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米銀行はトランプ氏勝利に歓喜も片思い 外交もシリコンバレーも先行不透明 ポピュリスト次は欧州 トランプH清掃係ヒラリーに
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投稿者 軽毛 日時 2016 年 11 月 11 日 11:47:54: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 


米銀行はトランプ氏勝利に歓喜も、片思い
世界の大手銀行がトランプ氏の勝利に沸いている

By PAUL J. DAVIES
2016 年 11 月 11 日 07:58 JST

 米次期大統領に選出されたドナルド・トランプ氏は、米金融業界に好意を持っていないと言われている。世界の大手銀行がトランプ氏の勝利に沸いているのは皮肉なことだ。

 銀行はトランプ氏が提案している歳出削減と減税措置を好感していると見られる。こうした期待はすでに米国内外のイールドカーブや金融政策期待を形成し始めているが、投資家は過度に熱狂すべきではない。現在の金利水準は、短期で借り入れた資金を長期で貸し出すことにより得られる利益が、危機前の期間はおろか、近年ほどにさえ並ぶのにも程遠い水準だ。

 さらに、トランプ氏が選挙戦中にほのめかした規制緩和が大手銀行に有利になるかはまったく定かでない。米金融業界に関するトランプ氏の発言は軽蔑的であることが多かった。

 トランプ氏の政策は大手銀行よりも規模の比較的小さな銀行に恩恵をもたらすと思われるにもかかわらず、JPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴ、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーなどの大手銀行株は9日、4〜7%超の値上がりとなった。

 また、10日には日本の銀行株も大幅に値上がりし、野村ホールディングスは11%余り上昇した。アジア市場の9日引け後に円がドルに対して7月以来の安値に下落したことを受け、日本銀行の負担が軽減し、銀行の事業環境が改善する可能性が期待された。

 欧州でも数多くの銀行株が大きく買われた。スイスのUBSグループは8.7%高、クレディ・スイスは4.9%高。バークレイズとドイツ銀行も4%以上値上がりした。

 利回り曲線のスティープ化も追い風になっている。銀行は短期預金者に支払う金利と融資から得る金利の差で利益を稼いでいる。この利益の代用指標とされる米2年債と10年債の利回り差は、9日の変動を受けて欧米で2016年序盤以来の大きさに拡大した。

 だが米国では依然として、この利回り差がわずか2年前に比べてはるかに縮小している。当時でさえ、銀行は融資から利益を得るのが困難だと不満を漏らしていた。実際に利益を稼げるようになるまで、まだ先は長い。

 欧州の銀行では、クレディ・スイスとバークレイズの株価が、ドル建ての融資が多いHSBCやスタンダード・チャータードよりも底堅く推移している。クレディ・スイスとバークレイズは米国に大きな投資銀行部門を有しており、トランプ次期大統領が米金融規制改革法(ドッド・フランク法)に変更を加える可能性が高いと見られていることが支援材料となっている。

 ドッド・フランク法は、銀行が危機前に行っていた利益率の高い自己勘定取引を禁じた。トランプ氏のウェブサイトによれば、同氏はドッド・フランク法の廃止を掲げている。他の共和党大統領候補が大手銀行の解体に焦点を当てる中で、トランプ氏はこれを選挙戦のテーマの1つとしていた。

 実際にどのような政策が推進されるかは明らかでないが、米議会が共和党の一党支配体制となる中で、規制緩和の取り組みは進むと見られる。

 一方、海外の銀行にとっては、不利な点もある。すでに米国に持ち株会社の設置を余儀なくされ、資金増強が必要になる可能性がある中で、トランプ氏の保護主義的な姿勢は海外の銀行による資金へのアクセスを妨げる恐れがある。

 トランプ氏は米金融業界において、銀行よりもヘッジファンドに強いつながりがある。双方にとって取引規制の緩和は有利となるが、海外の銀行はすべての恩恵を享受できないかもしれない。

 ただ、トランプ氏のビジネスと銀行との関係は問題が多く、大半の銀行はかなり前から取引をやめている。投資家はトランプ次期大統領が友好的になると確信しすぎるべきではないだろう。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwj0h86G0p_QAhXDxLwKHYChA18QFggdMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11842517604067003472604582429042791189500&usg=AFQjCNEWCb_OzhqN4d5DKVE8WS4mZI_65Q


 

 

 
トランプ氏勝利のカギ、不法移民より貿易問題
かつての工業地域での驚くべき結果に見る有権者の思い
トランプ氏はかつて工業で発展した大都市部で大きく勝利した(写真は鉄鋼業が盛んなオハイオ州スターク郡にあるカフェ)

By GERALD F. SEIB
2016 年 11 月 11 日 10:36 JST

 ニューヨークにあるトランプタワーのエスカレーターで降りてきて大統領選への出馬を表明した日から、ドナルド・トランプ氏の選挙活動はひとつの公約で特徴づけられることが最も多かった。それは、不法移民との戦いだ。

 だが今回の選挙結果をさらに深く検証してみると、トランプ氏を勝たせた本当の理由は従来の自由貿易協定への反対表明であり、全面的な「変革」の訴えであったことがうかがえる。

 この違いは重要だ。トランプ新大統領がどの分野で最も広範な政治的支持が得られるのかを占う手掛かりになるからだ。

 どんな政権交代時であれ、選挙活動中の発言と統治の現実の間にある違いを見極めるのはやっかいだ。その違いは、次期大統領が選挙公約の中で本気で言っていたことと、有権者の投票からどういう類の願いが実際に読み取れるのかの両方に左右される。

 今回の選挙を左右した決定的な要素――トランプ氏の勝利とヒラリー・クリントン氏の僅差での敗北という違いをもたらしたもの――はペンシルベニア、オハイオ、ミシガン、そしてウィスコンシンといった、かつて工業が盛んだったアッパーミッドウエストの州の驚くべき結果だった。ウィスコンシンは1984年以降、ペンシルベニアとミシガンは1988年以降、オハイオは2004年以降、大統領選で共和党候補が勝ったことはなかった。

