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いま、読みつぎたいもの第5回 : 武田泰淳「汝の母を!」(レイバーネット日本)
http://www.asyura2.com/16/warb17/msg/131.html
投稿者 gataro 日時 2016 年 2 月 08 日 20:23:15: KbIx4LOvH6Ccw Z2F0YXJv
 

http://www.labornetjp.org/news/2016/0201matu 
http://www.labornetjp.org/news/2016/0201matu  


 辺見庸氏は、朝日のインタビュー(1月21日付)で、「未来を考えるときは過去に事例を探すんです。むしろ過去のほうに未来があって、未来に過去がある。」と語っています。そして現在の「全体として翼賛化していく」状況は、1930年代になぞらえられるのではないかと問い、南京大虐殺が起きた37年代前後のことを調べたのです。その結晶が、昨年末刊行された『1★9★3★7』(イクミナ・金曜日刊/写真)です。日本の腑抜けた政治・社会、そして精神状態を根源的に問う一書です。

 ところで、その本のなかで、辺見氏は、未来に向けて問いかける重要な戦後文学の作品のひとつとして、堀田善衛氏の長編小説『時間』(新潮社・1955年)を「経糸」としてとりあげています。この小説は、いまなお論議されている南京大虐殺(37年12月)の「捕虜・市民らの虐殺、約20万人、略奪・放火・強姦の惨状」(『近代日本総合年表』岩波書店)を、中国人の側から描いたものです。そしていまひとつが、武田泰淳氏(写真下)の「汝の母を!」(「新潮」56年8月号)という、枚数にしてわずか22、3枚の短篇です。しかし、辺見氏が「世界的傑作」と呼ぶこの作品こそ、戦後を生きるわたしを導く確かな光源だったといってもいいでしょう。

 「汝の母を!」は、日本軍の兵士たちが、捕えた中国人の母と息子に、こともあろうに性行為をやらせて見物し、挙句のはてに彼等を焼き殺すという話です。母子をとり巻く者は、農村で役場の書記をしていた隊長であり、強姦好きの肉屋の上等兵であり、炭焼出身、人夫出身、自作農出身、つまり、日本に帰れば農民である母子と同じあたり前の民衆たちなのです。武田氏を想定してもいいと思われる小説の主人公である「私」は、「インテリはダメね」とからかわれながら、その光景を目撃できませんでした。しかしその二人の犠牲者が、お互いの命を助けようと、日本軍兵士のニタニタ笑いの前で、どんな行為をしなければならなかったか、そして焼き殺されたか、そのすべての「光景」を、「私」=武田氏は魂に焼きつけ、背負い、戦後を生きたのだと思います。

 「汝の母を!」=「他媽的!」(タアマアデ)「ツオ・リ・マア!」は、中国特有の「国罵」といわれ、「お前の母親を性的に犯してやるぞ!」という、最大の侮辱的罵倒の言葉です。その罵言を、無知な肉屋さんが、意味も解らず、「バカヤロウ」のつもりで、逆に母子に投げかけます。背すじに、冷たいもの、熱いものが走りぬけた「私」は思います。――「彼ら母子にこそ、日本兵の祖先代々の母たちを汚してやる権利があったのではないか。」と。このあとは、「天のテープレコーダー」「神のレーダー」に記録された母子の美しくも哀切な、仮空の対話となって小説は閉じられます。

 いま、天皇夫妻によるフィリピンへの慰霊の旅が、新聞・テレビ等で日夜、報じられています。出発に先立ち、天皇は、「マニラの市街戦においては膨大な数に及ぶ無辜のフィリピン市民が犠牲になりました。」と言っていますが、111万人にも及ぶフィリピン人が、市街戦でのみ死んだと思っているのでしょうか。中国でと同じく、日本軍による一般人に対する虐殺・略奪・放火・強姦が行われたことを知っているのでしょうか。その結果の111万人なのです。また、日本軍の死者52万人も、戦闘によるものより餓死が多いといわれています。このさい、死者2000万人ともいわれている中国への慰霊への旅も果たしたらどうでしょう。いや、それは天地がひっくり返ってもかなわぬことでしょうから、せめて「汝の母を!」を読むことを、天皇、及び侵略戦争を認めようとしない安倍晋三氏とその追従者たちにすすめます。読むのに30分とかからないでしょうから。

(付記――武田泰淳氏は、1976年10月5日、この世を去りました。64歳。その折、「汝の母を!」にふれた追悼文を書き、出版業界紙に発表したことを付記します。)
*「汝の母を!」=『武田泰淳全集』第五巻(筑摩書房)



 

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コメント
 
1. 2016年2月09日 01:12:40 : opdfn60mts : WKE8MmDo6M0[4]
あと、「審判」だな。

あの小説で書かれていることが事実であると知ったときは衝撃を受けた。
この人の小説というよりも奥さんの「富士日記」で身近に感じてた作家だったから。

では


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