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トランプ流排外主義は世界を危険にさらす オバマケア撤廃必ずしも悲観的でない 「操り人形」トランプ米国に舌なめずりプーチン
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投稿者 軽毛 日時 2016 年 11 月 11 日 00:35:37: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

トランプ流排外主義は世界を危険にさらす

岡部直明「主役なき世界」を読む

「反グローバル主義の不経済学」を学べ
2016年11月11日(金)
岡部 直明
 米国の大統領選挙で予想をくつがえしてドナルド・トランプ氏が選出されたことは、世界に衝撃に与えた。英国の欧州連合(EU)離脱に連鎖して自国第一主義の潮流が広がっていることを裏付けた。差別発言を含むトランプ氏の排外主義が、そのまま実行に移されるなら世界を危険にさらすことになる。それは「米国の分裂」をさらに深刻化させ、米国の時代を終焉させることになりかねない。


次期米国大統領に決まったトランプ氏は9日、勝利宣言をして国民の団結を呼びかけた。しかし、ニューヨークほか全米各地で、「私たちの大統領ではない」「トランプ氏を認めない」といったプラカードを掲げた大規模な抗議デモが起きている。(写真:ロイター・アフロ)
英国のEU離脱と内向き連鎖

 トランプ氏の勝利は、英国のEU離脱決定に連鎖する動きである。英国のEU離脱派が掲げた「英国第一」に続いて、トランプ氏が強調した「米国第一」が受け入れられたことになる。「内向きの連鎖」が英米という主要先進国で起きたのは皮肉である。新自由主義の基本原理に基づいて、グローバリズムを率先して展開してきた英米が足元を揺さぶられて、その原理原則を放棄しているようにもみえる。

 共通しているのは、グローバル経済の恩恵を享受する一部の高所得層とその恩恵を受けられない低所得層との格差が拡大している点にある。その不満が排外主義の誘惑に飛びついたのである。エリート層への根深い不満をかきたてる大衆迎合主義(ポピュリズム)がそこにある。

 危険なのは、この「内向き連鎖」がさらに広がりかねないことだ。来年春のフランスの大統領選で反EUを掲げる極右、国民戦線のルペン党首がどこまで得票するか懸念される。「今日のトランプ」が「明日のルペン」になるとさえいわれる。来秋の独総選挙への影響も心配される。それしだいで、英国のEU離脱で揺らぐEUの今後に大きな影響を及ぼしかねない。台頭する欧州の極右勢力はこぞってトランプ勝利を歓迎し、この風潮に乗ろうとしている。

暴言許した米メディアの罪

 世論調査の予測をくつがえしたトランプ氏の選出は、米メディアの責任が大きい。予測を見誤っただけでなく、トランプ氏を過小評価し、その暴言を許してきたのは大きな問題だった。「メキシコ国境にメキシコのカネで壁を築く」「不法移民1100万人を強制送還する」「イスラム教徒の入国を禁止する」といった排外主義の暴言を徹底して批判するのではなく、メディアを盛り上げる格好の材料にしてしまった。

 ふつうの国なら、ヘイト・スピーチとして規制の対象になるところである。それどころかパワー・ハラスメント、セクシャル・ハラスメントまがいのトランプ氏の言動さえも話題程度ですましてしまった。

 主要メディアは、大統領選の大詰めで一斉に反トランプで足並みをそろえたが、時すでに遅しだった。本来、共和党の大統領候補の選出段階でトランプ氏にノーを突きつけるべきだった。主要メディアには差別発言のトランプ氏の大統領選参戦で番組や紙面が盛り上げれば、それでいいという姿勢がみてとれた。選挙ビジネスを優先して、言論報道機関の役割を後回しにした米メディアの罪は歴史に残るだろう。

深刻化する「米国の分裂」

 トランプ氏は大統領選の勝利宣言で「すべての人の大統領になる」と言い切ったが、大統領選がもたらした「米国の分裂」は深刻だ。白人と黒人、ヒスパニック、アジア系などマイノリティ、そして男性と女性、中高所得層と低所得層の分裂、それに東海岸、西海岸と中西部の地域間の亀裂である。この「米国の分裂」はトランプ大統領の登場で一層、深刻になるはすだ。「2つの米国」があちこちでみられるようになるだろう。

