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トランピズムの「白人主義」はここから始まった 消去法のアメリカ  トランピズムの源流(1) 
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投稿者 軽毛 日時 2016 年 10 月 11 日 00:49:20: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

トランピズムの「白人主義」はここから始まった 消去法のアメリカ トランピズムの源流(1) オハイオ州ボンドヒル
2016年10月11日(火)
篠原 匡
 米大統領選まで1カ月を切った。世界最大の経済力と軍事力を持つ米国のリーダーを決める唯一無二の争いだが、ともに不支持率が支持率を上回る究極の消去法と化しているのが現状だ。過去2回の討論会では民主党のヒラリー・クリントン候補が政治家としての地力の差を見せつけている。先週金曜に発覚した共和党のドナルド・トランプ候補による過去のセクハラ発言テープの影響も大きく、足元では共和党内のトランプ支持撤回が相次いでいる。だが、脛に傷を持つ者同士の戦いである。今後どう勝負が転ぶのか、予断は許さない。
 予備選が始まって以降、もっと言えば昨年6月に出馬を表明して以降、キワモノ候補のトランプ氏は早晩消え去ると考えられてきた。だが、歯に衣着せぬ直裁的な物言いに加えて、大規模集会とツイッターを駆使した独自の選挙手法で、並みいるライバル候補を蹴落とし、共和党の指名を手に入れた。その後も、物議を醸す発言で墓穴を掘りつつも、クリントン氏と接戦を繰り広げている。

 なぜトランプ氏が失速しないのか――。これは今回の選挙戦を巡る"謎"だが、背景にはクリントン氏に対する有権者の得も言われぬ嫌悪感とともに、グローバリズムが加速した2000年以降、ロウワーミドルや貧困層に転がり落ちた中間層、特に白人ワーキングクラスの不安と絶望が岩盤のように横たわっている。それゆえに、今回のセクハラ発言も彼らの支持率には大きな影響はないだろう。
 米国にはトランプ氏の躍進をして「トランピズム」という言葉が生まれている。人によって使い方が異なるが、大きく言えば、仕事やコミュニティを失った怒りをベースにした反グローバリズム、反貿易、反移民が渾然一体となったポピュリズム的な動きを指す。仮にトランプ氏が大統領選で敗れ去ったとしても、トランプ氏によって可視化されたトランピズムは米国社会に残り続ける。それは、次なるポピュリストの培地になるのだろう。
 低学歴の白人労働者階級を押さえたところでヒスパニックや女性、高学歴層の票を取らなければ、ホワイトハウスには届かない。だが、その中身を見ることは、今後のアメリカを語るうえで無駄ではない。長期的に見れば、人口動態という面で白人がマジョリティではなくなっていくとしても。このコラムでは中西部の「ラストベルト」の街と住民をひもときつつ、トランピズムの断片を見ていく。

(本文敬称略)

かつてのスウィフトン・ビレッジはこぎれいな分譲住宅に姿を変えていた
 若き日の痕跡は跡形もなく消え去っていた。

 オハイオ州シンシナティの郊外にボンドヒルという小さな町がある。およそ7000人の住民の大半を占めるのはアフリカ系米国人、すなわち黒人だ。シンシナティの北側には彼ら黒人のコミュニティが取り囲むように点在しているが、ボンドヒルはそんな町の一つである。

 そのボンドヒルのちょうど真ん中に、真新しい戸建てが立ち並ぶエリアがあった。ビレッジ・オブ・デイブレイクと呼ばれる住宅地、かつてはスウィフトン・ビレッジと呼ばれていた。

 1990年代に取り壊されてからというもの、スウィフトン・ビレッジの存在は歴史の闇に消えていた。ところが、昨年6月にドナルド・トランプが大統領選に出馬して以降、スウィフトン・ビレッジが再び注目を浴び始める。トランプが初めて成功体験を得た場所として。


"Village of Daybreak"の入り口
 1962年、クイーンズやブルックリンで不動産業を営んでいたトランプの父、フレッド・トランプは連邦政府が実施した担保権行使の競売でオハイオ州の住宅団地、スウィフトン・ビレッジを落札した。部屋数約1200個のスウィフトン・ビレッジは連邦政府が融資した公営住宅だが、およそ800戸の空室があり、デベロッパーは破産していた。落札価格は570万ドルと、建設費の半分のコストで手に入れたという。

"First Big Deal"

 父がスウィフトン・ビレッジを取得した当時、トランプはまだ学生だった。だが、父親に物件の管理を任されるようになり、大学やビジネススクールに通っている間も物件の管理などに携わっていた。"First Big Deal"とトランプは著書の"The Art of Deal"(邦題:『トランプ自伝』)で述懐している。

 スウィフトン・ビレッジを所有していた10年間、父とトランプは滞納者を追い出し、すべての窓に白いシャッターを取り付け、アルミの玄関扉をコロニアル風の白い扉に替え、当時は珍しかった新聞広告を出すことで、物件の価値を大きく向上させた。その後、黒人の入居希望者を拒否したとして訴訟を起こされるのだが、1972年に物件を売却した際は600万ドルものキャピタルゲインを上げている。