 だがトランプ氏はこの全ての州で勝利した。ミシガン州でもカミソリの刃一枚ほどのわずかな差でトランプ氏の勝利が確認された。両党の勢力図で民主党を長らく守ってきた「青い壁」が瓦解したのはこの地域だ。

 そこは外国との競争や貿易による圧力などで製造業セクターが雇用喪失とダメージに苦しんできた地域だ。有権者は移民問題よりも大きな懸念を抱えていることは明白だ。

 確かに、これらの州の中にも不法移民が大きな争点になった地域はあるが、たいていは移民の流入が劇的に増えた中小都市だった。トランプ氏が大きく勝ったのは製造業の中心地である大都市部だ。例えば、本紙でも指摘したように、オハイオ州の鉄鋼産業の中心地カントンを含むスターク郡でトランプ氏は17ポイント差で勝利している。ここは4年前の大統領選で両党候補がほぼ引き分けを演じた郡だ。

 トランプ氏に投票した有権者が不法移民に怒りを感じていないと言いたいわけではない。メキシコから入国するヒスパニック系移民を封じるために「壁を築く」というトランプ氏の呼びかけに彼らが応じないと言いたいわけでもない。

 だが、どこの選挙区が赤に染まり、どこが青に染まったのか、得票率の差はどの程度だったのかなど、選挙結果を精査すると、貿易に関するトランプ氏の主張がより大きな影響を持っていたことが分かる。

 全米で実施された出口調査でも同じような図式が浮かび上がる。不法就労の移民に合法的な在留資格を付与する機会を与えるべきかとの問いに、有権者の70%が「イエス」と回答した。「壁」を支持する有権者の意見はほぼ二分され、「イエス」は54%だった。

 もっと分かりやすいのは、トランプ氏に投票した有権者に絞ると、経済問題を最優先課題に挙げた回答者の割合は46%だった一方、移民問題を挙げたのはわずか17%にとどまったことだ。貿易が雇用を奪ったと考える有権者は、それを大きく上回る57%に達した。

 だがこれらの問題以上に、トランプ氏に投票した有権者が最も大きな声を上げて求めていたのはもっと単純なこと、つまり「変革」だった。実に70%が何より重要なことは変革をもたらすことだと回答。大統領にふさわしい経験や適切な判断力、もしくは「自分のような人々を大事にする」人物を選ぶことよりも重要だと回答したのだ。

 変革を切望する人々の願いは、近代のどの大統領よりも異端であるトランプ氏が当選したことによって、ある意味多くの面ですでに満たされたと言えるのは明らかだ。

 だが政治的に、選挙結果は通商分野により大きな影響を及ぼすことになるかもしれない。偶然にも貿易は、トランプ氏が独自に推進できるほどの自由裁量権を持つことになる分野でもある。

 ピーターソン国際経済研究所の貿易アナリスト、ゲイリー・クライド・ハフバウアー氏は、連邦議会がここ数十年間、貿易問題では大きな権限を大統領に委ねてきたと指摘している。同研究所の最近のフォーラムで同氏は「大統領が主導権を握っている」とし、米自由貿易協定(NAFTA)や韓国との貿易協定、あるいは世界貿易機関(WTO)からさえも、大統領は「脱退することができる」と述べた。

 そうなれば経済を破滅させるような貿易戦争がぼっ発すると懸念する声もある。トランプ氏がそこまで踏み込むかどうかは不透明だが、選挙結果を踏まえると、何らかの動きに出ることを思いとどまる可能性は低いように見える。

(筆者のジェラルド・F・サイブはWSJワシントン支局長)

米大統領選特集

トランプ政権移行チーム、ドッド・フランク法「撤廃」に意欲
トランプ新大統領、中国には脅威と好機
トランプ大統領誕生で問われる日米同盟の意義
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjo74360J_QAhWDvbwKHWBWAWAQFggdMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11842517604067003472604582429134264344316&usg=AFQjCNGQONnApS39DkIGflBAdWiOmprzDg

 


 

 
FRBが求める財政刺激策、トランプ氏が実現か
トランプ氏の財政政策は、低金利政策への依存を弱める可能性がある
By JON HILSENRATH
2016 年 11 月 11 日 01:58 JST

 米連邦準備制度理事会(FRB)関係者は長いこと緊縮財政への不満を募らせていた。経済成長を刺激しインフレ率を目標の2%に押し上げようとするFRBの取り組みに足かせとなっていたからだ。米国の緊縮財政はFRBに対する圧力となり、経済成長を維持する上で政府は低金利に依存し続けた。低金利は預金者に負担をかけ、一般市民をいら立たせるといった副作用をもたらした。さらに、経済が再び衝撃に見舞われた場合にFRBが成長てこ入れへ向け利下げする余地もほとんどなくしてしまった。FRB関係者はこの間ずっと、景気をより刺激するような財政政策が後方支援になると訴えてきた。

 米次期大統領に選出されたドナルド・トランプ氏の税制ならびに財政政策は、共和党が議会の過半数を占めることも追い風に、こうした要求を満たす可能性がある。野村証券のエコノミストらはトランプ氏の政策について、3兆ドル(約320兆円)の減税に加え、政府支出の増加を通して向こう10年で経済に1兆ドルが注入されると試算する。野村証券のエコノミスト、ルイス・アレクサンダー氏は「(トランプ氏は)大規模な財政出動を提案している」とし、「少なくとも出だしにおいては成長に好影響となる」と指摘した。

 財政政策による景気刺激の拡大は、低金利による経済成長維持というFRBへの依存が低下することを意味する。投資家は早くもそのように結論づけている。市場が織り込む12月の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ確率は71.5%だ。9日のフェデラルファンド(FF)金利先物の取引高は減少し、トランプ政権下でFRBの緩和策は縮小すると投資家がみていることを示唆した。債券市場からも同様の思惑が読み取れる。米10年債利回りは9日、2.07%に上昇し1月以来の高水準をつけた。

