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「最前線」金門島で実際に見た台湾・中国関係  複雑に絡む利害、微妙な距離感 
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投稿者 軽毛 日時 2016 年 8 月 02 日 08:33:28: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 


上野泰也のエコノミック・ソナー

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/072900054/map.jpg

「最前線」金門島で実際に見た台湾・中国関係

複雑に絡む利害、微妙な距離感

2016年8月2日(火)
上野 泰也
 台湾海峡には金門島や馬祖島といった、台湾(中華民国)の実効支配下にありながら中国本土(中華人民共和国)から目と鼻の先の島がいくつかある。筆者は会社の夏休みを利用して、金門島を今回訪れた。
■台湾(中華民国)が実効支配する金門島と中国本土との位置関係、
そして今回の旅行の経路

台湾は猛暑続きで汗まみれ

 7月中下旬は台風が次々と襲来することが多く、台湾では観光のオフシーズン。ところが今年は異常気象で台風の発生が極端に少ない。このため金門島と台湾本島の都市(嘉義および台北)に筆者が滞在している間、お天気はほとんどの時間、晴れだった。その代わりに猛暑続きで、外を歩き回る筆者のポロシャツは、一日に数回汗まみれ。夕方には乾いた塩分が白い線になって浮かび上がっていた…。

 実は、筆者の今夏の一人旅の行き先としては、バングラデシュが有力候補になっていた。ところが、「地球の歩き方」を読んだ翌日にバングラデシュのダッカで飲食店襲撃テロ事件が発生したため、取りやめとなった。ほかの行き先を再検討する中で、台風が発生しないかどうか、天気図や現地の天気予報を毎日にらんだ上で、休暇入りの数日前になってようやく、台北往復(国内線への乗り継ぎが楽なように台北中心部にある松山空港発着便)のチケットをインターネットで購入した次第である。

金門島と大陸の間で砲声が止んだのは1979年

 1946年からの国共内戦で敗北濃厚になった蒋介石率いる国民党・中華民国政府軍は、1949年に台湾に撤退して拠点とした。そして、大陸にきわめて近いものの彼らが支配下に置き続けた金門島は、1958年夏から秋に中国共産党の人民解放軍によって大量の砲弾が撃ち込まれるなど、最前線の島になった。台湾海峡の緊張状態に米国が介入したため、共産党政権は武力による台湾制圧を断念。しかし、その後も大陸と金門島との間では形式的な砲撃が続けられ、砲声が止んだのは1979年に米中国交正常化が実現してからのことだった。

 台北・松山空港で国内線のチケットを買って、1時間ほどのフライトで金門空港に到着。インフォメーションで宿を予約してもらってから(週末のためほとんどの宿が満室な中、電話をかけまくって一生懸命探してくれた若い女性担当者に感謝!)、タクシーで街に向かうと、景色はのんびりした田舎の風情である。

 けれども、島のあちこちに防空壕や基地として使用された長い地下トンネルがあるほか、北側の海岸には上陸用舟艇の接岸を防ぐためレールを砂浜に斜めに刺した障害物が今でも多数埋め込まれており、最前線の島だったことがよくわかる。


海岸の障害物と対岸のアモイの高層ビル群
中台関係の緊張感の高まりは感じなかった

 台湾の陸軍兵士による榴弾砲の操作実演も見学した。上陸した人民解放軍を国民党の軍隊が撃滅した古寧頭の戦いの記念館もある。そうした軍事関連施設が、平和が保たれている現在、この島の観光の目玉になっている。

 中台関係は、今年1月の台湾総統選挙で民主進歩党(民進党)の蔡英文氏が当選し、5月20日に就任してから、微妙に悪化している。6月25日には中国で台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室の報道官が、蔡英文政権は「(中国大陸と台湾は一つの国だとする)一つの中国の原則という共同の政治的基礎を認めていないので、両岸(中台)の対話メカニズムは既に止まっている」と述べた。台湾独立を志向する蔡政権との当局間対話を中国は事実上停止していたが、当局者が明言したのは初めてだという(6月26日 日本経済新聞)。

 経済の調子が良くないと外交・軍事面での対立・緊張に国民の目を向けさせるという事例は、古今東西枚挙にいとまがない。中国は現在、不動産バブル崩壊後の不良債権問題への対処で抜本的な対応策を打ち出せないまま、経済成長率の下支えに苦慮している。蔡政権発足後、金門島でも少しは緊張感が高まっているのではないかと筆者は考えたのだが、実際にはそうした兆候は見出されなかった。

金門島とアモイの間では、通航の自由化が実現

 金門島と対岸の中国の大都市アモイ(厦門)の間では、2001年から「小三通」と呼ばれる通航の自由化が実現している。金門島からアモイまでフェリーで約35分。だいたい30分に1本と、便数はかなり多い。