 低所得の白人男性を基盤とするトランプ氏の主張は「古いアメリカ」を代表するものである。「古き良きアメリカ」といえば聞こえはいいが、時代の大きなうねりについていけなかった人々だ。そうした層にもちろん配慮は必要だが、そのために排外主義の誘惑に陥るのは筋違いだ。それではとても「すべての人の大統領」とはいえない。変化を拒まず、むしろ変化を先取りできる活力こそ「移民の国」米国の魅力だったはずだ。

反グローバル主義の不経済学

 トランプ次期大統領の経済、外交、安全保障政策はすべてに不透明だが、かなりはっきりしているのは、反グローバリズムにもとづく排外主義である。それは米国の歴史に残るモンロー主義、孤立主義に近いが、それよりさらに狭量にみえる。

 世界経済がグローバルな相互依存によって成り立っている現実をあえてみようとしないのは大きな懸念材料だ。オバマ政権が主導してきた環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱することを鮮明にしている。民主党のヒラリー・クリントン氏もTPPには慎重姿勢だったが、まだ話し合いの余地はあった。これに比べてトランプ氏の姿勢はかたくなである。クリントン政権時代に成立した北米自由貿易協定(NAFTA)にまで反対しているのだから、EUとの自由貿易協定も論外なのだろう。

 トランプ氏は「成長を倍にする」というが反グローバル主義に陥ったままでは成長はおぼつかない。排外主義に陥れば、景気は悪化し失業は増えるばかりだ。それはトランプ氏が基盤とする低所得の白人層の生活をさらに困窮させるだけだろう。トランプ氏がまず学ぶべきは「反グローバル主義の不経済学」である。

「賢い米国」と「愚かな米国」

 オバマ大統領は「チェンジ」(変革)を掲げて8年前に登場した。その「チェンジ」をまた「チェンジ」すれば、大きな後退になる。

 オバマ大統領が打ち出した変革はおおむね「賢い米国」への選択だったといえる。ブッシュ政権が始めたイラク戦争から撤退し、リーマン・ショック後の米国経済をいち早く立て直した。シェール革命でエネルギーの中東依存から脱した。

 アジア太平洋へのリバランスを求め、中国との新たな協調、日本との同盟強化に動いた。「核兵器なき世界」を目標に掲げ、米大統領として初めて広島を訪問した。一方で、ウクライナ危機やシリア問題をめぐって、ロシアのプーチン政権と対峙している。

 このオバマ政権の選択を逆転させるのは「愚かな米国」への選択になりかねない。トランプ氏は大統領選さなかから、ロシアのプーチン大統領を高く評価している。世界中を脅かせたトランプ大統領の誕生を最も喜んでいるのはプーチン氏だろう。かわりに北大西洋条約機構(NATO)内での米欧の亀裂は深まる恐れがある。

 アジア太平洋での立ち位置も不安視される。安倍晋三政権はまっさきに日米同盟強化を求めたが、トランプ氏には安保ただ乗りの被害者意識が強く、在日米軍の駐留経費の全額負担を求めている。トランプ政権下で日米同盟がきしむ恐れもある。そのなかで日本の核武装論議が浮上する危険もある。オバマ大統領が提唱した「核兵器なき世界」からはますます遠ざかることになる。

大統領選の歴史的改革を

 排外主義を掲げるトランプ氏の登場は、米国民主主義の劣化を物語るものだ。大統領選は米国の建国の歴史を受け継いだ民主主義の基盤かもしれないが、時代が大きく変化するなかで、ほぼ2年もの長い期間が本当に必要なのか。この2年の間に、米国の草の根民主主義が体現できるというが、子供にはとてもみせられない「醜いアメリカ人」の姿が世界に長くさらされるだけではなかったか。

 幌馬車・駅馬車や電報時代以来の選挙制度は、航空機や情報通信が発達した現代に対応して大幅に短縮できるはずだ。選挙にカネがかからなくてすめば、大富豪や有名政治家でなくても参加の道が開けてくる。なにより現職大統領のレームダックの期間が短縮できる。大統領選の期間が長すぎるために、議論は勢い「内向き競争」になり、最強の内向き、排外主義が最後に勝利することになったのである。