 トランプ氏の経済政策はまさに米経済が必要とするものだというわけではない。経済対策は財政赤字につながり、財源の確保が難しくなる恐れがある。ベビーブーマーが年金生活に入り財政に一段と負荷がかかる時期においてはなおさらだ。トランプ氏の政策は成長と経済効率、さらにメキシコや中国など重要な貿易相手国との関係を損ねかねない。だが短期的には、FRBの負担をいくらか和らげるかもしれない。これは当局者が長らく渇望してきたことだ。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjv0sSi0p_QAhVIw7wKHRBkB6MQFggdMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11842517604067003472604582428541158648230&usg=AFQjCNFZSy7qxo204Jc9kIP5GAVvqzMQdQ


 


トランプ氏の外交政策、真意見えず世界に動揺
長年にわたって定着した同盟関係は崩壊するのか
韓国の浦項で7月に行われた米韓合同軍事演習

By CAROL E. LEE AND DAMIAN PALETTA
2016 年 11 月 11 日 10:55 JST

 【ワシントン】 米大統領選で共和党ドナルド・トランプ氏が勝利したことから、長年にわたって定着した米国の外交・軍事政策に対する不透明感が強まっている。米国の最高司令官の交代に対する不安は世界中で高まっている。

 トランプ氏は選挙戦を通じ、為替問題で中国に強硬姿勢をとり、メキシコとの国境に壁を築いてその費用をメキシコに負担させ、さらにはイランとの核合意を破棄すると主張してきた。また、イスラム教徒の入国禁止や、テロ行為の歴史がある国からの米国入国も阻止すると表明している。

 こうした主張は米国の同盟国を混乱させており、米国に対して従来の国際的役割を担うよう求める声も出てきている。トランプ氏は9日、世界各国の指導者との接触を開始。イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相やエジプトのアブデルファタハ・シシ大統領、サウジアラビアのサルマン国王などと電話で会談した。

 トランプ氏の公約や警告が新政権の外交政策にどのように反映されるのかは、今のところほとんど分からない。選挙戦ではあいまいな形で見解を示し、その後、それを明確に述べる段階で姿勢を変化させてきた。例えば、アジアや中東の同盟国は核を保有すべきだと唱えたり、米国は同盟国に対する防衛義務を放棄するかもしれないと警告したりしたが、後になって軌道修正をしている。

 日韓に対しては、米軍駐留経費負担を引き上げなければ米軍を撤退させるとしていたが、10日には安倍晋三首相と朴槿恵韓国大統領とそれぞれ電話で会談し、両国に対する防衛義務を維持すると伝えたという。

(この記事は更新されます)

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http://jp.wsj.com/articles/SB11842517604067003472604582429283869848756?mod=wsj_nview_latest
 

 
シリコンバレーに先行き不透明感 トランプ氏勝利で
シリコンバレー、次期大統領のテクノロジー政策に注目
トランプ氏の当選はシリコンバレーのハイテク企業にどのような影響を与えるのか

By TRISHA THADANI
2016 年 11 月 11 日 09:18 JST

 次期米大統領に選出されたドナルド・トランプ氏は大手ハイテク企業を公然と批判し、「業界の発展に悪影響を与えかねない」(業界幹部)と受け取られる政策を打ち出してきた。同氏は具体的なテクノロジー政策を依然として明らかにしていないものの、シリコンバレーにとって大統領選の結果は痛手だと受け止められている。

 民主党候補のヒラリー・クリントン氏は6月にテクノロジー政策に関する具体的なプラットホームを公表。それに対し企業の経営者たちはおおむね高い評価を与えた。一方のトランプ氏が示している移民政策や貿易政策は、海外での売り上げや技術力の高い移民に頼るハイテク企業を不安にさせている。

 またトランプ氏は多くの米国人が抱えている問題について、原因はエリート層が作り出しているものだと選挙で主張。そのポピュリストなメッセージで有権者から支持を獲得した。シリコンバレーの企業は売り上げを伸ばし株価を上昇させてきたが、中流階級の雇用拡大には大きな貢献はしておらず、この点もトランプ政権下でやり玉にあがる可能性もある。

 トランプ氏は選挙期間中、大手のハイテク企業数社を名指しで批判した。アップルが連邦捜査局(FBI)の要請を拒否して「iPhone(アイフォーン)」のロック解除に協力しなかった際、同氏はアップルの製品をボイコットするように呼びかけた。またアマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)が所有するワシントン・ポストを使って企業の利益を増やそうとしているとも指摘。ベゾス氏もポスト紙もその疑惑を強く否定した。

 さらにハイテク企業以外にもそうしたように、トランプ氏はIBMが国内の雇用を海外に流出させているとも主張している。

 今回の選挙でトランプ氏の支持を表明したシリコンバレーの著名人は、投資家のピーター・シール氏以外は数えるほどしかいない。ヒューレット・パッカード・エンタープライズのメグ・ホイットマンCEOやシスコシステムズのジョン・チェンバースCEOは業界でも共和党支持者として知られるが、今回はクリントン氏の支持にまわっている。

 中には投資家のシャービン・ピシェバー氏のように大統領選に対して強い警戒を示した人物もいる。同氏は選挙結果が判明する前にツイートで、「もしトランプ氏が勝てば、カリフォルニアが国家として独立するための正式なキャンペーンを立ち上げて投資をする」と表明していた。

オバマ政権下で成長したシリコンバレー

 シリコンバレーはオバマ政権の下で大きく繁栄した。世界で最も価値がある企業の4社であるアップル、マイクロソフト、アマゾン、そしてグーグルの親会社アルファベットは、すべてハイテク企業だ。その中でもアルファベットはオバマ政権と距離が近く、会長のエリック・シュミット氏は当初クリントン氏の選挙戦に加わるなどもしていた。クリントン氏のテクノロジー政策はオバマ政権の考えに似た内容で、企業と政府が緊密な関係を維持することを柱としていた。