金門島からアモイに向かうフェリー
 滞在2日目の朝、一番早い朝8時発の便に乗ってみたら、台湾人・中国人の観光客でかなりの席が埋まっていた。別の政府の支配地域に行くといった緊張感はまったく感じられなかった。元朝日新聞台北支局長である野嶋剛氏の著書『台湾とは何か』を読むと、「金門の人々は、中国に対する警戒心がそれほど強くない。台湾意識も強くない。基本は中台和解支持である。対中国のハードルが台湾本島より低いのである」と書かれていた。

 なお、筆者がたどったこのルート(台北から金門まで国内線で飛んで、フェリーでアモイに入る)は、台北からアモイに飛行機で直接飛ぶよりも安く行けることから人気があるようで(庶民の知恵のようなものか)、台湾の国内線3社が乗り継ぎに便宜を図っていた。中国への入国審査も、現地の人々は慣れており、実にスピーディーである。

中国へ入国、もしかするとスパイと疑われた?

 筆者の場合はどうだったか。中国・北朝鮮国境の都市である延吉から中国に昨年入国・出国したせいか(当コラム2015年9月8日配信「中国側から眺めて分かった『北朝鮮のいま』」参照)、女性係官によるチェックにやや時間がかかった。横に寄ってきたベテランの男性係官が「ちょっとすみません、日本ではいま平成何年になりましたか?」と、小職に突然質問。ちゃんと正しい返答をしたのだが、もしかすると北朝鮮の工作員か何かと疑われたのだろうか。あるいは、天皇陛下の生前退位問題が中国でも報じられたためだったのかもしれない。

 アモイは中国の中で、住宅価格の上昇率の高さが最近目立つ都市の一つである。6月の新築住宅価格の上昇率は前年比+33.6%で、深センに次ぐ第2位。金門島の住民も投資しているらしい。そのためか、高層マンションの建設現場ではクレーンがちゃんと動いていた。

 この都市における観光で筆者のお目当てはコロンス島という島であり、別のフェリーターミナルまでタクシーで30分かけて出向いた。だが、この日は日曜日。行楽に出かける中国人観光客でターミナルはごった返しており、午前中のフェリーは全部満席だったのであきらめた。猛暑の中、代わりに南普陀寺などを観光し、わずか5時間の滞在で、金門島にフェリーで戻った。

仲裁裁判所判決に抗議する若者

 もう1つ筆者が関心を抱いたのが、7月12日に出された南シナ海問題を巡る国際的な仲裁裁判の判決で、「九段線」の内側は主権・権益の及ぶ範囲だという中国の主張が完敗したことへの、台湾の姿勢である。

 この「九段線」は、1947年に中華民国(当時の国民党政府)が引いた「十一段線」がルーツである。同政府が台湾に移った後、中華人民共和国が2本減らして「九段線」にした。したがって、仲裁裁判所の判決を不服とする点で、台湾は中国と同じ立場である。台湾ではすでに述べたように現在は民進党政権だが、総統府は判決が出た12日に声明を発表し、「南シナ海の諸島と関連海域は中華民国(台湾)が所有する。我が国の利益を損なういかなる情勢にも譲歩しない」などと反発した(7月13日 毎日新聞)。

 台湾本島では民国党という政党が、この判決に抗議する署名運動を展開していた。民国党の徐主席が副総統候補として、総統候補の親民党・宋主席とペアで総統選を戦ったが、得票率1割強で落選したことを後で知った。嘉義の在来線駅の前に若い男性が2名。


嘉義駅前で仲裁裁判所判決に抗議する署名運動をしていた若者たち。
 筆者も声をかけられたが、中国語ができないので英語で会話。本当に判決に不服だと彼らは言う。だが、道行く人はつれなく、署名はさほど集まっていなかった。その後、台北中心部のホテルの前でも、若い女性が2人組で同じ活動をしているのを目にした。

 台湾が実効支配する太平島が判決で「島」ではなく「岩」とされたことに抗議する漁船が20日に現地に向かうなど、抗議活動が台湾で広がっているという。

 「太平島は長さ約1.4キロ、最大幅400メートル。淡水が湧き、辺境防備のために200人以上が駐在する。にもかかわらず『人間の居住又は独自の経済的生活を維持することができない岩』とされた」(7月21日 毎日新聞)

 「住民の間では中国への警戒感が根強いが、台湾に不利な判決を日米が支持したことに失望する声も出ている」「国際協調を重視する蔡英文政権は関係国との摩擦を避けたいのが本音で、世論との間で板挟みになっている」(7月21日 日本経済新聞)

複雑な利害関係で結びつく台湾と中国

 1つの問題では共同歩調をとり得るものの、別の問題では根深い対立を解消するのが難しい。中国と台湾の問題は、そうした複雑な絡み合いの中で現代の国際関係が成り立っていることを、あらためて思い起こさせてくれる。

 端的に言えば「白か黒かでは割り切れない」わけで、英国のEU(欧州連合)からの離脱問題の行方などにもあてはまることだろう。

 これは、新たに出てきた材料を、時間の経過とともにマーケットがどのように消化していくのかを考える際にも、有用な視点だと言えそうである。


このコラムについて

上野泰也のエコノミック・ソナー
景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。

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