 不動産ビジネスのセオリーは、相場よりも安く物件を取得し、価値を高めたうえで高く売る(貸す)ことだ。その後、マンハッタンのグランドセントラル駅の真横と立地は最高だが、経営難に陥っていたホテルの再開発に乗り出したり、5番街にあるティファニー本店ビルの空中権を取得してトランプタワーの高層化を実現したり、トランプ氏はその基本原理をベースに不動産王国を構築した。それを思えば、スウィフトン・ビレッジは、不動産王に駆け上がろうとしていた若き日のトランプが、その足がかりを築いた場所と言っても過言ではない。

 もっとも、スウィフトン・ビレッジにはもう一つの意味がある。勃興する中間層が億万長者にのし上がるきっかけをトランプに与え、衰退する中間層が大統領候補に彼を押し上げたという意味が。

 トランプ父子がスウィフトン・ビレッジを取得した1960年代、ボンドヒルで住宅を借り、取得した人々は近隣の製造業で働く白人が中心だった。大衆消費社会の本格化に伴って、シンシナティ周辺に数多くのメーカーが進出、そこで働く白人労働者の住宅需要が増加したためだ。

 「私が子供の頃、ボンドヒルは白人のコミュニティで、とても美しいところだった。我々家族は私が3歳の時にシンシナティのダウンタウンから移り住んだのだが、黒人の家族は私たちを含め5世帯しかいなかったというからね。友人のお父さんはゼネラル・エレクトリック(GE)やP&Gなどの大企業や郵便局で働いていた」

 今もボンドヒルで暮らすボビー・ハンターはこう振り返る。


スウィフトン・ビレッジに隣接していたショッピングモールは更地になっている
 第二次大戦による荒廃を免れた米国は戦後、圧倒的な工業力を背景に高成長を謳歌した。特に60年代は華々しく、新たに生み出された中間層が住宅や自動車、テレビなどの家電製品を買い求め、映画やドラマを通して米国の豊かさやカルチャーが世界中に伝播した。大衆消費社会が本格的に幕を開けた、米国資本主義の黄金期である。

 もっとも、1970年代に入ると、米経済は目に見えて減速し始める。特に、2度の石油危機で物価が高騰、米経済は深刻な景気低迷と高インフレ、高失業率に見舞われた。その後、レーガン大統領の時代に結果としてインフレは収束に向かうが、財政赤字と貿易赤字という双子の赤字という別の問題を抱えることになる。

「向こうには近寄らない方がいい」

 ボンドヒルも1970年代に入ると様変わりした。それまでドアを開けたまま外出しても問題ないような安全なエリアだったが、強盗事件が多発し、ドラッグが出回り、売春婦が車をノックして歩くような地域になった。その背景には景気悪化など様々な要因が絡み合っているが、先のハンターは黒人の急増を理由に挙げる。

 「私も黒人だが、黒人が増えて地域がダメになった。彼らは平気で道にゴミを捨てるし、建物を壊す。そういうことが続くうちに、コミュニティが荒れるんだ。今は再開発でだいぶよくなったが、今もドラッグの売人がうろついている場所は残っている。道路の向こうを見てごらん。道路がゴミだらけだろう。向こうには近寄らない方がいい」

 トランプがどうなったのかと言えば、1972年という絶妙なタイミングで売り抜けた。周囲の環境悪化が理由と言われるが、トランプは環境悪化の中身については詳しく語っていない。増え始めた黒人に嫌悪感を持っていたのは想像に難くない。

 スウィフトン・ビレッジは所有者が変わり、低所得者が集まるスラムと化した後に解体された。

 "First Big Deal"と自身で語っているように、スウィフトン・ビレッジでの成功体験は実業家としてのトランプに大きな影響を与えたのは確かだ。だが、その要因をひもとけば、トランプ流のリノベーションだけでなく、良質の住宅を求める白人の急増という時代の後押しがあった。その意味では、戦後の大量生産・大量消費社会が産み落とした白人労働者階級がトランプを押し上げた。そして再び、白人労働者階級はトランプを押し上げている。

 彼らはいかなる人々なのか。その端緒その断片を見るため、ペンシルべニアの古びた鉄鋼街に飛んだ。(次回は、ペンシルベニア州モネッセン)


ひとつ路地に入ると、ドラッグの売人がうろついている。写真はクスリの最中に火事になったと言われている家

このコラムについて

消去法のアメリカ
いよいよ米大統領選がラストスパートに入った。この連載では、次期大統領が決まるまでの過程を追っていく。民主党候補のクリントン氏と、共和党候補のトランプ氏が直接対決するテレビ討論会。副大統領候補による論戦。重要なイベントを随時、取り上げる。米大統領に誰になるかは米国民だけの問題ではない。日本を含む世界の将来に大きな影響を与える。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/092900073/100600005/  

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