投資家のピーター・シール氏がトランプ氏を支持する理由について語る(英語音声のみ、英語字幕あり)
 しかしそのような良好な状態でもなお、政府と企業側は規制や監視に関する問題で衝突。国家安全保障局(NSA)の契約社員だったエドワード・スノーデン容疑者による2013年の情報流出事件後にはその傾向が特に強まった。

 カリフォルニア州サンベルナルディーノの銃撃事件では犯人のiPhoneのロックを解除するようにアップルがFBIから依頼を受けたが、同社は拒否。この件は後にトランプ氏がアップルを批判する原因となった。また4月には司法省によって秘密裏に顧客情報を開示するように求められたとして、マイクロソフトが政府を訴えるなどもしている。

 ハイテク企業の多くが無人運転やロボットや人工知能といった新たな技術開拓を行う中、政府もそれに対応していく必要に迫られる。暗号技術やプライバシーに関する議論は、トランプ政権下でより激しく展開されることが予測される。

 政府の規制などについてハイテク新興企業(スタートアップ)にアドバイスを行うタスク・ホールディングスは、トランプ政権下では無人技術がトラック運転手の職を奪う可能性についてなども議論される可能性があるとしている。

 「企業側が必要としているのはしっかりとした政策だ」と話すのは、クラウドストレージを運営するボックス社のアーロン・レビーCEO。今回の選挙でクリントン氏を支持したと話す同氏は企業と政府が生産的な関係を保持することが不可欠だと指摘するが、トランプ氏の思想とシリコンバレーの考え方は真逆のものだと言う。

トランプ氏に期待する声も

 一方、トランプ政権下でもハイテク企業にも希望はあるとする声もある。CFRAリサーチのスコット・ケスラー氏は、トランプ氏が勝利し、上下両院でも共和党が過半数を獲得したため、税制改正の可能性に注目。米国企業は約2兆ドル(約210兆円)の資産を海外に保有するが、それら企業が海外で得た利益を国内に持ち帰りやすくなることも考えられるという。

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 またトランプ氏は規制緩和を推進する可能性も高く、それがハイテク企業にとって有利になる場合もある。ワシントンのシンクタンクである情報技術革新財団(ITIF)のロバート・アトキンソン氏によれば、トランプ氏が暗号技術や人工知能などの分野で規制を強める可能性は低い。それにより企業は「データやアルゴリズムを使って自由に技術開発を行うことができる」ようになるという。

 ただしトランプ氏がまだ具体的なテクノロジー政策を提示していないこともあり、不透明な部分は多い。インターネット分野で公平な競争の場を確保するためオバマ政権は「ネット中立性」規制を推し進めたが、この件についてトランプ氏は連邦通信委員会(FCC)を批判。「オバマ氏が権力を振るい再びトップダウンでインターネットに攻撃をしかけている」としたこともある。

 選挙前にメールでの取材に応じた著名投資家のマーク・キューバンは、トランプ氏がハイテク企業に批判的な考えを持つアドバイザーを採用するのではないか不安を感じていると話した。その場合、米国経済の原動力のひとつであるハイテク技術が弱体化すると指摘し、「移民が問題になるのではなく、才能が海外に流出することになる」と懸念を示した。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwj7yrXv0Z_QAhVHXbwKHRWICgAQFggdMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11842517604067003472604582427281482318636&usg=AFQjCNE08JuMhK1W2_oyiWT_wOPqqXw1aw


 
シリコンバレーに先行き不透明感 トランプ氏勝利で
シリコンバレー、次期大統領のテクノロジー政策に注目
トランプ氏の当選はシリコンバレーのハイテク企業にどのような影響を与えるのか

By TRISHA THADANI
2016 年 11 月 11 日 09:18 JST

 次期米大統領に選出されたドナルド・トランプ氏は大手ハイテク企業を公然と批判し、「業界の発展に悪影響を与えかねない」(業界幹部)と受け取られる政策を打ち出してきた。同氏は具体的なテクノロジー政策を依然として明らかにしていないものの、シリコンバレーにとって大統領選の結果は痛手だと受け止められている。

 民主党候補のヒラリー・クリントン氏は6月にテクノロジー政策に関する具体的なプラットホームを公表。それに対し企業の経営者たちはおおむね高い評価を与えた。一方のトランプ氏が示している移民政策や貿易政策は、海外での売り上げや技術力の高い移民に頼るハイテク企業を不安にさせている。

 またトランプ氏は多くの米国人が抱えている問題について、原因はエリート層が作り出しているものだと選挙で主張。そのポピュリストなメッセージで有権者から支持を獲得した。シリコンバレーの企業は売り上げを伸ばし株価を上昇させてきたが、中流階級の雇用拡大には大きな貢献はしておらず、この点もトランプ政権下でやり玉にあがる可能性もある。

 トランプ氏は選挙期間中、大手のハイテク企業数社を名指しで批判した。アップルが連邦捜査局(FBI)の要請を拒否して「iPhone(アイフォーン)」のロック解除に協力しなかった際、同氏はアップルの製品をボイコットするように呼びかけた。またアマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)が所有するワシントン・ポストを使って企業の利益を増やそうとしているとも指摘。ベゾス氏もポスト紙もその疑惑を強く否定した。

 さらにハイテク企業以外にもそうしたように、トランプ氏はIBMが国内の雇用を海外に流出させているとも主張している。

 今回の選挙でトランプ氏の支持を表明したシリコンバレーの著名人は、投資家のピーター・シール氏以外は数えるほどしかいない。ヒューレット・パッカード・エンタープライズのメグ・ホイットマンCEOやシスコシステムズのジョン・チェンバースCEOは業界でも共和党支持者として知られるが、今回はクリントン氏の支持にまわっている。

 中には投資家のシャービン・ピシェバー氏のように大統領選に対して強い警戒を示した人物もいる。同氏は選挙結果が判明する前にツイートで、「もしトランプ氏が勝てば、カリフォルニアが国家として独立するための正式なキャンペーンを立ち上げて投資をする」と表明していた。

