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なぜ中国は米軍の潜水ドローンを拿捕したのか 中国新聞趣聞チャイナ・ゴシップス 忍耐力の低い米中の「偶発事件」に備えよ
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投稿者 軽毛 日時 2016 年 12 月 21 日 06:46:56: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

なぜ中国は米軍の潜水ドローンを拿捕したのか

中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス

忍耐力の低い米中の「偶発事件」に備えよ
2016年12月21日(水)
福島 香織

「暴君トランプ」と「狂犬マティス」は中国の挑発をいなせるのか(写真:AP/アフロ)
 中国の人民解放軍海軍が南シナ海で米軍の無人潜水探査機(ドローン)を「違法に奪取」した。12月15日のことである。米国側はすぐさま返還を要求、18日には中国側も返還に応じることを決定したが、いったい中国側は何を考えて、このような大胆な真似をしたのだろうか。今後の米中関係の行方を占ううえでも、気になるところだ。

フィリピンと中国の係争水域で

 米国防総省の発表では、15日、アメリカ海軍の海洋調査船「バウディッチ」が南シナ海のフィリピン・ルソン島沖、スービック湾から北西93キロの地点で、無人潜水探査機(ドローン)2機による海洋調査を実施、探査機を回収しようとしたところ、中国海軍の潜水艦救難艦がボートを出して1機を奪ったという。バウディッチは無線で返還を要請したが、救難艦は応答せずに探査機を持ち去った。

 米国側によればドローンは海水の塩分濃度や透明度などを調査するものだが、これは潜水艦航行時のソナーデータに役立つ情報でもある。潜水艦の航行、作戦に必要とされる情報といえば、軍事情報になるが、機密というほどのものはない。国防総省の発表でも、今回の調査は、民間用のドローンを使って非機密情報を収集していたという。

 無断でこのドローンを拿捕した中国国防部は「中国海軍は15日午後、南シナ海海域で正体不明の装置を発見し、船舶の航行の安全と人員の安全を守るために、救難艦の責務としてこの装置の識別検査をしたのだ」と主張した。

 だが、目の前に米海軍の調査船があり、無線で返還を呼び掛けているのに持ち去ったとなれば、この主張も口実にすぎないとわかる。中国国防部側は識別検査の結果、無人潜水探査機であると判明したので米国に返還すると決定した、と説明。「中国側は米国側とずっと連絡を保っているのに、米国側が一方的に問題を公開し、騒ぎ出したのは不適当であり、問題をスムーズに解決するのに不利となった。我々はこのことに遺憾を表明する」と開き直った。

 さらに中国国防部は「強調すべきことは、長年、米軍は頻繁に中国当面海域で偵察や軍事測量を行ってきているが、中国はこのことには断固反対しており、この種の活動を停止することを米国側に要求する。中国側は引き続き米国側のこうした活動に対し警戒を維持し、必要な措置をもって対応する」とけん制した。

 米海軍海洋調査船が寄港していたスービック湾沖という現場は、本来フィリピンの排他的経済水域内だが、スービック湾西200キロの地点にあるスカボロー礁はフィリピン、中国が領有権を争う係争地である。米国側はこの周辺海域を国際水域、つまり公海や自由海に準ずるものとして認識しているが、中国側にすれば現場は中国の排他的経済水域ということになる。排他的経済水域内の科学目的調査は沿海国への「妥当な考慮」が必要となっている。

 この海域の認識はともかく、軍の船が領海領空のボーダーに近いところで調査を行えば、沿海国にとっては苛立つものだし、情報収集艦が接続水域や領海に入ってこないように、追尾し、監視して追い払おうともするだろう。中国の情報収集艦もしばしば尖閣諸島などの接続水域に入り、ときに領海を横切ることもあったので、日本もきりきりしている。ただ、日本は抗議するが、実力行使を行ったことはない。

 中国側がいきなりドローンを無断で拿捕するということは、これは実力行使、戦闘行為に発展してもおかしくないぐらいの挑発といえる。

 米国側が抗議と返還要求という抑制の効いた対応になったのは、前代未聞の中国海軍の行為にあっけにとられたのか、ひょっとするとこれは中国政府の意思に反した現場の暴走ではないかと考えたのか、奪われたドローン自体が民間の商用品で収集していた情報も非機密情報であったので、さして慌てる必要もなかったのか。トランプはこの件について、そんなドローンなど中国にやってしまえ、とツイッターで発言したのは、そこに軍事機密として保護を優先させるものはなく、中国の挑発に乗らないことを優先させた、ということかもしれない。