 トランプ氏の登場をきっかけに議論すべきは、大統領選そのものの改革だろう。議会だけでなく、大きな罪を犯したメディアや学識経験者も改革案を提案すべきだ。それが堕ちた米国の信認を取り戻すひとつの道だろう。


このコラムについて

岡部直明「主役なき世界」を読む
 世界は、米国一極集中から主役なき多極化の時代へと動き出している。複雑化する世界を読み解き、さらには日本の針路について考察する。
 筆者は日本経済新聞社で、ブリュッセル特派員、ニューヨーク支局長、取締役論説主幹、専務執行役員主幹などを歴任した。
 現在はジャーナリスト/明治大学 研究・知財戦略機構 国際総合研究所 フェロー。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/071400054/111000011/


 

オバマケア撤廃でも「必ずしも悲観的ではない」

もしトランプが大統領になったら…

シスメックス社長が決算会見、トランプ大統領でも影響は限定的
2016年11月11日(金)
河野 紀子
 血液や尿の検査に使う医療機器や試薬の製造・販売を手掛けるシスメックスは、11月10日、2016年4〜9月期の決算説明会を開催した。売上高は1187億9900万円で前年同期比2.4%減、営業利益は270億3000万円で9%減と、減収減益だった。売上高の84%以上を海外事業が占めており、円高の影響を受けた格好だ。


シスメックスの家次恒会長兼社長(写真=行友 重治、撮影は2015年10月)
 中でも米国は、売上高が263億3000万円と、全体の2割以上を占める。特に今期は営業利益が17億4000万円と円ベースでは前年同期比38.3%増と好調に推移した。血液中の赤血球数や白血球数などを測る「ヘマトロジー」領域におけるシェアの拡大が寄与した。

 米国大統領選を制したドナルド・トランプ氏は、就任した場合にオバマケア(医療保険制度改革)の即時撤廃を宣言している。オバマケアによって低所得層を中心に保険加入者が増えた結果、検査を受診する人が増加した。つまり、シスメックスにとってオバマケアは追い風となっていた。トランプ政権の誕生が現実になった今、シスメックスの事業に水を差すことはないのか。決算説明会では、家次恒会長兼社長は、次のようにコメントした。

家次:「(選挙結果が出た)昨日(11月9日)、識者は一斉に『円高が進む』と話していたが、足元を見ると円安で進んでいる。必ずしも悲観的ではない。まだトランプ氏の政策がきちんと出ていないので何とも言えないが、米国ではヘルスケアの株が上がっているとも聞いている」

 「米国事業はヘマトロジーが中心で順調に推移しており、シェアは50%を超えたと認識している。西海岸に拠点を設けた。ここは競合のホームグラウンドでもあるが、攻勢をかけて功を奏している」

 「オバマケアにより物品税がかけられたが、今、一時的に停止している。その効果が4〜9月期は、利益にしてプラス2.6億円あった。これがトランプ政権になると、(物品税は)なくなる可能性が大きい。そうなると我々には若干のプラスになるとみている」(注:オバマケアによる財政負担を相殺するため、医療機器を製造または輸入する企業に物品税を課したが、2016年から2年間凍結している)

──オバマケアの導入は、シスメックスにプラスに働いていたと思うが、なくなった場合、どのような影響があるのか。

家次:「制度は急にやめられないだろう。実際に無保険者は減り、保険を持っている人が広がっている。そういう人から保険を取り上げることはないだろう」

 「一方で、臨床検査の保険点数が引き下げられるかどうか。共和党は規制緩和を進めている。オバマ政権で米国食品医薬品局(FDA)の規制が厳しくなったが、共和党政権になって規制が緩和されると、我々の事業がスムーズに進む可能性があり、こちらはプラスに働くだろうと見ている」