オバマ政権下で成長したシリコンバレー

 シリコンバレーはオバマ政権の下で大きく繁栄した。世界で最も価値がある企業の4社であるアップル、マイクロソフト、アマゾン、そしてグーグルの親会社アルファベットは、すべてハイテク企業だ。その中でもアルファベットはオバマ政権と距離が近く、会長のエリック・シュミット氏は当初クリントン氏の選挙戦に加わるなどもしていた。クリントン氏のテクノロジー政策はオバマ政権の考えに似た内容で、企業と政府が緊密な関係を維持することを柱としていた。

投資家のピーター・シール氏がトランプ氏を支持する理由について語る(英語音声のみ、英語字幕あり)
 しかしそのような良好な状態でもなお、政府と企業側は規制や監視に関する問題で衝突。国家安全保障局(NSA)の契約社員だったエドワード・スノーデン容疑者による2013年の情報流出事件後にはその傾向が特に強まった。

 カリフォルニア州サンベルナルディーノの銃撃事件では犯人のiPhoneのロックを解除するようにアップルがFBIから依頼を受けたが、同社は拒否。この件は後にトランプ氏がアップルを批判する原因となった。また4月には司法省によって秘密裏に顧客情報を開示するように求められたとして、マイクロソフトが政府を訴えるなどもしている。

 ハイテク企業の多くが無人運転やロボットや人工知能といった新たな技術開拓を行う中、政府もそれに対応していく必要に迫られる。暗号技術やプライバシーに関する議論は、トランプ政権下でより激しく展開されることが予測される。

 政府の規制などについてハイテク新興企業(スタートアップ)にアドバイスを行うタスク・ホールディングスは、トランプ政権下では無人技術がトラック運転手の職を奪う可能性についてなども議論される可能性があるとしている。

 「企業側が必要としているのはしっかりとした政策だ」と話すのは、クラウドストレージを運営するボックス社のアーロン・レビーCEO。今回の選挙でクリントン氏を支持したと話す同氏は企業と政府が生産的な関係を保持することが不可欠だと指摘するが、トランプ氏の思想とシリコンバレーの考え方は真逆のものだと言う。

トランプ氏に期待する声も

 一方、トランプ政権下でもハイテク企業にも希望はあるとする声もある。CFRAリサーチのスコット・ケスラー氏は、トランプ氏が勝利し、上下両院でも共和党が過半数を獲得したため、税制改正の可能性に注目。米国企業は約2兆ドル(約210兆円)の資産を海外に保有するが、それら企業が海外で得た利益を国内に持ち帰りやすくなることも考えられるという。

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 またトランプ氏は規制緩和を推進する可能性も高く、それがハイテク企業にとって有利になる場合もある。ワシントンのシンクタンクである情報技術革新財団(ITIF)のロバート・アトキンソン氏によれば、トランプ氏が暗号技術や人工知能などの分野で規制を強める可能性は低い。それにより企業は「データやアルゴリズムを使って自由に技術開発を行うことができる」ようになるという。

 ただしトランプ氏がまだ具体的なテクノロジー政策を提示していないこともあり、不透明な部分は多い。インターネット分野で公平な競争の場を確保するためオバマ政権は「ネット中立性」規制を推し進めたが、この件についてトランプ氏は連邦通信委員会(FCC)を批判。「オバマ氏が権力を振るい再びトップダウンでインターネットに攻撃をしかけている」としたこともある。

 選挙前にメールでの取材に応じた著名投資家のマーク・キューバンは、トランプ氏がハイテク企業に批判的な考えを持つアドバイザーを採用するのではないか不安を感じていると話した。その場合、米国経済の原動力のひとつであるハイテク技術が弱体化すると指摘し、「移民が問題になるのではなく、才能が海外に流出することになる」と懸念を示した。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwj7yrXv0Z_QAhVHXbwKHRWICgAQFggdMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11842517604067003472604582427281482318636&usg=AFQjCNE08JuMhK1W2_oyiWT_wOPqqXw1aw

 


 

 


米英で成功したポピュリスト、欧州で狙う次のドミノ効果の標的
John Follain
2016年11月11日 07:30 JST

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投票控えるのはイタリア、オーストリア、フランス、オランダ、ドイツ
年内は12月4日にイタリア国民投票とオーストリア大統領選

