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行き詰まるグローバル化:欧米市民の多くは貿易の拡大がもはや自分たちの利益になるとは信じていない
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投稿者 あっしら 日時 2016 年 9 月 18 日 04:19:05: Mo7ApAlflbQ6s gqCCwYK1guc
 


[FINANCIAL TIMES]行き詰まるグローバル化
チーフ・エコノミクス・コメンテーター マーティン・ウルフ

 グローバル化の流れは変わったのか。これは極めて重要な問題だ。答えを見つけるには、世界経済や欧米の政治状況をみなければならない。

 ここでは貿易と資本の流れに話を絞ろう。これらの分野ではグローバル化の流れが止まり、一部では流れが逆行していることがはっきり見て取れる。

 米ピーターソン国際経済研究所では、世界全体の国内総生産(GDP)に占める貿易の割合は2008年から頭打ちとなり、第2次世界大戦以降で最も長い停滞期に入ったとみる。英経済政策研究センターの情報サービス「グローバル・トレード・アラート」によると、15年1月から16年3月にかけて世界経済は拡大したが、国際貿易は数量ベースでも伸び悩んだ。

■対外金融資産 減少に転じる

 対外金融資産残高も、07年に世界のGDPに対する比率が57%まで増えた後、減少に転じ、15年は36%に落ちた。GDP比で見た海外直接投資(FDI)にしても、残高は増え続けているが、単年度ベースでは07年の3.3%を大きく下回ったままだ。

 つまり、グローバル化はもはや世界経済の成長のけん引役ではなくなったということだ。こうした状況は以前にもあった。グローバル化は帝国主義が隆盛だった19世紀後半に進展したが、第1次世界大戦で流れが止まり、1929年の世界大恐慌で雲散霧消した。

 第2次大戦後、米国は経済・外交政策の主要テーマにグローバル経済の再建を据えた。帝国主義時代とは異なり、このときは国際経済機関がこの動きを主導した。もし保護主義的な考え方を是とし、国際機関を中傷している米共和党の大統領候補、ドナルド・トランプ氏が大統領に選ばれるようなことがあれば、戦後、米国が進めてきた政策が否定されることになる。

 こうした歴史や、貿易を巡る米国の政治情勢を考えると、今のグローバル化の流れにも同じことが起きるのではないかと考えるのは当然だ。

 グローバル化の失速の要因は、一つには雇用や投資などの機会の大幅な減少がある。例えば、労働集約型の製造業が事実上すべて先進国の外に生産を移したら、その製品の貿易の伸びは当然、鈍るはずだ。同様に、中国で起こった世界史上最大の投資ブームが減速すれば、多くの1次産品に対する需要も落ちるだろう。需要の減退は価格と生産の両方に影響する。

 世界的な信用バブルの終焉(しゅうえん)も、対外金融資産を確実に減少させる。海外投資についても、多くの企業はこの数十年間、海外に拠点をつくり市場開拓を進めてきた努力が報われるだろうが、失敗に終わる企業も少なくない。

 しかし、これがすべてではない。保護主義的な政策が着実に増え、貿易の自由化は行き詰まっている。金融危機後にも新たな規制がかけられたことで、国境を越えたマネーの動きは確実に鈍る。難民や移民に対する反感や貿易の減速も、FDIの伸びを鈍化させるだろう。要するに、今の政策はグローバル化を促さないということだ。

■米大統領候補2人 TPPに反対表明

 促さないどころか足を引っ張っているのが政治だ。好例が米国だろう。トランプ氏は30年代以降で最も保護主義的な大統領候補だ。だが、民主党の大統領候補で米国のアジア重視政策の立役者だったヒラリー・クリントン氏も、環太平洋経済連携協定(TPP)に反対していることは見逃せない。欧州連合(EU)との間で交渉中の環大西洋貿易投資協定(TTIP)は早期の合意が危ぶまれている。世界貿易機関(WTO)の多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)は長期停滞が続いている。

 何より、欧米の一般市民の多くが、貿易拡大がもはや自分たちの利益になるとは信じていないのだ。所得格差が広がり実質所得も増えていないことが数字で示され、安い輸入品の増加を背景に保護主義的な政策が増えていることで、グローバル化への懐疑論が勢いづいている。

 グローバル化が進展するには大国間が平和でなければならない。第1次大戦前の英国や第2次大戦後の米国のような覇権国が必要だと言う人もいるだろう。主要先進国の経済成長が鈍って格差が拡大し、世界のパワーバランスに大きな変化が生じている時には、第1次大戦後と同様、グローバル化の流れが消えてもおかしくない。南シナ海を巡り、米国と中国の間で軍事衝突が起きたらどうなるか。そのような惨事は単に経済にとどまらず、もっと広範な分野に非常に恐ろしい影響を及ぼすだろう。

 グローバル化の行き詰まりは由々しき問題だ。19世紀後半に進展した時は、家計所得の世界的格差が縮小した。80年から2015年にかけ、世界の実質所得は平均2.2倍に増えた。グローバル化によって生まれた雇用や投資の機会は重要だ。他国とかかわらず、自国の殻に閉じこもる内向き志向に、我々の未来があるはずがない。

■利益の平等分配 仕組みなく失敗

 そもそも、グローバル化のもたらす利益が、とりわけ主要先進国で確実に平等に分配されるような仕組みがなかったことが、大きな失敗だった。悪影響を受ける人々に対し、施策を講じなかったことも悲惨な結果をもたらした。だが、経済の動きは止められない。

 生産性が向上し技術革新が進んだことも、雇用と賃金に大きな影響を与えた。これは輸入品増加による影響を上回る。今の困難な問題をすべてグローバル化のせいにしてはならない。

 グローバル化は今、それを推進する政策とともに行き詰まっている。それだけでも経済発展が遅れ、世界の貧困層が豊かになる機会が減少することになる。グローバル化を再び推進するには、これまでとは異なる政策を打ち出すことが国内的にも対外的にも必要だ。果たしてそれは実現するのか。残念ながら、筆者は楽観していない。

(7日付)

[日経新聞9月11日朝刊P.15]

 

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