 しかし、いったい、中国側は何を考えて、こうした前代未聞の、米国に対して真っ向から喧嘩を売るような行動に出たのだろう。

 中国側の主張は、南京大学中国南海研究院院長の呉士存が環球時報のインタビューに対して語ったことにまとめられている。

「米軍の腹はわかっている」

 
 「外国メディアが言っている国際水域、これは米国サイドの言い分であって、海洋法公約上にはこういう言い方はない。海洋には領海、領海の外側の接続水域、排他的経済水域、その外に公海がある。公海は公海としての管理規則がある。国際水域という明確な法律上の定義はない。

 したがって、米国が中国に無人潜水探査機を拿捕されたのは国際水域ではない。黄岩島(スカボロー礁)の近海、つまり中国の排他的経済水域内かどうかを判断しなければならない区域である。ならば中国はこの種の科学的研究目的の潜水機に対し管轄権を有することになる。拿捕後、中国は米国と話し合い、最終的な交渉結果を出したわけだ」

 「米国はどうして軍事測量船を用いたのか。なぜなら海洋法公約にはアナがあるからだ。沿岸国家が排他的経済水域における排他的主権・管轄権を有しており、海洋科学研究や海底ケーブル敷設や、人工施設建設・管理などについては沿岸国の同意が必要だ。だが、軍事測量については沿岸国の同意が必要、とは書いていない。米国はこの法的アナをついてきたのだ」

 「米国が(中国が領海と主張する)九段線の中に入ってきたのは、米国の言うような海水濃度のデータ収集といったものではなく、実際のところは、中国の南沙諸島における施設建設状況にかかわる情報偵察が目的であろう。あるいは、中国の南シナ海の潜水艦航路の探索が目的であろう」

 「この意味から言えば、米国の無人潜水探査機は中国の安全に対して脅威をなすものである。これは新たな接近偵察である」

 「米国よ、お前は何をしに来たのか? 米軍の腹はわかっている」

 習近平政権における「南シナ海政策ブレーン」の筆頭、呉士存がここまではっきりと中国の立場を主張するからには、おそらく今回の事件は現場の暴走というようなものではないと考えられる。一部で習近平自身も知らされなかった「現場の暴走」説が出たのは、そうしないことには、米国側も収まりがつかないからではないか。

 ちなみに、2013年1月に東シナ海尖閣諸島付近で起きた「ロックオン事件」も、日本側は「現場の暴走」説をとることによって早期に収束させたが、後々に漏れ伝えられる情報を突き合わせると、習近平政権は2013年当初は、東シナ海で日本を挑発し軍事行動をとらせることで、日本の軍国主義台頭脅威の国際世論をあおり、日米離反を画策する目論見があったようである。日本は挑発に乗らず、この目論見は崩れた。

 軍の末端が、政権の意向を無視して、勝手に対象国の軍艦に火器照準を合わせたり、探査機を拿捕したりしたら、それはそれで政権が軍を制御できないということであり、恐ろしい状態である。習近平の軍制改革があまりうまくいっていないという話もあるので、その可能性は捨てきれないのだが、拿捕後の中国の対応、落ち着きぶりを見れば、今回の件に関しては計算づくで来たような印象を受ける。

「やられたら、やり返す」

 呉士存の意見をさらに見てみると、こう続く。

 「いわゆる南シナ海の国際法廷による仲裁が出たあと、南シナ海問題は中国、フィリピンの当事国同士で解決するという形で下火になったのに、米国はそれに甘んじることができなかった。つまり、それは米国利益に合致しておらず、米国は南シナ海をかき回して中国の平和的発展をけん制しようとしている」

 「中米の南シナ海における“地縁的政治競争”、海洋覇権ゲームに決着がついていない以上、米国はまたやってくる」

 「中国が南シナ海問題のコントロールを強くできるか否か、それが米国に欲しいままにさせないためのカギだ」

 「中国軍はこの点に関しては自信がある。南シナ海情勢は中国の南沙における関係施設の配置にともない徐々に変化してきている。米軍は焦っているのだ」

 そのうえで、中国側がドローンを米国におとなしく返還したのは、「我々には米国の接近偵察が国家安全を脅かすことに対し、反撃の用意がある。…中国はただ黙っているだけの忍耐はない。今の時代、やられたらやり返す、ということだ」ということを伝える意味があったという。