英国と米国での成功後、ポピュリスト(大衆迎合主義者)がドミノ効果で狙いを定めるのは次の5カ国だ。
  向こう1年弱に投票を控えているのはイタリアとオーストリア、オランダ、フランス、そしてドイツ。格差拡大や移民対応をめぐり噴出する既成の政治や産業界への怒りが投票に影響する公算は大きく、その結果を予想するのは一段と難しくなっている。
  「過激で民族主義的な候補への支持を世論調査では読み切れないという現実を、今われわれは学び始めていると思う」と、ノムラ・インターナショナルのシニア・インデペンデント・クライアント・アドバイザーのボブ・ジャンジュア氏はブルームバーグTVに対し話した。
  ポピュリストはまず、英国が6月23日に実施した欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票で離脱派を勝利に導き、既成勢力の壁を打ち破った。そして米大統領選でドナルド・トランプ氏を当選させた。英国のEU離脱を主張した英独立党のナイジェル・ファラージ党首代行は電話インタビューで、「革命は続いている」とし、「2016年は二つの大どんでん返しが起きた。大企業、巨大銀行、既成政治の癒着は終わりを迎えつつあると確信する」と語った。
  以下は、向こう10カ月に要注意の5カ国の予定だ。
イタリア国民投票
  イタリアでは12月4日、政治改革を図るレンツィ首相が憲法改正の是非を問う国民投票を実施する。同首相は否決なら辞任すると公約しており、そのような事態になれば反体制派政党「五つ星運動」に追い風となるほか、来年に早期選挙の可能性が浮上する。同党はイタリアのユーロ参加継続をめぐる国民投票の実施を求めている。
オーストリア大統領選
  同じく12月4日。オーストリアで大統領選がある。同国でもドイツ同様に政治の実権は首相が握るが、それでも大統領選が注目されるのは西欧で第2次世界大戦以後初めて極右政党の候補者が当選する可能性があるためだ。5月の選挙では、緑の党のアレクサンダー・ファン・デア・ベレン氏が反移民を掲げる極右の自由党のノルベルト・ホーファー候補を約3万票の差で破ったが、この結果は憲法裁判所の判断で無効となり、やり直しとなった。世論調査によると、接戦の見通しだ。
オランダ総選挙
  欧州では17年に総選挙が相次ぐが、その先陣となるのは3月15日実施のオランダ。同国では複数の政党が連立を組むことが常態化し、選挙では約13の政党が争う見込み。一部の世論調査によれば、反イスラムを掲げる自由党のヘルト・ウィルダーズ党首がルッテ首相率いる自由民主国民党(VVD)と互角。同党首はオランダがEU離脱で英国に倣うことを願っている。
フランス大統領選
  フランスの大統領選は5月7日に第2回投票が行われる。現職のオランド大統領は同国史上、支持率が最低で、ライバルのサルコジ前大統領も人気がない中、反移民の極右政党・国民戦線のマリーヌ・ルペン党首にはチャンスがある。同党首はフランスの主要政党党首でトランプ氏を支持していた唯一の人物。
ドイツ総選挙
  ドイツでは憲法上の縛りなどで独裁は許されないとされるが、17年秋の総選挙で戦後の常識がまだ正しいかが示される。反移民の政党「ドイツのための選択肢」のフラウケ・ペトリー代表はトランプ氏の勝利からドイツは学ぶべきだと主張。「ドイツ人も勇気を出して投票所で歴史を作るべきだ」と述べる。メルケル首相は再選を目指すか明らかにしていないが、米国での予想外の結果を受けて4期目を考える方向に傾くかもしれない。
原題:After Brexit and Trump, Populists Target Next Dominoes in Europe(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-10/OGENPL6JIJV701


 

2016年11月11日 長野美穂
ヒラリーに投票したトランプホテルの清掃係も!米国民の胸の内

トランプ氏の勝利に歓喜する支援者たち Photo:AP/AFLO
激戦を制して米国の新大統領に選ばれたドナルド・トランプ。その結果に世界が驚きに包まれた。なぜ米国民はトランプを選んだのか。背景には、報道されなかったサイレントマジョリティの投票行動もあった。現地で彼らの本音を聞く。(取材・文・撮影/ジャーナリスト 長野美穂)

ヒラリー陣営の阿鼻叫喚
「米国民であることを恥じる」

「ファック・ユー!」

 ラスベガス在住のメアリー・ダンガン(61歳)は、ドナルド・トランプが壇上で勝利スピーチを始めた瞬間、そう叫んだ。そして、巨大なスクリーンに映ったトランプの顔に向かい、思い切り中指を突き立てた。

「ひどい言葉でごめんなさい。でも、こんな悪夢、絶対に我慢できない」


トランプが勝利スピーチをし出した瞬間、このジェスチャーをしたメアリー(写真上)。ヒラリー陣営のボランティア、メアリーとカーラ(写真下)
 ヒラリー・クリントンを大統領にするために、彼女はこの1年間、激戦地のネバダ州ラスベガス近郊の家々のドアをノックし、ヒラリー支援のフェイスブックページを立ち上げ、投票を呼びかけてきた。

 その甲斐あってか、ネバダ州では接戦の末、僅差でヒラリーが勝利を収めた。彼女を含め、ネバダ民主党のヒラリー陣営は、ヒラリーの当選を信じ、ホテルの宴会場で喜びの歓声を上げた。

 だが、16人の選挙人団を抱えるミシガンではヒラリーが劣勢。さらに選挙人団10人のウィスコンシンの結果もなかなか出ない。そしてついに「トランプ当選」のテロップが画面に流れた。

「いま、生まれて初めて、自分がアメリカ国民であることを恥じている。空軍の兵士として、長年この国に命を捧げてきたのに、よりによってこの男が大統領になるなんて、情けなくて言葉が出ない」


泣き崩れるヒラリー支持者の女性
 ヒラリーより8歳下のダンガンは、1970年代に米空軍に入隊し、どの部隊に配属されても女性は自分1人だけ、という状況に直面した。

「女性だという理由で、様々な差別も受けてきた。だから、政治という男性中心の世界で差別をくぐり抜けてきたヒラリーには、何としてもこの国初の女性大統領になってほしかった」

 ミシガン、ウィスコンシンの他にニューハンプシャーなど大接戦の数州の開票結果が出る前に、クリントンがトランプに電話をかけて負けを認めたことも、ヒラリー陣営のボランティアたちを混乱させ、阿鼻叫喚に陥れていた。

 呆然とした表情で、ハイヒールを脱ぎ、裸足で泣きながらホテルの宴会場から走り去る若い女性。壁にもたれて肩をふるわせ、人目もはばからず号泣する男性。

「これ、何かのジョークよね? トランプの勝利スピーチが終わったら、ヒラリーがミシガンとウィスコンシンを取って、実はヒラリーが勝者だったってオチよね? サタデー・ナイト・ライブのパロディみたいに」と叫ぶ大学生。

 多くの老若男女は、言葉なく立ち尽くし、または床に座り込み、トランプが壇上で笑う姿を呆然と見つめていた。

大激戦地ネバダでトランプ勝利は
どのように受け止められたか?