このコラムについて

もしトランプが大統領になったら…
米大統領選の投票日、11月8日まで、レースは秒読みの段階に入った。
共和党の候補、ドナルド・トランプ氏には女性蔑視発言という新たな“逆風”が加わった。
共和党の重鎮たちの間で、同氏を見切る発言が相次いでいる。
だが、トランプ氏はこれまで、いくつもの“試練”を乗り切ってきた。
米兵遺族を中傷する発言をした時にも、「タブーを破った」として評価を下げたが、いつの間にか、民主党のヒラリー・クリントン候補の背中が見える位置に戻ってきた。
クリントン氏が再び体調を崩すことがあれば、支持率が逆転する可能性も否定できない。
「もしトランプが大統領になったら…」。
この仮定は開票が済む、その瞬間まで生き続けそうだ。
日経ビジネスの編集部では、「もしトランプが大統領になったら…」いったい何が起こるのか。
企業の経営者や専門家の方に意見を聞いた。
楽観論あり。悲観論あり。
「トランプ氏の就任が米国の『今』を変える」との意見も。
百家争鳴の議論をお楽しみください。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/101200023/111000038/

 

「トランプ米国」に舌なめずりのプーチン大統領誕生した「操り人形」?

解析ロシア
2016年11月11日(金)
池田 元博

プーチン大統領とトランプ次期米大統領は、蜜月の関係になるのか。(写真はリトアニア首都に描かれている壁画 AP/アフロ)
米大統領選、“影の主役”だったプーチン大統領
 互いに醜聞を抱え、米国史上でもほとんど例のない「嫌われ者」同士の戦いが終わった。米大統領選は激戦の末、共和党候補のドナルド・トランプ氏が民主党候補のヒラリー・クリントン氏を破って勝利した。冷戦の再来といわれるほど冷え込んだ米国とロシアの関係は、政治経験のないトランプ次期政権の下でどうなるのか。
 今回の米大統領選の影の主役はだれか。ロシアのプーチン大統領だったといっても過言ではない。トランプ、クリントン両氏によるテレビ討論会では頻繁に「プーチン」の名前が登場したからだ。
 たとえば10月後半、ラスベガスで開かれた第3回テレビ討論会。
クリントン氏「(プーチン大統領は、あなたのように)米大統領が操り人形のほうが良いと思っているでしょうね」
トランプ氏「いや、操り人形ではない。そうではない」
クリントン氏「明かなことは……」
トランプ氏「操り人形はあなたのほうだ」
 米国のウェブサイトなどへのハッキングやサイバー攻撃を「クレムリンの最高レベルの指示だ」と公言し、そうした防諜(ぼうちょう)活動をトランプ氏が奨励するだけでなく、北大西洋条約機構(NATO)の解体などプーチン大統領が望むことを実現しようとしているとクリントン氏は非難した。
 対するトランプ氏は「米国がロシアと仲良くできれば、それほど悪いことではない」と述べる一方で、クリントン氏がプーチン大統領を嫌いなのは彼の方が賢く、いつも出し抜かれてきたからだと反論した。プーチン大統領は2人の泥仕合の格好のネタとして使われたわけだ。
 では、プーチン大統領自身はそんな米大統領選をどうみていたのか。
随所に垣間見えるトランプ氏への共感
 ロシア南部の保養地ソチで10月末、毎年恒例の内外有識者との会合「バルダイ会議」が開かれた。その会合の質疑応答の場で、大統領はロシアの学者からこんな質問を受けている。
 「海外のマスメディアでは、米大統領選でロシアがお気に入りの候補はトランプ氏だとされています。実際、米国の次期大統領はロシアに、あるいは米ロ関係にどんな役割を果たすでしょうか」
 プーチン大統領はまず、米大統領選における「ロシアのお気に入り」が海外メディアで流布されているのは、クリントン氏を支持する陣営がトランプ氏の陣営に対抗するのが唯一の目的だと言明。こうしたロシアを敵に見立て、トランプ氏をロシアのお気に入りと揶揄(やゆ)する手法は全く有害で、完全なナンセンスだと批判している。
 さらに、どちらの候補が当選するにせよ、実際にどのような政策を履行し、履行しないかは分からないので、「結局は我々にとってどうでもよいことだ」と指摘した。ただし、「米国とロシアとの関係正常化の考えや意向を公の場で語ってくれれば、それを歓迎しないわけにはいかない」とも付け加えている。
 プーチン大統領は米国でのトランプ旋風の背景にも触れ、「何十年にもわたって政権の座に居座り続けるエリート層に疲れた人々の利益を代弁したものだ」などと解説した。最後は「我々は米国民が選んだ、どの大統領とも共に働く」と外交儀礼的な答弁をしたが、トランプ氏への共感が随所に垣間見える発言だったともいえる。
ロシア国民も「トランプ大統領」を支持
 こうしたプーチン大統領の心情は、ロシア社会でも共有されていた。政府系の世論調査会社「全ロシア世論調査センター」が10月に実施した調査では、どちらの米大統領候補が勝てばロシアの国益に合致するかとの質問に対し、トランプ氏が35%、クリントン氏が6%だった。
 また、トランプ氏が勝利すれば、米ロ関係が「よくなる」と予測する回答が29%だったのに対し、クリントン氏の場合はわずか4%。クリントン氏が当選すれば、逆に関係が「悪くなる」とする回答は実に45%に上った。

