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「深夜の男」との交渉
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投稿者 あっしら 日時 2016 年 10 月 07 日 03:52:53: Mo7ApAlflbQ6s gqCCwYK1guc
 

(回答先: 平和友好条約の勧め 日ロの領土交渉促すには:戦争後の講和をイメージする「平和条約」の呼称から脱却 投稿者 あっしら 日時 2016 年 10 月 07 日 03:51:10)


[風見鶏]「深夜の男」との交渉

 強権でならすロシアのプーチン大統領は、「深夜の男」としても知られる。深夜に平気で会議を開いたり、外国要人との会談を入れたりするからだ。

 交渉術のひとつという説もあるが、内情に通じた日本政府関係者は明かす。

 「重要決定は彼しか下せないため、とても忙しい。日程上、本当に会談が夜遅くにずれ込んでしまうことも少なくない」

 9月4日から、中国・杭州で開かれた20カ国・地域(G20)。合間に開かれたメルケル・ドイツ首相との会談が始まったのも、やはり深夜だった。

 「あなたに、まだ体力が残っているといいんだが」。こう切り出したプーチン氏に、メルケル氏が「欧州時間ではまだ昼間。問題はない」と応じたという。

 そんなプーチン氏を12月に日本に招き、安倍晋三首相は北方領土交渉の打開をめざす。強い権力をもつ彼と交渉しなければ、解決しない。これが持論だ。

 この発想に異を唱える人は少数だろう。問題は、プーチン氏は「強い指導者」であるという前提が、どこまで正しいのかだ。

 80%台の支持率を誇るプーチン氏だが、実は、政権運営は自転車操業に近いという見方も少なくない。プーチン政権を分析するロシア内外の識者に聞くと、こんな答えが返ってきた。

 いまの支持率は、2014年3月のウクライナのクリミア編入のおかげだ。それまではメディアを動員しても60%台だった。15年秋からのシリア軍事介入で人気を保っているが、制裁で経済が悪化すれば支持率は急落しかねない。

 強権体制を維持するのは、ただでさえ大変だ。首脳はすべて自分で決断し、リスクをとらなければならない。体力的にも心理的にも消耗する。

 政権幹部も同様だ。たとえば、約12年間、外相を務めているラブロフ氏(66)。複数の外交筋によると、彼は過去に数回、プーチン氏に「退任したい」と伝えた。

 「10年以上もやれば、さすがに疲れる。だが、プーチン氏から残留するよう言われ、やめられない」

 だからといって、日ロ関係を打開しようという安倍氏の姿勢が、政治家として間違っているというわけではない。ただ、状況を冷徹に分析し、どこまで交渉に傾斜するのが最善か、精査し続けることも肝心だ。

 日ロは1956年の日ソ共同宣言で、歯舞、色丹の2島を日本に引き渡し、平和条約を結ぶことでいったん合意した。プーチン氏はこれに基づき、北方領土の陸地面積の7%にすぎないこの2島を渡し、最終決着とするつもりだろう。

 彼と14回会談した安倍氏も「先方の意図は分かっている」(周辺)。周辺によると、それでもあえて交渉に臨むのは、次のような信念からだという。

 日本のいちばんの課題は、国力格差が広がる中国にどう向き合うかだ。日米同盟を強めるだけでは足りない。平和条約を結び、中国をにらみ、ロシアともある程度、協調できるようにする必要がある――。

 この路線が正しいかどうかは、結果がすべてだ。うまくいけば、日本の外交基盤は安定する。失敗すれば、対中戦略でロシアからたいした協力を得られず、領土をただ取りされるという、最悪の結末になる。

 その危険は小さくない。ロシアの外交戦略家はこう警告する。「ロシアは中国を警戒しているが、対立はしたくない。しかも日本は米国の同盟国。日本と対中戦略で協力できる余地はかなり限られる」

 プーチン氏との交渉は、一筋縄ではいきそうにない予兆が漂っている。

(編集委員 秋田浩之)

[日経新聞10月2日朝刊P.2]

 

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