ラスベガスのトランプホテルで清掃係として働くカーメン。ヒラリーを支持しており、その胸には労働組合員であることを示すバッチが(写真左)。同じくトランプホテルで働くエレウテリア(写真右)
 ここで、大激戦地ネバダ州の投票日当日を振り返ってみよう。

 ラスベガスの「ストリップ」と呼ばれるカジノが密集した地域の外れに、トランプ所有のホテル「トランプ・インターナショナル・ラスベガス」がそびえている。

 64階建ての金色の建物。シャンデリアが輝くロビーに入ると売店があり、そこには「Make America Great Again」というスローガンが縫い込まれた帽子が並んでいる。ロビーには、白人、アジア系、黒人といった様々なお客が行き交う。車寄せに停めてあるネバダ州ライセンスのついたジープには、「TRUMP」と大きくロゴが描かれた青い旗が2本立てられ、巨大なトランプの写真ボードが立てかけられていた。

「まだ昼間で酒も飲んでないのに、今日は最高にウキウキするよ。これで今夜トランプが当選したら、もう一晩中パーティーしちゃうぞ!」

 車の持ち主の男性は、ホテルを訪れる観光客たちにそう語り、上機嫌でポーズを取り、写真を撮られていた。 


ラスベガスのトランプ所有のホテル(写真上)と、そのロビー
 その時刻、同ホテルで客室清掃係として働くカーメン・ラルール(64歳)は、床に這いつくばって浴室を掃除していた。アルゼンチン出身の彼女は、同ホテルに勤続4年、現在の時給は14ドル80セントだ。ラスベガスの労働組合に加入している他のホテルワーカーたちより、約3ドル低い時給だ。

「うちのホテルのオーナーのミスター・トランプは、私たちを二流市民として不当に扱っています。私がユニオン(労組)のバッチを胸につけていたら、いきなりクビにされたんです」と彼女は語る。

 ラスベガスのトランプホテルの従業員たち約500人は、労働条件の改善を目指し、昨年労組を結成した。ネバダのホテルやカジノの5万7000人の従業員を代表する労働組合「Culinary Union 226」の広報を務めるベサニー・カーンによれば、同ホテルのオーナーであるトランプは、労組の結成を阻止しようと、ユニフォームに労組のバッチをつけていた彼女ら5人を脅し、解雇したという。

 その後、国の労働監督機関が介入。ラルールらは職を取り返したが、トランプが労組との交渉に応じないため、彼女を含む500人の従業員たち全員の給与は、いまも安く抑えられ、組合員なら無料で使える医療保険も使えず、企業年金もない。トランプホテルの従業員のうち、約7割が女性で、中南米からのヒスパニック系移民が圧倒的に多い。

トランプホテルで働きながらも
ヒラリーに投票した女性の勇気


投票日当日、トランプホテルの車寄せで
「ミスター・トランプは私たちのボスで、私は彼のホテルを清掃するために一所懸命に働くけれど、私の1票は彼のものではありません。組合を保護すると約束したヒラリーに、仲間たちと一緒に投票してきました」

 以前はトランプからの報復を恐れて自分の主張を口にできなかったが、一度解雇されてから、たとえ大統領候補であっても法律で保証された労組結成の権利を阻止することはできない、と気持ちを切り替えた。

「今後、正当な契約を勝ち取るまで闘い続けます」

 投票日の夜、仕事と投票を終えて労組本部に足を運んだ彼女。カフェテリアに設置されたテレビの中継でクリントン当確の州が発表されるたび、同じトランプホテルの同僚たちと飛び上がって喜んだ。組合が用意したマリアッチの生バンドの演奏で、陽気なラテン音楽に乗り、身体をスイングさせる。

 ラルールのように、ホテルやカジノ業界で働く移民たちが、ラスベガスを中心に、ネバダ州全域のヒスパニック系の民主党候補への投票率を押し上げてきた。ミドルクラスが消滅しつつある現在の米国。昔のように、強力な労働組合に守られた職場は少数だ。

トランプが大統領になれば
労組を潰して従業員を追い出すはず

 ラスベガスのステーキハウスとカジノでウェイターとして働くパトリック・アンドリーン(61歳)は、43年間強力な労組の組合員として働き続けてきた、ラッキーなケースだ。

「自分のホテルの職員を脅して低賃金で働かせてリッチになったトランプ。彼が大統領になれば、米国中の職場の労組を潰し、組合員を職場から追いだそうとするはず。うちのステーキハウスでも、ウェイターや厨房のスタッフは1人残らずヒラリーに投票したよ」

 さらに、激戦地ネバダには、全米各地からヒラリー陣営の応援に労組の組合員が「助っ人」として送り込まれていた。カリフォルニア州から投票日の10日前にネバダ入りし、ラスベガス近郊で1日に150件以上の家やアパートを回り、ヒラリーへの投票を直接呼びかけてきたのが、ミゲル・ロドリゲス(35歳)だ。

 彼はロサンゼルスのロヨラ大学のコックとして10年間働いてきた労働組合員だ。糖尿病の合併症で痛む左足を引きずりながらもネバダにやってきたのは、車を運転できない老人や、ベビーシッターがいないため子どもを預けて投票に行けないシングルの親たちを、自分の車で投票所まで連れて行くためでもあった。

「3人の子どもがいるシングルマザーが、初めて会った僕を信頼してくれ、幼い子どもたちを僕に託して投票してくれたときは、ほっとしたよ。普通、見ず知らずの男に子どもを預けるなんて、怖くてできないのに」

「ヒラリーが得られるはずの1票を決して無駄にしたくない」という彼には、メキシコから移民してきた両親がいる。そんな彼が忘れられないトランプの言葉がある。

「『黄色いスクールバスをグリーンバスとして使おう』とトランプは言った。グリーンバスというのは、米国政府がメキシコに違法移民を強制送還する際に使うバスの色なんだ」

 ヒスパニック系の多くのネバダ州民がヒラリーに投票する中、フタを開けてみれば、州民の多くがトランプに投票していた。

「まったく応援する気になれない」
それでもトランプに投票した理由


ネバダ郊外の市に住むトランプ支持者、マラヤ・エバンズ(写真上)。マラヤがつくって飛ぶように売れたトランプ関連グッズ(写真下)
 ラスベガスから車で40分ほど離れたボルダーシティに住むマラヤ・エバンズ(50歳)は、トランプに投票した1人だ。彼女は赤と青のトランプTシャツを着て「Make America Great Again」の帽子を被るような熱狂的なトランプ支持者ではない。オレンジとピンク色のスカーフを頭に巻き、カラフルなシャツに身を包んだ彼女は、服装だけ見れば、一見おしゃれなヒッピー風に見える。