出所=全ロシア世論調査センター(調査は2016年10月実施)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/040400028/111000017/g1.png

 こうしたロシアの“クリントン嫌い”の一因として、同氏が選挙戦で展開したサイバー攻撃をめぐる対ロ批判が影響していることは疑いがない。ペスコフ大統領報道官などが「ばかげた話だ」とロシア政府の関与を否定したにもかかわらず、執拗にロシアを攻撃していたからだ。
 もっとも米政府は、民主党全国委員会へのサイバー攻撃やクリントン陣営のメール流出などに、「コージーベア」「ファンシーベア」と呼ばれるハッカー集団が関与しているとし、ロシアの情報機関などが「米大統領選を妨害するために仕掛けた」と非難する声明を発表している。クリントン陣営の展開した対ロ批判が、あながち根拠のない話でないことにも留意する必要があるだろう。
クリントン国務長官時代の苦い思い
 ロシア政府の関与の有無はさておき、プーチン政権が内心でトランプ氏の当選を歓迎しているのは確かのようだ。その最大の理由はやはり、「新冷戦」と呼ばれるほど冷え込んだ現在の米ロ関係が、米国の政権交代によって改善する期待が芽生えてきたことだろう。
 「米国第一主義」を掲げるトランプ氏は、“世界の警察官”として世界秩序の形成に積極的に関与してきた従来の米国の指導者とは明らかに違う。「同盟国には米軍の駐留経費をより負担させる」といった主張はその最たるものだ。
 プーチン政権が最も毛嫌いしているNATOの軍事的脅威にしても、トランプ氏は冷戦時代に創設された「NATOは時代遅れ」と断じて物議をかもしたことがある。ちなみに、かつてNATOの東方拡大の第1弾として1999年のチェコ、ハンガリー、ポーランドの加盟を主導したのは、当時のビル・クリントン米大統領。クリントン候補の夫である。
 トランプ氏はプーチン大統領とは面識がないものの、「彼は賢い」と評している。米ロの対話にも前向きだ。ロシアによるクリミア半島の併合に関しても「クリミアの人々はロシアと共に居ることを望んでいるのではないか」と述べ、併合を容認するかのような立場も示していた。選挙戦の発言からみるかぎり、トランプ氏はロシアにとっては願ってもない候補者だったわけだ。
 確かにクリントン氏もオバマ政権の初期に国務長官を務め、米ロの関係改善を促す「リセット」外交を主導した経緯はある。ただ、当時のリセットは米ロの新戦略兵器削減条約(新START)交渉をまとめるのがほぼ唯一の目的で、いわばオバマ大統領が唱えた「核兵器なき世界」の成果を内外にアピールするために利用されただけ、との苦い思いがロシアには根強くある。
 現にオバマ政権は新START発効後、ロシアが強硬に反対してきた欧州でのミサイル防衛(MD)計画を着々と進め、今年5月にはルーマニアで地上配備型の迎撃ミサイル発射基地の運用も始めた。さらに、ウクライナ危機では強硬な対ロ経済制裁を先導し、シリア情勢をめぐっても米ロの停戦協議が決裂すると、新たな対ロ制裁をちらつかせる事態に至っている。
“政治素人”を相手に狙う、対米工作の本格化
 ラブロフ外相は先に「米国に有利になる分野だけ、ロシアと選択的に協力を続ける路線は通用しない」と批判したが、これはオバマ政権に対するプーチン政権の鬱積した不満を代弁したともいえる。仮にクリントン氏が当選すればオバマ外交をほぼ踏襲するとみられただけに、ロシアにとっては「冬の時代」の長期化を覚悟せざるを得ない状況だったわけだ。
 もちろんトランプ氏が当選したからといって、同氏が選挙戦で展開した主張を大統領としてそのまま行動に移すとは限らない。“トランプ・リスク”を背景にした世界の金融・商品市場の動揺が続けば、ロシア経済にとってもマイナスに響く恐れは否定できない。
 ロシアの外交専門家の間でも、全く政治経験のないトランプ氏よりも、外交に詳しいクリントン氏のほうが長期的にみて、ロシアにとってプラスだったのではないかと予測する向きもある。それでも米ロ関係改善への期待がロシアで広がるのは、実質的に16年間も政権を率いる熟練政治家のプーチン大統領なら、政治素人のトランプ氏をうまく操れるとの思惑もあるのかもしれない。
 そのプーチン大統領はさっそく、当選を決めたトランプ氏に祝電を送った。米ロ関係を危機的状況から脱するための「共同作業」に期待するとともに、こんな言葉を付け加えている。
 「対等、相互尊重の原則と、互いの立場を真に考慮した米ロの建設的な対話は、両国国民のみならず国際社会の利益に合致するだろう」――。トランプ氏の当選を追い風に、プーチン政権が自ら望む形での米ロ関係の再構築に向け、対米工作を本格化させていくことは間違いない。


