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現代ドイツめぐる議論 国内外で見解に相違
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投稿者 あっしら 日時 2016 年 5 月 15 日 01:31:34: Mo7ApAlflbQ6s gqCCwYK1guc
 


[今を読み解く]現代ドイツめぐる議論 国内外で見解に相違
東京大学教授 森井裕一

 ドイツ元外相のゲンシャーが3月末に亡くなった。彼は1974〜92年、18年間にわたって外相を務めた。冷戦下で東西関係を安定させ、コール元首相とともにドイツ統一を成し遂げた。EU条約をまとめ上げた功績も大きい。

 ドイツは経済大国でありながら、過去の影のもと、国際政治の舞台では抑制的な姿勢を維持。EUでも北大西洋条約機構(NATO)でも、信頼できるパートナーの地位を築いた。しかし統一から四半世紀が過ぎ、ドイツに対する批判の声も大きくなってきた。

 今日のドイツをめぐる議論で一番気になるのは、国外からのドイツの見え方と、ドイツ国内での国際情勢の見え方との違いである。国外では、ドイツによる支配のリスクを強調する帝国論が盛んに見られる。ところが国内では、ドイツの政策は規範的にも政策的にも正当なもので、どこに問題があるのかがわからない、なぜEUの他の国々はドイツと同じ政策を展開しようともっと努力しないのかがわからないという認識がある。

●努力理解されず

 労働市場を中心として身を切る苦しい改革をシュレーダー前首相の時代に実現し、労働コストを下げて、ドイツ経済は今日の繁栄の基盤を整えた。それが国内の認識だ。しかし外から見れば、共通通貨ユーロが安く抑えられているおかげでドイツ企業の輸出競争力が強くなっている。それは南欧諸国が債務危機を克服するため、厳しい構造改革の下にあることとの引き換えなのである。ギリシャが選挙という民主的な方法で政権交代によって反乱をおこしても、結局はドイツ主導のユーロという帝国的なシステムによって抑え込まれたことで、ドイツの債権者目線からの政策が継続していると見られるのである。

 経済から見たドイツの今を最も説得力ある形でわかりやすく紹介するのが、田中素香著『ユーロ危機とギリシャ反乱』(岩波新書・2016年)だ。長年の冷徹な分析の成果に基づいて、ドイツの目線とギリシャの目線の対比も織り込みながら、EU経済とユーロの現状と課題を緻密、かつ体系的に論じている。ユーロ圏の中心にありながら、しかし弱者に配慮した安定をめざすような公共財は十分に提供しないために覇権国とは評価できず、かえってシステムの不安定化を招きかねないドイツの立ち位置が見事に示されている。

 財政規律の確立による通貨の安定というドイツ型の理想を追い求めるだけでは、苦境に追い込まれたギリシャが経済的に立ち直ることは難しい。同様に、難民問題に目を向けても、理想を追求することにより、かえって困難な状況がもたらされている。

 ドイツ基本法(憲法)は歴史的背景から、政治的に迫害されている庇護(ひご)申請者を受け入れることを規定している。21世紀の内戦で流出したシリアなど多数の難民にその憲法の理念をそのまま適用し、入国を認めたことで、15年には約110万人の庇護申請者が入国した。通過国となったギリシャやバルカンルートの国々には大きな負担がかかり、EUが築いてきた難民審査ルールと自由な国境通過のルールが傷ついた。

●理念先行の傾向

 三好範英著『ドイツリスク』(光文社新書・15年)は、理想と現実のパラドックスを通して、ドイツ政治の特徴を捉えようとしている。理想を追えば追うほど、現実は裏腹の結果となってしまう。本書の副題にある「夢見る政治」とは、現実をさめた目で見るのではなく、自分の価値観から対象を評価し、理念を先行させる政治と要約できる。

 ドイツ政治は理念的に政策を規定しすぎており、現実との乖離(かいり)が危うさを生むという見方である。思想的な背景から政策を分析すれば印象論に終わってしまいがちだが、長年にわたりドイツと対峙してきたジャーナリストの経験が、脱原発のエネルギー政策、ユーロ、対露・対中関係という世界に影響を与える課題の分析で十分に生かされている。

 ドイツの政治経済について、さらに体系的に、政党システムや代表的な政策分野の構造を把握したければ、西田慎・近藤正基編著『現代ドイツ政治』(ミネルヴァ書房・14年)は最も良い出発点となろう。気鋭の研究者たちによる信頼できる本書は、統一後のドイツの変化を多面的に描き出している。反ユーロから右派的に性格を変えてきた政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の伸長もあり、来年秋の国政選挙へ向けてドイツには一層注目していかねばならない。

[日経新聞5月8日朝刊P.19]

 

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