 そして開口一番、こう言った。

「ドナルド・トランプを神か救世主のように盲目的に崇めているトランプ支持者がいるけど、私にはその気持ちが全く理解できない。彼らはどうかしてると思う」

 それでもトランプに投票し、自宅の庭にはトランプサインを立てた。

「ボルダーシティ共和党女性の会」の会長を努める彼女は、もともと共和党のテッド・クルーズ候補の保守派路線を支持していた。トランプが予備戦でテッド・クルーズの父親がケネディ大統領暗殺に関係していたという内容の発言をしたときは、驚き呆れ「この男、何を言っているんだ」と絶句した。

 テッド・クルーズは共和党党大会でも、最後までトランプを支援することはなかった。「そりゃ、自分の父親が大統領暗殺に関わっていたかのように語られたら、そんな人間と一生涯絶交して当然でしょうよ」と彼女は言う。それでもトランプに投票するのに、迷いは一切なかった。

「クルーズが撤退した以上、共和党の候補者としてトランプしか選択肢はない。長年政治に関わっていれば、妥協の仕方も学ぶ。政治家は神でも親友でもない。自分たちが通したい政策を通せる候補か否か、それだけだから」

 彼女はトランプTシャツなどは一切身につけないが、トランプ陣営の資金づくりには最小の労力で最大の集金効果を得られる方法で貢献してきた。ヒラリーがトランプ支持者たちを差して「a basket of deplorables」(嘆かわしく恥ずべき人々)と呼んだのが話題になったのをヒントに、「I am an adorable deplorable」(私は愛すべき恥ずべき人間です)という言葉を印刷したバッチをつくった。1つ2ドルで売り出したところ、トランプ支持者たちに飛ぶように売れ、瞬く間に500ドル集まった。

「アメリカ人はこういう政治ユーモアの遊びが大好き。クスッと笑えて、バッチのどこにもトランプと書いてない。そこがウケたの」

 ソ連との冷戦時代、17歳で自分の意志で陸軍に入隊し、除隊後は沿岸警備隊に入って軍のキャリアを歩んできた彼女にとって、政治家という存在は、決して自分が戦場に行くことなく、若い軍人たちを危険な戦場に送る人間という認識だ。現場で命を懸けるのは、常に自分たち軍人だと身にしみてわかっているぶん、政治家に心酔したり、彼らを100%信用したりすることはできないのだと語る。

支持を語らずトランプに投票した
サイレントマジョリティの底力

 そんな彼女にとって、国家機密を自宅の私用サーバーでやりとりしていたクリントンは、FBIが白と判断しても「限りなく犯罪者」であり、「危険にさらされる軍人や国民の命の重さを理解していない人」と映る。

 虚言・暴言癖のあるトランプか、国家機密の扱いに問題があり軍人をむやみに危険にさらしかねないクリントンか、その2つを比べれば、トランプの暴言の方が「言葉」だけであり「行動」ではないぶん、ダメージが少ないと判断した結果の投票だという。

 彼女は、ヒラリーのスキャンダルをネットで読み漁る狂信的トランプ支持者とは付き合いたいとも思わないし、トランプがアメリカを再び誇れる国にしてくれるなどとも1ミリも思っていないと言う。だが「銃規制を強化し、宗教の自由に制限をかけてきそうなヒラリーの政策には危険を感じる」ため、ヒラリー大統領だけはダメだと最初から思っていたという。

「怒れる白人男性がトランプを大統領にするのだと言われると、苦笑するしかない。米国民の半数は女性。その女性票なくしてこの国の大統領になれるわけがないのだから」

 陸軍で銃の修理の仕事を担当していた彼女にとって、自らと家族の身を守る銃はなくてはならないものだ。銃管理に連邦政府が規制を加えるのは、どうしても納得できない。また、女性大統領の誕生は望んでいるが「ヒラリーではない」と語る。

 声高にトランプ支持を語らず、かつ確実にトランプに投票した彼女のような層が、今回の選挙でトランプを当選させたサイレントマジョリティなのではないか、という気がしてきた。


「これからトランプを4年間監視しなくちゃ」と語るヒラリー支持者のジェニファー(左)とロレッタ
 ヒラリー支持の若い女性たちが涙を流しながらホテルの会場を去る中、ヒラリーという文字の刺繍を施したジャケットを着た黒人女性、ロレッタ・ハーパーはこう言った。

「今日、ネバダは激戦地のパープル・ステイトからブルー・ステイトになった。同時に米国上院に初のラティーナ議員を送り込む民主党の州になった。これは大きな変化。トランプが大統領になるなら、彼の動きの1つ1つをきっちり見届けて、監視し、とんでもない方向に行かないように、修正するべく声を上げていくのが、私たち市民の任務。しょげている時間はない。腕まくりして今後4年間、気合入れていかないと」

「今夜は飲まなきゃ眠れない」
やるせないバスの運転手

 投票日深夜12時半、カジノ街のホテルから最終のシャトルバスに乗ると、運転手の男性がこう言った。

「しばらく禁酒してたけど、今日は帰りに酒を買って帰ろうかと思う。自宅に帰って、庭に座って、一杯飲みながら、一体この国はなぜトランプを大統領に選んじまったのか、月でも見ながら考えないと、とてもじゃないけど眠れないと思う」

 途中、そびえ立つ金色のトランプホテルの横を通った。ビルのてっぺんに白地に「TRUMP」と抜かれた金文字が夜空に光る。

「トランプランド……」

 運転手の彼はそうつぶやき、アダルトグッズを売る店と、質屋と酒屋が無数に建ち並ぶラスベガスの街をバスは疾走して行った。
http://diamond.jp/articles/print/107569

 

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