このコラムについて
解析ロシア
世界で今、もっとも影響力のある政治家は誰か。米フォーブス誌の評価もさることながら、真っ先に浮かぶのはやはりプーチン大統領だろう。2000年に大統領に就任して以降、「プーチンのロシア」は大きな存在感を内外に示している。だが、その権威主義的な体制ゆえに、ロシアの実態は逆に見えにくくなったとの指摘もある。日本経済新聞の編集委員がロシアにまつわる様々な出来事を大胆に深読みし、解析していく。

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コメント
 
1. 2016年11月11日 01:54:34 : Oew8aCqKMY : @SpEy3Kzx1M[301]
>「操り人形」トランプ米国に舌なめずりプーチン

もし、トランプが操り人形なら、日本の歴代首相はなんなんだ?

ともかくオバマケアの撤退で米国民の健康や家計がどうなるかには一言も触れず(日本の健康保険制度と違って、貧困層や高齢者を除く国民を出せる保険料に応じて民間保険に割り振るものだったようで、国民にとって、必ずしもいいとは言えないものだったのは堤未果氏の著書で知っている)一企業の儲けがフイになるかどうかを心配して書いている時点でこの人もアレだな。


2. 2016年11月11日 02:22:07 : 9QewkUGcqk : 4QXc8C8kgnU[179]
なんかこう、もっともらしい解説をしてみせる芸は飽きたな。
言い逃れとウソにまみれていて、バカに見える。
昔はオピニオンリーダーとか言って、丁寧に耳を傾けたものだが。

トランプに票を投じた有権者も、もっともらしいく内外を語る政治家がバカに見えるようになったのではないのか。だから政治家以外に投票した。


3. 2016年11月11日 03:27:08 : li2jFYV40s : jyQhe_fn008[1]
岡部 直明www
池田 元博www

すげーバカなのか、既得権益側のおこぼれで仕事してるからなのか
脳みそ入ってるのかね。こいつら


4. 2016年11月11日 06:37:59 : EHNodJa1EY : O2cxAGAJvyo[213]
岡部 直明www
池田 元博www

>すげーバカなのか、既得権益側のおこぼれで仕事してるからなのか

ブリュッセルとニューヨーク以外は知らなくても生活できた人々の一員ですね。


5. 2016年11月11日 06:45:43 : oXHMP61iQs : xRCuKP0hQdE[2]
結局、トランプが誰に操られているのかに関しては記述されていない
操り人形ってヒラリーや安倍のことだろ
CFRとウォール街と戦争屋の手先

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