 トランプは国防長官に中国に強い警戒感を持つ元海兵大将・ジェームズ・マティスを指名しており、軍事的には対中強硬姿勢を強めてくるとの観測が中国側にも出てきている。トランプ政権が登場した当初は、トランプはオバマのアジアリバランス政策を後退させるのではないか、という期待が中国側にもあったが、政権チームの概要が見え始めてくるにつれ、南シナ海、台湾問題など、アジア太平洋における米中軍事対立の先鋭化は避けられないという見方に修正してきた。

 もっとも、それでも習近平政権にとっては、トランプ政権はヒラリー政権よりも歓迎すべきだという考えが政権内部には強い。国外に巨大な敵の存在があれば、不安定な内政問題から国民の関心は逸れ、国内はまとまりやすく、共産党政権の求心力は高まる。軍、特に海軍空軍の士気は上がり、習近平の考える軍制改革、つまり陸軍中心から海空軍中心の覇権拡大に向けた軍制への改革が進めやすくなるし、それに伴う軍の掌握によって習近平が目指す独裁体制への道も近くなる、という期待があろう。

 しかも米中二大大国冷戦構造というのは、中国が大国として米国に認識されたということでもあるので、そこはかとなく自尊心もくすぐられる。かつての冷戦構造は米ソ対立であり、その米ソ対立ゆえに、米国は中国を経済的軍事的に支援して自分たちの仲間に引き入れようとしてきたのだ。それが今やロシア(旧ソ連)と中国への米国の対応は入れ替わっている。

 呉士存が指摘するように、南シナ海は米中の地縁政治競争、海洋覇権ゲームの最重要対局盤である。特に中国は、フィリピンのドゥテルテ政権が心底嫌米であることを布石として、今のタイミングをもってこの対局を制したいところではないか。それが成功するかしないかはともかく。

日本は「偶発的有事」を覚悟せよ

 とすると、米中の間に、そう遠くない時点で、なにがしかの軍事的衝突があってもおかしくはない。

 誰もが思い出すのは2001年の海南島付近上空での米中軍用機衝突事件(海南島事件)である。無線傍受偵察をしていた米海軍電子偵察機に対して、中国海軍戦闘機が挑発行為をした結果、接触し海に落ちた中国人パイロットは行方不明、米軍電子偵察機は中国側に回収され、機体の返還をめぐって緊張感の続く長い交渉があった。

 この事件は中国を「戦略的競争相手」と認識したブッシュ共和党政権下で起きたこともあって、一つ間違えば紛争に発展しかねないものだったが、時の江沢民政権が外資導入による中国経済高度成長政策にプライオリティを置いていたこともあり、双方が忍耐をもって事件を決着させた。

 これに続く米中危機は2009年のインペッカブル事件だ。米軍海洋調査船「インペッカブル」が海南島沖南120キロの地点で調査を行っていたところ、中国艦船5隻が取り囲み、立ち退きを要求。中国艦船はインペッカブルに25メートルまで近づき、あわやアレイ・ソナーを奪われそうになった。このときも、ひょっとすると軍事紛争に発展しかねないという危機感があったが、当時のオバマ政権、胡錦濤政権とも基本は協調外交路線にあり、双方が忍耐をもって危機を回避した。

 今後、南シナ海で同様の軍事的偶発事件が起きる可能性は十分に予想されることだ。だが過去二度の米中軍事危機と明らかに違うのは、米国・トランプ政権にしても中国・習近平政権にしても、忍耐力が過去の政権と比して明らかに低そうなことだ。政治的にも経済的にも地政学的にも両国の動きに翻弄されやすい立ち位置の日本は、十分にアンテナを張って覚悟を決めておく必要があるだろう。

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KKベストセラーズ刊/2016年10月26日発行

このコラムについて

中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス
 新聞とは新しい話、ニュース。趣聞とは、中国語で興味深い話、噂話といった意味。
 中国において公式の新聞メディアが流す情報は「新聞」だが、中国の公式メディアとは宣伝機関であり、その第一の目的は党の宣伝だ。当局の都合の良いように編集されたり、美化されていたりしていることもある。そこで人々は口コミ情報、つまり知人から聞いた興味深い「趣聞」も重視する。
 特に北京のように古く歴史ある政治の街においては、その知人がしばしば中南海に出入りできるほどの人物であったり、軍関係者であったり、ということもあるので、根も葉もない話ばかりではない。時に公式メディアの流す新聞よりも早く正確であることも。特に昨今はインターネットのおかげでこの趣聞の伝播力はばかにできなくなった。新聞趣聞の両面から中国の事象を読み解いてゆくニュースコラム。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/218009/121900080/
 

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