセントではありません。患者は、もはや「明日よろしくお願いします」としか言えない状況です。
 本当のインフォームド・コンセントは、手術ならば、入院をする前の、外来で手術を選択するか否かを検討するタイミングで行われるべきです。また、そこでは、即時に判断を求めるのではなく、十分な検討時間も患者に与えられるべきです。
 手術の適応があるか、つまり、患者ごとの手術のメリットとデメリットをきちんと比較検討すること、また、手術以外にどのような選択肢があるか、をしっかりと提示し、それぞれの患者ごとのメリットとデメリットを比較し検討すること、そのためには、個々の患者の病状をきちんと共有することと、それぞれの治療法のそれまでの一般的な予後の情報だけでなく、その医療機関やその医師ごとの、これまでの実績も伝えられるべきです。
 そのため、患者や家族も含めた複数の医療者間のチームで検討することが不可欠です。
 ところが群馬大学の一連の事故でも、紹介医や執刀医の間のやりとりだけで実質、治療方針が決められてしまっていることが多く、「その患者に手術の適応があったのか」、「必要だったのか」、「他の選択肢の方が良いのではないか」ということを、患者と共に十分に検討するという過程が経られていません。実際に、「手術の適応がなかった」、つまり「手術をするべきではなかった」と考えられる事例もあり、病院側が、手術数を増やすことを強く意識していたのではないかという指摘もされています。このことが「インフォームド・コンセントがなされていなかった」ということの本質です。
 また、群馬大学の一連の事故の遺族の多くは、術後に合併症が生じ、死亡に至るまでの間に、その間の病状や様態、そこからの治療方針の選択などについても、十分な説明を受けることができなかった、という思いを持っています。
 つまり、患者にとって本当に必要なインフォームド・コンセントのタイミングは、手術ならば、今の日本の医療界で定着している手術の前日等ではなく、治療方針を決める段階、すなわち外来時などに手術を選択するかどうかを決めるときと、術後の合併症の発症時なのです。
 このタイミングのずれが、健全なインフォームド・コンセントがなされていない原因の一つだと思います。

日本で繰り返される医療事故を見れば
共通点があることがわかる

 本来ならば、医療事故と呼ばれるものは、大きく二つに分けることができるはずです。
 一つは、「インフォームド・コンセントの内容が間違っていた」、すなわち、示した選択肢に間違いがあった。治療方針が間違っていた、というような予定していた計画に間違いがあったという医療事故です。その人がその治療の適応とはならない何らかの検査データを見落としていた、等のケースもこれに当てはまります。
 もう一つは、「インフォームド・コンセントの内容通りにできなかった」という医療事故です。例えば、誤って切るべきではないところを切ってしまった、投与するクスリを間違えた、等のように、予定していた計画通りに実施できなかったというものです。
 その上で、日本で繰り返されている医療事故を改めて見てみると共通点があることがわかります。
 群馬大学の一連の事故と同様に大きく報道された、東京女子医大の小児に禁忌のプロポフォールが大量に投与されて死亡していた医療事故でも、投与の事実が、全く患者側に伝えられていませんでした。同様の投与や事故は全国で起こっているのではないか、という危惧もされています。

 また、日本の代表的な医療事故である、不必要な陣痛促進剤(子宮収縮剤・子宮収縮薬)が妊婦の知らない間に過剰に使用されて、子どもが重度の脳性麻痺等になってしまう事故も同じです。
 半世紀にわたり、妊婦の知らない間に過剰に投与されるなどして事故が繰り返されてきており、今も日本の出産の半数近くで使用されているといわれている陣痛促進剤ですが、1974年から日本母性保護医協会(現在の日本産婦人科医会)が全国の産科医に対して再三注意喚起をしてきました。そのうちの1990年1月に発行されたものには下記のような記述があります。
 『・・・当会の行っている妊産婦死亡調査でも死亡原因の中で子宮収縮剤使用後の子宮破裂、弛緩出血の占める比率は高い。また羊水栓塞による死亡例の中で子宮収縮剤を使用した症例が多いのも事実である。(略)訴訟になった例や母体死亡例では子宮収縮剤を用いて分娩を誘発ないし促進している症例が多い。(略)それら症例の中では誘発や促進の適応が不明なものが少なくない。(略)医療施設側の事情によって計画分娩(※筆者注:子宮収縮剤などを使用して出産の日時をコントロールすること)を行うことはトラブルのもとであり、決してすべきものではない。(略)誘発は妊婦および児の利益のために行うという立場を忘れてはならない。・・・』
 この記述からは、薬を使う必要のない母親に、知らない間に薬を使って、事故が繰り返されていることがわかります。
 被害者たちの市民運動により、2010年6月から、この薬の添付文書には、『患者に本剤を用いた分娩誘発、微弱陣痛の治療の必要性及び危険性を十分説明し、同意を得てから本剤を使用すること』と明記されましたが、出産時の事故で重度の脳性まひになった事例の原因分析をしている産科医療補償制度の「再発防止に関する報告書」によると、陣痛促進剤を使用する際に文書で同意を取っているのは、いまだに事故事例の3分の1程度にとどまっています。

日本では医療事故の議論の前に
医療現場から「医療犯罪」をなくすべき

 日本で大きく報道されているこれらの医療事故は、全て、インフォームド・コンセントがなされていない中で起こった事故です。したがって、本来の2種類の医療事故のどちらにもあてはまらず、欧米では、「医療犯罪」として分類されるものなのです。
 本来の医療事故調査は「インフォームド・コンセントの内容に間違いはなかったか」「インフォームド・コンセントの内容通りに医療はなされたのか」を分析するものですが、日本の医療事故調査の現状は、いまだに、「インフォームド・コンセントがなされていない」という大問題を指摘しているという段階なのです。
 日本ではまず、医療者が患者のために誠実に対応しても起こる医療事故の議論をする前に、日本の医療現場から医療犯罪の類をなくしていくことが求められているのです。
◆参考資料等
・群馬大学医学部付属病院 医療事故調査委員会報告書(平成28年7月27日) 
・NHKクローズアップ現代「幼い命がなぜ…〜東京女子医大病院 医療事故の深層〜」(2014年7月22日(火)放送) 
・日本医療機能評価機構 産科医療補償制度再発防止委員会「これまでに取り上げたテーマの分析対象事例の動向について」(2016年3月28日)

http://diamond.jp/articles/-/100258

 

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コメント
 
1. 2016年9月04日 09:44:16 : 4KDxdO8DtE : m_EjDprMHgE[5]
その点、歯科ではインフォームドコンセントのソフトが沢山ある。
保険点数も付かないのに、無理して200万円のソフトを入れて患者に説明している。
歯医者は医者より下に見られているが、その努力たるや医者の比ではない。
インフォームドコンセントのソフトを開発しないと、口では誰も理解しない。

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